川端人材開発研究所

                         川端大二の人材開発コラム    

コラム45           風通しの良い職場
 自由にものが言えることは、コミュニケーションの良い明るい職場の大きな条件のーつである。自由に議論してこそ、仕事の質は高まるし部下も成長する。自由にものが言えるといっても、雑談や冗談のレベルに止まっていたのでは創造的、建設的職場とはいえない。気兼ねなしに自己主張や意見表明、意見交換ができることが大切である。自己主張とは、上司や同僚に自分の意見を言うことであり、上司の方針や考え方に異を唱えることも少なくない。抵抗無く異を唱え得る職場こそ最良の風通しの良い職場といえる。そのためには、リーダーの側に二つの条件が整っていることが必要である。
 第1は、オープンマインドでかつプラス志向が必要である。誰もが何でも言えることの究極は、メンバーがリーダー批判をしても根にもたれな いという実感をもてていることである。また、積極的な提言を歓迎するには、上司が小さなミスは許容するというプラス志向の態度であることが望ましい。
 第2は、優れた意見は採り上げるという度量と実力を持つことである。新しい提案を、面倒だとか面子に関わるといって放置したり押さえ込んだりしては、いつしか意見を言わなくなってしまう。特に、変革の時代である今日、メンバーから改革的提案が出されることも有り得る。提案の価値を読める実力が必要であり、価値を読みきれない場合は、上司や同僚とよく相談するなどのアプローチが望まれる。
 オープンマインドであるためには、次のような心構えが必要である。@すべての情報をメンバーにオープンにすること。人事等の秘密情報は別として、経営に秘密はない、むしる共有してこそ価値があるとの考え方に立つのである。力のない管理者ほど情報操作によってパワーを維持しようとしがちである。A自分の弱点もできるだけオープンにして、本音に近いレベルで話し合うこと。Bきちんとしたビジョンや見解を持っていて、考え方に筋が通っており、朝令暮改的にコロコロ意見を変えないことである。もっともいけないのは、自分の上司に言うこととメンバーに言うことに差があることであり、部下な敏感に察知するものであることを心しておく必要がある。
 

コラム44         忙しい時ほどOJTのチャンス
  OJTに不熱心な管理者の最大の言い訳は、“忙しくて時間がない”である。周囲はそれで何となくやむを得ないなと納得してしまう。OJTの真髄の一つは、「やって見せ、言って聞かせたさせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」(山本五十六元帥)にある。これは部下に密着しての指導である。新入職員の指導にはこのアプローチが不可欠であり、忙しければおろそかになるのも無理はない。しかし、これは教えることを基本にした部下育成であるが、OJTはすべてがこのパターンではない。かなり仕事ができる者を将来の管理者やスペシャリストに育成するには、他の考え方や方法による。
 変革時代の部下育成においては、スペシャリスト的高度専門力や戦略力、革新的創造力、プロデュース力など、従来とは異質の能力が要請される。この分野においては、上司といえどもやって見せられないし、効果的に教えることもままならない。職場にコンピュータが導入された時のことを思い起こしてみれば、管理者は部下に教えてもらっていたではないか。変革対応等は、上司と部下が共同で新たな目標の実現や問題解決に取り組まざるを得ない。その過程を通じて上司も部下も能力が開発されていく。共創と共育である。これはともに仕事をしていく中で力をつけるものであって、教えるという範疇ではない。
 上司が部下に教えられない場合の育成には、共同創造のほかにどのような方法があり得ようか。それは部下の自己開発を支援することである。部下の素質が開花し向上するような機会を提供し、励ますことである。機会提供教育とでも言えようか。その真髄は、権限移譲にある。魅力ある仕事を任せ、その達成を側面から支援するいわゆるエンパワーメントである。魅力的でかつ重要な仕事を任されれば、自己存在感や自己有能感が高まり、業績を確保するため、仕事に穴を開けないため、任してくれた上司に報いるため、やり遂げて達成感や更なる自己存在感を高めるために、一生懸命頑張ることになろう。権限移譲は動機付け効果の高い方法でもある。
 管理者が忙しすぎる場合、好むと好まざるにかかわらず、部下に仕事を任せざるを得ない。そこに、部下の育成やキャリア形成支援の配慮をすれば、非常に優れたOJTとなる。忙しいほどOJTのチャンスであるとの真意はここにある。

コラム43         ライフステージとキャリア
 かつての日本的経営が機能していた時代は、ライフステージとキャリア形成が同調していた。年功序列制のもとで、入社、昇進(係長、課長補佐、課長など)、退職の各ステップと年齢がほぼ定まっており、年功給も相まって、結婚、子供の教育などのライフステージと整合していた。ライフステージに合わせた年功賃金システムが構築されていたのである。当時のキャリア形成は、終身雇用下で昇進のステップに合わせた企業内教育を中心とする能力開発と経験の積み重ねというものであった。従ってキャリア形成の問題が特に重視されることもなかった。
 ところが今日、企業においては状況が大きく変化してきている。第一は終身雇用が揺らぎ、リストラや転職、中途採用が日常化してきた。ここではキャリア形成はかなりの部分が個人の問題となってきている。第2は非正規社員が著しく増加してきていることである。彼らは昇進とは無縁であり、キャリア形成は完全に個人の課題であり、自分を磨くための自己啓発努力が不可欠である。第3は成果主義の導入により、昇進と年齢が不整合となったことである。昇進のステップが能力や成果に応じるために、自らのキャリアを自らの力で形成していかなければならなくなったのである。  企業の立場から見ると、人材育成はこのライフステージとキャリアステップとの不適合への対応が大きな問題となってきた。組織の持続的拡大の停止やフラット化は昇進の道を狭くし、成果主義の導入は年功的昇進を許さない。従来のように年功的昇進を基本とするライフステージに添ってキャリアを形成していくという構図は成り立たなくなってきた。標準的なキャリア開発から、個人の状況に即したキャリアを考えていかなければならなくなったのである。
 階層別研修などの一律の育成策は必ずしも個人のキャリア形成と整合せず、各人の能力や意欲、願望に応じたキャリアビジョンの実現に向け、自己啓発を基本として個人ごとのキャリアをデザインしていくことが必要になる。その各ステップにおいて、キャリアデザインや実現のプロセスを支援していくキャリア・コンサルティングやキャリア・カウンセリング、メンター制度などが重要な方策となりつつある。

ラム42         チャレンジ意欲の喚起
 誰でも新規事業への取り組みなど未経験の仕事やリスクの大きい仕事は敬遠しがちである。行政・経営環境が激しく変化する今日にあっては、チャレンジなくして将来の展望が開けるはずもなく、また政策人材や企業家のマインドも育たない。チャレンジこそが大きな人材となる正道である。部下のチャレンジの気概を育て、高めていくようにしたい。 上司が部下を育成する際の指導や方向付けにおいては、第1に目標を高く設定することが必要である。意識的に困難な課題や高い目標を設定し、その実現に全力を尽くすようにする。修羅場の経験やリスクへの挑戦こそが人を大きく成長させる。第2は、将来ビジョンを創造し使命感(ミッション)をもつように指導することである。目標が魅力的であるほど、使命感が高いほどチャレンジの意欲が沸いてくる。
 第3には、プラス志向の気概を持たせることである。意義あるチャレンジをしたが失敗に終ったような場合でも、チャレンジしないよりもはるかに有意義であるという考えに立つのである。それには次のようなアプローチがポイントとなろう。@“できるはずだ”―今まで困難なことを何度も乗り越えてきたではないか、Aできない言い訳をしない、どうしたらできるかを考える、B“面白そうだ”“とにかくやってみよう″、Cダメモト精神で一歩前進させよう、D自分の長所を見て、生かしていく、E結果の楽しさや成功のイメージを描く。
 第4には、小さなことから徐々に大きいことへと、数多くのチャレンジを経験し、成功体験を積み重ねることである。チャレンジの実績作りと自信の獲得である。第5には、外部や一流、更には競争相手を見せることである。活力のある他社やチャレンジ的な人と交流するなど、外部の剌激を利用するのも効果がある。
 第6は戦略思考に慣れさせることである。目標を明確にし、成功へのシナリオ(戦略)を描く能力を高めるのである。戦略が描ければ成功の確率は高い。戦略のないチャレンジを無謀という。第7は、人脈、特に味方を増やすことである。一人ではくじけそうになることであっても仲間の支えや協力があれば勇気がわいてくる。そして第8には、上司自身がチャレンジしている姿を見せることである。率先垂範は最大のOJTである

コラム41          キャリア形成支援
 キャリア形成は個人のみならず、組織にとっても重要な意味を有している。職員の能力開発やモラールアップ、働きがい、更には転職の防止に大きく関係するからである。人材の流動性の高まり、自分らしい生き方を志向する自己実現や自我欲求の高まりの下で、組織が職員のキャリア形成を支援することの重要性が格段に高まってきている。
キャリア形成支援における組織的アプローチには、第1に教育制度として研修、OJT、自己啓発支援などがある。第2に人事制度におけるジョブ・ローテーション、人事の公募制、FA(free agent)制、自己申告制などがあり、第3には側面的支援としてのメンター制度やキャリア・コンサルティング制度がある。メンター(助言者:mentor)とは全般的支援者や後見人としての役割を果たす人であり、組織内の尊敬できる上司・先輩、組織外の専門家や恩師などであり、折に触れて相談に応じてくれる人である。
 直接の上司である管理・監督者によるアプローチは、部下をよく知り、最も身近な管理者による支援であり、望ましい将来像の創造のアドバイスやOJTによる能力開発、またメンター、キャリア・コンサルタントの役割を担うことも重要である。
 部下のキャリア形成支援においては、素質・適性発見や日常の仕事への取組みの指導、機会提供、指導・励まし、キャリア形成意識の涵養、将来ビジョン創造支援、実現戦略の指導、将来的能力開発の支援などが重要であり、真剣な努力と絶えざる見直し、とりわけ転機におけるキャリアの見直しが欠かせない。

キャリア形成は、80%は偶然の機会によるキャリア形成(クランボルツ)であり、   偶然の機会を逃さないこと、機会にチャレンジすることが大切である。研修の機会、昇進機会、配置換えや新たな機会との出会いなど、仕事の場には日々チャンスが生まれる。更に機会の創造、引き寄せにも心がける必要がある。資格を取れば新たな機会が生じるし、  外部勉強会に参加、人脈を広げる、公募へのチャレンジなど、チャンスを広げる努力が必要である。組織的にもマネジメント上でも、また個人的努力においても機会を広げ、好機をとらえることが必要である。機会提供やチャレンジ意欲の喚起が最大のキャリア形成支援となろう。

 コラム40       異業種交流と情報発信人
 異業種の者の見解は、その置かれた立場の差が反映されきわめて多岐にわたる。議論しても必ずしも意見が一致するとは限らず、拡散しきってしまうことも少なくない。しかし異業種研究会に参加すると、次の3つのメリットが得られる。
 第1は内的トレンドの認識である。参加者各人の状況のとらえ方、読み方、意見、戦略方向等はバラバラであるが、そのベクトルの総和を認識することができる。第一線で同じ課題で悩んでいる者の考えている方向(内的トレンド)のあらましが見えてくる。同業者の研究会ではベクトルの方向は近似する。そのため業界全体のトレンドが時代や社会のトレンドからズレているときは、大きな過ちを犯すことになってしまう。変革の時代はこの傾向が現れやすい。第2は スタンスの確認ができることである。トレンドを確認すると、そこから自分・自社の考えや戦略のスタンスが確認でき、方向とレベルの相対的位置が認識できるのである。これは、悩み抜いている者にとって、非常に大きな支えとなる。
 第3は 革新的創造性が触発されることである。日夜、ビジョンや戦略を模索している者にとって、異業種の者のまったく思いがけない方向の見解に触れたり議論している間に、ふとアイデアがひらめくことがある。集中思考、あたた(潜在)を繰り返している間に知的剌激を受け、ひらめきを得たものである。異質発想によって刺激されたひらめきは、多くの場合革新的発想である。
 情報は組織のラインを通じて上がっていく過程や根回しの間に、さまざまに変質していく。それぞれのステップで価値が判断され、社の風土、体質になじまないものは削られて丸くなってしまう。意味や価値が不明の情報、一見なんでもないような情報、バカバカしいような情報であっても、見る者が見ればキラリと光る価値を発見できるものが含まれている。丸くなったものにはそれがない。戦略の推進や革新的創造は古い秩序を捨て去る過程を伴う。創造的破壊である。そもそも組織の誰もが納得し、コンセンサスを得るという性質のものではない。今日は、誰かが持ち込んだ情報を丸くするのではなく、自ら外へ出向いてキラリと光る情報を社内へ持ち帰り、それに付加価値を付けて社内外に発信する、いわゆる“情報発信人”としての人材が求められている。


