病虫害対策

 巻柏の原種は岩盤の小さな岩棚に自生し、日照りが続けば葉を巻き込んで耐え、
雨が降ると甦って成長する、過酷な環境に順応して、生き続ける丈夫な植物です。

園芸巻柏もその性質を引継いで居るので、極一部の品種を除き放置していても
生き続けて多少なりとも成長します、しかし、私達が愛培する巻柏は、葉の美しさ、
姿の美しさを観賞する訳ですから、それなりの手を加えてあげる事が必要です。

 放置して置いても生き続ける巻柏ですが、肥料を与え植え替えや日照管理等、
手を加えることで、美しい色彩、美しい姿になって、その労に答えてくれるのです。.

しかし手を加える事は一種の過保護です、必要以上の過保護は巻柏を軟弱にします、
その手加減が、30有余年の経験でも、完全には把握できず、いまだに苦労しています。

病気と対策
害虫と対策
コロンボ捜査控え


病気に付いて

 病気は高温多湿期発生します、私の棚では、夏期は連日のように夕立に見舞われ、
病気が多発して頭を痛めて居りますが、乾燥気味の棚では病気の発生が少ない様です。
つまり、乾燥気味に育てる事が、病気対策の第一条件です。
しかし巻柏は水を好みます、水の豊富な管理の巻柏は、緑勝ちには成りますが、
葉に艶のある、生き生きした色彩で、良く育ちます。
極端に水を控え、いつも葉を巻いている様な管理では、美しさは望めません。
早朝にたっぷりと水を与え、夕方には乾き気味になるようなら、理想なのですが・・・
幹の立ち上がった古株や、乾燥が激しい棚では、朝晩の水遣りを必要とします。

 毎年病気に悩まされながら、病気に対する研究心は無く、ただ、困った困ったで、
病名も解らずに、毎年が過ぎて居る私ですが、病気には2つのタイプがあるようです。

 一つは、葉に熱湯を掛けたように、変色して広がる病気で、病気に侵された部分は、
溶けてしまいます、この病気は伝染力が非常に強く速く、発病に気が付いた時には、
すでに隣接する鉢に伝染して居る事も多々あり、小さな株では消滅します。
 

発病初期

  
紫金襴        福 寿


全体病気
  
白晃麒麟           友白髪

      濁った色の部分は、すでに病原菌に侵された部分です


 次の写真は以前に発病して、現在は病気進行が止まった白晃麒麟です。
上の写真の白晃麒麟と友白髪は、全体が病気に侵されており、
現状で病気が止まっても、下の写真左のようになってしまいます。

上段の紫金襴、福寿が現状で病気が止まった場合でも、下の写真右側のようになります。
下の写真の右側の状態でも、以後の回復復元は困難で、再発の危険性は大です。

  
  以前に病気に侵され、現在は病気進行が止まった「白晃麒麟」

 以上の写真を大きな画像で見たい方は、ここをクリックして下さい。


 もう一つは、同じ様な症状ですが、病気に侵された数日後に、侵された部分に褐色の、
粟粒程の球状の物を無数に付けます、これは「白絹病」だろう、と聞いています。

こちらの症状は、最近の私の棚では、あまり見られなくなりました。

 
大きな全体画像を見たい方は、ここをクリックして下さい

 研究心の低い管理人ですが、病気の発生する6月から9月末まで、
月2〜3回程度、ベンレート、又はダコニールの千倍液を、交互に散布しています。
過湿な私の棚では、予防効果は低い様ですが、発病後に散布すると病気は止まります。


 昨年、縁あってお知り合いに成った、神奈川県の研究熱心な「コロンボ」さんと言う方が、
私の話した症状から判断して、前者は立ち枯れ病の疑いもあると言われましたが、私の棚で
多発する病気の病原菌を調査して下さるとの事で、7月に発病株を送り調べて頂きました。

 さすがは名刑事コロンボさん、早速病原菌の追跡捜査をして下さり、犯人の姿を捉えた
顕微鏡写真を送って下さり、この容疑者の病原菌は「リゾクトニア菌」であろうとの事でした。

 次の図は、コロンボさんから送って頂いた、病原菌の顕微鏡写真です。
  
サンプル1に付いていた菌     サンプル2に付いていた菌

大きな写真で見たい方は、写真をクリックして下さい。
 
 恥ずかしながら無知な私は、菌の名前を教えて頂いても、その対応策が解りません。
リゾクトニア菌に効く薬品まで教えて頂きました、教えて頂いた薬品の中から
一部を入手して早速散布して見ました、薬品の効果の程は現在試験中です。

もしかすると、長年の悩みが解消されそうです。
しばらく試験して、結果がよければ、お知らせ致します。

この他にも送って頂いた写真や参考意見が有ります。
興味の有る方は  コロンボ 捜査 控え へどぞ。

(送って頂いた、根に付く白い粉状害虫の顕微鏡写真も、このページの末尾に有ります)


