第1話 スタンダードナンバーを探せ
ご存知のようにJAZZのスタンダードナンバーと呼ばれるものは、アメリカン・ポピュラー・ソングとかミュージカルからのいわゆる「歌モノ」が主です。（今の時代ではインストものも「スタンダード」になりつつありますが。）
ポピュラーソングやミュージカル物は当然歌詞がついている訳で、ボーカルの人にとっては歌詞とメロディーは一体でしょうが、楽器を演奏する人はやはり歌詞よりもメロディーに魅かれるのが一般的らしいです。
ただし、あまり歌詞や題名に無頓着なのも困りモノで、渡辺香津美さんのＣＤを買ったら「友達の結婚パーティで失恋の歌をやってしまったのには焦ったよ」なんてライナーノーツに書いてありました。
よく知られた「My Favorite Things」はジョン・コルトレーンが演奏して大スタンダードになった曲ですが、どんなキッカケで彼にスカウトされたのか興味が沸くところですね。
ちなみに「My Favorite Things」はミュージカル「The Sound of Music」で使われた曲です。実際は舞台で歌われたのが先（'59年）ですが、私達には'65年の映画の方がなじみ深いですね。子供達が雷に怯えている場面で主演のジュリー・アンドリュースがこう歌ってます。（もちろん英語ですよ）
バラの花びらに溜まった雨露、子猫のお髭
赤い銅のやかんに暖かい毛織のミトン
紐で結んだ茶色の紙包み
これは私の好きなもののほんの一部なのよ
（中略）
犬がかみついたり、蜂が刺したり
悲しくてどうしようもないとき
私はただこういう私の好きなものを思い出してみるの
するともう私の気分はそんなに悪くはなくなちゃうのね
（村尾陸男訳：ジャズ詩大全より」）
コルトレーンがポップコーンを食べながら映画をみていたら、「これだ！」と閃いたのでしょうか？（彼はこの曲を'60年に録音しているので、ありえない話ですけど。）でも、当然のことながらメロディーに啓示を受けたんでしょうね。少なくとも歌詞の内容とコルトレーンの容姿とは結びつかないです。（笑）
ちなみにマイルス・デイビスもスタンダードを見つけてくるのが得意みたいで「Bye ByeBlack Bird」という曲を'56年に録音していますが、なんとこれは'26年（30年前）の曲です。！！
今で言えば、30年前は'73年ってことになりますが。。。でも以外に面白い曲があるかも。あまり知られていない佳作を探し出し、自分のレパートリーに加えてスタンダードに仕立てるってのも、演奏者冥利、曲冥利でしょう。
ただし、おめでたい席で演奏する時は、歌詞の内容は一応確かめましょうね。
文：
クリフォード・伊藤
ラウンド・アバウト・ミッドナイト ／ マイルス・デイビス（SRCS-9725）
☆「'Round about midnight」なるモダンな曲と一緒に、例の「Bye Bye Black Bird」が収録されている。（録音当時から）３０年前の曲という割に古さを感じさせないのは、やはりマイルスの力量か。
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