コラム39
       提案の奨励−部下の創意工夫の促進―
 部下から改善や改革の提案があることは、部下が前向きの姿勢を持っている証拠である。提案がないのは部下が意見を持っていないか、持っていても提案しないかである。持っていなければ育成しなければならず、持っているのに提案がなければ上司自身のリーダーシップに問題があると見なければならない。この場合最も留意すべきは、提案が自分の考え方、方針と合わないからといって、受けつけないという姿勢をとっていないかである。このようなことが続くと、部下は“上司は自分に都合のよい提案しか受けつけない”という印象を持つため、次第に提言を控えるようになってしまう。そうなれば、部下の前向きの気持ちの低下や創意の委縮を招き、仕事の発展や部下の育成そのものに影響を及ぼす。 そのため、次のようなアプローチをとることが必要である。@まず提案そのものをほめる。提案をすることは部下の意欲の表れであり、そのこと自体は十分に評価する。A提案をよく聞く。忙しくてもできるだけ時間を割くようにし、どうしても時間のないときはできるだけ早い機会に約束して実行する。保留は禁物である。Bよく話合い、意見交換、議論をする。C良い提案は採用する。D悪い提案の場合は、理由をよく説明して更に話合ったり議論する。この場合、一方的に理由を説明するのではなく、本人が様々な角度から検討し、納得して再提案をする方向へと持っていくのがベストである。

 ここで問題となるのは、何をもって良い提案とするかである。創造・戦略型の優れた管理者であれば、自らの判断によって良い提案を見抜くことができるであろう。しかし、かつての猛烈型や調整型の管理者であれば、部下の革新的創造力に発した優れた戦略提案の価値を見抜けず、単に変わった意見として見過ごしてしまいかねない。優れた提案と判断できても、改革が伴うことを嫌って取り上げないということもあろう。提案の是非を判断しかねる時は、部下の意見に十分耳を傾けてその意義を確認したり、より上級の上司や戦略型と思える他の管理者に相談したり、更には自ら勉強し直すことが望ましいが、従来型の管理者にはこの種の行動を期待し難いというほかはない。改革行動を嫌がる管理者については(実際にはかなり多く存在している)、今日的リーダーの資格がないとみなければならず、早急なリーダーの選定方法の見直しや育成が必要とされる。 

コラム38        オープンマインド −本音レベルの交流― 
 
部下との信頼関係を築き活力を引き出すためには、日常的な風通しの良いコミュニケーションが欠かせない。風通しの良いこととは、上司・部下が、お互いに言いたいことを言い合って情報や意見交換をし、議論をしていけることである。上司への反論には勇気が必要であるが、風通しの良さの究極の姿は、部下がためらいなく上司に意見表明し、反論し、議論できる環境にあることである。 そのためには、第1に上司・部下が共に自分の意見、見解を持っていることが必要である。持っていなければ育てなければならない。第2には、部下が上司に対して意見具申する気概を持っていること。持っていなければやはり育てなければならない。第3には、上司が部下の意見を聞く態度を持っていること。第4には、意思決定に至る過程では、どのような議論も許容すること。そして第5には、良い意見は取り上げるという度量と実力を有していることである。  部下がためらいなく上司に反論できるためには、上司批判をしても叱ったり根に持たないことが必要である。上司自身が“部下が反論しても気にしない”と考えていることではなく、部下自身が実感できていることである。一般にはこの間に非常に大きなギャップが存在する。そのために部下が上司評価を行い、その結果を上司にフィードバックすることにより、意識差を理解して自分の考え方や行動を修正するという研修も盛んである。
 部下が自由にものを言えるためには、@上司にオープンマインドでかつ誠実な態度・行動が求められる。すなわち、すべての情報を部下にオープンにする。経営情報に秘密を持たないようにする。A自分自身の弱点もオープンにして、本音レベルで語り合う。何を考えているか分からないような上司には、安心して本音を語ることができないからである。また、B聞き上手であり、部下の意見に耳を傾け、真摯な議論や適切なアドバイスができる。更に、Cきちんとしたビジョンや見解を持っていて、考え方に筋が通っていること、朝令暮改的に意見を変えないこと、上級の上司に言うことと部下に言うことに差がないこと、D部下の成果を横取りするようなことがないこと、E秘密をきちんと守ることなどが必要である。

コラム37     部下の成熟度に応じた指導・育成
 
新入職員は仕事や組織のルールを一から教えていかなければならない。いわば手とり足とりの指導である。このような場合は、上司の率先垂範や示範等の見せることから始まり、教える、やらせてみる、評価するが中心となる。山本五十六元帥の言う“やって見せ、言って聞かせてさせてみて、ほめてやらねば人は動かじ”が基本原則となる。指示型・教示型のリーダーシップが効果的である。
 ある程度仕事ができるようになれば、指導や育成の方法を変えていかなければならない。 子供に対する場合と大人に対する場合の対応が異なるように、OJTは部下の成熟度(能力、経験、意欲等)に応じて、その効果的な方法は異なってくる。一般には、部下の成熱度に応じて、次のようにより自主性を尊重していくように指導することが効果的である。
 新入職員を第一段階とすると、それなりにできるが自主的に進めていくには至らないレベルである第二段階では、説明型、説得型が効果的である。仕事の意義や必要性を十分に説明・説得することによって仕事へと動機づける。不平、不満や苦情をよく聴くなど、上司から部下への働きかけての信頼関係の構築が大切である。教える(ティーチング)も必要であるが、本人が自分の問題としてとらえて、自主的に能力開発に取り組むよう支援するコーチングに心がけるようにする。

 第三段階は、自主的に仕事を進め、上司へ提案をしつつ改善・改良していくレベルであり、部分的な上司の代行ができるレベルといえる。この段階では、参画型が効果的である。部下の提案や意見を汲み上げたり、相談・議論を積極的に行うなど、部下を意思決定に参画させたり、実質的に権限を委譲するなどのアプローチである。コーチングが必要であるが、自主的に困難にチャレンジして成長を促す機会提供や、知恵を出し合って 課題を解決しようとする共同創造(知の創造)が中心となろう。
最終段階は、自主的に目標を形成して達成したり、環境の変化を先取りして創造的に仕事を切り開いていくレベルであり、後継者のレベルといえる。この段階では、仕事を任せきる委任型が効果的である。困難な課題に対しては共同創造が重要な意味を持つが、権限委譲による機会提供が中心的方法となる。
 

コラム36         カウンセリング・マインド
 マネジメントやOJTにおいては、部下が上司に自由にものが言える風通しの良いコミュニケーションが重要である。自由闊達なコミュニケーションがあってこそ、部下は本音レベルでの意見や提言ができ、自己存在感や自己有能感を得ることができる。
 ところが、誰でも弱みや不安をもっていることについては、なかなか本音で話すことはできない。人は弱みを見せたくない、自分を強く見せたいとする動物的本能を潜めており、本音を隠して建前で通そうとしがちである。建前だけの意見交換や議論では、真の問題解決や創造につながりにくく、相互の信頼関係も形成しがたい。そこで相手が弱みをも含めての本音レベルでコミュニケーションができる関係の構築が重要な課題となる。
 相手が弱みを持っている場合などには、じっくりと相手の話を聴き、相手の立場に立って本音や感情を聴く(積極的傾聴)ことが必要であり、そのためにはカウンセリング・マインドが重要になる。
 カウンセリングのためには、相手の内面の考え方や感情を理解することが必要であり、相手の話をじっくりと聴く傾聴を重視する。受容の心を持って傾聴を続けていく中で、相手の共感を得ていくことが重要であり、次の3つの基本的な態度が必要である。
@受容の心:本当のことを率直に話す態度や相手の話を真剣に聴こうとする誠実さとどのような相手でも受け入れる心をもつ。A共感的理解:相手の立場に立って、共に考え、感じ、理解する。ただし、同情するのではなく、主体性は失わない。B自己一致:自己概念(あるべき自分)と自己経験(あるがままの自分)が一致している状態、すなわち考え方や行動が首尾一貫している健全なパーソナリティを有する。
 積極的傾聴に当たっては、批判、忠告、説教、同情的態度は禁物であり、相手の言葉の表面上の理解だけではなく、根底に流れている感情を聴くように努める。そのためには、話をうながすためにあいづちを打ったりオーム返しをするだけでなく、相手の言ったことを自分の言葉に置き換えて質問して意味を確認するなど、相手の話を徹底的に聴くように努めることが大切である。
 

コラム 35            参画の効用と限界
本来上司の権限である意思決定に部下を参画させることは、マネジメント上様々な意義や効用がある。仕事の面においては、部下の有する現場情報の取り込みが豊富になること、多角的な観点から検討されるため意思決定がより正確になること、部下とのコミュニケーションが増大することから、部下自身の仕事の目標・方法等の理解が深まるなどの効果がある。また、部下に自分達の仕事であるという自覚が強まり責任感が増すとともに、自分も参加して決定した目標や方法について、何とか成功させたいという気持ちが強くなるので、一生懸命頑張るようになることも期待できよう。
 人間関係やチームワークの面においては、自分の意見が表明できるので部下自身の自己存在感が増すこと、良い意見が採用されることにつながるので結果的に公平な評価であるとの実感が増すこと、コミュニケーションが多くなることから相互理解が増大し、チームの和が良くなること、参画の機会を作っている上司への信頼感が増すなどの効果などがあろう。

 とりわけ意思決定への参画において重視されるのは、部下の能力開発や育成の面である。部下にとっては高度な仕事に参画しているという実感が高まり、モラールアップにつながること、チャレンジ精神の高揚や創造性を刺激すること、そして何よりも創意工夫や一生懸命努力するようになるので実力がついて<る。

意思決定に部下を参画させることは、結果的に権限委譲ともなるため、上記のように職場の活性化や部下育成にとって極めて重要なマネジメントとなる。意思設定への参画のためには、上司自身が容易に決定できるものであっても、ときには我慢をして部下に考えさせ、議論するなどの手間が必要になることも少なくないが、その効用を理解し、積極的に活用していきたいものである。
 ただし、参画には弱点や限界もあることに留意しなければならない。例えば、部下の成熟度が参画させる仕事のレベルより低すぎる場合、部下間の不和が大きく、建設的なチームワークが期待できない場合、緊急を要する課題、人事や高度な機密などのように参画が適さない場合などである。

 コラム34      OJT革新 ―教えることから共同開発へ―
 OJTは、仕事の現場で上司・先輩が部下・後輩に対して行う教育である。仕事を通じての現場教育であり、職務遂行能力の向上に欠かせない重要な位置づけにある。その原点は、組織や上司が長年の間に開発し蓄積してきた知識・技術・ノウハウ等の継承や価値観・論理・行動様式の指導・定着である。
 終身雇用的労働慣行を基調としてきたわが国においては、同業種といえども個別企業ごとに独自の仕事の仕方やノウハウを構築してきた。そのため、銀行という業種であっても、三菱の風土、住友の風土など、企業ごとに異なる風土が形成されてきた。このような企業独自のノウハウ等の暗黙知は外部からは分かりにくく、容易に模倣できるものではない。それが時代に適合した効果的なものであれば、当該企業のコアコンピタンス
(他社が容易に模倣できない市場優位の中核的能力)として、市場優位を確保する。この種のコアコンピタンスを教育できるのは、まさに現場に密着したOJTの得意とするところである。OJTの活性化や組織的展開が重視されるゆえんであり、OJTは日本的経営の根幹をなす仕組みであった。