害虫に付いて

 害虫は 5〜6月と 9月に最も多く発生しますが、例年4月下旬に蘇生を計る
私の棚では、5月初旬には、早くも害虫の活動が見られます。

 巻柏を食害する害虫は、2種類居ます、害虫の写真を紹介します。
 
各写真は原寸より、やや大き目です。

 葉を食害する害虫
 研究心の低い私は、詳しい害虫名までは解りません、
ヨトウ虫と言う害虫の一種らしいです。
 
 この蛾の幼虫は、緑に黒を交えた体色で、15ミリ前後まで
育つ虫で、葉元や葉の裏側に潜み、葉先から食害します。
放置すると各葉先全てを食害し、やがては全葉に及びます。

 「マラソン乳剤」やDDVPを主成分とする、一般的な殺虫剤の、
千倍液を散布することで、簡単に駆除できます。
葉を食害する ヨトウガの幼虫です。


上記の害虫に関して、コロンボさんから
アドバイスが有りましたので次に追記します。
上の写真の黒い蛾は、夜盗虫の『シロスジツマキリヨトウ』 の成虫と思われます。

「ヨトウムシ」は老熟幼虫になると、殺虫剤に強くなるので、小さいうちに駆除する事。
関東地方を基準として、4月〜6月、8月中旬〜10月中旬が防除期です。

研究熱心な、コロンボさんからのアドバイスです、参考にしてください。
頼りない管理人も、参考にさせて頂きます。



 根に潜み、根 及び 葉 を食害する害虫

この蛾の幼虫は、白系の体色で12ミリ前後まで育つ虫で、
幹立ち株では根幹内に潜み、小苗では鉢内の根に潜み、
根を食い荒らすばかりか、葉も、葉元から食い切り、
巣穴に引き込んで食害します。

 この害虫は根の中に潜んでいるため、害虫に直接噴霧して
作用させる薬品では、効果が薄く駆除できません。

オルトラン等の、浸透移行性の殺虫剤なら、効果があります。
体形はヨトウムシとほぼ同じですが、体色は乳白色です。


上記の害虫に関して、コロンボさんから 再度アドバイスが有りましたので追記します。

上の写真の白い蛾は、「苞虫」の『ソトモンツトムシ』 の成虫と思われます。

以前にはこの虫の正確な名前が解らず、根に潜み根や葉を食害する事から、
ネキリムシの仲間では無いかと思っていましたが、ネキリムシでは無く、「苞虫」の
仲間の「ソトモンツトムシ」である事を、突き止めたそうです。

管理人から一言
以前に追記で「ネキリムシ」と、長期間誤表記していましたが、
その頃から閲覧下さっておられる方は、「ソトモンツトムシ」と「ネキリムシ」では、
微妙に殺虫剤等が違いますので、これをお読み下さった事を機に、
この害虫は 外紋苞虫(ソトモンツトムシ)であろうと、認識を新たにしてください。

尚、殺虫剤は私の経験から、浸透移行性殺虫剤の、オルトランは効果が有ります。


食害に遭った臥龍の小株
拡大図

 左の画像は上下同じ品種ですが、上段は健全
な株で、下段は根に虫が住み着いて、被害が
見られる株です、根切り虫の住み着いた小さな
株は外見では画像の様な症状が現れます。

 根の巣穴から這い出して、葉を食い切って
巣穴に引き込み食害するので、このように
一部の葉が無くなって行き、放置するとさらに
葉は無くなって酷くなって行きます、この時点で
既に根も相当に食い荒らされています。

 大きな株では被害がこれほど目立たないので、
気付き難いのですが、根幹に住み着き根を食い
荒らし、這い出しては脇芽の葉を食い切り、
巣穴に引き込んで食害します。
被害は大株とて同じ事です。


 最近この害虫が交換会などで移動して、方々で繁殖しているように見受けられます。
害虫の食料の豊富な私の棚では、一時期大量に発生して、前記のマラソン乳剤等を、
散布しましたが、殆ど効果が見られず、あまりの被害の大きさに、一時は巻柏培養を
やめようと考えたほどでした。

 この害虫には浸透移行性の殺虫剤なら効果があります。
私は「オルトラン」を使用して、悩みが解消しました、散布面積が少ない合は、
粒剤が手軽です、容器の蓋に穴があり、容器を持って振り掛ける方式の物が有ります、
月2回ほど、葉の上から少量振りかけて、その後散水します。

 オルトラン粒剤は散布した粒剤が、物理現象で巻柏の芯に集まり、薬害で芯が傷む事が
あります、また散布時に葉面が濡れていて、粒剤が付着したままになると、その部分は
白色化します。 オルトランは浸透移行性ですから、葉面に付着していなくても大丈夫です、
散布後に散水して葉面(特に芯)に付着した薬剤を、ざっと洗い落とした方が良いようです。

 オルトラン粒剤の適量は把握して居りませんが、散布量不足では効果は低いと思われ
ますが、掛け過ぎは薬害の元と思います、いかに低害と言えど虫を殺す薬剤です、植物の
負担になって居るはずです、 散布量には考慮してください。

