勝手にMyTop3! -Part2-


■ツボな「クマ」の3冊
「クマ」が好きです。男性のイメージを重ねてしまっているのかもしれません。こっそり(?)言うと、クマさん体型の男の人ってツボなんです。すっぽりと抱っこしてもらえそうなところとか、磊落に見えて繊細な内面を持っていそうなところとか。
そんなわけで、ちょっと不埒な動機で選んだ3冊。

3.ふつうのくま (佐野洋子)   クマの本、と言っておいて何なのだけど、これはもしかしたら(くまを待つ)ねずみのお話かもしれない。佐野洋子は、絵だけでなく言葉の天才でもある。難しい言葉などひとつも使わずに、軽々と、深い世界を語ってみせる。 (講談社)
2.クマと仙人 (J・ヨーマン) ブレイクの、何ともほのぼのとかわいい絵に惹かれて手に取った。そしたらお話も素敵だった。「育てる」とは、「見守る」と同じなのかもしれない。「そのまま」を受け入れてもらえることの幸せ。居場所があるということの安らぎ。「関係」って一方通行のものじゃない・・・当り前だけど、あらためてそう思った。  (絵 Q・ブレイク/のら書店)
1.熊とにんげん (ライナー・チムニク) 「くま」「クマ」「熊」と3通りの表記に分かれたけれど、これは偶然。3つそれぞれ喚起されるイメージが異なるあたり、日本語って豊かだと思う。
さて、『熊とにんげん』なのだけれど。「珠玉の一冊です。」それ以外に言いようがない。作者自身の手になる細いペンで描かれた挿絵も、もの寂しく美しい。読んだのはほんの数年前、図書館で。すでに絶版になっていた。どうしても手元に置いておきたくて、古書店を探しまわった。ようやく見つけて、胸に抱いて帰った。今回これを書くにあたって、amazonで検索してみたら原語版があった。チムニクの主な作品が一冊になっている。『熊とにんげん』も入っている。高価だったけど即買い。読めもしないのに。 (偕成社・福武文庫・共に絶版)
きな

■「伝説の書物」にまつわる物語

1.アラビアの夜の種族(古川日出男)  読む者を虜にし、最後には破滅させてしまうという稀代の物語集「災厄(わざわい)の書」をめぐる物語。とにかく一度読み始めたら最後、すべての生理的欲求を無視してでも読み続けてしまうため、かつては皇帝暗殺にももちいられたという、なんとも危なっかしい書物である。そんな性質ゆえに翻訳することもできない、世界でただ一冊の書物を、フランス革命軍壊滅の秘密兵器としてフランス語への翻訳を試みたアイユーブがとった手段とは・・・?
2.サラマンダー 無限の書(トマス・ウォートン) 「始まりも終わりもない無限に続く本の作成」のために世界中をめぐって旅をするという物語。「無限の書」という奇想天外な書物だけあって、その道具や材料も奇想天外なものばかり。ひとりでに文章が立ち現われてくる魔法の活字、まるで生き物のように息づいているインク、あまりに薄すぎて最初のページをめくることのできない最上質の紙――はたして、印刷職人ニコラス・フラッドは、世界でただ一冊の書物を完成させることができるのか?
3.すぐそこの遠い場所(クラフト・エヴィング商會)  現クラフト・エヴィング商會の主人の祖父、吉田傳次郎が遺した「アゾット事典」の内容を紹介するという本。「アゾット」とは、ここからずっと遠くにある不思議な世界のことで、雲母でできた本や「哲学サーカス団」、「忘却事象閲覧塔」、いつまでも夕方がつづく町など、なんとも奇妙で魅力的なその世界の事象が紹介されているが、いちばんの不思議は、この「アゾット事典」そのものが、見るたびにその中身が変わっていく「生きている本」だということである。
八方美人男 URL

■邪悪で救いがなくて、アンハッピーエンドな物語

『蝿の王』  ゴールディング 注意事項:この三つを続けて服用しないように。
副作用:胃もたれ。頭痛。人間不信
毒が強すぎた場合は・・・当方は一切関知しない。
『悪童日記』 3部作  アゴタ・クリストフ
『ぼくはお城の王様だ』  スーザン・ヒル

(上から 集英社、早川書房、講談社 )