ところが、今日この構図に大きな異変が生じてきている。大変革時代の到来であり、経営の競争の論理の変化や公務に要請される公益の価値の変革である。経営や行政の環境が変革(質的変化)することは、社会や人々の求める価値の質が変化することを意味する。機械式の技術がエレクトロニクスにとって代わり、中央主導の行政から分権の要請、人口増の政策から人口減少時代への政策転換の要請などである。
 変革に対応するためには、将来を予測・洞察して新たな価値を創造する経営が重要になる。そのためには、新たな専門力、創造力、戦略力、プロデュース力など、従来とは異なる、知識・技術・ノウハウ等が必要になる。変革に対応する能力等は、上司・部下ともに新たに必要とされるものであり、過去を継承するOJTは必ずしも有効ではない。上司・部下が共同しての新たな価値の創造に向けて、新しい能力等を開発・共有していく中で人材を育成するというOJTが必要になる。今日は、OJTの考え方や概念を大きく転換することが不可欠であり、そのための意識改革や教育が重要になってきている。OJT革新である。

コラム33      人間関係の悪楯環 −プラス志向で良循環にー
 コミュニケーションにおいては、「開放性は開放性を刺激し、信頼は信頼を剌激する。閉鎖は閉鎖を刺激し、敵意は敵意を刺激する」といわれる。相手が自分を嫌がっていたり、馬鹿にしているのに、自分は相手が好きだとか尊敬しているという場合は少ない。自分も相手が嫌になるのが普通であろう。逆に相手が自分のことを好ましく思ってくれていることが分かると、決していやな気がしない。人間関係は相互作用なのである。そのため、人間関係は往々にして悪循環が生じる。

 〇リーダーがコマゴマ言う→面白くないので突っかかる→リーダーも態度が厳しくなり、更にコマゴマと言  う→ますます面白くない一→人間関係の破局
 〇リーダーが情報を下さない→面白くないので報告・相談をしない→リーダーが報・連・相をするよう叱る  →形式だけの報・連・相→メンバーへの不信を募らせる→感情的  対立が深まる→リーダーがメンバー  をないがしろにする一→人間関係の破局
 集団主義は人間関係やチームワークを重視する。しかし、集団主義は減点主義を内包しているため、相手の弱点に視点を置きがちである。欠点指摘の相互作用(けんかを売るようなもの)が生じやすい。
 悪循環に入ったと感じるときには、早期に悪循環を切る努力が必要である。一般に「歴史と相手を変えることはできない」という。しかし自分を変えることはできるし、未来を創ることもできる。自分が変われば、相手が変わる可能性がある。自分から関係改善の努力を行えば、相手もそれに呼応しやすい。そのためには、自分から相手の土俵に入っていくこと、相手の言い分に良いところは必ずあるはずなのでそこを受け入れていくこと、相手の忠告を受け入れ誠実に実行することなどである。むやみに謝ったり妥協することでは、真の人間関係は遠い。
 そして、そもそも人間関係の悪循環を防ぐには、プラス志向の視点に立つことである。自分や相手の長所を見る習慣をつけるのである。長所を見れば、相手に敬意を抱く。そうすれば相手も自分に良い関心を持つようになることが期待できる。そうすれば人間関係を良循環にすることも可能であろう。プラス志向は、良い人間関係や接遇の原点である

 

 コラム 32         OJTの推進策
 OJTの推進は、組織の盛衰を決する重要な政策であるが、実態は各管理者の自由意思にゆだねるレベルから全組織的にシステム的展開するレベルまで、組織によって大きな幅がある。現場力の向上や人材育成の推進は全組織的展開が望ましいことは言うまでもない。
 推進策には次のようなレベルがあり、それぞれの組織の規模、おかれた状況、業種、経営の意思や教育に対する考え方などにより、推進レベルを決定していくことになろう。
・管理者の自由意思にゆだねるレベルーOJTに関して組織として何らの方策もとらず、管理者に任せっ放しにする。大企業ではあまり見られないが、中小企業では少なくない。管理者は自らの職責を果たすために、独自に部下の指導を行う。
・管理者教育のレベルーOJTの推進を重視し、十分な時間をかけてマネジメントやOJTに関する研修を実施して、管理者のOJT能力を向上する。ただし、職場での実践は管理者の熱意や能力に一任する。
・ツ−ルを整備するレベルーOJT研修の実施だけではなく、OJTに関するマニュアルやフォーマットを作成して、全組織的に管理者に効果的な実践を促す。
・人事評価において部下育成の実績を評価するレベルー将来展望下における組織の望ましい人材像(将来ビジョン)や職種毎に目標とする人材像を設定する。現任教育においては、業種や階層に応じたコンピテンシー(高業績者の行動特性)を確定して目標を設定する。更に、人事評価において、現在あるいは将来像に向けての部下育成の実績を評価する。

・目標管理と連動するレベルー目標による管理を推進し、併せて能力開発目標とその実現策を設定(内容、レベル、方法、時期)する。評価の上司・部下協議制、勤務評定への連動を図る。
・OJT計画書を活用するレベルーOJT計画書などのツールを活用して全組織的に展開する。能力開発の自己申告・協議制、プロセス管理、人事評価への連動を図る。目標管理との連動させることが多い。

 コラム31     経験の効用と弱点 −経験と知識の止揚総合―
 同じことを何度も繰り返すと習熟して技能は向上する。頭の中でいろいろ考えるより、思い切って実践してみると案外うまくできることもある。“習うより慣れろ”“百聞は一見にしかず”である。経験して初めて知識の真の意味が理解できるということが少なくないように、経験から学ぶことは数限りない。また、未経験の課題への遭遇は、その打開のために情報を収集し、プロの意見を聞き、熟考することなど、自らの能力を総合することにより解決策を決定し実践していく場となる。仕事の経験の場は最良の能力開発の場であり、仕事が人を育てるといわれるゆえんである。

りわけ、困難な課題や創造的な課題へのチャレンジは、深い考察や活発な活動を促すため、潜在能力を開花させるとともに能力の急速な向上につながることが多い。一皮向けたとか、一回り大きくなったというような状況が生まれることが少なくないのである。また、自主的に新しいアイデアや商品開発、事業創造などは自己実現そのものの過程であり、自己能力全開の形でチャレンジすることになる。その成功は大きな自信の獲得につながり、さらなる成長を招く。

組織内外での共働によるプロジェクトの推進は、創意工夫や知恵を出し合っての暗黙知の創造となるため、新たな知の形成としての重要な場でもある。経験の場は自己啓発の最適の場でもあり、両者が一体となって、効果的な能力開発や態度変容をもたらすのである。
 経験により体得した知識、技術、ノウハウは、教育や学習によって得た知識と比較するとはるかに実践的であり、特に成功体験は自信や信念を形成し、人格形成に大きな役割を果たす。とりわけ、現場での問題解決は、組織独自の内部特殊能力の獲得や暗黙知の創造をもたらすなど、組織人としての成長にとって不可欠な場なのである。

 しかし、自分一人の経験から得た現場的認識は、多くの人々が研究、確立した法則に比べると普遍妥当性の面で劣ることは言うまでもない。試行錯誤的経験により知識、能力を獲得するだけでなく、形式知である普遍性のある論理や体系的知識・技術を習得し、それとの交流による現場での工夫がより合理的な成長を招く。今日のような変革時代には経験知の陳腐化が著しい、経験に頼りすぎるのは、時代遅れになりかねない危険性をはらむ。 

コラム30          部下育成の目標と方法
               −OJTからOJDへの転換―

 部下育成は管理者の重要な仕事である。部下育成の目標には、大別して現在の職務遂行能力の向上と将来へ向けての育成がある。部下の現任の能力が向上しなければ、管理者としての実績が確保できないし、長期視点での育成がおろそかになれば、組織の将来の活力が危うくなる。
 職務遂行能力の向上は、仕事の定着や業績の確保、更なる改善・改良のためなど、仕事に直接必要な能力の向上であり、主として管理者や組織が蓄積してきた知識、技術、ノウハウ等の継承である。またそのために必要な価値観や思考様式、行動様式等の指導である。
 この種の指導は、率先垂範と教えることが基本になる。教え方の真髄は、山本五十六元帥の“やつてみせ、いって聞かせてさせてみて、ほめてやらねば人は動かじ”にある。これは人を動かす基本であるが、教え方の基本でもある。ただし、この種の指導には、上司が部下より優れていること、教え方が上手であること、また変革時代には古いタイプを育てる危険性あることなどへの留意が必要である。

 将来へ向けての育成には、資質の向上と将来的能力の開発がある。資質の向上は、考察力、大局観、フレキシビリティ、チャレンジ精神、倫理観などの向上である。この種の向上は教えることが困難であり、仕事の経験、チャレンジ、成功体験、そして成長の実感などを通じて、自分で開花させることが必要であり、長期的視点で行うべきものである。 将来的能力の開発は、将来のスペシャリストやマネージャーを目指して、更には変革時代を展望して将来必要になるであろう能力等を開発していくものである。スペシャリストやマネージャーに必要な能力は上司による指導がかなり有効であるが、彼らに必要な能力等も時代に応じて変化していくし、変革対応力は上司にとっても新たな開発につながるものが多い。したがって、教えるというよりも部下とともに学ぶという性質が強い。
 これらの能力についても、部下自身が自分でつかみとり、向上させることが重要であり、部下育成のためにはそのための環境や機会づくりが重要な方法になる。その真髄は、権限委譲と成功体験、機会作り、環境作りにある。そこではOJTon-the-job training)からOCD(on-the-chance development)への概念の転換が必要になる。

コラム29     ポジティブ・シンキングのすすめ
             ―職場の活力の創造ー

 職場や居酒屋で、次のような会話を耳にすることはないだろうか。「彼はいつもいいアイデアを出すね」「でも自分勝手でみんな困ってるよ」「彼女の気配りは抜群だね」「でも上司にゴマをすってるといううわさだよ」良い点を素直に認めることは少ない。ほとんどの場合、「しかし、・・だ」といって欠点を指摘する。新規の困難な提案をすると、それが良いとわかっていても「リスクが大きすぎる」「時期尚早だ」「部長が賛成するはずがない」など、山のような反論が返ってくる。
 相手の短所を見て否定したり、提案の欠点をあげつらうのは、減点主義のはびこる職場で生じる。そしてわが国の職場は、多かれ少なかれ減点主義の風土である。良いことは当たり前で、失敗を厳しくとがめ、突出することを嫌う。集団主義的な環境の下では、集団の規範に反するものは、たとえそれが優れているものであっても「出る杭は打たれる」のである。集団主義は減点主義を内包している。減点主義は、長年の間に形成されてきた日本の文化でもある。職場であれ、社会であれ、相手の欠点やできない理由を見出すプロに満ち溢れているといっても差し支えない。

 ものの見方や考え方を180度切り替えて、相手のプラス面を探し、困難なことはどのようにすればできるかという方向で考えてみよう。これは加点主義の立場であり、ポジティブ・シンキングという。自分の長所を探し、更に伸ばしていこうではないか。そうすると、やがては個性が発現し、ユニークなアイデアも生まれやすい。夢やビジョンを追求しようとする気概も生まれる。積極ミスを許容するようにしようではないか。チャレンジ精神が刺激され、前向きの態度が涵養され、職場に活力が生まれてくる。
 人間関係は相互作用である。誰かが自分に好意を持っていると聞けば、誰でも相手にプラスの関心を持つ。ポジティブ・シンキングは人間関係の好循環を招く。お互いが長所を見るようにすれば、人間関係は明るく建設的なものとなり、職場はますます活気づく。また、自分の弱点を隠しすぎることなく、オープンマインドで接するようにも心がけてみようではないか。本音レベルのコミュニケーションが可能になろう。 

