江國香織

  1. 『きらきらひかる』
  2. 『冷静と情熱のあいだ』
  3. 『いくつもの週末』
  4. 『流しのしたの骨』

『きらきらひかる』/江國香織/新潮文庫

スウ (2002/5/5)
●せつない旋律の物語
アル中で情緒不安定の妻は、セザンヌの肖像画に歌を歌い、お風呂に水をためて金魚を泳がせる。そして紺くんの木に紅茶やトマトジュースをあげる。
ホモの夫は清潔好き。完璧で生活感の無い部屋に暮らす二人。
夫の恋人紺くんは野趣あふれる感じのかっこいいワカモノ。

割り切って結婚したはずだったけれど、いつしかそれぞれが、お互いの愛情に気づき始める。その微妙なこころの動きを、繊細に、丁寧に描いているところがいい。
三人以外の友人や両親がまともすぎるほど世間的な常識人なので、全体のバランスがとれて無理なく読める。
それが却って、三人の奇妙な生き方・暮らし方の真実を際立たせている気もする。

最後に出てきたビリージョエルの「SHE'S GOT A WAY」も、感激した。
”メロディーだけで泣きたくなるような”という表現も。私も大好きな曲なので。

 「彼女は独特の方法で僕を癒してくれる
 それが何なのか分からないけど
 僕に分かることは、彼女なしでは生きられないということ・・・」

この歌詞を意識して出したのかは分からないけど、それぞれが、他のふたりを必要としている関係。
他の二人なしでは生きられない・・・ という意味で、ぴったりの曲だと思う。

不思議な透明感につつまれた、せつない旋律が聞こえてくるお話。
三人が今もどこかで脆くこわれそうに、でも幸せに暮らしている、そんな気がしてしまう。
●ミッキーさんのてがみ
何年か前に「きらきら〜」がおもしろいというのを聞いたので 少し読んだのですが、その当時、私には面白いと思えなかったんです。 ところが 先日なぜか図書館で手にとって借りてしまったんです。
で読んでみたら おもしろい。あの発想が。

わたしはもともと現実主義者なので、小説を書けと言われても絶対書けないんです。そういう空想力ゼロの私にとって

 ・紺くんの木に紅茶をあげて それを木は一番好きみたい
 ・絵に向かって歌をうたってあげる
 ・金魚を水槽で泳がせてみる
など いろんな、私では考えられないようなエピソードがてんこ盛り。
逆に「なぜ 昔はこれを読めなかったんだろう」と思うくらいです。

今でも 短気なのですが昔はもっと短気で、あまり展開のない本は読めなかったのかもしれません。


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