テーマの小部屋 >> 歴史・時代ものでたのしもう |
歴史、時代物というのは史実系と創作ではだいぶ隔たりもあって 無理なくくりだけど、おおめにみて下さい(^_^;) 。 |
・『そうだったのか!現代史』池上彰
・『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』 塩野七生
・『竜馬がゆく』『花神』『坂の上の雲』『燃えよ剣』 司馬遼太郎
・『用心棒日月抄』 藤沢周平
・『プリンス近衛殺人事件』V.A.アルハンゲリスキー
・『ニューヨーク』ベヴァリー・スワーリング
●読者サービスあふれる痛快時代劇
読む前は、シブくて強い用心棒が悪人と戦う、というイメージを抱いていた。
そしたらいきなり最初の仕事は妾宅で飼われている犬の用心棒、次にはお稽古ごとに行く商家の娘の警護、だったのでとても意外で好感をもった。
その"まる"という駄犬と又八郎が顔を見合わせる場面など味があってすごく好きになったし、文章も歯切れが良くて気持ちいい。話の流れも巧みで赤穂浪士と吉良家の争いに図らずも関係していく所など興味深い。
そして、なんと言っても主役の又八郎がかっこいい。
糊口をしのぐための用心棒家業だけに、理にかなった処世術でゆく所がとても好み、だし、慎重に仕事を選ぶ賢明さも「この人に任せておけば大丈夫!」と思わせる。剣で戦うシーンはかなり具体的で映像が浮かび迫力がある。又八郎は絶対負けない、と思って読むけれども「これをどうやって切り抜けるのだ!?」というハラハラドキドキ感が十分味わえる。
そして期待にたがわず出てくる女はみんな美女、そのいい女っぷり描写も毎回バリエーションに富んでいて楽しい。又八郎は自分から好色に傾くことは無いのに女にずいずい迫られて、やはり据膳食わぬはなんとやら。脱藩してきた国元に許婚がいたって関係無いさ!
『小説新潮』で連載されていたものらしいから、読者層をしっかり認識した話のつくりだのう、と思った。
上記の書き込みは了承を得て掲載しています。バーバままさん・八方美人男さんのサイトへはリンクページから飛べます。
掲示板の書き込みから(2003/5/31〜6/5)
●バーバままさん
『用心棒日月抄』ほんとに、痛快時代劇っ!て感じですよね。でも薄っぺらじゃない。短編の歯切れのよさとはまたちがう魅力と面白さ。赤穂浪士たちがちらちら絡むのも、ある意味お約束、なんだけど、うまーくとりいれてあって全然不自然じゃないのね。
●きなさん
藤沢周平は、父が懲りまして実家に全作(!)揃っています。私も一時期集中して読みました。
あれほど多くの著作があるのに当たり外れがないというか、どれもみんな一定の水準が保たれていて・・・稀有な作家だなぁと思います。
ただ、「この場面がすごく好き!」とか「このセリフが命」みたいな入れ込み方になることはあんまりなくて・・・。上手すぎるのでしょうか?それとも、読んだ「時」に原因があるのかなぁ?
(10代に集中して読んだ山本周五郎作品には、思い入れありまくりなんですよ^^ )
そうそう、感想の「読者層をしっかり認識した話のつくりだのう」には笑いました。
まっことそうじゃのう(笑)
●スウ
>バーバままさん 面白かったですよ〜
>でも薄っぺらじゃない。
そうなんですよね。単なる娯楽大衆小説で終わっていない。いやそれが悪いって訳じゃないんですが。赤穂浪士との関りがドラマとしての盛り上がりを高めていますよね。で、完全に関る訳じゃない所がまたいいと思います。積極的に味方なんてはじめたら、自分の問題もあるのになんてアオくさいんだと思ってしまうでしょう。
ひとつひとつの終わり方の余韻としては、比べるのはなんですけど『御宿かわせみ』のほうがしっとりしていて絶妙だと思います。でもこういう話の場合はあっさりとしたこれでいいのだと思います。
『橋ものがたり』も読んでみたいです。こちらの方が余韻が味わえそう。
>きなさん
おおっ全作ですか!