コラム28       エンパワーメント
               −権限委譲は人材育成の真髄―

 エンパワーメント(empowerment)は権限委譲の意味であるが、単に権限委譲するだけではなく、役割・使命感の重要性の指導、アドバイスや根回しなど目標の達成に向けての支援、障害の除去、勇気づけ(励まし)、能力開発など、部下を成功に導くために総合的パワーを付与する意味にとらえられる。管理者が行うエンパワーメントは、部下を動機づける重要な方策の一つであり、人材育成の真髄とも言える。権限委譲の効用には、次のようなものがある。
 ・高度な仕事を任されることになるので、チャレンジ意欲が刺激される。
 
・上司に認められた実感は自己有能感を抱かせ、また上司との人間関係や組織への愛着心、忠誠心が高まる
 ・自分で決めて実行することになるので創意、工夫する余地が広がり、自己決定感が高まって自主的な行動  が触発され、結果に責任をもつようになる。
 権限委譲を効果的に進めるためには、様々な留意が必要である。第1は、目標の背景を説明するとともに内容、範囲、責任の程度等について十分理解させること。第2は、頑張れば達成可能なレベルの仕事を任せることである。第3は、任せたからには細々と介入せず、努力を見守ることが大切である。第4は、成功に導いて達成感を持たせることである。そのために、適切なアドバイスや支援を行う。ただし、自分でやり遂げたとの実感を削ぐ支援は逆効果になる。第5は、実行責任を感じさせるようにする。最終責任は権限を委譲した管理者の責任であるが、甘やかすことなく、実行責任をとらせるのである。そして第6は、高度な仕事へのチャレンジとなるので、加点評価が望ましいことである。エンパワーメントによって部下を動機づけるためには、上記に加えて、役割・使命感の重要性の指導、君ならできるというアプローチ(ピグマリオン効果)などで、励ましや自己有能感と責任感を持たせ、自信を持って取り組ませる。また、周囲や上司に対する根回しをしたり、経費、時期、方法などに伴う障害を緩和するように側面的支援を行う。そしてなんといっても、日常的指導や研修派遣、OJTなどにより、必要な能力の開発・向上の支援及び長期的視点に立ってのキャリア形成支援を行うことなどである

 

 コラム27         企業家精神
 ドラッカーによると、企業家とは変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する者であり、また生産性が低く成果の乏しい分野から、生産性が高く成果の大きな分野へ資源を動かす者であるという。ここにはリスクがあり成功が保証されているわけではない。しかし多少なりとも成功すれば、その成功はいかなるリスクをも相殺して余りあるほど大きい。したがって企業家の仕事は、資源利用の最適化(効率化)よりもはるかにリスクが小さいという。そして、企業家の責務とは創造的破壊であるとしている。(ドラッカ−『イノベーションと企業家精神』ダイヤモンド社)
企業家には、新たな業を興す起業家型(独立起業家、社内起業家)、現存の企業を変革していく革新型があり、後者はイノベーションを推進して企業変革を実現するタイプである。また、技術のレベルを革新する技術革新型も起業家に分類される。
 そして、企業家精神とは、性格の問題ではなく行動様式すなわち実践につながる問題であり、そこには変化を健全かつ当然のこととみる見方、また、すでに経験ずみのことをより良く行うことよりも、新しい事を行う事に社会的な価値を見出だすという経済と社会にかかわる原理を有している。
 以上のように見ると、企業家精神はビジョン創造志向、イノベーション志向、リスクチャレンジの気概及びプラス志向、心理的タフさなどの要素から構成されていよう。ビジョン創造志向は、ロマン、夢、志、熱い思いなどを有し、社会的価値の創造、利潤の追及、名声・名誉・権威の獲得などを目指す。イノベーション志向は、現状に妥協しない精神、創造的破壊の気概などであり、リスクチャレンジの気概は、進取の精神、チャレンジの気概、失敗を恐れない精神などである。目標に向けての意欲的行動、物事を前向きに捉えるマインド、不屈の精神、敗者復活の気概、失敗からの学習、粘り強い行動力などがキーワードとなろう。

 企業と行政は、その意義やよって立つ基盤が異なるが、企業における新たな価値創造は言うまでもなく、変革に新たな公共の価値の創造が期待される行政官にも、この企業家精神が求められているといえよう


 コラム26        
参加型講義
            
−絶対に眠らせない―

 研修講師には外部の専門家を招へいする場合と社内講師を活用する場合がある。社内講師は、一般には経験豊かで業績の高い者が選ばれるが、彼らは講義や指導の専門家ではない。当初は相当苦労することになる。
 なかには、往々にして“私は適任者ではないが指名されたからやむを得ず”などと言い訳をする者がいるが、研修員からすればやや期待外れの感を覚える者もいよう。指名されたからといいっても研修講師になれば、そこは真剣勝負の場である。研修は組織にとっては将来への投資であり、今受講している研修は受講者にとっては数少ない機会である。彼らの期待に十分こたえなくてはならない。
 選ばれて講師になったからには、どのような事情があろうとプロ意識を持ってきちんと実績を示したいものである。ただし、研修の内容や特性によっては、先輩としてともに学ぶという態度も必要な場合もある。
 受講者や組織のニーズに合うのが最も良い内容であるが、受講者の理解を深め、問題意識を持って仕事へと活かしていくようにするためには、受講者がいかに研修に真剣にとり組むかが問題である。そのため、単に講義をするだけではなく、彼らの心に届き、それぞれの解決策や努力の方向を見いだして問題意識を持って仕事につなげるように動機づけることが必要である。
 その方法の一つに講義と討議を組み合わせた参加型講義がある。学校方式の机配置であれば、奇数列が後ろを向き4〜6人程度のグループを速成する。問題を提起し、5~10分程度議論してそれぞれの結論を出させ、いくつかのグループに簡単に報告させる。講師はそれぞれについて簡単にコメントするとともに次の講義で革新を明らかにしていく。これを適宜繰り返すのである。
 受講者は次の講義への関心を高めざるを得ない。討議で自分の考えを表明し、更に自分で考えたことが他の受講者との関係でどのような位置づけにあるか、他のグループの考えはどうか、そして講師はそれをいかに評価し、どのような方向を示唆してくれるかなどの問題意識を持つからである。受講者を講義に参加させ、決して眠らせないのである。


 コラム25        研修のアウトソ−シング 

 最近、研修をアウトソ−シングする自治体が増えている。研修は、従来から外部講師の委嘱や既成の研修コースを活用するなど、アウトソ−シングが盛んであったが、研修の企画、運営など、業務のすべてを外注する傾向が強まっている。経費節減が最大の動機である。研修の全面的アウトソーシングには二つのパターンがある。一つは能力開発部門を分社して子会社としそこに委託するという方法で、企業ではこのパターンが一般的である。
 自治体においても同様の傾向があり、研修部門を独立させて法人化したり、広域市町村が事務組合を設立するなどである。この場合は、子会社の幹部は行政部門からの出向者であるため、大きな問題は生じない。
 しかし、自治体が進めている研修機関への全面的アウトソーシングには、次のような大きな問題が潜在しており、最近その兆候も見え始めている。
 ・研修業務の中核を委託すれば、行政機関に研修の専門家が育たなくなること

 ・幹部育成などは、行政運営と一体で行われるものであり、行政が必要とする人材と外  部の研修機関が  企画する人材像との間にそごが生じやすいこと
 ・企業出身の講師が中心となれば、行政の本筋を外したり、企業と行政の微妙なニューアンスの差を見落と  しかねないこと
 ・少数の大規模研修機関が多くの自治体の研修を受託すると、全国一律になりかねず、地域における行政ニ  ーズの特性への配慮に欠ける恐れがあること
 ・そして、最終的には研修機関が内容・経費の主導権を握りかねないこと
 委託当初は、委託の意味や人材育成の本旨を熟知した専門の担当者が、十分気を配って研修を企画するためにさほどの問題は生じないが、時間が経ち、担当者の代が変わるようになれば、研修機関に主導権を握られ、行政推進上最も重要な人材の育成への危惧が生じかねないのである。そのため、企業は人材開発の戦略部門は本社の中枢に置いているところが多い。経費節減、スリム化、効率化は重要であるが、決して本筋を誤らないようにしなければならない。

 
コラム24           研修と職場の連携 

 研修は職員の能力向上を図り、もって業績の向上を図ることを目的としている。したがって、第1には研修によっていかに能力が向上したかが問われ、第2にはそのことによっていかに業績が向上したかが問題となる。しかしながら、従来の多くの研修は、研修直後の能力の向上度を測定(効果測定)はするが、業績の向上への寄与度への関心は低いのが現状である。能力が向上すれば、当然業績が向上するという論理からであろうが、現実には“研修は元の木阿弥”に陥ることも少なくなく、必ずしも直接的に業務向上に反映されているとはいえない。
 そのため、研修効果をより確実にするためには、研修ニーズに対応した効果的な研修を実施することは言うまでもないが、研修と職場との緊密な連携策が欠かせない。研修のPDCAを研修内部にとどめず、業績向上を含めた展開とすることが必要になる。すなわち、
 Plan――組織のビジョンや戦略、職場・職員の現状や課題を反映させた研修ニーズを把握し、研修内容やカ     リキュラムを策定する。
 Do―――研修所において研修を効果的に実施する。
 Check―研修時の効果測定や職場での業績向上への寄与度を把握する。
 ActionCheckの結果によりフォローアップの実施や次期の研修の改善・改革、職場との連携策等に反映さ      せる。
 研修と職場の連携には、研修前と研修後の取り組みが必要である。研修前の事前学習や動機づけは、研修効果を格段に高めることが期待される。本人の自主的学習が重要であるが、それを刺激し支援する上司の指導、事前課題研究、質問事項の提出、また研修参加への心構えや事前準備を表明するシートの作成などである。
研修後の仕事やOJT、自己啓発への連携は、業績向上や研修を契機とするその後の能力開発に大きく寄与することが期待される。復命書の提出に併せて、今後の仕事や自己啓発への取り組みについての決意表明の提出、効果測定結果の上司へのフィードバック、これらをもとにした上司の指導(OJT)の推進、一定期間後の成果の把握などである。

 ラム23    アクション・ラーニング  
              −研修と事業の一体化―
 アクション・ラーニング(action learning)は、研修と現実の問題解決を一体化させたものである。米国では一般化している研修方法であり、最近わが国でも急速に関心が高まってきている。
 研修は能力開発や情報・問題意識の共有などを中心とするが、アクション・ラーニングは研修の中で現在抱えている問題を解決をしたり、業務を創造して戦略を決定し、現場での実践や組織開発をねらいとする。研修のための研修を廃し、業務(action)と研修(学習:learning)の一体化を徹底させたものである。経営や行政環境が激しく変革する状況下にあって、現在およびこれからの課題をジャスト・イン・タイムで取り扱おうとするものであり、変革のスピードが格段に大きくなっている今日の重要な研修方法でもある。
 かつて注目されていた職場ぐるみ研修はまさにこの方法のひとつであり、意思決定に当たる幹部がともに参加して問題解決を図るものであった。アクション・ラーニングは、幹部の参加による意思決定を伴うことが重要かつ効果的であり、その議論を通じて意思決定の高度化や共有化が図られることにより、戦略の共有はもちろんコミュニケーションや信頼関係の向上が期待される。業務の成果へと着実につなげていくためにも、積極的に導入を検討すべき方法であろう。
 OJTが能力開発と業務を一体化して展開するが、アクション・ラーニングはその規模を拡大して研修と業務の一体化を図るものともいえる。事業や仕事をより的確に展開するためには、教育と事業の一体化が効果的であって、その展開の中で事業の効果的展開と人材育成が行われる。本来、人材育成は事業と一体という側面を有しており、両者は不可分の関係にある。
 もとより、アクション・ラーニングにもさまざまな対応があり、組織レベル、チームレベル、そして個人レベルにおいて工夫することが可能であり、各組織の状況に応じた対応が望まれる。現場の部門や個人が抱えている様々な課題を持ち寄って研究し、研修員が相互に知恵を出し合ってお互いの問題の解決を図る研修はその第一歩といえよう。

