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子供向けとあなどる無かれ、コレ読まないのはもったいない!という本を教えてください。

  1. 「穴」 ルイス・サッカー
  2. 佐藤さとる作品
  3. 「おりづるの旅」うみの しほ うみのしほ(バーバままさん)HP
  4. 「リンゴ畑のマーティン・ピピン」 エリナー・ファージョン
  5. 「点子ちゃんとアントン」エーリヒ・ケストナー
  6. 日本小国民文庫 世界名作選(一)〜山本有三編」
    その他オススメ
    「あらしのよるに」木村裕一(ドキドキもののオモシロ絵本。最終巻は涙モノ)
     きむらゆういち公式HP
    「折り鶴の子どもたち』那須正幹」 ・「折り鶴は世界にはばたいた」 うみのしほ 風太さんからの紹介

『リンゴ畑のマーティン・ピピン』エリナー・ファージョン/岩波少年文庫

スウ(2003.7.29)

●読むと幸せになる気がする
この、マーティンのすっとぼけ具合がとても気に入ってしまった。さすらいの歌うたいで無欲で口が達者で・・な所がフーテンの寅さんみたいだなと思ったりしたけど、寅さんよりもかっこよくておいしいところをちゃんと持っていくひとだった。

恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形に閉じこめられている少女ジリアンを、嫁に行かぬと決めた6人の娘たちが鍵を持って見張っている。そこへやって来たマーティン・ピピンが、娘たちに美しい恋物語を語り始める・・・その話自体も面白いけれど、短編集のように区切ってあるのではなく、あくまでマーティンが語る様子を忘れさせない作りになっていて、パターンになっている6人の乳しぼりむすめとマーティンのやりとりは絶妙。「語り」と「聞き手」の楽しさも存分に味わえる。
繰り返される「女というものは・・・」「男ってものは・・・」という言葉がいちいち的を得ていて思わずにやりとしてしまった。

マーティン・ピピンがまじめぶった説教くさい男だったらうんざりしてしまうけど、この飄々としながらツボを外さないところはちょっと理想の男性像だなあなんて思った。やや現実味はないけれど。それに比べてロビン君のヘタレ男ぶりは極端なようでいて身につまされる人もいるのでは。

この本は子ども向けの扱いになっているけれど、実際には「30歳の男性に向けて書かれた話」だそうで、そう考えるとなんだかすごい大掛かりなラブレターみたい・・と思ってしまった。それは、「わたしは男女のことをこういうふうに認識してます」と言っている感じがするので。
現実は物語から客観的に捉え得る、という事を改めて感じたし、読むと幸せになる気がするとてもいい感じの物語だった。リチャード・ケネディのさし絵はマーティンとむすめたちが遊ぶ場面が特に好き。

・6つのお話
<王さまの納屋、若ジェラード、夢の水車場、オープン・ウィンキンズ、誇り高きロザリンドと雄ジカ王、とらわれの王女>
この中で私の一番好きな話は「若ジェラード」。恥ずかしながらキスのところでうっとり。 「夢の水車場」もなかなかえぐる話でインパクトがあった。

(あくまでも私にとっての)お気に入りマーティン語録

――ジョーン「--だけど、男たちって、がんこだから!」
マーティン「子どもみたいにがんこなんだ。だから、子どものように、うんとむちでたたいてやるがいい」
ジョーン「あれ!でも―子どもはたたいちゃいけないでしょう。」
マーティン「これも、あんたのいうとおり。うまくなだめすかさなくちゃいけない。」

――マーティン「女というものは、男のすることをほうっておくことはできないものかなあ?」

――ジョスリン「ピピンどの、あんたは、何か正直にいうことがあるのですか。」
マーティン「正直のところ、わたしは一日に、三度は腹がへります。」
そこで、みんなは夕食をとった。

――ジョスリン「(アダムとイヴ)両方ともわるいというのはどういうわけです」
マーティン「---この世には、人間がひとりでは完全にはつくりあげられないものが、二つある。一つは、その"せい"というやつ。(中略)イヴが、アダムを誘った。そして、もっとりこうでしかるべきアダムも、誘われることには大乗気だった。(中略)もしイヴがそれを知っていながら、アダムを誘わなかったら、アダムはけっしてイヴを許さなかったろう。そして、もし、そのことをイヴにわからせてから、その誘いにのらなかったら、イヴは、けっしてアダムを許さなかったろう。
(中略)そして、ふたりでかかって、世界で最も完全なあやまちをつくりだす。」
 

