奥座敷のリターナブル


大曲炭鉱付近から南方を望む。
大規模な露天の採掘跡には黒い地肌が残り、
そこだけは未だ植生が戻らない。 遠望


まずは雄別全体の坑道配置を見ていただこう。
一番下の緑丸が起点となる雄別通洞である。
今回の目的地は最奥とも言える、左手中央のベルツナイ斜坑である。 坑道模式図



路肩が決壊した廃道を進む。
入山ポイントまででも8.5q程のハイクとなる。
数時間は圏外の山中となる。 決壊


長らくは使用されていない道路の痕跡を進む。
閉山の昭和45年からでもおよそ50年以上、
路も自然に帰ろうとしている。 廃道


急に開けた一角がある。
地形図上でも等高線の最も緩いポイントであり、
しかし、鉱床図にも施設の記載はない。 廃道


その先で一気に急勾配となる。
これも想定のうちで、直線距離334mで130m下る。
つまりtan-1(130÷334)で21.2度、この数値を限度見本の目安としている。 斜面


沢の跡のような斜面が続く。
沢沿いは急激な斜面が現れるので、
谷に沿って下る場合は両脇への『巻き』を想定しながら下る。 切通し



谷沿いから標高を維持しつつトラバースする。
このように斜面を水平に横切るときは、
谷足のつま先を下に、山側の足は斜面と垂直にする。 トラバース


ようやく沢に降りたが安心はできない。
これは地図に記載されない最上流部の沢だ。
これ沿いに遺構はあるはずだが、沢沿いはとにかく方向感覚も失いがちだ。 沢


沢沿いが危険な理由は、尾根沿いと比較すれば一目瞭然だ。
方向と関係なく岸沿いを進みがちだし、
急な滝の出現など、進めなくなった時には再び折り返すこととなる。 一本橋


比較的緩やかな斜面に到着した。
事前にマークしたGPSによると、
付近がベルツナイ斜坑となる。 平場


足元には煉瓦が苔むしている。
炭鉱跡付近への到達だ。
斜面を登って坑口を探す。 レンガ


斜面を垂直に進む。
昭和37年(1962)からは 北進昇 からの奥雄別通洞が開削され 、
奥雄別地区の開発が加速する。 坑口


ギョウジャニンニクの森のような一角があるが、
坑口は埋没したのか発見には至らない。
昭和39年(1964)には出炭能率50t/人/月を記録し、優良炭鉱として認証された。 ギョウジャニンニク


自然の風景を破る青いビニールのホースが埋没している。
坑口からの排水用かポンプによる揚水用だと思われる。
更に遺構を探す。 ホース


沢沿いには太い配管が朽ちている。
ベルツナイ昇は排気用だったのかそれとも
長沢斜坑のように通洞までの 原炭搬出が計画されたのだろうか。 配管


フランジ付きのパイプは太さが510o、20インチだ。
完成に至らなかった坑道は、
その用途も謎のベールに包まれている。 パイプ


付近にはトランスのような鋼製ケースが残存している。
トランスとは変圧器のことで、運ばれてくる何万ボルトという高圧の電気を、
機器に合わせた100Vや200Vに変換する装置だ。 トランス


これは恐らく防爆型限時継電器、つまり今でいうタイマーリレーだ。
電気信号からある一定の時間後に、
回路をon/offする装置だ。 限時継電器


銘板には昭和29年7月製造とある。
奥雄西部は昭和41年からの開発だ。
このタイムラグに違和感がある。 タイマー


再び別の変圧器のケースがある。
これは排気用の扇風機の制御ではなく、
回転数や向きが著しく変化する巻上機の制御の機構のようだ。 変圧器


ベルツナイが扇風機風洞でなかった根拠はもう一つある。
奥雄別通洞は北進昇、北雄別排気坑、奥雄別排気坑と三か所の排気坑口で構成されており、
吸排気については十分満たされていたと推論している。 気中開閉器


これは恐らく気中開閉器(PAS)、供給側と需要側の境目で、
大元のスイッチ、つまり自動や手動で遮断する、
点検や事故の際の分岐点だ。 PAS


PAS自体は現代の電柱にも設置してあり、
漏電などの事故の際や電気点検時に、 下流/上流への波及を防止するために、
長い紐がついたスイッチでon/offできる。 イリ


現代ならプラスチック製の銘板だろうが、現装置は陶器製の『イリ』スイッチが残っている。
開閉時にはアークが発生し、電流の流れを継続しようとするが、
これを油や真空中ではなく空気中で引き伸ばし、消弧室で冷却して開閉を行う。 イリ


少し下流には先ほどのものよりは少し細い配管が残っている。
こちらもフランジ付きで複数を繋ぎ合わせる構造のようだ。
その先のルートは非常に険しくなる。 パイプ

昭和41年以降開発の斜坑付近にある昭和29年製機器の残存。
これは廃棄された別の場所の坑道用電装機器類を、
再利用した痕跡、いわばリサイクルだと思われる 崖








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