  オルトランには粒剤の他に、水和剤(粉状)、乳剤があります。
多量に培養する私は、掛けむらを防ぐために、オルトラン水和剤を、殺菌剤と混合で
千倍液にして散布しています、幹立ちの物は幹にも掛かるように散布します。
成虫の写真の所でも触れましたが、この害虫は幹立ち株では根幹内に潜み、根を食い
荒らしながら尚且つ、脇芽等の葉を食い切り、巣穴に引き込んで食害しているようで、
立ち上がった根塊に引き込んだ、葉の一部が顔を出して居る事も有ります。
従って幹立ち株の対処法には、脇芽の葉にも薬液が掛かる様に散布すると、
根塊内に潜む害虫の駆除に効果があるようです。

 オルトラン乳剤は、以前に抗生物質の殺菌剤「マイシンS」と、混合で使用したところ、
組み合わせが悪かったのかどうか解りませんが、「錦木」と「光城」に、薬害らしい茶色の
変色があり、それ以来「マイシンS」及び「オルトラン乳剤」とも、使用しておりません。
錦木と光城は特に薬害が生じ易い様です、新しい薬品を使用する時は注意を要します。

 オルトランは、前者のヨトウ虫にも効果があります。
5月から9月まで、月2回ほど散布すると、根絶とは行きませんが、害虫の被害は、
殆ど見受けられなくなります。
根絶を願っているのですが、蛾は他から飛来する事もあリ、望みは叶いません。


 
 巻柏は根に白い粉状のものが付き、巻柏を衰弱させる事が有ります。

  

 昭和年代に発行された書籍には、この症状を「水カビ」として解説されています。
私は不勉強で正確には解りませんが、此れはダニの一種では無いかと思って居ます。

殺ダニ剤を用いれば良いのでしょうが、私は使用経験が有りません、従ってどの様な薬品
が有効なのか解りませんが、植替え時にこの様な現象が見られた時は、古土を少し落とす
程度に根を水洗いして、排水の良い新しい土で植え替えると、自然に消滅してしまうようで、
この様に対処すると、大きな害は見受けられません。

 この件に関しても、過日同文を掲示板に書いた所、次のアドバイスが有りました。

 コロンボさんが、アドバイスを下さり、次の顕微鏡写真を送って下さいました。

  
  上から見た全体図   下から見た図、6本の足が見える

コロンボさん談

 「此れはダニではなく、貝殻虫の一種ではなかろうか」 との事です。

 カイガラムシの一種では無いかと思われる理由を、数点指摘されると共に、
「ダニは足が8本ですが、これには足が6本しかありません」の書き添えを頂きました。

「ダニの仲間ではなさそうです。もしかしたら、ネコナカイガラムシというモノではないか
と思います、 詳しくは現在調査中です」。

平成17年8月 追記

 上記画像やアドバイスを戴いて間もなく、コロンボさんとの連絡が途絶えてしまい、
其の後の詳しい調査結果を聞く事が出来ませんでした。
 
 従来は「水カビ」と言われていましたが、私はダニの一種ではないかと思っていた
上記症状の正体が、このたびコロンボさんの努力により判明しました。
 
 コロンボさんは現在、インターネット圏外に出張中との事ですが、出かける前に
執念の捜査で、上の画像とは別に同じ虫を再度発見し、同業のモンク探偵に留守中
の事を頼んで出掛けられたそうです。 
依頼を受けたモンク探偵が、コロンボさんが再発見した虫を、専門家の先生に見て
頂いたそうです。
 
その結果
確かに「ネコナカイガラムシ」の一種だと言われたそうです。

専門家の先生は
「防除は容易ではないが、スプラサイド乳剤1000倍液などに鉢ごと
浸漬するのが良いと思われるが、巻柏での薬害は試したことがない」
とのアドバイスを下さったそうです。

 以上の調査結果が、コロンボさんから依頼を受けた、モンク探偵さん
から届きましたので追記しました。

 コロンボさんは現在も出張中との事で、モンク探偵さんにも所在は
解らないそうです。従って連絡の方法が無く、連絡が取れません。
直接お礼を述べられずに残念ですが、責任感の強いコロンボさんの、
ご配慮に感謝しています。

皆さんも参考にしてください。


ナメクジ に付いて

 ナメクジは私の棚にも沢山居ます、一時期は気にしてナメクジ駆除剤を
置いたり、鉢底に銅線を入れたりと対策を講じましたが、現在はなんの
対策もしておりません、ナメクジが這った跡が残るのは良い感じではなく、
気には成りますが、それ以外に直接的な被害は見受けれませんでした。

巻柏は、ウスカワマイマイを含め、カタツムリや、ナメクジによる、直接の
被害は無いようです、被害が見受けられないので、現在は放置しています。

 余談に成りますが、夕方浅い入れ物に、ビールを入れて置くと、ナメクジが集まり、
朝に取り除けば、駆除できると聴き、アルコールの苦手な私ですが、そのためだけに、
ビールを購入して置いてみたりしましたが、こちらもあまり効果は見られませんでした。

 時々蛙が住み着いて居る巻柏も有りますが、こちらも被害は見受けられません。

 蛇も時々顔を出します、巳年生まれの管理人ですが、これは苦手です。
小さな蛇は棒で追い払いますが、大きな蛇の時は、棒を持った私が逃げ回ります。


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