掲示板 〜マーティン・ピピン談義〜

くら(2003/08/13)
感想を拝見しました。
私、これ大好きなんですよ〜^^
小さい頃から、何度繰り返して読んだことか。
でも児童書というよりは、結構大人味ですよね。
何でそんなに好きなのか、自分でもよく分からないんですが。
ファージョンは他の作品もお勧めです。
他のは子供へのお話が多いです。

スウ(2003/08/13)
大好きですか〜(ニコニコ)
私もとても気に入ってしまいましたよ。あの毎回「むすめたち、むすめたち、むすめたち!」と出てくるお父さんもいいですよね。いろんなところで語感が気持ちよかったりもします。
小さい頃から・・ですか、うーん私がこれを小さい時読んで気に入ったかどうか、全然わかりませんねえ(笑)
やはり児童書と銘打ってあるものは(これは対象が中学生以上となってますけど)児童のころに一回読んでおきたいものです。私はあまり小さい頃自発的に本を読む子ではなかったので、今考えると後悔しきりです。

テハヌー(2003/08/13)
「リンゴ畑〜」の感想を拝見いたしました。
本当に素敵な言葉や言い回しが沢山ありましたね。思わずうなづいてしまったり、鋭い言葉だったり。私もメモしておけば良かったかな、とスウさまの感想を拝見して思ったりしました。また感想の中で書かれてらっしゃる、このお話自体が壮大なラブレターであることって私も後で知って納得しつつもロマンティクな物語との意味深長な相乗効果でなんだかじーんとしてしまいました。ここらへんは大人としての感想かもしれないですが(^^')。
ロビン君の駄目っぷりは、いやはやというか。でもこんな奴はいそうな気もするし(笑)。そして挿し絵は本当に素敵ですね。私もすごーく気に入りました。「ヒナギク野〜」の絵も素敵でしたよ〜。
どのお話も皆好きですが、「夢の水車場」「誇り高きロザリンド〜」などが印象的でした。いわゆる身につまされ感情移入が高かったりもして(苦笑)。

スウ(2003/08/18)
ほんと、素敵な言葉や言い回しがたくさんありましたね。
アップしたもの以外でも、たくさんあったのですが
図書館で借りたもので早く返さなくてはならなくなり、その箇所を探すことができませんでした。
付箋を貼っておくべきでしたー。

> ロビン君の駄目っぷり >こんな奴はいそうな気も
そうなんですよねー。で、どうして直接助けにこなかったの?という
ジリアンの問いにちゃんとその駄目っぷりで答えを出してるんですよね
行き届いてるなあなんて思いましたよ(笑)

>「夢の水車場」「誇り高きロザリンド〜」
これはそうですね、身につまされ度が高いお話でした(^^;
でもやっぱり最後は力技で幸せ!って感じがまたよかったです。

くら(2003/08/18)
やはり「水車」と「ロザリンド」が人気(というか、身につまされる)ようですね^^;
私もどちらも好きなのですが、実は「オープン・ウィンキンズ」が一番好きだったりします。

テハヌー(2003/08/18)
[オープン・ウィンキンズ」というと弟達に比べて目立つ取り柄を持たなかった長兄のお話ですよね。
あのお兄ちゃんはいいですね。現実的に格好いいと思いました。ラストのどんでん返し(という言い方でいいのかな…)にもドキドキしたなあ。女性の葛藤とか反応などもある意味リアルでありましたし。

スウ(2003/08/19)
>「夢の水車場」
は、すべての夢見る乙女に対しすごいものを突きつけてきますね(^^;
くらさんは「オープン・ウィンキンズ」がお好きなのですか。
あれも直球で幸せはやってこない(笑)ひねりが加わってますよね。
私は「若ジェラード」の、「・・サクラが咲きました」とささやくところなんかうっとりしちゃって好きでした(^^*

