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検査設備の導入               3012

   製品内部のガスが外部へ漏れないのを確認する設備を、設計して導入するのを例にとり、検査設備の導入について説明したいと思う。

検査方法の選択

  この検査の目的を達成するための方法はいくつか考えられる。

 外部から高圧の気体を加えた後で、その気体が検査の対象物から漏れ出すか否かで判定する方法。加えた圧力の僅かな変化による方法。内部を真空引きして真空度の変化による方法。
 内部に気体を封入し、外部への漏れを確認する方法などである。

 最後に述べた方法には確認の仕方で様々のやり方がある。水中に検査対象物を沈めて回りの気泡の有無により外部へのリークがあるかどうか検査する。これが、70年代はごく一般的な検査方法だった。 その頃はすでに、内部にハロゲン系のガスを封入して、外部の気体をハロゲンガスが検出できる機具で検査する方法もあった。しかし、そもそも空気中に、ある程度は、ハロゲン系のガスは含まれているので、(たとえば自動車の排気ガス)周りの空気が汚染されると精確な検査ができなかった。

1978年頃に、勤務していた会社の別工場に 内部にヘリウムを封入して検査する設備が導入された。その後、私の工場にも同様の設備が入った。これがなかなかのくせ者だった。導入したもののトラブルが相次ぎいつまでたっても生産ラインで使用できなかった。一年以上を費やし改良に勤めた結果、やっと何とか使用できるようになったが、保守が大変で現場の職長泣かせの設備だった。
 ヘリウムを使っての外部漏れ検査については次のサイト を参照してください。(詳細な資料は有料です)http://www.webstore.jsa.or.jp/webstore/Com/FlowControl.jsp

 その後、私は別の製品を担当したのでこのヘリウム気密検査機をいじることはなかった。あれほど苦労したのに同じような設備が導入れ続けていた。その間、私はハロゲンリークを改良した設備を導入したが、高額であり、保守もヘリウムよりは少し楽だったが簡単ではなかった。

 1995年頃別の工場にコンパクトに改良された検査機が導入されていた。それを見て、これまでのヘリウム検査に関する先入観が消えた

 まったく新しい発想で設備を構成した。これまでは専門の会社に依頼していたのを、自分達で設計することにした。それ以来、十一台の検査機を作った。そのうち四台はロボットを使い完全に無人化された設備だ。二台は中国の工場向けにデザインしたものだ。

 いずれも内部にヘリウムを封入したあとに、高圧の気体を加え、対象物の周りを真空にしながらヘリウムを検出する検査するものだ。私の知っている限り、現在でもすべてが使用されている。使い始めてから15年が過ぎようとしている一台は他の製品用に変更したが・・・。

 どの方法を選択するかは検査の対象物に、要求される精度と対象物が使用する流体の種類・圧力を考慮して決定しなければならない。

 いずれにしても、出来るだけ安い機械で、検査に時間がかからない方法を選択しなければならない。技術は進歩している。情報収集は怠らないことだ。その点、私の経験談は良い事例と悪い事例の両方を含むので参考にして欲しいと思い、ここに取り上げた。

人の特性を考慮

 正確に判定する技術は大切なことだが、正確に漏れを判定することと同様に大切なことがある。それは人間の特性を考慮することである。

 良い製品は一般には不良品率が低い。人間は検査しても不良品になるものが少ないと、不良品を見つけようという意欲が落ちることがある。また、良品の時の処理に慣れてしまい、不良品の処理をしない時がある。前者の対策は、作業員にあらかじめ伝えた上で、時折、疑似の不良を流す。 それが確実に発見[ されるのを確認するのだ。こうして注意力の低下を防止して、同時に正確に検査していることを確認する。後者については、不良品を取り除かないで後工程に流してしまったらわかるように対策をしておく。たとえば、不良と判定されたなら、不良品置き場へ物が置かれたのをセンサーで確認して、その後の検査を再開できるようにするのだ。

 自動で検査の判定は実施できたとしても、その後の処理が人手だと、時には不良品を良品に混入することがある。これを防止するのはハンドリングロボットを使用することが確実な方法だ。しかし、ロボットでは検査機への脱着が困難な場合があるので人手に頼らざるを得ないこともある。くり返しになるが、人手で処理する場合は、確実に不良として処理されたかを確認するべきだ。

 責任の所在を明確にするために検査員名を記録するだけでは不良品の混入をなくせない。検査数と良品数と不良数の、数あわせが確認できるようにしておく事が大切だ。

検査工程をどこにおくか?

 一連の工程の中、どの時点で検査するかは生産性に影響する。工程の順序は様々なことを考慮して決定されなければならない。

 まずは 数ある工程の中で検査工程に悪い影響を及ぼすものがないかの検討が必要だ。気密検査では内部に水や油などがあると、それがわずかな量であっても漏れている箇所をふさいでしまう。たとえば内部に、潤滑のために油を注入する工程があるならば、この工程は検査後に実施すべきである。外部に漏れ出すヘリウムを高精度で検出する時には、外部を真空引きしなければならない。 表面に水滴があれば、時間が長くかかってしまう。可能なら、水が付着する工程は検査後に行う。

 検査をどの時点で実施するかにより、精度が落ちたり、検査時間が延びたりする。

 工程の順序は検査に悪い影響がないように決めなくてはならない

 次に考慮するのは工程不良の発生率だ。

 検査項目の中で最も不良となる項目を先に検査する。いずれ不良となる製品に、無駄な手間をかけてはならない。不良率が高い検査工程は先に実施し、低いものは後でやるのが一般的である。
[お断り]
私がデザインした気密検査機は全て内部の流体(気体・液体)が外に漏れないのを確認するものである。従って、それ以外の検査機についての知識は限定される。お問合せ頂いても満足にお答えできないと思う。          
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