●せつない旋律の物語
アル中で情緒不安定の妻は、セザンヌの肖像画に歌を歌い、お風呂に水をためて金魚を泳がせる。そして紺くんの木に紅茶やトマトジュースをあげる。
ホモの夫は清潔好き。完璧で生活感の無い部屋に暮らす二人。
夫の恋人紺くんは野趣あふれる感じのかっこいいワカモノ。
割り切って結婚したはずだったけれど、いつしかそれぞれが、お互いの愛情に気づき始める。その微妙なこころの動きを、繊細に、丁寧に描いているところがいい。
三人以外の友人や両親がまともすぎるほど世間的な常識人なので、全体のバランスがとれて無理なく読める。
それが却って、三人の奇妙な生き方・暮らし方の真実を際立たせている気もする。
最後に出てきたビリージョエルの「SHE'S GOT A WAY」も、感激した。
”メロディーだけで泣きたくなるような”という表現も。私も大好きな曲なので。
「彼女は独特の方法で僕を癒してくれる
それが何なのか分からないけど
僕に分かることは、彼女なしでは生きられないということ・・・」
この歌詞を意識して出したのかは分からないけど、それぞれが、他のふたりを必要としている関係。
他の二人なしでは生きられない・・・ という意味で、ぴったりの曲だと思う。
不思議な透明感につつまれた、せつない旋律が聞こえてくるお話。
三人が今もどこかで脆くこわれそうに、でも幸せに暮らしている、そんな気がしてしまう。
●ミッキーさんのてがみ 何年か前に「きらきら〜」がおもしろいというのを聞いたので 少し読んだのですが、その当時、私には面白いと思えなかったんです。 ところが 先日なぜか図書館で手にとって借りてしまったんです。 で読んでみたら おもしろい。あの発想が。 わたしはもともと現実主義者なので、小説を書けと言われても絶対書けないんです。そういう空想力ゼロの私にとって ・紺くんの木に紅茶をあげて それを木は一番好きみたい ・絵に向かって歌をうたってあげる ・金魚を水槽で泳がせてみる など いろんな、私では考えられないようなエピソードがてんこ盛り。 逆に「なぜ 昔はこれを読めなかったんだろう」と思うくらいです。 今でも 短気なのですが昔はもっと短気で、あまり展開のない本は読めなかったのかもしれません。 |