幻想鉱山




津軽海峡に面する福島町は、
世界最長の青函トンネルの街で、
大千敷岳や海産で有名な自然豊かな場所だ。 福島町

残雪の大千敷岳を望みつつ、
山へ入る。
「鉱山跡」へのアクセスはここからが長い。 大千敷岳


すぐに林道はゲートで閉鎖となり、
徒歩でのハイクとなる。
ここから予想する廃坑まで6kmだ。 林道


林道脇にはエゾエンゴサクが咲き乱れる。
5月はじめという、この春の一時期が、
探索にはもっともよい時期かもしれない。 エゾエンゴサク


春とは言え、
ノースフェイスの谷間には、
残雪があり、雪解け水で河川は増水している。 残雪


1時間以上歩いてようやく、
かつての五坑付近に到着した。
ここからはGPSを利用して廃道へ入る。 坑口


枯れ沢に沿って道なき斜面を100m程度登る。
地質図には最下流の坑口「五坑」の記載がある。
この沢で穴一つを見つけるのは至難の業だ。 廃道


一時間程度、山中を探索し、
ようやく、坑口らしき埋没しかけた穴を発見した。
よく確認してみる。 坑口"


内部はほとんど見えないが、
奥に続いているようだ。
坑口はほとんど開坑していないが、五号坑で違いない。 五号坑


再び鉱山道路付近に下り、
対岸の鉱山事務所跡近辺を望むと、
なんとレイルらしき鋼材が転がっているではないか。 レイル


他にも腐食した配管のような部材も落ちている。
しかし沢の水深は1m近くありとても渡れない。
途中にも橋梁は無かったし、
まずは上流の一坑付近を目指そう。 配管


1kmほど登ると、そこにはジガーのような長大な遺構が現れた。
これは予想以上に巨大だ。
ここが一坑付近で、廃坑跡の中心部だ。 ジガー


これが淘汰器だとすると、この上部に坑口があったに違いない。
マンガン鉱は一般に坑内掘りで、
この規模なら天井方向に掘削した後、横に掘って砕石を落下させる、
シュリンケージでの採掘だったかもしれない。 淘汰器


ジガーに沿ってよじ登り、
上部の一坑を目指す。


上部は残雪し斜度が大きく崩れている。
一見しても坑口らしきものは見えないが、
植生が進まず、人工的な砕石の跡であることは間違いない。 一坑


広大な掘削跡が残る一坑付近。
坑口が無いか登攀してみよう。
露天掘り


どんどん登り、気づくと鉱山道路は遥か下だ。
廃坑跡は思った以上に急激な崖で、
足がすくむ高さと角度だ。 崖


100m程度登ると、そこには不思議な岩が現れた。
異様に丸い。
あれはなんだ? 丸い


球体の岩石は斜面に埋もれ、
転がるでもなく、辛うじて留まっている。
この真球に近い丸さに驚いた。 丸い岩


坑口の発見には至らないまま、
再び淘汰器まで下る。
川沿いに下山する。 ジガー


対岸のレイルが気にはなっていたが、
渡る術の無い今、増水した川を見ながら歩く。
すると規模の大きな橋梁らしき跡があり、アバットが対岸に見える。
やはり川向うに設備があったのだ。 橋梁


右岸に渡れるまで1km程下山し、
浅くなった所を渡渉し再び、
廃道を遡った。 渡渉


川を遡るとやはり遺構があった。
石垣が残存する、
開けた谷間を登る。 遺構


かなり登るとようやく先ほどのレイルの遺構に到達した。
曲がったレイルは鉱山のトロッコに多い、
9kgf級で、ここに産業遺産があった証だ。 レール


そして現れた「ねこ」である。
ダムサイトの狭い回廊を「catwalk」と言うように、
狭い作業道を「ねこ足場」という。
本来は一輪の運搬車をねこというが、本機も運搬車で違いない。 ねこ


付近には遺構が増え始める。
ダイナモやレイルのような、
しかし激しく腐食した遺構ばかりだ。


いよいよ現れたのはトロッコの残骸だ。
しかも二軸で車輪が四枚残っている。
これはおそらく手選の現場だ。 トロッコ


足元にはレイルが現れた。
軌間は510mmで鉱山系のナローゲージだ。
ようやく精錬所かもしれない。 レール


1951年当時はFeを5〜15%含有する酸化マンガン鉱を採掘した。
手選での選鉱が資料に記載されていたため多少の期待はあったが、
予想以上の規模の精錬所の出現に驚いた。 精錬所


大きな石垣の残存する精錬所付近には、
クライマー型と思われる、ベルトコンベヤーの遺構がある。
これは岩尾鉱山同様の深山の廃墟だ。 坑道


石垣周辺には数々の遺構が点在する。
かつてはここで手選の上、様似駅付近の東邦電化kkに鉱送された。
当時、終点の様似駅からは専用線の分岐があった。 石垣


今度は直径の少し大きなトロッコの車輪である。
先ほどの2軸より重量級なのだろう。
石垣の上部を目指してみよう。 トロッコ


精錬所上段から眺める。
少し繁栄期の風景が蘇るようだ。
そして何やら箱状の遺構がある。 上段


これはもしや安全索道の搬器(ゴンドラ)ではないか。
転がっているが、トロッコではない形状で、
重厚な鋼製だ。 ゴンドラ


付近には同様の埋もれたゴンドラがあり、
側面には反転用のフランジに接続したピンがある。
これは紛れもなくボクスヘッド型の架空索道の搬器だ。 ボクスヘッド


おそらくゴンドラは図の様な形状で、
鉱石を搬出し、必要な場所で転回していたのだろう。
ということは付近に索道跡があるはずだ。 ゴンドラ


はたして精錬所の頭上には、
くっきりと2本のワイヤーが存在する。
そのワイヤーの向かう先は・・・。
(マウスon)


ワイヤーを目で追うとそこは先ほどのジガー上の廃坑跡へ向かう。
あの球状岩石の廃坑跡からここまで索道があったのだ。
川を渡る架空索道のゴンドラ達を想像した。 廃坑


石垣の精錬所後の下部には、
減速機らしい遺構も残る。
これは貴重な産業遺産かもしれない。 減速機


減速機は小型で如何にも特注のようだ。
銘板には「鑛山機械専門製作 江差鐵工所」の刻印が残る。
製造年月日は読み取れないが、「回轉数」の文字が時代を語る。 マウスon 銘板


これだけの索道が残存するなら、
そのワイヤーを張る「緊張所」があったはずである。
それを求めて更に登攀する。 登攀


やがて現れたのは、ワイヤーが交差する、
アングルやアイボルトの遺構。
この延長を追う。 ワイヤー


そのワイヤーの先には、
コンクリート製の巨大なブロックをアンカーとする緊張所があった。
この重量物で未だ、ワイヤーのテンションを張っているのである。 アンカー


差し込む光を浴びる索道遺構群。
コンパクトな敷地に、
密度の濃い残留物。 減速機


水洗前のチューブミルらしき遺構。
本坑は想像をはるかに超えた遺構群に囲まれ、
鉱山跡としては理想郷かもしれない。 チューブミル









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廃坑跡
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