いまこのひとつしか読んでませんけど、『たそがれ清兵衛』にも共通する
「サラリーマンの悲哀」を感じるところもあって、そういうところもお父さん層のハートをゲットするのかもしれませんね。
読んだ「時」によってこれは感じ方が違うと思いますよ。私もこれを若い時読んでいたら単なる「面白い話」で終わっていたかも。
●八方美人男
私は以前は時代物というと「食わず嫌い」なところがあったりしたのですが、やっぱり面白いものは面白い! と思いました。食わず嫌いはよくないですね。
藤沢周平さんの『用心棒日月抄』、うう、読んでみたい・・・。『蝉しぐれ』のほかにも何か読んでみたいと思っていただけに、食指が動きます。
●スウ
私もファンタジーなどは食わず嫌いの傾向がありましたが・・・ちょっと「試し食い」(笑)もたまにはいいかも。ただ、私は時代ものが好きだという自覚は無くて、例えば池波正太郎の『剣客商売』なんて、実は挫折しました。
『用心棒日月抄』は、セージュさんのところであるぷさんもおっしゃっていたのですが、時代モノといっても古さは感じず翻訳ハードボイルドのような味わいと読みやすさがありました。『蝉しぐれ』は読んだ事ありませんが私も他のをまた読んでみるつもりです。あ、用心棒の続きがあるんでした。
●あるぷ
よ、読まれていた・・・ははは(ひきつった笑)
すかさず話をそらしますと、時代小説家に外国文学好きは以外と多いのではないでせうか。
隆慶一郎なんて、大学では仏文専攻で小林秀雄の弟子だし、多くの時代作家が師と仰ぐ『半七捕物帖』の岡本綺堂は英語が達者で、欧米の怪奇短編を訳した「世界怪談名作選」は、今でも名訳として流通しています。 えー、用心棒の続き、快調にハードボイルドしてますのでまたどうぞ。では。
●八方美人男
藤沢周平さんの本は『蝉しぐれ』しか読んでないのですが、たとえば時代物でありながらどこの時代であるのか、はっきりとした記述をしていないこと、海坂藩という架空の藩を舞台としているところなどから、時代物を書きながら、現代でも通用する物語を書こうとしていたのではないか、という気がします。
本書にしても、主人公の父親はいわゆる城勤めなのですが、そうした主人公の家族の姿は、たとえば現代の役所勤めの父親を持つ家庭の姿に置きかえても、何の遜色もないものだったりします。
こうした時代物の傾向は、たとえば直木賞を受賞した乙川優三郎さんの作品なんかにも見られるものです。
●スウ
>あるぷさん
>時代小説家に外国文学好きは以外と多い
そうなんですかーなるほど。知りませんでした。
学生の頃、留学経験のある英語の先生が
「海外で暮らすと突然 日本万歳!になる人が多い」などと言ってました。
関係無いかもしれませんが関係あるかもしれないですね。<何が言いたいのか
>八方美人男さん
『蝉しぐれ』は時代不詳なんですか。用心棒のほうはハッキリ忠臣蔵の時代です。
でも時代劇だから古さを感じるかどうか、というのは関係無いみたいですね。忠臣蔵だってサラリーマン社会に置き変えたパロディ?も確かあったような。
むしろ昔も今も変わらないなあと共感する所がツボなのかもしれません。
現代の作家が現代の読者にむけて書く以上、今の感覚が入っているのは当たり前かも。ただ、「時代もの」と「歴史もの」では違う気はしますけれど。
時代ものは「人情」を描くときわざとらしくならない気がするので、そのへんが私は好きです。
そもそも私が「歴史物」好きとなったのは、彼『司馬遼太郎』のせい(いや、お陰)なのです。
