第23話 JAZZ適齢期
すでにご存知かもしれませんが、今、話題の高校生JAZZミュージシャン2名。
ピアノ:松永高志(17歳)
アルトサックス:矢野沙織(16歳)
(※いずれもデビュー当時の年齢)
(1)松永くん、その曲のテーマは凄すぎる。
で、そんな曲にサラッと「宿題」なんて題名を付けてくださる。いやいや、あなたのその曲を理解するのが私の「宿題」です。
(2)沙織ちゃん、1曲目からチャーリー・パーカーですか?
知ってる?チャーリー・パーカーっておじさんは、音楽の為に麻薬をやってたのか、麻薬の為に音楽をやってたのか、わかんない人だったんだ。え?麻薬って何って?
うん、そりゃそうだね。
(3)プロゴルフで優勝した宮里藍ちゃんも18歳の高校生だったね。
JAZZとは関係ないけど、アマチュアのあなたがプロの大会で優勝したのは30年ぶりだって?(そうこうしているうちに、もう2勝しましたけどね)
でもね、考えてみればモダンJAZZが始まった1950年前後のミュージシャンって、本当にみんな若かったんだ。
※マイルス・デイビスは高校在学中からバンド活動してたし、チャーリー・パーカーに見出され、彼のレコーディグに参加したのは19歳の時。
※若き老練トランペッター、リー・モーガンは17歳でデイジー・ガレスピーのビック・バンドに入った。そして、名門ブルーノートに初リーダー作にしてレコード・デビューしたのは18歳の時。
※デンマークの至宝、ベースのニールス・ペデルセンは16歳で幽玄ピアニスト、バド・パウエルのベーシストを勤めた。
※JAZZピアノの詩人ビル・エバンスは17歳の頃には、もうナイト・クラブに出入りしていたね。
※マイルスバンドの第二黄金期のリズムを支えた、ドラマーのトニー・ウィリアムスもマイルスから誘いを受けたのは、17歳の時。(’60年代だけど、ま、いいっか。)
ざっと拾い上げただけでも、こんなに10代の有名ミュージシャンがいたんだよ。
それを思うと、君たちなんてJAZZ適齢期も良いところ。それを「若い若い」なんて言っているのは、きっと社会全体が幼児化したせいなんだね。
だから、堂々とそんな「大人」から小銭を巻き上げればいいんだよ。シレッとして。
沙織ちゃんも「きゃー、私、なんかしんないけど、パーカーばりばりなんですゥ〜。」って演じれば、ウケると思うよ。でも、残念ながらパーカーを知らない人の方が多いけどね。
。。。と、こうは一応思っている私ですが、高校生の息子、娘がいてもおかしくない年齢だけに、親の立場とするとやっぱり微妙だなぁ。。。
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紫煙は男の指の間から静かに立ち上る。
「"ボヘミア・アフターダーク"か。。。」
「オスカー・ぺティフォードの曲でしょ?確かケニー・クラークのアルバムにも入っていたわ。」
黒のネイルにワンポイントのラインストーン。女のその指先にはジャック・ダニエルが入ったグラス。ストレート、チェイサーなし。(Straight,No Chaser)
ホテルのバーには"ボヘミア・アフターダーク"が響いている。ハード・バップの名曲。
「"キャノン・ボールアダレイ・クインテット・イン・サンフランシスコ"のアルバムの方が有名かしら。」
「詳しいね。どこで覚えたんだ?」
「あなたに習ったようなもの。あなたに会う前はJAZZなんて知らなかったのよ。」
「そうか。。。」
しばらくの間、男はくゆらす煙の行方を追っていた。
「今夜は君からJAZZを習いたいね。」
「。。。。本気で言ってるの?」
男はホテルの部屋のキーを取り出すと、そっとカウンターに置いた。
女は瞳をうつむけたまま、グラスを見つめる。指先のラインストーンが小さく光る。
そして、男の耳元で囁いた。
「JAZZは奥が深いのよ。。。」
曲は"イン・ア・センチメンタルムード"に静かに変わろうとしていた。。。
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。。。「何がJAZZは奥が深いだよ。ったく。。。あ、やべぇ〜、古文の宿題が出てたってけ。とっとと演奏終わらせて、アイコにノート見してもらおーっと。」と演奏していたのは矢野沙織、若干16歳。
バイト代で美味しいものでも食べてね。がんばれ!高校生!
文:
クリフォード・伊藤
キャンディ / リー・モーガン (TOCJ-1590)
リー・モーガン、若干19歳の時の録音。と言ってもこれ以前に10枚以上のアルバムをすでにリリースしている。
とかく年齢と比較されて「老練」とか「練達」とか枯れた言葉で語られるモーガンだが、50年代当時はやっぱり「イカした(※死語でごめんなさい。)」ヒップなトランペッターだったのだ。もちろん、今聞いても快演。所謂、名盤。
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