口唇を、かみ締めたのであろう。
そのだけが妙に艶めかしく、紅く熟れた果実。
どこか追い詰められた兎にも似たアリスの表情に・・・。
用意してあった食材でアリスの好きな夕食をとった後、ばあちゃんが珍しく出掛けて留守という事もあって一緒に風呂へ入った。
先にアリスが湯船に使っている間に火村は躰を洗う。
交代や、とアリスが上がったとき、囁くように言った。
俺が洗ってやるよ、アリス。
その声に、アリスが頷く。
何気ない仕草の中に滲んだ恥じらいが、本能を刺激する。
いつまでたっても慣れないアリスの反応が男の征服慾を強めるのかもしれない。
そんな時は常よりもなお、酷く・・煽られる。
「うっ・・・・ぁ、んんっ・・・・・」
身体中を這い回る掌の動きを塗りたくられた液体がよりスムーズに助ける。
湯につかったから熱いのか、それとも自分自身が発熱しているのか、アリスにはとうに分からなくなっていた。
感じるのは唯、火村の大きな掌の感触だけ。
「ほら、アリス・・・・・。腕、あげろ」
「ふぅ、んっ・・・・・」
狭い浴室で身体を向き合わせ、抱き合うようにして立っている。
先ほどからアリスの身体を隅々まで洗う火村の掌は、ボディソープのぬめりを受けて良い所だけを余す事無く掠めては撫ぜて行く。
その、焼けるような感覚に立っているのもやっとなアリスの腕を上げさせると、火村は逞しい自分の首へと巻きつけた。
途端、アリスの鼻腔を擽る「オス」の香り。
より密着した体勢に、互いに昂ぶって硬く猛る下肢が触れあい、アリスは思わず腰を揺らめかせて声を洩らした。
「ひぁっ・・・、あっ・・・・、ひむらぁ・・・・」
「やらしいな、アリスは・・・・。身体を洗われているだけでこんなになるのか?」
意地悪く嘯く火村の低音が浴室に篭るように響いて。直接耳朶に囁かれるのと相まって躰中を包む。
それにすら煽られてしまうのに、すいっと滑る様に火村の指が後腔を掠めていく。
じわじわと入口を解すだけの動き。
その先に待っている刺激を求めて躰が疼いて仕方ない。
ダイレクトに感じる火村の体温と、息遣い。
そして滾る熱を背後に感じて、溶けていまいそうだ。
早く。早く・・・。
もっと強い刺激を与えて―…。
「アっ・・・・・、んん・・、もっ、いじわ、る・・・せんでっ・・・」
「ああ、此処も。綺麗にしておかないとな・・・・」
つぷりとそのまま指を入れられて、慣れぬ感覚に全身が粟立って仕方ない。
「あ・・・、あっ・・・」
ぐぐ、と入口を押し広げられる。
埋まっていく、指。
ごつりとした男らしい指が、その節が、中へと沈む。
内側から蕩けてしまう。
ぬめりを纏った指が狭い入り口をやすやすと開き、ずるずる飲みこまれていく。
その感触をリアルに感じて下腹奥がきゅうと啼いた。
「あっ、あっ・・・・、やぁ、んっ・・・」
中を犯される。
スムーズに動く指が与えられる快感を見せつけ、与えられない最奥への刺激を欲するのだ。
中途半端な動きに焦らされて。
「んっ・・・、くぅ・・・ん」
力の入らない腰では立っていられなくて、堕ちないようにと火村にしがみ付いた。
それでも腕からも徐々に力が抜けていくアリスの腰は落ちることなく支えられ、廻された火村の腕が白い尻たぶをがっしりと掴んで掻き回すように後ろを弄っていて。
「ぃ・・・、や・・・、あ」
それだけじゃ物足りないと、まるで強請るようにアリスの腰が動く。
「あ、あ・・・」
その度、湿った卑猥な音が浴室に響いては木霊す。
「ふっ、ああ・・・・、ひむ、らぁ・・・・」
「堪らねぇな・・・、アリス・・・・。ほら、此処に手をつけるか?」
「ひぁ・・・?うっん、ぁあ・・・、んっ」
「・・・イイ子だ、アリス・・・・」