バーバまま URL 

■宇宙を目指せ! ロケット打ち上げ小説

『夏のロケット』 川端裕人

 「いつか火星まで行けるようなロケットを作ろう」を合言葉に、非合法なローンを繰り返していた「天文部ロケット班」。かつてその部員だった、今は新聞記者の高野は、ある過激派組織の事件を追ううちに、かつての「ロケット班」との意外な再会を果たすことになるが・・・。
 すでに30年も昔にその製作技術が確立されたロケット製造は、もはやハイテクではない。民間人による低コストのロケット打ち上げの可能性について語り、なによりどんな夢も必ずかなうと信じ、仲間たちとひとつの目標に向って努力をつづける姿を描いた本書は、読む者に純粋な感動を与える。(文藝春秋)

『ロケットガール』 野尻抱介

 ハネムーン先で失踪した父を探してソロモン諸島にやってきた、ごく普通の女子高生、森田ゆかりを待ちうけていたのは、彼女を宇宙飛行士にしてしまおうとする、ソロモン宇宙協会の陰謀(?)だった・・・。
 どこか現実離れした変人スタッフ(しかし宇宙に対する思い入れは誰よりも強い)たちに、なかば騙されるような形で宇宙飛行士の訓練を受けさせられてしまうゆかりの様子を描いたSFコメディとも言うべき本書は、しかし現在の宇宙開発の現状についてたいへん詳しく、そしてわかりやすく書かれており、一見冗談のように思える「女子高生の宇宙飛行士」というイメージを払拭するだけのパワーに満ちている。(富士見書房)

『星のパイロット』 笹本祐一

 民間会社による宇宙開発競争が華やかなりし近未来のアメリカ。管制官の制止を無視して度肝を抜くようなアクロバット飛行を演じた小型ジェット機に乗っていたのは、なんと小柄な女の子だった。彼女−−羽山美紀はスペース・プランニング社の宇宙パイロットとしてやってきたのだ・・・。
 まだまだマンパワーに頼るところの多い未知数の業界、言ってみれば荒くれ者たちの集団に単身乗り込んできた美紀の奮闘記ともいえる本書であるが、なにより「宇宙に行きたい」と強く願う美紀のひたむきさと、そんな彼女の気持ちを汲んで、徐々にチームが協力していくようになる過程は、地味でありながらもやはり感動的である。(朝日ソノラマ)
八方美人男 URL

■ゆきて帰りしファンタジー
『ホビットの冒険』の副題にもなっている「行って帰ってくる」ファンタジーを三つ挙げます。
 日常から非日常の世界へ旅立ち、また戻ってくる物語です。

1.はてしない物語 (ミヒャエル・エンデ) 私の大好きなファンタジーのひとつ。説明よりも、ここでは古本屋コレアンダーさんの言葉を。
「世の中にはどうしてもファンタージェンに行けない人がいる。また、行けるけれどもうもどってこられない人がいる。しかし、一度むこうへ行って、またもどってこられる人がいる。そういう人が両方の世界を健やかにするのだよ」。
(上田真而子、佐藤真理子訳/岩波書店、他)
2.トムは真夜中の庭で (フィリパ・ピアス) タイムファンタジーとして有名な作品です。大時計が十三時を打ったときに開かれる世界から戻ってきた後の「再会」には、感動して何度も読み返してしまいました。
(高杉一郎訳/岩波少年文庫)
3.歌う石 (O・R・メリング) 紀元前のアイルランドの神話的世界で、運命を変える希望にあふれる少女たちの活躍はとてもさわやかです。そして、もとの世界に帰るときの「また会える」という一言に本当に嬉しくなりました。さらに主人公の日常にも、新たな希望がありそうで、読後感の心地よい物語です。
(井辻朱美訳/講談社)
いし >> 掲示板での反響

■揺さぶられた本

1.模倣犯 (宮部みゆき) ショックが強くてしばらくこの本の余韻から抜け出ることができませんでした。今に至るネット生活を始めたのもこの本がきっかけです。うずうずしている感想の吐き出し口(ネットを繋いで半年ほどのパソコン)が丁度そこにあったので(笑)。
2.アルジャーノンに花束を
   (ダニエル・キイス)
名作と知ってて読んだのですが、やっぱり相当ショックでした。記憶を無くすというのは、ある意味「死」と同等、もしくはそれ以上であることもあるんじゃないかと思いました。この本以来、アイデンティティーと記憶とのお話にはつい惹かれてしまいます。
3.おばかさん (遠藤周作) これは若い時に読んでとてもショックでした。清らかすぎて、痛々しくて、でも憧れて。今読むとあのころみたいなショックは受けないんだろうなあとは思うのですが、読んだ当時、親族の訃報が相次いだりして、ジンクス的にこの本を読むのが怖くなり、未だに再読できずに本棚に眠っております。

