名古屋地区の雑誌などに書いた散文をご紹介

くらはし かん散文集

   今後、随時追加していく予定です。


悩める少年少女諸君!君たちは自分のかかえる悩みが、とてつもなく巨
大なもののように考えてはいないか!そんな君たちに、あえて私が宣言
しよう。『悩みはピーマンだ!!』悩みというものは、一人で抱え込ん
でいるうちにドンドン大きくなって押しつぶされそうになってしまうが
中を割ってみれば空っぽで、小さなタネが入っているピーマンのような
ものだ。悩みの元は、ちっぽけなタネにすぎないのだ。さあ、君たちも
自分のピーマンをカチ割って、悩みのタネを吐き出そうではないか! 
 

 

(ピプパポ1990年9月号より。なおイラストは今回新たに描きました。)

 

阪神ファンのジレンマ

Q1 今まで誰にも話したことはないのですが、思い切ってお話しします。実は僕は、阪神ファンなのです。バースと掛布と岡田が打ちまくって優勝した時にファンになって、それ以来阪神ひとすじです。
 しかし、今の阪神の弱さはいったい何なんだ!   毎年のようにゴタゴタしているし、もうチーム自体がムチャクチャで、応援している方がもう情けなくなってしまいます。野球シーズン中は友だちの野球の話にも入れないし、プロ野球ニュースを見るのも苦痛以外の何ものでもありません。こんなつらい想いをするぐらいなら、いっそ阪神ファンを止めてしまおうかと考えることもあります。僕はこの先どこの球団を応援すればいいのでしょうか?
            

(日進町・悲しき阪神ファン)

 

A1 残念ながら、あなたは本当の阪神ファンではないようです。優勝の年にファンになったということですが、そんな軽薄さでは阪神ファンの真の快楽を味わうことはできません。
 阪神ファンの真の快楽とは何か。それは、今日も負け、明日も負けという踏まれ続ける悦びにあります。毎日毎日の負け試合、チーム内の不協和音、目まぐるしい監督の交替劇、暗躍する球団上層部。これらのグチャグチャとした湿った光の当たらない闇の中で、身体中をグルグルにしばられ、ムチで叩かれ、ハイヒールで踏まれるというマゾヒズムの世界。これが真の阪神ファンの快楽なのです。あの優勝の年ほど、真の阪神ファンにとってつまらない年はなかったといいます。
 あなたも勝ちゲームを期待するのなら球団を変えたほうが賢明でしょう。
 

 

箱入り娘の自立

Q2 私は高3の女の子です。来年の春、高校を卒業したら、絶対の東京へ出て行こうと心に決めているのですが、一人娘なので、親の大反対にあって困っています。もうどんなに頼んでも「ダメ!」の一点張りで、どうしようもありません。
 こうなったら、家出してでも東京へ行こうと思います。向こうでアルバイトしながら、ミュージシャンを目指すつもりです。でも両親の悲しむ姿を考えると、決心がにぶりそうです。やはり私は、両親の元に残った方がいいのでしょうか?             

(守山区・フェンダーGIRL)

 

 

A2 これは何か、悩み相談の詰め合わせセットのようでに複雑で、一見、解決は困難に思えます。しかしこんな時は要点を整理して見ると、意外に簡単に答えが見つかります。要点は、
1. 東京へ行きたいけど親が反対している。
2. 一人娘である。
3. ミュージシャンになるつもりだ。
4. 親が心配である。
 ほら、もう解答が見えてきましたね。そうです、あなたは御両親とバンドを組めばいいのです。これなら御両親もあなたも、お互いに心配し合うこともないし、メンバーを探す手間も省けます。お母さんのドラムに、お父さんのベース。フェンダーGIRLのあなたは、もちろんギターですね。これで東京へ一家そろって押し出せば、全国的話題とまではならないまでも、御近所の話題になるのは間違いないでしょう。
 

 

名古屋弁との葛藤

Q3 僕は2年前に大阪から名古屋に転校してきました。そして生まれて初めて名古屋弁を聞いて、すごく驚くとともに、そのあまりのキタナサにショックをうけました。特に語尾の「でしょー」とか「◯◯っとるがや」とかを聞くと、腹が立ってきます。だから今でもあまり友だちがいないのです。郷に入れば郷に従えとは言いますが、僕にはとてもこの名古屋弁がガマンできません。僕はいったいどうやってこの名古屋で生きていけばいいのでしょう!?
                         

(天白区・通天閣小僧)

 

A3 2年も住んどって、おみゃーさん、なに言っとりゃーす。いや確かに名古屋弁は、ちょっと聞くとキタニャーかもしれん。ほんだけど、それを大阪人に言われたら、そらちょっと名古屋の人間かて怒るでえ。
 まぁ、この悩みは時が解決してくれます。ふと気づくと「オレ名古屋弁しゃべっとるがや」ということになります。かといって無理に名古屋弁を使う必要もありません。大阪弁は、あなたのアイデンティティーの一部でしょうし、他のアイデンティティーと、ぶつかり合うところから新しい文化は生まれるのです。あなたの中の「大阪」が健在なうちに、せいぜい名古屋とぶつかり合って、あなた独自のアイデンティティーを成長させて下さい。今はその貴重な時期なのですがや。

 

 

甘味の誘惑

Q4 僕はとにかく甘い物が大好きなんです。チョコレートや大福もちやパフェやあんみつなど、ありとあらゆる甘い物が好きでたまりません。
 ところが先日、彼女と喫茶店に入ってチョコレートパフェを注文しておいしそうに食べていたところ、彼女が「喫茶店でパフェを食べるなんて男らしくないワ」と文句を言うのです。それまでは「甘い物が好きだなんてカワイイ!」と言っていたのに、急にそんなことを言い出したのでビックリです。僕には彼女の本当の気持ちがさっぱり分かりません。それに、やっぱり甘い物を好きな男は男らしくないのでしょうか?

(名東区 チョコレートパフェ)

 

A4 女性の感情は、なかなかデリケートで、高校生の君には理解できないかもしれませんが、私のように経験を重ねてくると、こんなものはパンツの中のポコチンの位置のように、手に取るように分かります。考えられる原因は次の3つです。
1. 彼女は虫歯である。
  甘い物に敵意を抱くというのは、虫歯が痛くて、甘い物を食べたくても食べられないという彼女の逆うらみです。
2. たまたま彼女はブルーデーだった。
  バカバカしいけど、これは結構あります。こんなときはマトモに相手にならず、彼女のイライラを黙って受け止めるのが男です。
3. 君は嫌われている。
  相手を嫌いになると、やることなすこと全て嫌いになります。どうやら君の場合、この可能性が一番高そうな気がします。

 

 

筆者コメント/いやー、昔はずい分いいかげんなことをやっていました。まじめな解答を期待してハガキをくださった高校生諸君、すまん!
『悩めるピーマン相談室』は今後ときどき入れ替えます。