2009年仏像シリーズ第37作



大報恩寺(京都)<准胝(じゅんてい)観音立像> 重文

     このお寺は京都の西陣の家並みの中にあり、本堂は応仁の乱にも焼けることなく創建当時のままに残され洛中最古の建造物として国宝となっている。ここには快慶作の木造十大弟子立像 10躯や肥後別当定慶の作による、木造六観音像 6躯等が重文として残されている。特に等身大の六観音(聖観音、十一面観音、千手観音、如意輪観音、馬頭観音、准胝観音)全てがそろって残されているのは珍しいとのこと。この六観音は北野天満宮境内経王堂にあったものを江戸時代に当寺に移されたものである。これらは彩色がされず無垢の木のままの作品でもある。
 上記私の版画では手が二本しか描かれていないが、准胝観音には十八本の手が付いており手の本数が多いことから千手観音と混同される場合もある。准胝観音という名前もあまりなじみがないが、仏母として人を悟りに導いて数限りない仏を誕生させる宇宙の神性の擬人化であることを示す。心の働きを清浄にするほとけであり、「仏の母」という名から、安産、子授けの功徳もあるとされている。
 仏母というイメージよりきりりとして引き締まったお顔立ちであり、孤高とした威厳を感じさせる。しかしそれでいてどこかに心の温かさを感じさせる。以前に取り上げた鞍馬寺の聖観音立像と同じ作者であり髪型にも共通するものがある。百年に一度あるかといわれるような世界的経済不況が広がり、世の中には次々と様々な問題が起きている昨今、仏母なるこの仏に少しでも癒しを求め世の中の平安を心から祈りたいものである。
 昨年までの失敗を反省し今年はインクジェット用はがきを20枚とし他の85枚を普通紙のはがきを用いた結果刷りは大分うまくいった。しかし1色目に中性インクの色出しが思うようにいかなかったため急遽半分余に水彩絵の具を用い2色め以降中性インクを用いたところそのはがきは以降全て色づきが悪くなってしまい、結局半分余が失敗作となってしまった。全て中性インクを用いた半分弱が成功しただけである。毎年のことながら未だに刷りには試行錯誤を繰り返している。

番外仏像作品(興福寺・阿修羅像)