作品全てを読んだ訳ではないのですが、私の読んだ限りでは彼は「無類の人間好き」なのでしょう。そうじゃなかったら、あんなに生き生きとした人物像は描けませんよ。
例をあげれば(1)「竜馬がゆく」(2)「花神」(3)「坂の上の雲」…。もう学校で教えられた歴史なんてどこかに吹き飛びます、あんな表面だけの歴史なんて意味がない!!「明治維新、ペリー来航、尊皇攘夷」こんな言葉と年号を覚えたからって、人生の役にたちゃしないって。それよりも20代や30代の若者が今の日本の原型を作ったって事のほうが、吃驚する事だし大事な事だと思うわけですよ。
(1)「竜馬がゆく」…文字通り坂本龍馬の一生を書いたものですが、司馬遼の世界、歴史を紐解くとしたら、まずこれを読んでみるべし!どこか憎めない、何処にでもいそうな少年が日本を変える大きな役割を果たします。ところでこの題名は“竜馬”になってるけど実際は“龍馬”が正しいらしいんです。何故敢えて“竜馬“にしたか…、きっと『龍馬像はこれだけじゃなくて色々な見方があるんだよ』って司馬遼は言いたかったのではないかと私には解釈できたんですが、本当の事を知っている人がいたら、教えてください。
(2)「花 神」…坂本龍馬とほぼ同時代に生きた大村益次郎の話です。微妙に話が交錯している所がにくい!!手塚治虫の「ひだまりの樹」が丁度同じ時代を扱った作品で、両方読むと更によく判るとおもいます。実はこれ、まだ読み始めたばかりなので、詳しくは語れなかったりします((*^^*)照れっ)
(3)「坂の上の雲」…乃木希典将軍(のぎ まれすけ)って知ってますか?有名な203高地《日露戦争》を指揮した将軍で、英雄とされています。…が、実は彼のせいでたくさんの兵隊が死んだ、という解釈の話です。(もうだいぶ前に読んだので間違っていたらごめんなさい)確か、英雄扱いにされたのは明治天皇が崩御されたときに、割腹自殺を図ったからだったと思いますが、司馬遼はそこにも何か考えさせるニュアンスで終わらせてるんですよぉ。
今回は幕末、明治を例に上げましたが、戦国時代の物もおもしろいです!彼が唯一書かなかった「第二次世界大戦」実際に体験した司馬遼にとっては、軽軽しく扱えなかったと何かで読んだ事があります。でも私は時代の生き証人としての彼の作品を読んでみたかったです。もう新作が読めないとは、残念で仕方がない…。
私も司馬さんの本は「北斗の人」(北辰一刀流の創始者、千葉周作のお話)からハマり、大好きです。司馬さんの小説は読めば絶対面白いというもので、とにかく文章がうまい、人物が底抜けに魅力的。「竜馬がゆく」なんて10巻まであるのにぐいぐい引き込まれて読み通さずにはおれません。
いま、新選組の土方歳三が主人公の「燃えよ剣」を読んでいますがこれを読んでいるとホントに燃えてきます。土方歳三は剣の達人 というだけでなく、純粋無比の“喧嘩屋”で、勝つために綿密な前調査、段取りを欠かさないし、今後は「剣の技よりも銃器戦」と知るや次の戦ではすぐ新式銃・軍服を揃え洋式戦闘の研究をするという・・・かっこいーなぁもう。
でもやっぱり大砲に白刃で挑む鳥羽伏見の戦いは見るに忍びなかった。単純に、どんな喧嘩、戦でもぐいぐい勝ち進む歳三が超かっこよくて私は好きだ。
「毒盛」として悪名高きボルジア家だが、意外にも実際には毒殺などというケチなことはしていないらしい。
この本は人物の細かい心情を創作して書く事をしておらず、史実に残っていることのみに忠実に、真実のチェーザレを描き出そうという著者の誠実さが伝わってくる。しかし慣れないうちはむちゃくちゃ読みづらかった。イタリア人の名前を覚え切れないし!