 
コラム22    研修スタッフのメリット
             −1度は経験したい職務 ―
 研修担当者は、間接部門のスタッフ職であり、本来の経営や行政的手ごたえを得にくい職務である。したがって、研修担当者への配属を心良しとしない者も少なくないが、研修担当者は決して損な役回りばかりではない。気持ちの持ち方、仕事のやり方によって面白くもあるし、長い目でみるとメリットの多い仕事でもあり、1度は経験したい職務である。
 その第1は勉強ができることである。研修は社員に勉強させることであり、担当者はそれ以上に勉強しなければ務まらない。組織にはいろいろなポストがあるが、自分の机で堂々と勉強できるところはあまり多くはない。この特権を利用して大いに自己啓発に励むことができる。 
 第2は各界の識者とのつながりができることである。各界の講師と知り合いになれるのは担当者の特権である。外部から招へいする講師はおおむね名の通った人であるし、多方面の専門分野にわたっている。人のつながりはかけがえのない財産となる。著名な人との接触は求めてもなかなか得られるものではない。 
 第3は多くの職員と親しくなれることである。研修の参加者である職員と顔見知りになれることは大きな財産となる。我が国も建前は組織で仕事をするということになっているが、実質は相当部分が人中心で動いている。多くの人とのつながりをもつことは、組織内での力の獲得にほかならない。
 第4は幹部と親しくなれることである。研修には組織の幹部を訓示や講師として招くことが多い。依頼や打ち合わせ、研修当日、懇談会等と直接話す磯会が多い。この場合、仕事上のラインの上下関係ではないので、リラックスした付き合いとなる。幹部との関係を持てることは、その後の貴重な財産となる。
 第5は間接的に経営に参加できることである。新ビジョン・戦略から発生する研修ニーズについては、研修計画の策定の際に幹部の意見を拝聴することになるが、タタキ台は当然担当者が作成する。経営の将来を洞察して、部長、課長には今後この分野の能力が求められるようになるであろうとか、今の中堅にはこのような能力が不足しているというように、自分の信念を盛り込むことが可能である。これはまさに経営への参加である


コラム21               大局観 

 困難な状況への対応に当たっては、大局的視点に立って本質を把握していかなければ、短期的視点や部分最適に陥ってしまう可能性が高い。大局的視点は、大局に立った価値判断のベースであり、経営幹部や行政に携わる者の必須の要件である。とりわけ、将来を展望しての政策形成や事業創造、問題解決にとっては不可欠である。
 大局的視点とは、物事の全体のなりゆきや全体状況を把握し、その立場から見ることであり、大局に立つことによって物事の本質がより良く把握することができるようになる。そのためには、組織を越える幅広い視野に立った視点、長期的視点、全体最適視点が必要である。
 組織を超える幅広い視野を獲得するためには、外部情報、とりわけ異質情報を無視しない。専門外や外国にまで視野を広げての各種情報へのアプローチが重要であり、著書、新聞、テレビ、雑誌、専門誌、インターネットなどはその情報源である。また統計的トレンドや過去の情報、現場の生情報、更には外部人脈とりわけ一流の人との意見交換、議論が効果的である。
 長期的視点は過去に学び将来を読む視点であり、将来を洞察してそこから現在を見るみかたである。歴史から成功・失敗などの数々の教訓を学び、トレンド情報、将来動向についての予測・論評を知ることが必要である。将来を予測し、将来ビジョンを創造し、上位ビジョンとの整合を考え、これらについての幅広い議論を展開するのである。
 全体最適視点を得るためには、顧客や国民・住民の立場に立ってのマクロな考察が必要であり、上司との議論や組織のトップ、顧客、国民・住民の立場に立って考えること、外部の者との議論、外部ニーズを知ることなどが必要である。 
 大局的視点に、世界観、歴史観、宗教観、倫理観、価値観などの物事の真理のみかたが加わったものを大局観という。その向上のためには、世界の様々な価値基準や評価の視点を学習し、自らの価値観を築くことが必要である。世界の見て歩きやさまざまな体験、外国人を含め各界の者との交流・議論、教養を高めて高度な人格・人間性を築くこと、そしてどのような問題であれ深く考察し、自己の意見・見解をもつ努力が必要である。経営幹部や行政官等の育成において、大局観の涵養は必須の要件である。

 コラム20              プロの要件 
                 
−顧客の依頼を確実に達成−
 プロフェッショナル(professional)とは、そもそもは欧州に端を発し、外部汎用性のある医者、法律家、聖職者などの高度な専門的職業(プロフェッション)に従事する専門職業集団をさす。社会的に高い尊敬を受け、専門力と倫理を確立し、公益への奉仕を重視する。法的な認定や資格を有し、ある意味で排他的な権限を持つ専門家集団であった。今日でも医者や弁護士、会計士などにその伝統が見受けられる。
 しかし、今日のわが国で一般的にプロとよばれるのは、アマチュアに対比する存在であろう。仕事が良くできて自分で稼げる人材、市場価値の高い人材などであり、高度な専門能力を有し、レベルの高い仕事を確実に達成するスペシャリストである。彼らは顧客の依頼を確実に達成する故に尊敬される存在である。その意味で、プロ野球の選手であっても真にプロと呼ばれるのは、高い実績を誇る人たちに限られよう。例は良くないかもしれないが、劇画のゴルゴ13は暗殺を引き受けるスナイパーであるが、どのようなことがあっても顧客の依頼を貫徹する凄腕の裏の世界のプロである
 行政のプロとはどのような存在であろうか。一般には、高度な専門力を有し、公益の実現を第一義とし、優れた倫理観を持って確実に成果を達成して国民・住民の信頼を得る人材であるといえよう。
 行政や企業などの組織内でも、優秀な人材はブロといわれる。彼らに求められる要件としては、@何らかの核となる高度な専門力を有すること、また他の領域にもある程度の理解ができる幅の広さを有すること、A明確なビジョン・目標や使命感を持つこと、B自らをマネジメントすること、すなわち自分を知り責任をもって自己管理することであり、自己啓発と改革を怠らないこと、C戦略思考を有し戦略行動ができること、Dコミュニケーション力が優れていること、プレゼンテーションやディベ−ト(debate:議論)ができ、外部人脈を含めて豊かな人間関係を有すること、Eその分野のトップを目指す気概を有していること、Fきちんとした成果を確保し、顧客の依頼を期限までに確実に達成すること、G顧客の秘密を厳守すること、などであろう。

 コラム19         教育の本質
             
 ―方向づけ、動機づけ、
援助―
 教育といえば、学校教育や研修を想起する。教育者(教える側)がいて生徒(教わる側)がいる。教え・覚える、解説し・理解するのが教育である。しかし、これは狭義の意味での教育であり、真の教育の本質はさらに奥深く、より広義である。 
「そもそも教育は、人間の成長と発達を助成する作用であり、人間の精神的、身体的に内在している素質を十分に成長するように助け、その方向を正しく導き、人間としてあるべき資格としての人格にまで発達するよう援助する働きである。そして、人間の成長と発達とは、人間の内部的要因である素質と、その人をとりまく環境、言い換えれば先天的な要因と出生後の経験との止揚総合の結果であり、また素質は可塑的性質であるから、人間の精神的発達の方向と内容は、環境との関係により無限に変化する可能性を有している。ここに人間の形成作用としての教育の可能性と教育の必要性の根拠がある」としている(工藤泰正『教育原理概説』協同出版)。
 教え・覚えることが教育ではなく、人間の成長を助成する作用であるとしている。すなわち、望ましい人格へと方向づけし、その実現へ向けて動機づけし、その過程を援助するのが教育であり、成長の主体はあくまで本人の自己啓発にあるとする。 
 組織による人材開発は、組織目的の達成に寄与するという枠の中ではあるが、教育と同様、能力や態度の向上を図るものである。教育が人間の成長と発達を助成する作用であるとすれば、人材育成も職員の能力の開発を助成する作用である。 
 すなわち、能力の開発の基本は各人の主体的努力にあり、仕事の目標や戦略は必要とされる能力の方向づけに作用し、現場での仕事の実践は能力に関する問題意識の喚起や新たな能力開発への方向づけ効果を有し、現場的問題解決の訓練・習熟効果をも併せ持つ。そして、研修やOJTは能力開発の直接的援助作用である。
 むりやり教え込もうとするのは必ずしも適切な方法とはいえず、いかにして進んで能力開発を行うように動機づけるかが人材育成の課題となる。このように考えると、人材育成を促進させるのは本人の意思による自己啓発が主体であり、仕事(経験)、マネジメント、研修・OJTなどは、動機づけや援助作用としての位置づけにある。

  コラム18          暗黙知の創造
             ―価値創造と部下育成の源泉―
 知には暗黙知と形式知がある。形式知は一般化、標準化された知であり、マニュアル、仕様書、解説書、教科書など、誰にでもわかるように文書や映像で表現され、教育・学習ができる知である。学校や研修などで教育されるのはこの形式知である。
 一方、暗黙知はまだ混とんとしてきちんと表現できない知であり、ノウハウとかコツといわれる知である。経験的な体得や自分自身の有する感覚知であり、容易に他者に移転することはできない。陶磁器の名人は、ろくろを回していとも簡単に壺や皿を仕上げる。その様を見たり説明を聞いたとしても、容易にまねができるものではない。長年の訓練の積み重ね中で微妙なコツを体得していくほかはない。深い考察の繰り返しの中で閃いた知もまた暗黙知の典型である。
 仕事や組織活動は、形式知だけでうまくできるものではない。もしそうであれば教育や学習で得た知を生かした活動は、人によって大きな差は生じない。事実、経営教育を受けただけで優れた経営者が育成されるわけではない。様々な経験の中で体得した自分なりの知が、他人とは異なる経営手腕や経営のうまさを醸し出す。 知の創造は暗黙知の創造から始まる。経験からの知恵の獲得や深い考察による新たな発見、知の結合によるひらめきなど、他人に容易に説明できないレベルの知であり、暗黙知を理解・共有できるのは経験の共有者や仕事の協働者である。このような知を分析・検証し、どこでも活用できるような理論や技術に仕上げれば、形式知への昇華となる。形式知化すれば、他の人々との共有化を図ることができ、組織レベルの知の創造と共有が図られる。
 
実務の現場では、刻々と発生する課題をいかに解決していくかが問われる。一般には、一人で対応するより、チームで取り組むほうが解決につながりやすい。3人寄れば文殊の知恵である。現場で一生懸命に取り組み、知恵を出し合い、議論し工夫して、解決のヒントを見いだす。この過程が暗黙知創造の現場である。その結果は他社が容易に模倣できるものではなく、コア・コンピタンス(競争優位の中核的能力)の源泉となる。そして、上司・部下共同の知の創造は、新たな時代の部下育成の最適の現場でもある。

 コラム17         キャリア・デザイン
              
pushpull-upの交流―

 いま、キャリアについての関心が高い。大学にキャリア・デザイン学部が創設されて久しいし、キャリア・コンサルティング技能士の国家検定制度も新設された。企業も行政もキャリア教育が花盛りである。その主要な原因は、@企業での終身雇用が揺らぎリストラが一般化してきたこと、A成果主義が導入されて激しい競争にさらされるようになったこと、B豊かになったことにより自我・自己実現欲求が高まり、自分らしい生き方を志向するようになってきたこと、C転職への抵抗感が薄らいだことから、優秀な社員の転職を防止したいこと、D就職難対策やニート・フリーターに対する対策が必要になってきたことなど、実に多様である。
 従来の終身雇用制のもとでは、企業忠誠心を持って一生懸命に努力すれば、生涯にわたって会社が面倒を見てくれた。このような時代はすでに終焉し、自分自身でキャリアを形成していかなければならなくなったのである。人生や職業生活の節目に、自分の適性や強み・弱みを分析し、一方でなりたい自分像を構想して、その実現に向けてキャリアを設計し、実現策を構築していくのである。キャリア・デザインは将来の自分設計であり、多かれ少なかれ誰もが考えている。しかし、多くの人の意識は年功時代の延長にあり、漠然と“何とかなるだろう”程度にしか考えていないのではないか。
 キャリア・デザインは自分を棚おろししての本音ベースでの将来設計から始まる。まず、自己の強み・弱み、これまでの行動や実績、危機に際してどのような行動をとったか、自己開発のためにどのような努力をしてきたかなどの経緯を分析し、自己をきちんと認識する。実はこれが難問なのである。一般に、人は自分を2割方甘く見てしまうなど、自分のことを客観的にみるのは非常に苦手である。次いで、現状を基礎に将来を設計し、実現のための道筋を描いて自己啓発にはげむようにする(積み上げ型:push) 
 一方で、将来のなりたい夢や願望をもとに将来の自己ビジョンを描き現状からの実現戦略を策定し、段階的目標を設定して夢の実現に向けての方策を考える(ビジョン・戦略型:pull-up)。積み上げ型とビジョン・戦略型の交流を図りつつ、可能な限りなりたい自分像に近づくシナリオを描いていくようにするのである

