成羽鉱山跡　煆焼炉跡　探検: 北の細道

成羽鉱山跡　煆焼炉跡　探検: 北の細道岡北工業(有) 生石灰煆焼炉跡

成羽石灰石鉱区で日本のコロラドを遡る

岡山県高梁市成羽

　アメリカ合衆国のコロラド峡谷はコロラド高原（2,500m）からほぼ垂直に約1,800m掘り下がった渓谷で、
崖端から見ると色とりどりの岩層が横に縞目を重ねている風景を見ることができる。

これら色違いの地層は下から順に先カンブリア代（地球ができた46億年前から約40億年間）から
第三紀（6500万年前から170万年前まで)のものまですべての時代の地層が堆積しており、
地殻発達史を目の当たりにできる環境がある。

『日本のコロラド』と言われる岡山県高梁市成羽（なりわ）川は、
下流では古生層（2億4700万年前から2億1200万年前）最古の化石が含まれる地層があり、
支流の島木川の川底には三畳紀（2憶5190万～2憶130万年前）、
そして白亜紀（1億4,550万年前から6,600万年前）の地層が覆いかぶさっている。

通常は下部が古い地層で上部に達すると新しい地層となるのが通例であるが、
その「整合」と呼ばれる時代と共に積み重なった地層が侵食され、別の地層が覆いかぶさることを「不整合」という。

ここ成羽では2億年前の地層の上に1億年前の地層が積み重なり、
1億年間という長い年月の空白時間のある地層の積み重なりを見ることができ、
その部分の水平面が地殻の大変動により傾斜して露出したものを枝の不整合と呼び、
これは日本でも稀な地層マジックである。

岡山県津山/新見/倉敷に囲まれた部分には全国屈指の埋蔵量を誇る石灰岩の鉱床がある。
石灰岩は堆積岩の一種で炭酸カルシウムを主成分として、分類上は非金属鉱石とされている。
岡山の阿新地区の埋蔵量は約50億tを超えると言われ、これは全国の10％を占めることとなる。
その特徴としては多くの地方で産出することから、いわば長距離輸送に価値のない資源だと言える。

石灰は医薬、試薬の用途、ガラスや陶磁器の製造、建材土木、食品、鉄鋼、
中和や土壌管理とその利用範囲は大きい。
日本は石灰の埋蔵量が豊富で、国内自給が可能な数少ない資源である。
石灰は『石』の『灰』であり、工業用の石灰は石灰石を焼いて製造する。

石灰は生石灰（せいせっかい/きせっかい）と呼ばれる酸化カルシウム（CaO)と
消石灰（しょうせっかい）に分けられる。
生石灰は石灰石（炭酸カルシウム）を900～1200℃で加熱することで二酸化炭素が蒸発、熱分解を起こして生成する。

消石灰は上記の生石灰と水を反応させて製造される。
酸性土壌の【中和】や上下水道用の【凝集剤】、【青化製錬】の有毒ガス抑制などに使用される。

この石灰石を焼く工程は煆焼（かしょう）と呼ばれる。
焙焼（ばいしょう）も物質の融点以下で行うが、加熱前後で化学的に変化する。
対して煆焼は加熱分解で物質は化学的に変化しない。

石灰石の煆焼工程を実施するのに炉が使用される。
それが立型焼成炉と呼ばれるもので耐火煉瓦で内張された炉体内部で原料が加熱される。

今回の探索はこの石灰石鉱床に付随する煆焼工場跡の探索だ。
肥料登録銘柄一覧、化学工業会社名簿などあまり縁のない資料からの情報となる。
珍しく金属鉱山跡、そして炭鉱跡以外の調査となる。

消石灰・生石灰・コロラド・・・

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