第8話 ビ・バップ 1

1940年頃に発生した、Be-Bop(ビ・バップ)と呼ばれる新しいJAZZの形態により、JAZZはその歴史上で最も大きな転換期を迎えました。

それまでと何が変わったか?

以前このコラムでも触れましたが、「踊る為」の音楽でなくなったことが挙げられます。それは複雑なリズム、早いテンポ、など音楽的理由がある訳ですが、そもそも「伴奏」であったものが「鑑賞」となった事自体、大きな転換でしょう。

なんでこんな事になってしまったのか?

Be-Bopはもともとミュージシャンの競い合いから始まった、ミュージシャン主体の音楽である事が大きな理由です。

Be-Bopが誕生した1940年前後は、小編成のジャム・セッションのようなスタイルが多くなってきました。ジャムから競い合いが始まり、とんでもないスピードで演奏したり、やたら難しいコード進行にしたり、とにかく実力のないミュージシャンは門前払いの「おととい来やがれ!」の恐ろしい世界となりました。

その結果、コードは細分化され、リズムはよりイーブン(レガート)になり、スィングではあまり使われなかった♭5thの使用とか、理論的にも行き着く所に行ってしまったのがBe-Bopであり、その大御所が、有名なチャーリー・パーカーなのです。

それにしても、Be-Bop、語呂が素敵ですな。

もともと、Be-Bopのトランペッター、ディジー・ガレスピーが自分達がやっているこの音楽を説明するのに、スキャットを用いて表現したというのが定説ですが、シンコペートしたリズムを文字通り「音読み」で表現してるじゃないですか。すばらしい!

昨今は、省略されて単に「バップ」とか呼ばれていますが、麻雀の罰金じゃあるまいし、由来を感じて本名で呼んで欲しいなぁ。

当時、Be-Bopという言葉はメディアによって普及した為、逆に実体を良く知らない人も多く、聞きなれないJAZZは何でも”Be-Bop”と思い込んだらしいです。

ルイ・アームストロングの音楽をBe-Bopと思ったり、2ビートのデキシーランドJAZZ を聞いて「いいね!Be-Bopは!」と言った客がいたとか。

でも、これを逆手にとったのか、「ズ・ーバップ」「ウー・バップ」「リー・バップ」「イー・バップ」(くどい!)という一連の曲を収めたアルバムも出現したとさ。

では、音楽理論的な面からBe-Bopを語ってみましょう。以下次号へ。。

文: クリフォード・伊藤

ジャズ・アット・マッセイ・ホール

ジャズ・アット・マッセイ・ホール/チャーリー・パーカー VICJ-2022

録音が1953年とちょっと遅いが、当時のビッグ・ネーム、パーカーをはじめ、ディジー・ガレスピー(tp)、バド・パウエル(p)、チャールス・ミンガス(b)、マックス・ローチ(ds)が一堂に会したライヴ録音。  
曲の頭が少し切れていたりと、編集がちょっといい加減だが、よく知られた曲が収録されているので入門としては良いかも。
尚、当時の契約の関係で、パーカーは”チャーリー・チャン”と変名されてクレジットされている。


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