室根山のふもと

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 朝の散歩中に思いがけず起きた事故の話です。長くなりそうなので、今回はその1。


縁 石 渡 り

 2年前までは、毎朝愛犬( ロッキー )を連れて散歩していた。

        < ロッキーと室根山 >

 ロッキーは私によく慣れて、散歩の途中で紐を外しても逃げなかった。早朝なので出会う人もほとんどなく、いつも紐を外したまま散歩させていた。
 もう10年も前だろうか、たまたまロッキーがついてこないので振り返ると、道ばたの草むらで何か見つけたらしく、しきりに嗅ぎまわっている。何を嗅いでいるのかよく見ようと、車道と歩道を隔てている縁石に上がり、背伸びして見たがわからない。そのうちロッキーも飽きたのか、草むらから離れると私に向かって小走りに駆け寄ってくる。
 私は何気なくそのまま縁石の上で前向きになり、ロッキーが追いつくまでと思って縁石の上を両手でバランスを取りながら歩いてみた。ところが5・6歩あるくとバランスが崩れ、あっさり縁石を踏み外してしまった。こんな簡単なこともできない歳になったのかと少しがっかりだったが、念のためまた上がって歩いてみた。すると今度はなんなく、すいすいと歩ける。意外に簡単であった。

        < 縁石と杭 >

 縁石には一定の間隔で夜行塗料の反射板のついた杭(?)が立っている。縁石から降りずにそこを通り過ぎようとすると、杭を避けて体を捻って行かなければならない。注意しないと杭に接触して縁石を踏み外してしまうのである。そうしないように身体を回転させると、回転したあとにまた縁石の上でバランスを取るのがけっこうむずかしい。
 気がついたらかなり真剣になって縁石の上を歩いていた。その時の心境はほとんどサーカスの綱渡りの気分だった。踏み外したら綱から落ちてしまうような真剣さで歩いていたのである。これが縁石渡りを散歩の日課にするきっかけであった。

 慣れてくると、縁石を踏み外すことはほとんどなくなった。時々縁石の上の杭で回転し損ね、バランスを崩して落ちることはあったが、それも何週間かするとこつがつかめ、かなり安全に回転できるようになった。そうなると、杭の箇所でくるっと一回りして巧みにバランスを取り、縁石の上をすいすい歩いて行くのが快感になってきたのである。


後ろ向き縁石渡りも 

 縁石渡りも板について余裕が出てきたころだった。例によって道ばたでまた何か嗅ぎつけ遅れたロッキーを振り返って、縁石の上でしばらく待っていた時だった。その後ろ向きの姿勢のまま、ロッキーの動きを見ながらゆっくり足を後ろに運んでみると、歩けるのである。身体は後ろを向いたまま、進行方向に縁石の上をバックで進んでいけるのであった。

 これは新鮮な感動だった。後ろ向きなのでもちろん進行方向は見えない。それゆえ一歩を踏み出す時の、もしや踏み外しはしないかというかすかな恐れを感じながらの進みには、小さいわくわく感があった。さもないスリルでも、快感なのだ。

 何週間か経ったころには後ろ向きのままでも普通の足取りで歩けるようになった。
 それでも杭のある場所では、見えない杭を一回転して通り過ぎる、という訳にはいかない。

 幸い体育館の脇や運動場脇の縁石には杭がなかった。

     

 駐車場前や六道橋の縁石にも杭がなかった。

    

 杭のない縁石では(悔いなく)後ろ向きに歩き、杭のある縁石は前向きで歩くことにした。

 こうしていつの間にか、道路の縁石を見つけると必ず縁石渡りに挑戦するようになっていた。  




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