コラム16         一皮むける−修羅場の経験が人を育てる
 コツコツ勉強すれば能力は着実に向上する。しかし人の成長はコツコツ成長ばかりではない。過去を振り返ってみれば、誰でもあのとき大きく成長したと感じるときが必ずある。
 
そのときの状況を思い起こしてみよう。
 ・困難にチャレンジしたとき、外国勤務をしたとき、出向したとき、昇任したとき
 ・何か大きなことをやり遂げたとき、修羅場を乗り越えたとき
・・・・・・・・・・・飛躍的成長の多くは、壁への突き当たり、危機への遭遇、修羅場、未知の状況など、チャレンジや苦しみながら必死に努力したときが圧倒的に多い。失敗して挫折することもあろう。しかし、苦労して乗り越えた時には、大きな達成感を得る。そのプロセスを楽しく感じる人もいるが、多くは不安や苦労の連続である。その渦中に成長を実感することはほとんどない。何年か経って振り返ってみれば、あの時大きく成長したとの実感を得る。他人から見れば、あの人は「一皮むけた」と感じられるのである。
 
人生は平穏ばかりではない。多かれ少なかれ危機やチャンスに遭遇する。大きなチャンスや危機とは、自分の対応力を超えた課題への遭遇である。どのように対応すべきかに戸惑い、行き詰まりを感じる。寝る間も惜しんで必死の努力をし、勉強し、人に相談し、工夫し、試行錯誤する。その過程は極めて密度の濃い学習の連続である。そして乗り切って成功したときは、充実感と“私もなかなかやるもんだ”とのそこはかとない自信を感じる。
 チャンスや危機への遭遇は、本人にとっては人生の節目(トランジション、転機)となる。この節目に意欲的に取り組むか逃げるかでその後の成長や人生は大きく異なってくる。

 
管理者のOJTに際しては、部下の能力や意欲などの成熟のレベルに配慮しつつ、権限委譲や修羅場の体験、異質体験、新たな事業や商品の開発など、意図的に困難な課題に対処する機会を提供することが、部下の飛躍的成長に不可欠と言えるのである

 コラム15      根回しの効用と弱点
         
−根回しができて1人前―今は昔?−
 根回しは組織人にとっての必須能力である。問題解決にあたって、あらかじめ関係各方面を説得して事前合意を取り付けておき、正規の意思決定の場では特に問題もなく、円滑に関係者全員の賛同を得る。かつての国会の場での形式的な議論での採決や、株主総会で全員が賛成するいわゆるシャンシャン総会など、事前合意形成は和を重視する日本的意思決定の深奥であった。
 根回しの本質は“分かち合う”ことにある。プラス状況のときにはパイ(利益)を分かち合い、マイナス状況のときには痛みを分かち合う。“うちもこれだけ我慢するから、あんたのところも辛抱してくれ”“しょうがないね”との合意である。痛みの分かち合いは、一律削減政策であり、資源配分率は不変である。したがって、その政策の基本方向は変化することなく、従来の延長線上にある。

 ところが、今日のような変革時代には、改革や革新が不可欠なように、過去の延長線上から離れた選択と集中を伴う戦略的対応の政策が必要になる。資源を厚く配分するところと、廃止・縮小するところが出てくる。ここでは分かち合うことはできず、自ずと争いになる。
 このような状況で、従来型の事前合意を形成する根回しを行えばどうなるであろうか。間違いなくケンカになろう。マイナスとなる分野は、正規の意思決定に向けて猛烈な反対運動を展開しよう。反対分野の勢力が強ければ、廃案になるどころか発案部門がつぶされてしまいかねない。結局、混乱を避けて前例踏襲や問題の先送りとなってしまう。その結果、変革対応に遅れをとり、企業は経営が悪化し、政治・行政では国や地方が疲弊する。
 改革を行うには、従前型の根回しでは対応できない。将来ビジョンの価値により納得を得る創造的調整や、力による正面対決を避けるために根気良く説得して賛同者を増やしたり、各界のエネルギーを編集して味方を増やすなどの戦略的調整が必要になる。かつての中曽根首相は臨調を前面に出し、小泉首相は国民を味方につけた。財政状況の悪化により、政権が交代したにもかかわらず、どうやらまた予算の各省一律削減の方向が取りざたされている。ビジョンにより優先順位をつけることの困難性を物語るものであろう。

 コラム14       管理者からリーダーへ
          
−いま公務管理者に求められるミドル像ー
 企業ではかなり以前から“管理者はいらない、必要なのはリーダーである”と言われてきている。組織におけるミドルが不要というわけではない。従来型の管理者では、今日の企業の課題に対応できないというのである。そして、従来型をイメージする課長や部長のネーミングを廃し、シニアリーダーとか、ゼネラルマネージャーなどのカタカナ表示に転換した企業も多い。
 なぜ管理者が不要なのか。そしてなぜリーダーを必要とするのか。その背景は、企業を取り巻く経営環境が大きくかつ急速に変革し始めたからである。従来の日本の管理者のイメージは、与えられた課題を効果的、効率的に解決していくというものであった。ところが変革時代にあっては、従来の延長線上の改善・改良だけでは対応できず、変革に対応しての新たな価値(製品、サービス)の創造が不可欠となる。
 従来は改善・改良による高度化、すなわち品質の向上や効率化の推進を行動原理としてきた。ところが、新たな価値の創造のためには、従来の枠を超えての創造や新たなビジョン・目標を実現する戦略力が必要になる。将来を展望して環境状況の変化を予測・洞察して、新たな価値を有するビジョンを創造し実現を図るというリーダー的ミドルの重要性が高まってきたのである。
 従来型の管理者のイメージとリーダーを比較すると、概略次のようになろう。
      管理者               リーダー
 ・決められた課題を効果的に解決    ・状況に対応した適切な目標を設定して実現
 ・方法(how)重視            ・目標の内容(what)、理由(why)重視
 ・現状の改善、効率化         ・ビジョン創造、改革、戦略的実現
 ・部下のコントロール         ・メンバーとのコミットメント(強い約束)
   外発的動機付け、指示、命令        内発的動機付け、メンバーとのコラボ
 ・部下の指導             ・部下のエンパワーメント
   教示、率先垂範など          権限委譲、障害の除去、能力開発など
 
いま、公務管理者に必要とされるているのは、まさにこのリーダー型の管理者であろう。

 コラム13         研修は元の黙阿弥
          
−強力な経営構造の復元力―
 公務員が犯罪や倫理的不祥事を引き起こせば、国民・住民から厳しく批判される。当人やその管理者を懲戒し、綱紀粛正に努めるとともに公務員倫理研修を実施して再発防止を誓うというのが一般的なパターンである。ところが、1〜2年もするとまた新たな不祥事が発生する。研修スタッフ間では、このような例を取り上げては“実施した研修は効果があるものだったのか”“研修は元の黙阿弥ではないか”などと自戒し、自分達の無力さをはかなむ。しかし、この種の問題は、研修内容の善し悪しや教育的効果うんぬんを超えたより根深い問題に起因する。
 組織は設立の目的を達成するために、経営理念、経営ビジョンを掲げ、その達成のために戦略を策定し、組織化、制度化を図ってマネジメントを展開していく。そして、政策や事業遂行のために必要な人材を獲得して教育を行う。これらの各要素は相互に関連しつつ構造化され、その結果として独特の風土(組織文化)が醸成される。この経営構造は、各要素が強固に関係し合っているため、一部を修正しても構造の復元力によって元に戻されてしまう。通達や研修によって職員に働きかけても、組織・制度、マネジメント、風土などがそのままであっては、教育の効果は構造に押し戻されてやがて喪失してしまうのである。意識改革に係る教育は、それが風土に沿わないものであれば、現場に受け入れられるはずがない。真に是正するためには、経営構造そのものの改善・改革を図らなければならない。その一環として行う教育であれば、絶大な効果を発揮しよう。 
 研修担当者に対する研修において、この種の解説をすることが多いが、今の課長補佐年代の人の多くは“元の木阿弥”の言葉そのものを知らない。“研修は元の木阿弥”はかつての研修担当者の共通言語であったのだが。
 故事ことわざ&四字熟語辞典によると、元の木阿弥には語源についての異説が多いが、その中の一説を引用しよう。「大和郡山の城主筒井順昭が病死した際、その子順慶がまだ幼かったので、順昭の死が敵に知られると困るので、遺言によって順昭に声の良く似た黙阿弥を替え玉として使い、薄暗い寝所で順昭が寝ているように見せかけて人目を欺き、順慶が成人して順昭の死が公表されたとたん、替え玉の黙阿弥は元の自分に戻った」とされる。

コラム12   (つかさ)、司が汗をかく −部分最適の総合は全体最適?− 

 かつての古き良き時代には、意思決定に際して“熟柿の落ちるがごとく”と謳われた。関係者がじっくりと議論すれば、やがては落ち着くべき所に落ち着くことを言い表したものである。竹下元首相は、総理就任時に“司(つかさ)、司に汗をかいてもらう”旨の発言をした。各省庁がそれぞれの職責に応じて一所懸命に仕事をすれば、日本全体がよくなるとの趣旨である。筆者は当時の竹下首相の感覚に異を唱えた思いがある。当時は、すでにわが国を取り巻く様々な環境の変革期にあったからであり、行政改革や規制緩和・撤廃の必要性が議論され始めた時代であった。
 組織はその目的達成のために必要な事業を展開する。大組織になればなるほど、それぞれの事業推進に向けて組織が細分化される。各セクション(司)が高い成果を確保すれば、組織全体として大きな成果が得られるように組織化するのである。部分最適の総合が全体最適となるのが、組織論の基本である。しかしながら、経営や行政の環境が変革している時代にはどうであろうか。環境変革は、社会や人々の求める価値の質を変化させる。かつての国土開発の推進より今や自然環境の保全が重視され、人口増時代のイケイケドンドンから今や人口縮小時代の政策が不可欠となった。新たな価値を創造し、必要性が低下した価値を縮小・廃止していかなければならない。創造的破壊が避けて通れない時代である。
 組織目的の方向や質が変化しているのである。そうなれば新たな目標を達成するための組織化が必要になる。行政改革や組織改革である。それにもかかわらず、従来型の組織構造のままで司、司が汗をかけば、従来型の価値を実現していくことになり、時代の要請にそぐわない結果を生じる。変革時代には、部分最適の総合は全体最適にならないという結果を招くのである。
 時代の変化や国民・社会の要請の変化に応じて目指すべきビジョンや目標を修正することが必要であり、新たなビジョンや目標を実現するためには、組織構造を変革していかなければならない。そうでなければ、司、司に位置する人たちが、最善の努力をしても結果はマイナスを生み出すこととなりかねない。そのため、意思決定に際して熟柿の落ちるまで待つことはできない。柿の青い時代に、変革をリードする強力なリーダーが必要となる。 

