稲穂峠へ 9163(9263)レ 小沢〜銀山
セトセ川に沿って伸びる細い道は途中から完全未舗装のデゴボコ道になります。行き着いたところがちょっとした広場で、そこから右手に歩いて行くと函館本線の築堤の下をくぐる道に出ます。この斜面を登ると、そこは胸突き八町を登ってくるC62の姿を正面から捉えることができる場所。私たちは「セトセクロス」とか「セトセ分岐」とか呼んでいました。ここも秋は紅葉が美しい場所でしたが、晴れるとド逆光になる場所なので露出が難しかったですね。
ところで下の2枚の写真、同じ時に撮影したものです。上がKL(ISO200)で下がフジのカラーネガ400(どっちも目が粗いですな、やっぱり)。露出値も全く同じ(KL=1/500sec.f4:ネガ400=1/500sec.f5.6〜共にEV12)なんですが、この発色の違い。コダックとフジの差が如実に現れているような・・・。まあ好みが分かれるところでしょうね。
(1990年10月 小沢〜銀山)
それにしても、この稲穂峠の山の中を一人で歩く、というのはヒジョーに勇気のいることでして・・・。なにせここは北海道でも知床に次ぐ、と言われていたほどヒグマの多い場所。古い足跡やフンなどは目撃報告が珍しくないほど。(ホンマモンに出会ったという話はさすがに聞きませんでしたが)
線路端で一人で三脚立てて汽車待ってたら、いきなり肩を叩かれて「隣、いいですか?」と言われ、「どうぞ」と言って振り返って見たら、クマが三脚と銀箱背負って立ってた、なんて笑い話があるくらい・・・。
まあ、それでも線路端で撮る分にはさほど怖がる必要もないんですが、俯瞰に登るとなると・・・一般の人から見たら正気のサタではないでしょうね。(^^;
広場俯瞰
それだけ怖い思いをしても、やっぱり上に上がって見るといいものなんですよね。(^^;
もっとも一人では怖くてよう行かんですが。
でも、せっかく俯瞰に上がっても黒い煙が出てしまうと・・・。(-_-;)
(↓1993年5月 小沢〜銀山)
ちょっと雨模様の日に登るのも勇気が要ります。(というかハッキリ言ってムボー)
何せせっかく上に登っても視界が利かなければアウト。かの有名な「稲穂大俯瞰」で私は音だけ聞いて帰ってきたという苦い経験があります。かすかに霧の向こうに煙らしきものが見えるという悲しい結末。もっとも撮影そのものよりも下山がキョーフだったですが。この「広場俯瞰」は数ある稲穂峠の俯瞰の中ではもっともラクな「初心者コース」とも言うべき場所でしたが、それでも登り口から45分程度かかりました。途中2箇所沢を渡ります。
最終日の列車はここから見送りました。
(↓1995年11月 小沢〜銀山)
今ではこの場所、伐採が進み、山の稜線を通る道路ができて、いとも簡単にクルマで行けてしまうそうです。往時を思うと便利になったような寂しいような・・・。
(↓1995年10月 小沢〜銀山)
210.5km地点
稲穂トンネルのすぐ手前。ここまで来るとC62もかなり苦しい。
この日は朝からみぞれ混じりの雨が降る一日で、午前中から濡れっぱなし。セトセクロスのところでタクシーを降りてからさらに2km歩いてくる間に下半身はもうズブ濡れ、宿に帰るまで着替えはない・・・。折から風が強くなり、雨は横殴りに・・・「何でこんな思いまでして私は汽車を撮ってるんだろう?」と我ながらおかしくなったのを覚えてます。
そんな苦労を知ってか知らずか、C62が通過する頃には空は一段と暗くなり、露出は底割れ。(-_-;)
C62は煙を風にあおられながら私の目の前を通過。あまりにも消化不良な結果に「仲間と一緒にセトセクロスで撮ってればよかったなあ」とボヤキながら来た道を一人トボトボ引き返す私でした・・・。
(↓1992年5月 小沢〜銀山)