わん声犬語 (2005年9月25日

 蟹捕り名犬”かな”ちゃんに、
”やや”ちゃんが弟子入りした。

かなちゃん。  前回も主役は私でした。
まだ観ていないのでしたら、そちらを観てからにしてね。
                              かな

かなちゃん。  2006年7月30日の増補です。
                  かな


バラス島から視た鳩間島
(こんなに珊瑚の殻が集まっているのでそう思うのだけれど、植物が写っているので、バラス島ではないのかなぁ?)
 かなちゃんが暮らす鳩間島と対岸の西表島との間に、美しい海に囲まれた無人島のバラス島があります。

 かなちゃんはこの島は好きではありません。

 その理由は
「暑くっても、日陰がない」
からだそうです。

 でも、本当の理由は
「掘れない事はないけれど、爪が、肉球が痛い!」「痛いのを我慢して掘ったところで、蟹さんがいない!!」
かららしいです。



     鳩間島の海。
                    ©磯和

 かなちゃんは、鳩間島のこの海も好きではありません。
この海の色を素晴らしいと思えないのは、色盲ですから仕方ないのですが、実は、カナヅチなのです。塩はわんこの躰に悪いのです。
 それに、蟹さんがいる浜ではないからのようです。



   鳩間島の海。
                
©磯和

    と言う事で、
   この海も「好きやない!」そうです。



中森の案内石碑。  かなちゃんが暮らす民宿”まるだい”さんからトコトコ歩いて標高30Mの小高い丘が中森です。

 ここで今日はのんびりしようとやって来ました。

 風は爽やか。心は弾む。
「う〜ん、煙草が美味い」
                 煙草 うるま (旧箱)

       家で吸うと鉄夫おじさんが
      「こらぁ〜!!煙草なんか躰に良くない。
      吸うな!」
      って怒るので、この石碑の横に”うるま”
      と灰皿を埋めてあり、掘り出して隠れて吸
      っているようです。

      「名人芸の応用編ですわ」だってさ。




             オリオン・ビールの灰皿

      ちなみに鉄夫おじさんは、お酒は公認と言う
     より、勧めます。
      何しろ、
     『
「コーラより栄養があるんだっ」と自信たっぷり』と
     十歳の頃の孫娘さんに言った定一お爺さんの長
     男坊さんですから




     中森からの眺め。
                     ©磯和

 一服の後、豊かな気分になり、木々の匂いや、潮の匂いを嗅ぎ
ながら、ウトウトし始めたかなちゃんだったのですが・・・。



        賢くなった、かなちゃん。



 あれ?
下の集落でややちゃんの声が聞こえる。
あぁ、そうだった。
今日は、ややちゃんに実技を教える日だった。


 ”モノを教える”ほどの自信がついたかなちゃんは、前回のような情けなそうな顔をする事がなくなりました。
かなちゃんの後姿。
                  ©磯和



暢気に寝ている場合ではないと・・・。

 ややちゃんの所に、かなちゃんは小走りで行きます。
     ビーグル犬の ややちゃん。  西表島の学校でかなりの問題犬だった三歳のややちゃんは、鉄夫おじさんが里親になり、隣島の鳩間島に七月頃やってきました。

 来た当初、妹さんから『
「吠える・噛み付く」の凶暴な子』『ビーグル犬ってどう躾ければいいの?っていうより宿泊客が今にも噛まれそうになったので困っている」とのHELP・・・』電話が孫娘さんにかかって来たほどの悪餓鬼犬でした。
 でも、今は
「かな義姉ちゃんや、鉄夫おじさん、純子おばさん、たんまに来る孫娘さん達、島の人達の”愛情”のおかげでひねくれ者ではなくなった」
と、申しております。


「一時は、このままでは・・・どないしょうかなぁ?って思い、鉄夫おじさんが里子の里子に出すにはしのびないので、
「すみません・・・私が出て行きましょうか?」って泣きそうな顔にな』りもしました。
 まだ、私から見ても、ちょっと変こだけれど・・・
時々ひねくれているけれど・・・
とっても良い義妹です」
      ・・・かなちゃん。



