第7話 "卑猥な"JAZZ
デキシーランドJAZZ、スィングJAZZ、モダンJAZZ、クールJAZZ、フリーJAZZ、、、
今回は"JAZZ"の語源についてです。
もともと"JAZZ"は音楽以外でも使われていた言葉で、例えばアメリカの1919年〜29年までは"JAZZ AGE"と呼ばれてます。これは作家フィツジュラルドが’22年に出版した"JAZZ AGE物語"に由来しており、音楽の事ではなくその当時の「なにか新しい」雰囲気を表す語として使用しているようです。
さて、初期は、Jas,Jass,Jaz,Jas,Jasczのようにさまざまに綴られ、その語源も色々考えられていますが、
「古いラグタイムのドラマーだったチャールズ・ワシントンのニックネーム"Chaz"、それからダンスのステップの一つ"Chasse"など、どちらにしても初めて南部の黒人と白人達が用いた時、この語が性交を意味していたのは間違いない。ジャズが南部以外の土地にも広まり、音楽の一種を示すようになるのは、第一次世界大戦以降のことである。」
(ビル・ブライソン著、「アメリカ語物語」)
もし、あなたが「バック・トゥー・ザ・フューチャー」よろしく、1900年のニューオリンズにタイムスリップして、音楽を聴きたい為に"JAZZ"と言う言葉を使ったとしましょう。
「この辺で"JAZZ"やってる所、ない?」
ところが誰も「?」って顔で、理解してくれません。やっと黒人のおじさんが、「あんた、訛ってて、何言ってるのか分かんなかったぜ。ひょっとして”Jass”の事かい?」(注:最初は”Jass”と言っていたらしい。第4話で紹介した「JAZZにまつわる話」に詳しく載ってます。http://www.ozsons.com/JazzWord.htm)
それが本場の発音と勘違いしたあなたは、
「そうそう、その”Jass”さ。その熱い”Jass"はどこでやってる?」
「へ〜ぇぇ!、昼真っからかい。それならいいとこ知ってるぜ。案内してやるよ、兄弟」と、あなたは”いいとこ”に連れて行かれるのでした。
もっとも"JAZZ"発祥の地と知られている「ストーリー・ヴィル」はニューオリンズで有名な赤線地帯でしたから、間違った所に連れて行かれる訳ではありませんが。
「アフリカ系アメリカ人に由来することばには、もともと性的なものと結びついていたのが、今ではすっかりそれが抜け落ちて、違う意味で流通している場合が少なくない。”ブギウギ”はもともと梅毒を意味することばだったらしい。」(前出)
首尾よく"Jass"(音楽の方)のLIVEをヤッている所に案内されたとしましょう。すっかり本場の"Jass"に上機嫌になったあなたは、地元の人にこう話かけます。
「"Jass"もいい!。そうそう"ブギウギ"っぽいのもイイね。結構好きなんだ」
きっとあなたは、鼻がちゃんと付いているか確認されるか「にいちゃん、やるね。やっぱり”Jass”が好きなら、そのくらいの気持ちじゃねェと」と地元の人に一杯おごられて盛り上がるかどちらかでしょう。
盛り上がったついでに「デキシーランド”Jass"、スィング"Jass"、モダン"Jass"、クール"Jass"、おっとついでに、フリー”Jass”、どうだ、お前ら知ってか?」とあなたは酔った勢いでつい自慢してしまいました。
「Oh〜!Amazing!(驚異だぜ!)」と、地元の人はあなたを簡単には帰してくれないでしょう。こんな面白い東洋人の話を全部聞き出すまで。
以上、古き良き時代に秘められた”JAZZ”のお話しでした。
文:
クリフォード・伊藤
アメリカ語物語1、2/ビル・ブライソン著 河出書房新社
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