源氏は18歳。北山の山寺に加持の治療に訪れた際、源氏はひそかに恋慕する藤壺(父桐壺帝妃であり源氏の義母)によく似た少女を見出しました。源氏はこの少女を手元にひきとって養育したいと思います。この少女は、後に源氏の正妻格として連れ添うことになる紫の上です。少女の庇護者である祖母の尼君は、その後山寺を去り、京に住まっていたが、病重く、明日をも知れぬ身でありました。源氏はその尼君を見舞います。次の古文本文を読んで後の問いに答えよ。
かの山寺の人は、よろしうなりて出でたまひにけり。京の御住み処尋ねて、時々の御消息などあり。同じさまにのみあるもことわりなるうちに、この月ごろは、ありしにまさるもの思ひに、ことごとなくて過ぎゆく。
秋の末つ方、いともの心細くて嘆きたまふ。月のをかしき夜、忍びたる所にからうじて思ひたちたまへるを、 a時雨めいてうちそそく。おはする所は六条京極わたりにて、内裏よりなれば、すこしほど遠き心地するに、荒れたる家の、木立いともの古りて、木暗う見え bたるあり。例の御供に離れぬ惟光なむ、「故按察大納言の家にはべり。一日もののたよりに @とぶらひてはべりしかば、かの尼上いたう弱りたまひにたれば、何ごともおぼえずとなむ(少納言ガ)申して cはべりし」と聞こゆれば、「あはれのことや。とぶらふべかりけるを。などか Aさなむとものせざりし。入りて d消息せよ」とのたまへば、人入れて e案内せさす。わざとかう立ち寄りたまへることと言はせたれば、入りて、「かく御とぶらひになむおはしましたる」と言ふに、おどろきて、「いと fかたはらいたきことかな。この日ごろ、 Bむげにいと頼もしげなくならせたまひにたれば、御対面などもあるまじ」と言へども、帰したてまつらむはかしこしとて、南の廂ひきつくろひて入れたてまつる。
「いとむつかしげにはべれど、 Cかしこまりをだにとて。ゆくりなう、もの深き御座所になむ」と聞こゆ。げにかかる所は、例に違ひて思さる。「常に思ひ gたまへたちながら、かひなきさまにのみもてなさせ hたまふにつつまれはべりてなむ。なやませたまふこと重くともうけたまはらざりけるおぼつかなさ」など聞こえたまふ。「 i乱り心地は、いつともなくのみはべるが、 j限りのさまになりはべりて、いとかたじけなく立ち寄らせたまへるに、みづから k聞こえさせぬこと。のたまはすることの筋、たまさかにも l思しめし変らぬやう mはべらば、かくわりなき齢過ぎはべりて、かならず数まヘさせたまへ。いみじう心細げに見たまへおくなん、願ひはべる道の絆に D思ひたまへられぬべき」など聞こえたまへり。【若紫】
問1 a時雨のよみを現代仮名遣いのひらがなで記しなさい。★
問2 bたるの直後に補うことができる語を漢字一字で記しなさい。★
問3 cはべり、gたまへ、hたまふ、k聞こえさせ、l思しめし、mはべらを敬語法の観点で簡潔に解説しなさい。★★
問4 d消息せよ、e案内せ、fかたはらいたき、j限りの文中での意味を、基本形の形で答えなさい。★
i乱り心地とほぼ同意義となる動詞の語を本文中から抜き出し、基本形にして記しなさい。★
問5 @とぶらひてはべりしかば、Bむげにいと頼もしげなくならせたまひにたればを口語訳しなさい。★★★
問6 Aさの指示内容を簡潔に記しなさい。★★★
Cかしこまりをだにとてを「だに」の用法が分かるように口語訳しなさい。★★★
問7 D願ひはべる道の絆に思ひたまへられぬべきについて、
(1)使われている敬語の用法について簡潔に説明しなさい。
(2)使われている助動詞の用法について簡潔に説明しなさい。
(3)「願ひはべる道の絆」とは具体的には何か、簡潔に記しなさい。
問8 「源氏物語」の成立した時代・作者の名・作者が仕えた中宮とその父親の名を順に記しなさい。★
源氏物語「たづの一声 1/2」(若紫) 解答用紙(プリントアウト用) へ
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