CADの授業
これまで3回ほど、他大学の設計授業について講演会で聴いたことがあるが、先日新たに、ある大学の設計授業に関する講演を聴く機会があった。 その大学の機械工学科では、1年から製図教育が始まる。1年では製図ルールや製図の授業が行われる。2年では減速機を設計製図する授業だ。これらはドラフタを使用する手描きで行われる。そして3年前期でCAD・CAMの授業が行われるという。
CADの授業だが、本年度の課題は卓上旋盤だ。以前に卒業研究で製作された物がモデルだという。先ずはCADの使い方から授業されるわけだが、別にEラーニングのサイトを立ち上げて、映像で説明するので、授業に出られないものでも学習が可能なようになっている。
CADの次はCAEの授業だ。ソリッド構造の応力解析、シェル構造の応力解析、そしてスライダクランク機構の機構解析と、3回で済ませる。
「オーソドックスで、教員の強いこだわりが感じられる授業」との印象を持った。多分、CAD・CAM・CAEを除けば、40年前に我々が受けた授業と大差ないのでは思う。
CADは他学科の学生にも人気があって、4年になって研究室に配属されれば使用可能になっている。テキストも独自に作成して、無償で配布している。より高度なスキルを得たい学生には、本学で発行している、「Pro/ENGINEER Wildfire2.0による実践3次元CADテキスト〜基本操作からトップダウン設計まで」を紹介しているそうで、割切りもある。
本学では、この本がスタートだ。トップダウン設計はバイブルのように信仰されていて、2年間の4学期に、ゴミ箱・パワーショベル・スピンドル・シリンダと教材を変えて繰り返し教えられる。今年の2年秋学期はCAE授業に変わったので、パワーショベルは無くなったが。
私の場合、このCADを常用しているわけではないが、何年も授業を手伝って学生のトラブルシュートをしたり、先述の本の執筆者でもある、非常勤講師から直に様々なスキルを学んだりした。大変勉強になり、私のための授業の様だった。
アリ地獄に落ちた3年生が助けを求めにきた。お決りのエラーメッセージが潰しても潰しても出てくる。「最初からやり直したら」というには納期が迫りすぎていた。すっかり気弱になって「毎年何人くらい落ちるんですか?」と訊いてくるから、「死ぬ気でやれよ!」とハッパをかけた。このCADは3Dが完成しないと、2D図面に手をつけられないからだ。 その学生は無事に単位を取得できたが、時々翌年も授業に顔を出す学生を見かける。ある学生の場合、原因が図面なのか計算書なのかは知らないが、元々不得手なCADのスキルは簡単には向上しない。今年もダメかとハラハラして見守っていたが、無事卒業していったようだ。
機械設計技術者試験という資格があって、3級は実務経験がない学生でも受験可能だ。4力学が必修でない本学では、学生も受験を躊躇するほどの資格だ。試験でCADの概念的な知識は要求されても、スキルは要求されない。 戻る Home |