> あのお兄ちゃんはいいですね。現実的に格好いいと
そうですね。すごく美しい話で、長兄が決して自分を見失わないところなんか素敵ですよね。
このまま、どうなるの?って感じで読んでました。
ほんと、女の葛藤という意味ではすごくリアルな話でしたわー。


『おりづるの旅〜さだこの祈りをのせて〜 うみの しほ/狩野富貴子 絵/PHP研究所

スウ(2003.8.3)
●戦争を知らないのに戦争で殺された子
さだこは2歳で被爆し、その10年後に原爆症によって亡くなった。 
禎子は病床で願いを込めて折り鶴を折り続ける。
生き残ったもの達はそれを「平和への祈り」の象徴としてゆくけれど、禎子にとっては「死にたくない、生きたい」という祈りだったと思う。同級生が中学校にあがるなか、自分だけが痛さ・苦しみに耐え、病床にあるという現実。人生が豊かに愉しくなってゆく、花開く直前。あらゆる希望をもぎ取られて、どんなにか悲しく悔しかったことだろう。それを思うと泣けてきてしまった。

●子供自身からの訴え
折鶴は平和への祈りの象徴となり世界に伝わり、子供たちの運動によって記念碑が建てられる。それは、大人が起こした戦争で子供が死んでいく、ということへの激しい抗議ともなっているわけで、すごく重要な意味を感じる。
大人になると、「戦争はいけない」という事が分かっていても、戦争は無くならないな・・という無力感を感じずにはいられない。けれどこの実話に触れると、何も出来ないばかりじゃない、訴える事自体が重要だ、という事を知らされる。

この本によってこんな事が現実にあった、と知る子どもが一人でも多くなればと思う。
「おりづるの旅は まだ おわらない。」という結びが、昔話では無いことを強く突きつけて胸に刺さる。

この本はノンフィクション『折り鶴は世界にはばたいた』をもとにした絵本です。この本について上記一覧内の「風太さんからの紹介」も是非読んでみて下さい。

佐藤さとる作品について

(花日和vol9より)
●心がホカホカすること、請け合い!
私の好きな作家に「佐藤さとる」さんがいます。童話や児童文学を書いています。なかでも有名なのが"コロボックル"を題材にしたもの。昔、アニメにもなりました。
 童話というと『むかしむかし・・・』と始まるものが多いですが、彼のはごく身近なそこら辺の出来事を題材にしたものが多いので、小さい頃読んだときはコロボックルもいつか私にも見えるかも!なんて思ってたくらいです。

 彼の作品の特徴は、"魔法"とか"不思議な・・・"とかが多いことです。
そんなことがあったらいいな、なんて読み終わるたびに思えること、心がホカホカすること、請け合い!
 図書館の「児童文学」のコーナーに行けば間違いなくおいてありますが、講談社文庫(現在は青い鳥文庫)でも出版されています。「誰も知らない小さな国」「豆粒ほどの小さな犬」「星から落ちた小さな人」「不思議な目をした男の子」。題名だけじゃ分からないので、コロボックルの国のことを少しだけ・・・。

 その国は町外れの丘の続きに、おむすびをころがしたような形の、ちっぽけな山にあります。からだはみなさんの小指くらいしかありません。
そんなに小さいくせにとてもすばしっこくて、目にもとまらない速さです。コロボックルのお城は、"せいたかさん"というコロボックルの味方の人が建てた小さい小屋にあります。そこには「役場」や「公会堂」「学校」「放送局」まであるのです。
町自体は、山の地面の下にあり、かたい岩をくりぬいてきれいな家がたくさんかたまってできています。(コロボックルのトコちゃん、'はじめに'より抜粋)


ほーら、読みたくなってきたでしょ!?
結婚もしたことだし、もし子供ができたら、ぜひ一緒に読みたい!!と思う今日この頃です。
そうそう、インターネットで"佐藤さとる"を検索したところ、ありました!
ここ10年ほど、彼の新作は出てないものと思っていましたが、つい最近も出されていました。早速インターネット本屋で予約をしてしまった・・・

いし(花日和vol 12号より)
『てのひら島はどこにある』佐藤さとる(講談社文庫)