ラム11 カリキュラム編成の原則 

 研修の成果を左右する大きな要因の一つが、研修カリキュラム(教育課程)の是非である。カリキュラムは、教育の理念、方針、目的、指導法等を具体化し、教育の内容と手順を時間割として明示するものである。その編成は研修担当者の腕の見せ所でもある。
 カリキュラム編成にはそれなりの考え方や留意が求められ、次の5原則への配慮が必要である。
 @ 相補性(complementarity)の原則:カリキュラム編成には、教育目的による科目中心の編成と研修員のニーズによる研修員中心の方法がある。また学習には、指導者が教える方法(teaching)と研修員を動機づけて自発的に学びとらせる方法(coaching)がある。このように、研修も考え方や方法によって様々に主張が対立することがある。これを相対立する関係ととらえるのではなく、相補う関係とみて相互の立場の長所を生かしていく。
 A レディネス(readiness)要請の原則:学習には、基礎を習得しなければ高度な内容は理解できない、基本的な概念・法則を理解すれば応用的なものを理解しやすくなるなど、学習するにはそれなりの前提や準備段階が必要である。新任管理者にいきなり高度なマネジメント教育をしても理解されにくいように、発達・成熟度段階のレベルに合わせてその教科の構造を示すことが効果的な教育につながる。B 教育的変換の原則:教育方法には、講義、討議、ケーススタディ、実習など様々な方法がある。科目を必ずしもその基本的構造のまま教育するだけではなく、研修員の成熟度、思考方法、興味・関心に沿って最も理解されやすいように教育的変換を行う。
 C 価値統合の原則:組織が要請する人材像と個人の目指す将来像とは往々にして齟齬が生じる。そのため、カリキュラム編成に当たっては、研修による成長が組織要請の方向であると同時に、それが個人の自己実現を目指すものとして充実感を伴うような工夫や動機づけをすることにより組織と個人の調和を図る。
 D 法律準拠の原則:いうまでもないことであるが、勤務時間との関係、健康安全や私生活・プライバシーの配慮、また内容や方法において政治的信条・宗教の自由、不当労働行為の禁止などへの配慮である。

コラム10   チャンスの引き寄せ −キャリア形成の80%は偶然の機会― 

何事にも努力している人は魅力的である。困難にチャレンジして乗り越えていく人には、多かれ少なかれ輝きがある。人や仕事は輝いている人に寄ってくる。上司の覚えも良くなり、友人や仕事・勉強仲間も増える。そうなれば、より重要な仕事を任されることもあれば、さまざまな協力も得られやすい。外部に積極的に出て、勉強会や交流会に参加すれば、外部との幅広い関係も構築される。多くの組織内外の人脈が形成されることになる。良い人脈の価値は計り知れない。困ったときには救いの手が差し伸べられることもあるし、困難な問題の解決の協力も得られる。人脈はパワーそのものである。
 学生時代あるいは就職当初に描いた通りのキャリアを形成していけることは、極めてまれであろう。失敗をして挫折したり、競争に劣後したり、体調を崩すこともあり得る。とりわけ今日は変革の時代である。グローバルなレベルでの景気の変動や国家、企業の盛衰、経営・行政環境の変革など、様々なレベルでの変革が急である。組織のトップを目指していても倒産や吸収・合併に見舞われかねない。リストラも一般化してきた。変革時代にはいたるところに転機がある。
 クランボルツは、キャリア形成の80%は偶然の機会によるとしている。重要なことは、様々に遭遇する機会が自分にとって好ましいものであるかどうかをとらえる目をもつことだ。常に将来を見据えつつ、それぞれの時点でのキャリア形成にチャレンジし、自己啓発や仕事、人間関係の中で努力していれば、偶然に遭遇した機会が自分にとって有益かどうかが判断できる。漫然と仕事をしていたのでは、チャンスをチャンスととらえる目が育たない。結果として、大きなチャンスを逃しかねない。
 また、熱心な仕事への取り組み、資格の取得や外部勉強会への参加などは、新たな機会の発見や獲得の場でもあり、チャンスを創造する場でもある。とりわけ外部人脈との交流のなかで、有益な情報を獲得し、新たな問題意識が喚起され、チャレンジの場を発見し、さらなる高みへと昇るよう動機づけられもする。チャンスの引き寄せである。漫然としていては、目の前のチャンスをとらえることができず、チャンスを引き寄せることもできない。

コラム9  夢とビジョン −高度な創造力と戦略力を磨こう―
 かつて、ある国の首相が熱い思いで理想を語ったが、その多くは実現しないままに終わってしまったという例がある。一国の首相の思いがなぜ実現しなかったのであろうか。その背景には様々なパワーのせめぎあいがあったのであろうが、原因の一つは、実現の道筋が描けていなかったからであろう。夢は自由奔放に描けるものであって、共感、共有も可能である。しかし実現策が伴わなければ、単なる夢に終わってしまう。頭髪の薄い人は、振りかければたちどころに毛が生えてくる薬を夢見る。しかし現実にはそのような特効薬は開発されてはいない。夢と現実とのかい離である。
 
国家ビジョンや経営ビジョン、地域の将来ビジョン、そして個人のビジョンなどは、それぞれの望ましい将来像であるが、実現策が伴わなければ単なる夢にすぎない。関係者全員が共有できる政策や事業とはなり得ず、予算化や実現のための組織化もできない。しかし、夢に確かな実現策が描ければ、夢は手の届く将来像となる。ビジョン(将来像)には、その価値とともに実現策が不可欠なのである。
 
ビジョンは、今日のような変革時代の経営や行政の進む方向を示す羅針盤の役割を果たす。また、関係者の意思統一を図り、目指すべき価値とその実現策を共有する原動力となる。ではビジョンはどうやって形成されるのであろうか、かつてから語り継がれてきたものもあれば、リーダーの構想もあるし、みんなで議論して構築していくものもあろう。しかし、その最初の出所は個人の熱い思いにある。“このままではいけない”などの危機感や“こうすべきである”などの使命感、そして“こうしたい”“ああなりたい”の夢、志、熱い思いなどに発する。
 優れたビジョンを描くための契機には、現状把握や将来展望からくる将来への熱い思いが必要であり、大きな志や高い理想を必要とする。そしてそのエンジンとなるのは危機感と夢や理想を形作る想像力である。更に夢や理想の実現策を構築する能力が必要であり、これを戦略力という。多くの人が実現は無理だと思うような構想を“こうすればできるではないか”とその実現シナリオを構築し遂行できる人を戦略家という。変革時代の将来を担うために、優れた想像力と戦略力を磨こうではないか。

コラム8  創造のレベル−いま問われる革新的創造性―
 創造とは新規の価値の創出であり、その対象は知識、概念、物、サービス、システム、モデル、イメージ、映像等あらゆる分野に及ぶ。組織活動においては,ビジョン創造,政策形成、事業・商品開発,システム革新、研究開発など、組織活性化や競争力創出に直結している。創造には、改善・改良的創造、革新的創造、前人未到の独創の3つのレベルがある。
 改善・改良的創造は、より高い価値を求めて改善していくものであり、合理化,効率の向上,品質・サービスの向上などである。この種の創造は従来のバラダイムの枠内での創造であり、従来の知識、技術、ノウハウを生かしての活動である。環境のバラダイムが不変のときは、改善・改良創造が競争優位を確保する。日本はこの分野を得意としてきた。 前人未到の独創はノーベル賞級の成果につながり得るものであり、経営上の圧倒的優位を形成する要因となる可能性が高い。日本において前人未到の独創が脆弱なのは、ノーベル賞受賞者が最も多い米国と比較すると、独創性触発の環境面に@異文化交流が少ないことA集団主義が強くユニークな発想が排斥されること、B減点主義の風土であるためリスクを避ける傾向にあること、C学校教育等において個性尊重の教育や“なぜ”を追及する教育に欠けていること、などの弱点があるからだと考えられる。
 革新的創造は、前人未到の独創と改善・改良的創造の中間に位置するものであって、前人未到ではないが組織や個人にとっては独創的という種類のものである。組織の枠や業界のレベルを超えた創造であり、異質に触発される創造の多くはここに属する。
 
環境の変革に対応しての新たな価値の創造、横並びを廃しての独自のアイデンティティの形成、従来とは異なるコンセプトの政策や事業・商品開発などの多くは、この範疇であるといえよう。困難のブレークスルーや変化の先取もこの範疇のものが多い。今日の我が国においては、いかにして革新的創造性を高めるかが重要な課題となっている。

コラム7 三位一体のOJT −教育の原点の再確認をー 

 かつての日本的経営は、終身雇用、年功序列などの人事システムを基本に、改善・改良を基本的行動原理として大きな成功を収めた。終身雇用、年功序列は、学卒者の一括採用、組織内教育を前提とする。終身雇用は職員間の長期的関係を形成させ、年功序列は先輩による後輩指導のシステム化を促す。その組織内教育の中核がOJTであった。
 
人の成長は、経験、教育、自己啓発によって促進される。経験は、実践による習熟、成功による自信の獲得、失敗による問題意識の喚起、そして成果を目指しての創意工夫など、非常に高い学習効果を有する。上司や先輩による指導を中心とする教育は、仕事の現場で見せる、教える、評価するなど、望ましい方向へ向けての効果的な学習を促進させ、やる気を喚起し、成長期間を短縮させる。自己啓発は、本人の主体的意志によって成長を目指して努力する行為であり、まさに成長の原点である。
 研修は教育、自己啓発を主体とする活動であり、経営理念、ビジョン・戦略、組織、制度などの経営構造、とりわけ人事システムのインフラは、成長へ向けての方向づけや動機づけ効果を有する。ところがOJTは、全組織的に上司・先輩が仕事や人間関係を通じて部下・後輩を指導する活動であり、経験、教育、自己啓発が三位一体として同時に行われる極めて優れた教育の場である。また同時に、職場ぐるみで創意工夫し、新たな知識を創造する現場でもある。OJTは、まさに日本的経営を支えた隠れた原動力であった。
 そのOJTが今や大きな転機を迎えている。経営・行政環境の変革により、従来の経験によって構築してきた知識・技術・ノウハウ等の陳腐化が進み、新たな能力等を創造していかなければならなくなったこと、職員数の減少により忙しくなりすぎてOJTが希薄化したこと、非正規職員の増大により能力等の継承が弱体化したこと、そしてフラット化などによりマネジメント能力が低下したことなどによる。経営・行政改革は、人事改革を不可避とするが、日本的強みを失うことのないように十分留意していきたいものである。 

 コラム6  2:6:2の法則−6をより優れた戦力に―

 研修担当者の悩みの一つが、研修内容の難易度すなわちどの程度のレベルの内容にするかである。研修が役に立ったかどうかのアンケート調査結果において、役に立たなかったとする回答をフォローすると、ニーズに合わない、内容がつまらない、講師が何を言っているか分からなかった等々のほかに、難しくて理解できなかった、既に知っている内容だったなど、難易度に関するもの少なくない。
 
研修ニーズや研修員のレベルが揃っている場合は問題がないが、一般には階層別研修や専門研修などはレベルの異なる者が混在していよう。このような場合、研修内容のレベルをどこに合わせるかが課題となる。研修員をレベル別にそろえて実施するのが理想であるが、実際はそうもいかない。そこで、10人の研修員がいるとすれば、上位34番目の者のレベルにするのが最良ではないかと考える。根拠は2:6:2の法則である。
 某昆虫学者が蟻の働きぶりを調査した結果、非常に効果的に働いているのは2割であり、6割はそこそこの働き、2割は全く働いていないという。蜂についても同様の結果だという。人に当てはめるのはいかがかとも思うが、経験即にはかなり合致する。上位2割方はいわゆる自己啓発人であり、常に優れた成果を上げる。研修も必要ではないかもしれない。下位の2割は仕事ができず、むしろ存在自体が弊害という者さえいる。中間の6割は上手に動機づけすれば頑張って成果を上げる。そこで、研修では6割に着目し、やや高い目標を設定して彼らを教育し、動機づけていくことが望ましいと考えられるのである。 昆虫学者の研究には続きがある。上位の2割を排除すると残りが2:62になり、下位の2割を排除するとやはり残りが262になるという。組織において、優秀な者が抜けるとそれに続く者が、自分が頑張らなければという気概から猛烈に頑張るようになるし、ダメな者を排除すると、そのすぐ上の者が自分達が最下位であると幻滅を感じてやる気を失うであろうことは、経験則的に十分納得できる