テハヌーURL(本の数珠つなぎ→テハヌーさんの映画日和)

■匂い立つような小説TOP3(順不同)

『スメル男』 (原田宗典) ある細菌に犯されたせいで、誰もが嘔吐をもよおすような凄まじい悪臭を放つようになってしまった男が主人公の本書ですが、当の本人は後天的な嗅覚障害のため、彼だけがその悪臭にまったく気がつきません。最終的には日本全土をすっぽり覆ってしまうほど広がっていく自身の悪臭を食いとめるため、無気力だった男が立ちあがる!
『香水』 (パトリック・ジュースキント) 『スメル男』とは逆に、生まれたときからまったく体臭のない男が主人公。その代わり、彼の鼻はこの世にあるありとあらゆるモノの匂いを嗅ぎ分けてしまうという、驚異的な嗅覚をもっています。そして彼が生み出す香水は、嗅いだ人間の感情さえも自由自在に操る力を秘めていたりします。「究極の香り」を求めた男の奇怪な遍歴!
『オルファクトグラム』 (井上夢人) 『香水』と同じく、犬のように優れた嗅覚を得た青年が主人公だが、彼の場合、臭いが何と視覚的に表現されるという変わり種。はっと気付くと目の前を無数の透明なクラゲが・・・何とも不思議な光景が展開するこの「臭いの世界」のなかで、仲間とともに姉を殺した犯人探しと、行方不明になった友人の捜索を開始するミステリー!
共同執筆 >>> 八方美人男 & くら 

■びっくりした!

1.幻の女 (ウイリアム・アイリッシュ) 彼は妻とけんかして、バーで奇妙な帽子をかぶった女と出会う。食事をしてスカラ座に行き、家に帰ったら妻が彼のネクタイで絞殺されていた。彼の無実を証明する「幻の女」はどこに消えたのか? 刻々とせまる死刑執行の日。
まだミステリーを読み始めて間もない頃に読んで、死ぬほど驚いた作品。本当はこういうリストに入れてはいけないのかもしれません。未読の方がいらっしゃったらごめんなさい。(ハヤカワ文庫)
2.弁護側の証人 (小泉喜美子) 「信じていてね、罪もない人を死刑にすることはだれにもできないのよ」
去年読んで、「幻の女」と同じ位驚いた作品。(集英社文庫(絶版)、出版芸術社)
3.i(アイ) 鏡に消えた殺人者 (今邑彩) もううろ覚えですが、最後にすべてがひっくり返って驚きました。今は絶版なのがもったいない。
(光文社文庫(絶版))
にこ URL

■ミステリじゃないけど、実は《本格ミステリ》な娯楽小説三本!

『マンハッタン特急を探せ』
  (クライブ・カッスラー)
アメリカ版007=ダーク・ピットが天衣無縫に飛び回るヒーロー活劇なれど、《特急まるごと消失》だの、肉体をすりぬける《幽霊列車》だのと、ミステリマニアの稚気をくすぐる不可能興味が一杯。
日本語版では表紙のイラスト自体が厚顔無恥なミス・ディレクション(ひっかけ)になっているという、とんでもないオマケつき。(新潮文庫)
『ウィスパーズ』
  (ディーン・R・クーンツ)
死んだはずの男が蘇る! 古典的ホラーのテーマをサイコ・サスペンスに移植。所詮は狐狸妖怪の類であろうとたかをくくっていると、驚愕の真相にぶったまげること必至。
いまさらあのネタを使って、これほどの小説が書けるとは。
古き杯に新しい酒を盛る稀有な成功例。(ハヤカワ文庫)
『リング』 (鈴木光二) トリは日本代表の大ベストセラー。さすがは『横溝正史賞』候補作(落ちたけど)。物語世界に既存の物理法則が適用されないという以外は、徹頭徹尾ミッシングリンク・テーマのミステリ手法にのっとったもの。軽々しく『○○の呪い』などと口にするのは、重大なルール違反以外の何物でもないのだ!(角川ホラー文庫)
フリップ村上 URL


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