浜に行く。
                  ©磯和
 島には六〜七箇所の浜があります。
 この右手にも白い砂浜が広がります。

 ここは屋根の上のシーサーさんさえ目を丸くして「まいりました」って言うかなちゃんの土俵です。

 先日、理論講義を終え、今日は野外講義の実習です。


かなちゃん、蟹さんのいる穴の見つけ方を、ややちゃんに教える。
「ややちゃん、砂をよく視るとね」

「よ〜く見たらよいのですね」

「っ これこれ、そんなに顔を砂に近づけては、視えるものも視えないですよ」


 ・・・なんやねん!よう見ろ 言うたくせに・・・
ブツ
ブツブツ・・・



             蟹さんの居る穴の入口。
「こんな風にポコっポコって少し砂が盛り上がっている穴があるでしょう」
「おまんな。ほんで それがどないしましてん」
「これが、蟹さんがお住まいになっていらっしゃる所の入口なのですよ」
「ほんで?」
「それでって・・・。
ここを掘ると、蟹さんが捕れるのよ」
「掘らんと、アカンのんけ?」
「・・・・・」
「掘らな 蟹さん 捕られへんのんか って聞いてんねんやんけ」
「掘らなくても・・・蟹さんが外出されるまで待つていても・・・」
「ほら、みぃ、捕るだけやったら、他にも方法あんねんやんけ!」
「あのね。先日の講義は
”『浜に出てカニを掘り当てるですよ。ですから今日はその極意を伝授しようと・・・」
「判ってまんがな。ちょっと からこうただけやおまへんか」

 とか何とか、名犬
(名人)と弟子の会話とは思えないほどの親密な関係を思わす(?)やり取りがありまして・・・。



指示するかなちゃん。  う〜ん、中々の技量と見たかなちゃんは
「そうよ、その調子で掘るのよ」
掘り始めるややちゃん。

「こんなので良いの?」

「もう少し掘れば、蟹さんが出てくるわよ」

「じゃぁ、もう少し続けるね」
掘った穴を覗いて。

 ほんまに、この奥に蟹さんがいてんのんかいな?
 かな義姉ちゃん、穴 間違いよったんちやうやろか?
 まぁ、名犬の言うこっちゃさかい、ここは素直に従ごうとこか。
掘り続けるややちゃん。

お〜い、蟹さんよぉ〜って呼んでも返事なんか来ぇへんわな。

 せやけど、ここまで来たら、蟹さんなんかどぉ〜でも良ぇようになってきたわ。

 穴掘りって ごっつう面白いやんけ。


「かな義姉ちゃん、もうちょっと掘ってみるわ。かまへんやろ」
ややちゃんの後で・・・。  ややちゃん 
どこまで掘るのかしら?



 え〜、こんなまともに砂をかぶる所にいるのも何なので、帰宅後、かな名犬にお聞きしましたら。


「砂、そのものを嫌いではない」

「ごもっともです。嫌いじゃ蟹捕り名犬になれませんからねぇ」

「飛んでくる量。飛んでくる勢い。飛んでくるリズム。そして、砂の広がり方。これを躰で受けて知る事により、弟子のややちゃんが肉球を痛めずに効率良く穴を掘っている事・・・すべて解る」

「いゃ〜ぁ、さすが名犬。
で、臭い尻の穴をまともに見ないですむように横向きになってるんですね?」

「それは、正しい」

 との事でした。
                      聞き手 浮



 どうもややちゃんは蟹さんを捕まえる事よりも、別な事を考えているような気がするなぁ。
 でも なぁ〜 真剣にやっているしなぁ〜


 かな名犬は穴掘りを続けるややちゃんに声をかけて良いものかどうか悩んでいるようです。



    掘り続けるややちゃん。心配そうに見るかなちゃん。
    「あの〜 ややちゃん、掘るのを止めませんか?」


・・・ここで止めたら、女がすたるちゅうもんやおまへんか。
   だいたいやなぁ、蟹さんが外出している穴を教えたんは、
   何処のどなたさんでしたんや。
   もうちょい掘って、生き埋めにでもなったら、名犬かな
   義姉ちゃんも反省しよるやろ・・・


「あの〜 ややちゃん お願いですから もう掘るのを止めませんか」

「あの〜 ややちゃん お願いですから もう掘るのを止めませんか」

「あの〜 ややちゃん お願いですから もう掘るのを止めませんか」

「あの〜 ややちゃん お願いですから もう掘るのを止めませんか」

「あの〜 ややちゃん お願いですから もう掘るのを止めませんか」

「あの〜 ややちゃんお願いですから もう掘るのを止めませんかぁ〜」



”伝授法”の研修の為に来島して、名人とその愛弟子を見ていた浮と游は
 浮
 まぁ、うちみたいな凡犬でも、游には難儀しとるぐらいやさかい、名犬でもモノを教えるって、ものごっううムズカシイねんやろなぁ。
 まぁ、游に教えるモノなんか持ってないので、うちには関係ないけど・・・。
  游
   あんな風にやさしい言
  葉で言うてくれたら、う
  ちでも浮姉ちゃんの言う
  事聞くのに・・・。
   でも、浮姉ちゃんから
  学ぶような事なんて何も
  ないか。



かなちゃん。 「やめ〜い!
や、
止めんかい!
 いいかげんにやめんと、ド頭 かち割んぞ!!


 帰るぞ。帰って、
ビール
飲もうぜ!