チェーザレは日本で言えば織田信長のような、周りには理解されない優れた頭脳と行動力の持ち主で、その権謀術数は本当に日本の戦国時代を見るようで面白い。
チェーザレがイタリアの小国を次々と手中に納めていく過程は小気味よかったが、それより私が惹かれたのは、女傑と言われ自ら剣をふるって応戦し続けた美貌の城主カテリーナ・スフォルツァ。 最後にチェーザレの手に落ちた時の文章が印象的だった。
「チェーザレは、自分の欲することをしただけだった。(中略)自分の初陣の戦利品として、それにふさわしい待遇を与えたにすぎない。」
感情的にならない乾いた文体が、かえってチェーザレの”優雅さ”を際立たせる。
しかし、お父さんの法王アレッサンドロ六世もチェーザレも、年をとったり病気になったりするとあれだけの権謀家がなんで失策ばかりやらかすのだろう。
でもそれも、あとから記録だけ眺める者の気楽さゆえ、思うことかしら。
「シベリアン・ドリーム」を読んでからこの本を引っ張り出してきました。「シベリアン・・」はイリーナのサクセス・ストーリーのみを著しているので、旧ソ連の困難な状況というのはよく分かりますが、ナゼそういう事になってしまったのかという事まではわかりません。
そんなこたあ新聞を読んでいれば分かる!という一般常識かもしれませんが、
とにかく私としては、この本の4章と12章を読んでまさに「そうだったのか!」と納得することができた部分を、イリーナを思い出しながら思いつくままメモしておこうと思います。
●食料難・モノ不足
イリーナもやったように、何日も前から家族総出て並ばないと物・食料は手に入らないのはなぜか。
1929年 スターリンが行った「農業集団化」によって、農業に熱心な農民のほとんどが虐殺された為、ソ連の農業は根底から崩壊してしまった。
熱心に働かなくても一定の給与がもらえるため、農業のみならず他の産業でも新しい技術を熱心に開発しようとする人は無く、古い技術のまま経済が停滞し続け、物資・食料は不足し続けた。
●ペレストロイカ
「立て直し」の意。あの時期私も頻繁に耳にしたが、どういう意味かは知らなかった。この、ゴルバチョフが行ったペレストロイカにより市場ができたのでイリーナはデザイン事務所を経営するラリーサに出会う事ができた。
●共産党員の実態
共産党がすべての実権を握るため、「イデオロギーに関係なく、出世主義者・金儲け主義者が共産党員になった」という。
共産主義は贅沢で華美な装いなどしないはずなのに、イリーナが共産党幹部の夫人に高級な服を仕立てたことを思い出す。
●少数民族の弾圧
イリーナのおばあさんも遭ったであろう少数民族の弾圧は、民族ごとなんの関係もない遠方に送り込んでしまうというひどいものだった。(イリーナの祖父母は、流浪の民なのに定住を押し付けられた)
●あのクーデター
イリーナもホワイトハウスに急行した1991年のクーデターは、ゴルバチョフの改革に危機感を抱いた政府高官8人が起こしたもの。エリツィンは反クーデター派の先鋒に立ちゴルバチョフを救出した。
ソ連を改革しようと努力し冷戦を終結させた功績を持つゴルバチョフ大統領が、なぜクーデターとか起こされてなんだかよく分からないうちに政権交代させられてしまったのかがやっと分かった。
●ソ連崩壊後の物価高騰
イリーナのお父さんが「前のほうがまだよかった」と嘆くくらいの激しいインフレはなぜ起きたのか。
旧ソ連では計画経済で、ある商品をつくるのは国内にひとつだけ、と決められていたため、商品の値段を自由化したものの資本主義のような競争がなく、ただ値段がつりあがっただけだった。
当時のアメリカのベーカー国務長官は、ロシア民主改革派の事を
「現実的な知識が乏しく、市場経済に関する彼らの見解は、思わず耳を疑うほど見通しの甘いものばかりだった」と著書で語る。
●ポンコツパトカー
混乱に乗じてマフィアが暗躍したとのこと。
取り締まるはずのパトカーはオンボロポンコツで、マフィアが悠々と高級車で走り去る場面を、イリーナも目撃する。
ロシアの今後はどのようになるのでしょう。注目したいと思います。
●その他 詳細は書きませんがこの2章を読んで印象に残った点です
・「ソビエト」という国名自体が社会主義の概念であること。
・なぜマルクス・レーニン主義を掲げた社会主義国では、個人崇拝が横行するのか。一党独裁の構造と危険性が改めて分かった。
・安全性を指摘するものがなく、チェルノブイリ原発事故は起こるべくして起きた。
・国民に対する「情報公開」がいかに重要か。
また、国民も積極的に事実を究明しようとする姿勢が必要。ゴルバチョフの掲げた「グラスノスチ」とは「情報公開」のこと。(もっとも、このお陰でゴルビーくんはソ連共産党と共倒れしてしまうのだが。)
などなど、平易な文章で大づかみに書いてあります。
著者の池上さんはこれだけを読んで理解したつもりにならないほうが・・・という感じでおっしゃってますが、とりあえず事の流れはよく分かります。今後もお世話になることでしょう。(2002/5/12)