2008年仏像シリーズ第36作



醍醐寺(京都)<如意輪観音坐像> 重文

     このお寺は京都の南の伏見区にある大きなお寺であるが、中世には兵火により一時衰えたが、豊臣秀吉の”醍醐の花見”以降復興し境内には国宝や重要文化財が多数残されている。
 如意輪観音には片膝を立てて座る六臂の像が多く、六臂像は6本の手のうちの2本に如意宝珠と法輪とを持っており、これが尊名の由来にもなっている。如意宝珠はあらゆる願いが意のままにかなうという不思議な珠。法輪とは戦車の車輪にたとえ、仏の教えである智慧の力で人々の煩悩を破壊する仏法の象徴となったものである。つまり、如意宝珠と法輪を持って人々の煩悩を打ち破り、あらゆる願いを聞き届けてくれるのが如意輪観音とのこと。誠に有り難い仏様である。
 また、頬にあてた考えるポーズの手を思惟手(しゆいしゅ)と呼び、智慧の象徴でもあり如意輪観音の特徴のひとつである。広隆寺・中宮寺の弥勒菩薩なども如意輪観音ではないかという説もあるとのこと。
 ふっくらとしたお顔立ちで、頬に手を当て物憂げに静かにたたずんでいる姿には、心のおおらかさを感じさせ、全てを抱擁してもらえるようなどことなく心の安らぎを覚える。
 様々な事件がつきない昨今、人間の煩悩を打ち破り、私達に智慧と幸福をもたらしてくれることを静かにこの仏様に祈りたいものである。 
 仏像作品を始めて何年にもなるが、毎年なかなか思うように作品を仕上げられないでいる。以前からインクジェット用はがきは私の木版画には向かない、と認識していたがやっぱり本年もその思いを強くした。発色がよいのが取り柄だが、刷りの回を重ねるに従い色つきが悪くなり、最後のシメの色が思うように付かず作品を台無しにしてしまっている。来年こそはこの反省を生かしたい。