モンパルナス大通りには、かつて芸術家、小説家たちがたむろし て、彼等の生き様とともに伝説化されたカフェが多い。特にヴァ ヴァン交差点近くには、にらみ合うように三つの名の知れたカフ ェが集まっている。緑のテントがさわやかなセレクト。それに対 抗するかのような真っ赤なテントのロトンド。そしてこの二つの 店の反目を道の反対側から見下ろすかのように、落ち着いた雰囲 気のドーム。気難しい芸術家たちは、それぞれ好みの店が決まっ ていたようで、ヘミングウエイはもっぱらドーム党だったらしい。 この絵のカフェは、さらに東のポールロワイヤル交差点近くにあ る、木もれ日がきれいなこじんまりとした店である。 (1994年、油彩、F20号)