半身が映る鏡の前の洗面台に手をつかせると、アリスの腰が落ちないように抱えた火村がぬるぬると滑ったアリスの蕾に熱く猛る自身を擦り付けては突く。
「あっ、ああっ・・・、は、はよぅ・・・、ひむらっ!」
「おまっ、その顔、エロい・・・・」
背後から抱きしめられるこの体勢は常ならばアリスの表情をうかがい知ることが出来ないのだが、浴室に設えられた鏡のおかげでその蕩けた表情までもよく見える。
欲しい、と全身で強請るアリスは壮絶に官能的で、耐え切れずに火村は自身をひくひくと蠢くアリスの後腔へ宛がうとぐっと一気に押し込んだ。
「ヒぁ、あああっ・・・・・、くっ・・・、ぁ・・・、っつい・・」
「・・・アリスっ、おまえ、ナカ・・・、やっべぇ・・・」
いつもほど念入りに解したわけでもないのに、湯に使ったせいだろうかアリスの後ろは柔らかく火村を包み込むように蕩けていて、きゅうと締め付けるような誘い込みに思わず奥歯を噛み締めた。
まさか、入れただけで達してしまうなんて・・・出来無い。
「んっ・・・、あ、火村ぁ・・・、うごいてぇ・・・」
そんな火村の葛藤など気がつきもしないアリスは珍しくも催促をしてきて、その甘えるような鼻に抜けるような蕩けた声にくっと腰を押し付けては奥まで穿つ。
「アリスっ・・・・、すっげぇ・・・、顔、あげてみろよ」
「はっ、ああ・・・、ん、ぇ・・?」
後ろから挿れられて腰を揺さぶられるアリスは俯き加減で喘ぐ顔を言われるがままにそろそろとあげていく。
と、鏡に映るのはあられも無く乱れる自分。とろんと潤んだ瞳、少し腫れぼったく熟れた口唇。頬は上気し朱をはいた肌が汗に濡れる。開きっぱなしの口元からは、一筋唾液が伝っていた。
明かなる痴態。
後ろから廻された火村の腕が、白いアリスの腹に絡んで。
浅黒く日に焼けた色とのコントラストまでも淫猥で。
まるで別人のように欲情した表情に、知らずに奥を締め付けるように蠢かしていた。
「あっ・・・・・、やぁ・・・だぁ・・・」
「っ、アリス、・・・そんなに、しめる、な・・・・」
やだ、といいながらもアリスは鏡の中の自分から目が逸らせない。
知らない、自分。
鏡の中の、アリス。
欲に塗れた表情で、恍惚とした表情で嬌声を上げて火村を受け入れている、アリス。
背筋を這いあがる痺れに下腹からきゅう、とせり上がってくる快感。
「ひむ、らぁ・・・・・、っイぁ・・・、くっ!」
「ふっ・・・・、っ・・・いい、ぜ・・・、イけっ・・・よ!」
ぐちゃぐちゃと淫猥な音が浴室に響き、それにあわせるようにして掠れたアリスの嬌声が響く。
打ち付ける腰のストロークが一際、早くなると同時にアリスは後ろだけで爆ぜるようにして果てた。
迸った白濁は鏡の中に居るアリスの顔へかかり、淫らしくもぬらぬらと濡れている。
その堪らなく淫猥な状況に抉るようにして、腰を打ち付けた火村がアリスの最奥へと欲を吐き出す。
「あっ・・・・・・、んぁ・・・、ひむらぁ・・」
「っく、アリス・・・」
どくどくと脈打つ火村の迸りを際奥へ感じると、全身から力が抜けていく。
それを火村の腕が支え事も無げに抱えられた、と思ったら唇が合わせられた。
「んっ・・・・・」
蕩けるような、熱いキス。
濡れた身体を拭くのもそこそこに部屋へ戻ってからも貪るように求め合った。
腰を掴む手の感触も、首に回された腕の感覚も。
全て、アリスを優しく包んで愛していると叫んでいる。
そう、思える。
だから。
だから、火村・・・。
どうか私を奪って欲しい。
もう何も。考えられないように。
幾度目かの精を放ったアリスは誘われるままに意識を手放した。
これで、眠れる・・・・。
其れは、つかの間の安眠。
Author by emi