 さっさ、客人の浮さん游さんにも一缶づつおまっさかい、一緒に”まるだい”に帰りましょう

         ・・・あっ、怒りよったわ・・・・
                    ややちゃん。


         ・・・「やや、止めんかい」の
         ”や
や”は名前を呼んだのか?
         怒りのあまりに、どもったのか?
         どっちやと思う?・・・

                                      游。

         ・・・「そんな阿呆な質問すなよ。
         ビール缶 埋められたら わしら 
         よう堀りだせんさかい」・・・

                                浮


                 オリオン・ビール 四点



        山羊さん。
                      ©磯和

 ほぉ〜、終わったらしいのう。
まぁまぁ、仲の良い蟹捕り名犬と穴掘り達犬のコンビじゃのう。
 して、あの見慣れぬ、胴長短足耳だれ小太りの二犬は、何しに来たんかいのう。



     シーサーさんとそのお弟子さん。

      庭先で横たわるかなちゃんを見ながら
     「わしにも、弟子が来たが・・・・」



お疲れの かなちゃん。  愛弟子ややちゃんに声を大きくしてしまった自分を少し情けなく思い、ビールも廻ってきた事もあり、お疲れのかなちゃんです。

 明日は、中森に行って、静かに煙草をくゆらす予定ですが、犬
(人)の良いかなちゃんですから、隠れて煙草を吸う方法をややちゃんに御伝授するかも。



   美犬になった かなちゃん。
美人(犬)賢人(犬)になったでしょう?



 
写真の下に ©磯和 と記しているものは、写真集 『鳩間島』 からいただいたものです。

 本書の購入につきましては、自費出版の写真集ですので、本書を出された磯和俊宏さん isowa728@oregano.ocn.ne.jp に直接お聞き下さい。

 尚、『ほんなら ほんでも』の「8月21日 増補分」の2冊目に、本書を載せています。


 ”オリオン・ビール”の写真は了解を得ずにオリオン・ビール株式会社さんのHPからいただいています。
 ちなみに、当時は瓶ビールでしたし、銘柄
(品種)は一つだったように思います。

 あとの”うるま””灰皿””浮と游”の写真以外は、前回同様、孫娘さんから『
今回は海岸でのカニ堀講習の様子をお届けします。と言う事で送られてきたものです。


 ややちゃんがややこしい河内弁を話すのは、この孫娘さんが時々話すからなのかも知れません。
 叔母さん
(定一さんの末娘さん)がやっている『はとま(お店の場所は北河内)に『時々、私も遊びに行った(虎キチなので年に何度か甲子園で騒いでます)ついでにお店手伝ったりしてます。
との事なので・・・。

 『家のシーサーは7月に、一部瓦の補修を行った際に、増えちゃいました。
なかなか味のある仲間が増えました。
と言う事で、ついでに登場していただきました。


 ”うるま””灰皿””浮と游”の写真は自前です。

 灰皿は、石垣島の民宿”砂川荘”にいた時、いただいた
・・・と言ってもペクってきたのではなく・・・ものです。
 鳩間島に居た時、電話一本で、島内の学校の給食パン配達
(その間のあご代無料)に狩り出されたぐらいですし、船待ち中の暇な時間では宿泊客を空港まで送り迎えのお手伝い(暇つぶしです)をしていたので、これぐらいは「持っていって良いさぁ」でした。

 ”うるま”は好んで吸っていました。
(聞くところでは”うるま”のデザインが変わったとか)
 ”バイオレット”もその名称が当時の日産自動車の車名にあったので
(初代710型は1973年発売)時々吸っていました。
 ”ハイトーン
は少し軽めで好みの味ではないので、私は吸わなかったのですが、旅行者の大半はハイトーンに手を出していたようです。


 大工定一さんの孫娘さんは豊年祭に合わせて三週間程帰島したようで、彼女のブログには(8月27日にこのブログは閉鎖されHPを開設されました)こんな鳩間島やかなちゃんそのもののような穏やかな写真が載せられていました。

   まるだいの縁側で昼寝の用意。
 『3日間の豊年祭もあっというまに終わり、今日は鳩間に来てようやくゆっくりできる一日。

 朝からの畑仕事を終えて縁側で一杯〜お昼寝の準備です。
台風が近く接近中。風が気持ち良い静かな昼下がり。
このまま時間が止まって欲しいなぁ〜』
                         2006年7月24日より。


   かなちゃんのお昼寝。
   『今日も暑い一日。
   ぽっかりボケ〜ッとした昼下がり。
   まるだいのかなちゃんもぐったりぃとお昼寝中。』
                                7月27日より。


文責は当HP管理者に有ります。

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『1970年代前半に鳩間島を訪れたことのある管理人によるホームページ。基本的には犬をテーマにしたサイトですが、鳩間島に関する奥深い記述がちりばめられています。「阿呆坊」の2005年4月分記述は必見、』(”鳩間島通信”HP管理者さん)
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