ベクトルの誕生

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【3要素の四元数】


ハミルトンのそもそもの動機は「3次元の空間を目盛る数はないのだろうか?」ということであり、

考えていくうちに、1つの実数単位と3つの虚数単位を用いた「四元数」に至りました。

3次元を表現するのだから、要素が3つである方が望ましいのですが、

a + bi + cj + dk に対して、d = 0 とすると「三元数」であり、これはダメでした。

では、a = 0 にすると、どうでしょうか?

@「共役四元数との積が、絶対値の2乗になる」

A「四元数の積も、やはり四元数」

これら2つの性質をチェックしていきましょう!



実部が 0 である四元数 xi + yj + zk に対する共役四元数は - xi - yj - xk です。これらの積は、



となり、@が成り立ちます。次に、Aを確認します。

実部が 0 である2つの四元数 xi + yj + zk と pi + qj + rk の積が四元数になるかどうか?



となり、四元数ですから、Aも成り立ちます。

これらのことより、実部が 0 である四元数が“空間を目盛るための数”として使えることが分かりました。



【ベクトルの誕生】


実部が 0 である四元数 xi + yj + zk の平方は



であり、これは四元数の絶対値の2乗である「 x2 + y2 + z2 」に近い形をしています。

前についている負号がなければ一致するのですが、この負号をなくすには、どうすれば良いでしょうか?



元々、( xi + yj + zk )2 = x2ii + y2jj + z2kk であり、

i も j も k も2乗すると -1 になるから、負号が出たわけです。

ということは、i も j も k も2乗すると 1 にすれば良いのでは?・・・という発想。

(ただし、ij = -ji = k、jk = -kj = i、ki = -ik = j は踏襲します。)

すると、平方したものが絶対値の2乗と一致します。

このような経緯から誕生したのがベクトルです。

ここでの i、j、k は、2乗したときに -1 になることを放棄していますから、

もはや、xi + yj + zk は四元数ではありません。

すなわち、3次元空間を目盛る“1つの数”ではありません。

3次元空間を3つの成分( xi と yj と zk )の和として表現しているのです。



【ベクトルの積】


実部が 0 である2つの四元数



の積について見ていきましょう!



最後の式で、最初の項は、同じ要素どうしの積になっています。

“家の内のものどうしの積”であり、これを「内積」と言います。

一方、後ろ3つの項は、異なる要素どうしの積になっています。

“家の外のものどうしの積”であり、これを「外積」と言います。



この考え方を、ベクトルの積についても踏襲すると、2つのベクトル



の積は、



となります。このうち、



が「ベクトルの内積」で、



が「ベクトルの外積」です。外積はベクトルなので「ベクトル積」とも言います。



さて、ようやく、ベクトルを用いて三角形の面積を用いる準備が整いました。・・・次回に続く。


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