 コラム5 自己啓発サイクル自己啓発人の育成に向けてー 

  人の成長を促進させるのは、経験、教育、自己啓発である。経験も問題意識を持って 取り組まなければ高い成長効果は期待できない。また、教育は望ましい人材へ向けての 方向づけ、その方向に向かって努力するように動機づけ、そしてそのプロセスを支援す るという自己学習(啓発)を援助する作用である。成長の基本はあくまで自己啓習にあ る。
  
自己啓発に励めばその到達レベルや速度には個人差があるとしても、能力は向上する 。能力が向上すれば自己有能感が高まる。当然業績が向上して高い評価を受ける。そこ では達成欲求や承認欲求が満たされて満足感が高まることになる。またより重要な仕事 が与えられることになり、やり甲斐は更に増大する。責任感も高まってこよう。上司や 周囲の期待にも応えようとして、より一層大きな自己実現を目指して自己啓発に励む。 その結果、更に能力が向上して業績が上がるという成長のスパイラル的サイクルが完成 する。
 
 このサイクルの中には、仕事をやり遂げたという達成感、能力向上の自己実現感、評 価されたという承認の欲求の充足など、多くの基本的欲求が満たされるプロセスがある。まさしく仕事の中に働きがい、生きがいを見出だした状態となる。
  
一度このようなサイクルが完成すると、外部目標による動機づけに加えて強い内発的 動機が生じるため、自己啓発が継続される。常に自分で自分を高めようとする自己啓発 人への昇華である。
  
自己啓発人となるのは第一義的には本人の努力であり、自らの生き方やキャリア形成 に対する強い関心である。そして、組織として自己啓発人育成に大きな役割を果たすの は、現場の上司のマネジメントである。能力の評価,仕事の与え方、成功へと導く指導 、業績の評価、そして仕事や学習への動機づけである。リーダーシップやOJTが重要で あるゆえんである。
 

 コラム 研修スタッフ5つの役割 −人材育成は重要な経営戦略の一翼― 
 
 組織は、ビジョン・目標の実現を目指して資源を管理する。“管理は戦略に従う”ので ある。し かし、新たな戦略を策定しても遂行できる人材がいなければ、戦略は絵に描い た餅に過ぎない 。“戦略は人材に従わざるを得ない”ことになる。したがって優れた戦略 の展開に当たっては、  いかにして優れた人材を確保するかが重要な課題となる。人材確 保の方策は多彩であるが、最 も基本となるのは組織が自ら行う人材育成である。
  人材育成は組織の総合力でなされる。経営理念、ビジョン・戦略、組織構造、制度、 マネジメ ントなど経営構造のすべてが関係する。とりわけ大きな影響を及ぼすのが、人 事システムと教育 (研修・OJT)である。研修スタッフは、これらのうちの教育システ ムとりわけ研修を効果的に行う ことを使命と考えてきた。経営環境の変化が少なく、従 来の延長線上での改善・改良で成果を  あげ得た時代はそれでよかった。当時の研修スタ ッフの役割は、ニーズ把握、研修企画、研修 運営、研修の研究・開発、そして必要に応 じた指導が主要な5つの役割であった。
  しかし、今日は変革時代である。経営は戦略化され、求める人材像も変化している。 このよう  な状況下においては、研修の効果的な実施によって組織活力が高まり、優れた 経営を展開で きるとは限らない。従来はいかにして(how)研修効果を高めるかであっ たが、今日はどのような (what)研修を行うか、それはなぜ(why)なのかの問いに 答えられなければならない。経営者的 感覚をもっての経営戦略との整合、人材面からの 組織総点検や長期的視点での人材育成の方 向の提言、そして効果的な研修の展開などが 欠かせないのである。
  いかに優れた公務員倫理研修を行っても、組織風土が非倫理的であれば、“研修は元 の黙 阿弥”となる。組織構造への働きかけも不可欠である。また教育の効果は直ちに現れ るものば  かりではない。“教育なくして人材なし”の信念の共有も欠かせない。
  これからの時代の研修スタッフの5つの役割は、人材面での組織総点検、経営・人事へ の提 言、研修のマネジメント、研修の研究・開発、そして教育のPRである。

 
 
コラム3  3人寄れば文殊の知恵? ―グループシンクの病理を超えられるか― 

 文殊とは知恵を司る文殊菩薩のことであり、凡人でも3人集まって相談すれば、何か 良い知恵が浮かぶものだという先人の教えである。一人で考えてもよい知恵が浮かばな いときは、周囲の人との相談や職場会議を行うことによって打開されることが多いのは 事実である。しかし、子どもが何人集まっても高度な専門的課題の解決策は浮かばない ように、必ずしもすべてにわたって機能するものでもない。
  組織内での会議で心しておかないといけないことが2つある。第1は、組織の風土を 超える知恵の創造である。風土は組織構成員が共有している価値観、思考様式、行動様 式である。価値観や思考様式が共有されていると、以心伝心、阿吽の呼吸のコミュニケ ーションが可能であり、効率化には非常に有効である。しかし、同質の者がいくら集ま っても風土を超える革新的な創造は期待できない。
  第2はグループシンクの病理を超えられるかである。集団の凝集力が強い場合や外部 と隔絶している場合などは、自己の正当化や外部圧力からの擁護、マイナス情報の遮断 などが生じやすい。自分たちは正しいはずだという錯誤である。これが、かつて揶揄さ れた“霞が関の常識は世間の非常識”現象を引き起こす。
  第1の危険を回避するためには、個人的レベルで異質の意見に耳を傾けることが重要 である。日本の多くの組織は、終身雇用や集団主義の伝統を色濃く残しているため、意 図的に外部の人の意見を聞くことや自由奔放な発想を容認する努力が必要である。 
  第2の危険の回避のためには、組織的・システム的レベルの手当てが必要である。情 報の開示はもとより、外部人材の導入や異質意見・批判、チェックを受け入れる仕組み の整備である。今日にあってもなお、ぎりぎりまでマイナス情報を秘匿し、抜き差しな らない状況に陥ったり、内部告発によって暴露されて経営の危機を招くケースが後を絶 たない。マイナス状況は早めにオープンにして手を打てば、傷は浅くて済む。とりわけ、公権力を有し内部完結性の強い公共部門の組織は、心しておくことが必要であろう。



コラム2   戦略マネジメント −新たな価値の創造に向けてー 
  
公務におけるマネジメントは、plan,do,seeのマネジメント・サイクルで示されるよ うに、計画によるマネジメントが中心である。計画通り実行して成果を上げ、マネジメ ント・サイクルで学習したことを次の計画に反映させて、マネジメントの質を高めてい く。一方、企業はplan,do,check,actionのサイクルで展開される。目標達成に問題が生 じれば、実施方法を改善し、必要であれば計画そのものを修正する。目標達成のために 、プロセスの評価をフィードバックしてマネジメントをコントロールする目標(結果) によるマネジメントである。
  かなり以前から、公務のマネジメントもフィードバック・コントロールを働かせて、 状況によっては政策や事業を修正し、場合によっては停止すべきとの批判が高まってき ていた。しかしながら今日では、公務や企業経営の環境の変革が激しくなってきたこと により、状況は更に変化してきている。
  景気が右肩上がりの時代の政策は、景気が停滞している状況では負の資産を蓄積して しまう。開発優先の政策は自然環境の保護が重視される時代にはそぐわないし、インタ ーネット時代には、情報閉鎖的な組織や政策は意味をなさない。環境の変革は社会や人 々の求める価値の質の変化をもたらす。そこでは、公務も企業も従来の延長線上に解を 見いだすことはできない。新たな価値を創造するビジョン型の政策や経営が必要になる 。そうなれば、マネジメント・サイクルで学習したことを次の計画に活用するのではな く、新たなビジョン・目標の構想や新たな実現策を構築していかなければならない。戦 略マネジメントの展開である。
  今日の管理者やリーダーには、わが国には不慣れな(未発達の)戦略マネジメントが強 く要請されているのである。幸いにして、(財)公務人材開発協会では、公共部門の管 理者を対象とする「変革時代の実践マネジメント(戦略マネジメント)」の研修コース を開発し、今年度から普及を図ることにしている



コラム1             人材育成の再創造
                 ―企業は人なりへの回帰を目指して―
 いま日本の高品質神話が崩壊寸前である。安全軽視や不良品による事故が頻発し、リコールも多発している。その保障や信用回復のために莫大な経費を余儀なくされている。また、コンプライアンス問題による経営破たんや経営者が並んで頭を下げているシーンのなんと多いことか。一体何が起こっているのか
 バブル経済崩壊後、日本企業は大胆な経営改革を展開してきた。その中心の一つが人事改革である。人員削減、非正規社員比率の増大、成果主義の導入、中途採用の増大、アウトソーシングの拡大、組織のフラット化、そして人材育成経費の削減である。これらの多くは人件費削減を念頭に置いたものである。生き残り策としてやむを得ない措置であったかもしれないが、経営危機にまで至らない優良企業も右にならえとばかり実行してきた。
 高品質の維持には現場力が不可欠である。現場力は、従業員が組織に誇りを持ち、仕事に愛着を抱いて勤勉に働き、創意工夫しつつ隅々までチェックしていくところから生まれる。行き過ぎた人事改革により人的余裕を喪失し、OJTの弱体化などによる技術やノウハウの継承に支障が生じ、リストラの恐怖は組織に対する誇りや仕事への愛着をも失ないかねない。人を大切にするところからくる日本企業の真の強みを崩しつつあるのではないか
 「不況期にも人的資源の能力を維持し、その生産性を向上させ続ける会社は必ずや大きな成長の機会に出会う。」(P.F.ドラッカー「実践する経営者」)ドラッカーに指摘されるまでもなく、これこそが日本企業の真髄ではなかったか。“企業は人なり”を再認識し、OJTを活性化させての現場力の向上、ワークシェアリングの導入などによる長期安定雇用の実現や非正規社員比率の低下、そして何よりも長期的視点での人材育成を再創造していきたいものである。わずかではあるが、企業にはその兆しが見える。しかしいま、公務組織は財政の悪化という重荷を背負い、研修費が大きく削減されつつある。企業のたどった負の轍にはまり込みつつあるのではないかと危惧される。

 













 コラム45 風通しの良い職場
 コラム44 忙しいときほどOJTのチャンス
 コラム43 ライフステージとキャリア
 コラム42 チャレンジの奨励
 コラム41 キャリア形成支援
 コラム40 異質交流と情報発信人
 コラム39 提案の奨励
 コラム38 オープンマインド
 コラム37 部下の成熟度に応じた指導・育
 コラム36 カウンセリング・マインド
 コラム35 参画の効用と限界

 コラム34 OJT革新
 コラム33 人間関係の悪循環
 コラム32 OJTの推進策
 コラム31 経験の高揚と弱点
 コラム30 部下育成の目標と方法
 コラム29 ポジティブ・
        シンキングのすすめ
 コラム28 エンパワーメント

 コラム27 企業家精神
 コラム26 参加型講義
 コラム25 研修のアウトソーシング
 コラム24 研修と職場の連携
 コラム23 アクション・ラーニング
 コラム22 研修スタッフのメリッ
 コラム21 大局観
 コラム20 プロの要件
 コラム19 脅威育の本質
 コラム18 暗黙知の創造
 コラム17 キャリア・デザイン
 コラム16 一皮むける
 コラム15 根回しの効用と弱点
 コラム14 管理者からリーダーへ
 コラム13 研修は元の木阿弥
 コラム12 司司が汗をかく
 コラム11 カリキュラム編成の原則
 コラム10 チャンスの引き寄せ
 コラム9  夢とビジョン
 コラム8  創造のレベ

 コラム7  三位一体のOJT
 コラム6  2:6:2の法則
 コラム5  自己啓発サイクル
 コラム4  研修スタッフ5つの役割
  コラム3
  3人寄れば文殊の知恵?
 コラム2  戦略マネジメント
 
コラム1  人材育成の再創造