シーケンス回路の組み方            1011

この解説書はPLC(シーケンサ)のラダープログラムの知識をある程度お持ちの方々を対象にしてある。初心者の方は他の文献でラダープログラムの基礎知識を学んだ後にお読みいただければ幸いです。
注)参考サイト一例 「シーケンス制御入門

コンテンツ

@良いシーケンスプログラムとは
Aプログラムの配置を標準化する
Bインターロックをかけすぎると操作不能に陥る
C動作フロー図を残す
D動作回路の基本は自己保持するリレー回路
E動作順に並べる
F前動作を確認後に次動作を行う
G微分命令を有効に活用する
H複数のユニットが同じ動作をする場合
I同じ動作を繰り返す場合
J表示器を活用する
K信号線切断時への対処法

1.良いシーケンスプログラムとは

良いシーケンスプログラムとはどんなプログラムを指すのか?
個人的な見解では他の人でもわかりやすく誤動作しにくく短くまとめられているものを良いプログラムと思っている。優先順位はわかりやすくが一番で短くが最後である。

このうち「判りやすさ」を確保して短くするのはなかなか大変である。

これから、プログラムを組む時に考慮する点をのべる。これを参考にして良いプログラムが組める技術者になって欲しい。

2.プログラムの配置を標準化する

これは目的の部分を探しやすくするための工夫のひとつ。

一例として原位置確認を最初に配置し、運転条件確認・リセット回路・手動操作回路・自動運転回路・出力回路と続け最後に表示器制御回路をまとめる。
こうすればプログラムのどこに目的の回路があるのかが判りやすい。また、配置はアドレスの若番順が基本である。

3.インターロックをかけすぎると操作不能に陥ることがある

手動回路でインターロックをかけるときは設備をご操作で破損するとか重大な事故につながる場合に限るようにする。出来るだけインターロックはかけないようにする。さもないと、センサが壊れた時などに手動の操作が出来なくなることがある

4.動作フロー図を残す

自動運転のプログラムを組む時には動作のフロー図を作っておき、作成者以外の者でも解析しやすくする。作成者も時間が経つと記憶が薄れて流れが分からなくなることもある。フロー図は丸と四角と三角で表現するものが好ましいが、ガントチャートと呼ばれる横線を時系列に沿って引いたタイムチャートであっても、ないよりましなので作るのを心がけたいものである。

5.動作回路の基本は自己保持するリレー回路

自己保持するリレー回路はラダーシーケンス回路の基本である。

初期のPLCではON条件接点・自己保持接点・OFF条件接点・出力接点の計5接点しか使用できなかった。それでも実物のリレーで組んだものより遥かに保守点検がやりやすかったので、現在では同機能のPLCは5万円以下で購入できるが、当時の金額では100万円以上していたPLCを何台か購入した。
時代は変わりPLCの機能も進化して、パソコンで回路が組めるようになったが、自己保持回路が基本であることに変わりはない。

基本をおろそかにするとメモリを大量に使用することになり上位のPLC機種が必要になり、不必要な出費となる。コストを下げるのは勿論だが、プログラムが複雑で判りにくい原因にもなり、保守業務で苦労するのを避ける目的がある。

6.動作順に並べる

自動運転では動作順にプログラムを組み順番に回路を配置したほうが、他の者が解析する時に判りやすい。平行動作の場合にはユニット毎に順番にプログラムを組む。

必ず前動作を確認後に次動作を行う自動運転のプログラムでは動作条件に直前の動作を加えることにより誤動作を防止するとともに他の者がプログラムを解析しやすくなる。

7.前動作を確認後に次動作を行う

時々見かけられる事だが設備のセンサが体の一部を検知して急に動く事がある。条件がワークの検知だけで動くようにプログラムしてあるとそうなってしまう。必ず、前の動作を確認して次の動作をするようにしてあれば誤動作を避けられる。直前の動作をメモリしておき次動作の条件にするか、直前の動作が終わった場合に次の動作が開始するようにするのである。こんな時には微分命令を活用すれば比較的短いプログラムで目的を遂げられる。

8.微分命令を有効に活用する

微分命令はON時微分とOFF時微分命令の二つがある。ON時微命令はその前の条件がONした時には1スキャンの間のみONになる。OFF時微分命令はその前の条件がOFFした時に1スキャンの間のみONになる。

具体的な使用例を挙げる。例えばインデックステーブルの停止位置確認のセンサがあるとすると、OFF時微分命令を使えばテーブルが回転始めた事を検出可能になる。線が断線したときに誤動作するのを防ぐためには、インデックスクス指令の命令が出ている時に限定して回転を開始したものと判断するのである。同様に回転が終わったのはON時微命令で検出可能である。インデックスクス指令の命令が出ている時にON時微分信号が出たら回転が終わったと判断できる。微分命令が使えないPLCではセンサを停止位置と回転位置の2箇所に設置しなければならないので余計に費用が掛かる。

PLCの選定時には、この微分命令がプログラム回路の何処でも使用可能なものを選定したほうがよい。

9.複数のユニットが同じ動作をする場合

例えば2台の溶接器を使って交互に溶接を行うときにそれぞれにプログラムを組むことになる。現在はパソコンを使って回路をコピーできるのでそれほど手間はかからない。しかし、回路の中の同機能のタイマの設定値が異なってしまうことがある。故意にそうする場合もあるが単純なミスのときもある。2台くらいならまだしも気密検査機などは4st以上あるので全てのタイマ設定値をそろえるのは結構神経をすり減らす作業である。そんな時にはレジスタを書きかえると全部の同じ機能のタイマ設定値が変化するようなプログラムを組めばその後の変更時にはレジスタを一箇所書き換えればすべて書き換わるので保守がやりやすくなる。

10. 同じ動作を繰り返す場合

同じ動作を繰り返す時には同じプログラムを何度も使うようにする。このようなプログラムの部分をサブルーチンという。ある条件でその部分に飛び終了すると飛んだところの次に戻るようにする。こうすればプログラムが大きくなるのを避けることが出来る。安易に回路をコピーするとメモリを浪費し、複雑なプログラムになってしまう。

11. 表示器を活用する

文字表示器や画像表示器は使い方によっては大きな力を発揮する。
例えば、表示器に異常履歴を残すようにしておけば保全業務の強力な道具となる。
また、設定値の確認や変更がPLCの変更用ツールが不要となりその場で直ぐに設定変更ができる。

しかし、採用には注意が要る。例えば手動のスイッチとして使う場合は必要な画面がすぐ探せるのか?表示器が使用不能になった場合の手動操作方法をあらかじめ検討しておくことが必要である。また、表示器のバックライト寿命は以外に短く、交換しようと思った時には全体を取替え無くてはならないこともあり、それらのランニング費用も考慮して採用を決めたい。

12. 信号線が切断時への対処

線が切れることや故障によって信号が入力されない場合に安全または品質上の問題が発生しないようにプログラムを組むことは重要である。
良否を判定するときには良品信号を入力に使い、決して不良信号で判定してはいけない。

安全にかかわる信号線も入力があるのを正常として扱うこと。

ついでにいえばシリンダのセンサチェックは前進端と後退端のb接点を直列回路で組んでおき一定時間以上両方がoffのままになった場合に検出するようにプログラムを組んでおく。こうしておけばセンサ切れも位置の調整不良時もどちらでも検出可能である。
安全対策はPLCのプログラムだけではなく、実配線で回路を組むことが重要な事は言うまでもない。

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