●現実と空想の織りなす名品
以前『花日和』で鯵さんが佐藤さとるの本を紹介していたので、私も探してみました。
この物語では「いたずら坊主にはいたずら虫の神さま」がいるというお話から、男の子がいろいろ考え、小さな思いつきが広がっていきます。

「現実と空想の織りなす名品」と解説があったけれど、子どもの頃 空想が大好きで、それが現実になったらどんなに面白いだろうと考えた私には、とても楽しいお話でした。後日談もよくて、心地よい余韻が残りました。
この短編は『誰も知らない小さな国』と姉妹作というので、特に鯵さん、もしも読んでいなかったらぜひ手に取ってみてください。

佐藤さとるファンによる公認HP


 

『穴-HOLES-』ルイス・サッカー/幸田敦子 訳/講談社

スウ (花日和12号より)
●たたみ掛ける穴ワールドにすっぽりハマル
いじめられっ子のスタンリーは、いつも「まずい時にまずいところに」いたために、不運に見舞われてきました。とうとう無実の罪で少年院行きに!
実は、スタンリーのお父さんも、おじいさんも、ひいおじいさんも、ことごとくぜーんぜんツイてない人生なんです。これもみんな、
「あんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒のひいひいじいさんのせいだ!」
というわけ。つまり、先祖代々の呪いがかけられているらしいのですが・・・。

物語が複数構造になっていて、ひとつひとつの言葉やエピソードに気の効いた仕掛けが沢山あって気が抜けません。そして、その複数の物語が最後の「穴」めがけてしゅっ!と集約されていくのがたまらなく面白くてワクワクします。

どこかシニカルな子供の世界の処世術、切ない恋のゆくえ、体を鍛えたり、伴侶を選ぶのに大事なこと、などなど心に伝わってくる事が沢山あり、(それもまた話のポイント全てつながっていたりする)単純に楽しませるだけの話ではないのです。

訳も上手くて、テンポの良い文章で読みやすいのでとってもお薦めです。

※この本はきなさんからのオススメでした〜
〜掲示板 『穴』談義〜

●くら (2002/7/4)
私もかなりお勧めです!弱者起死回生ものとでも言いましょうか。何と言っても、ユーモアがあります。微妙に湿ったユーモアが。

●スウ(2002/7/5)
ほんと!童話というにはもったいない感じ。(借りた図書館では童話扱いになってました)
訳のひとも上手いのではないかなー すごくリズム良く進む文章ですよね。
「あんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒のひいひいじいさん」って、英語ではどんなかんじに書いてあったんでしょーね(笑)

●きな(2002/7/5)
「微妙に湿ったユーモア」(byくらさん)、あ!なるほど。
ブラックユーモアとも違うし、奇妙な味ってわけでもないし、何て言えばいいの?と思ってたんです。この表現 納得〜!

>「あんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒のひいひいじいさん」
って、英語ではどんなかんじに書いてあったんでしょーね(笑)
それはですね(笑)、
「Stanley's no-good-dirty-rotten-pig-stealing-great-great-grandfather」でした。
英語版、買ったんです。面白いお話だし、難しい英語じゃないから大丈夫と思って。
で?もちろん(きっぱり)買ったままです!←墓穴をほる私

この翻訳、上手いですよね。サムの「直してあげるよ」のところ。英語版では、ずっと「I can fix that,」なんです。
でもこの翻訳だと、窓やドアなどの物の時は「直してあげるよ」。そして最後の 心を、のところはひらがなで開いて「なおしてあげるよ」になってるの。
細やかだなぁ、と思いました。

●くら(2002/7/8)
きなさん >スウさん スウさん、穴にはまってしまいましたね。ふふふ。
「微妙に湿ったユーモア」、何をいわんとしたか分かって頂けたでしょうか^^; 私は言葉での表現があまり得意ではないので、いつも妙な言い回しになるんですが。

『穴』はアメリカの小説(ですよね?)ですが、イギリスの小説には、特にこういう感覚のユーモアがある気がします。
少なくとも、「カリフォルニアの空の下」的な爽やかさはないと思います(笑)

※この文章はおふたりの了承を得て掲載しています。
くらさんのサイトはコチラ→「3つ数えて目をつぶれ」


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