FA for Industrial Engineer新時代の生産現場の構築 (その2)2262

その2のCONTENTS
9. チョコ停の影響を防ぐ
10. 技術者はわがままである
11. 楽をしてもうける、楽しく仕事をやる
12. 3匹の子豚の家を見直してみよう
13. ニコポンとは?
14. 動機付け理論の利用
15. ライン構築の三要素
16. 分散型工場計画
17.コンサルタントに頼む
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9.チョコ停の影響を防ぐ

 チョコ停を少なくする努力は勿論、その影響を出来るだけ少なくする工夫をする。工程をつなぐコンベアをフリーフローにすればその工程が停止しても前工程がコンベア上に製品を置けなくなるまではラインはとまらない。その後の工程は、コンベア上に製品がある限り作業を続けられる。工程間に溜まっている分が仕掛品となるという欠点もあるが・・・

10.技術者はわがままである

 標準化は時にして改善の芽を摘む時がある。」との意見に反対しない。しかし、それは標準化の問題よりは、標準類の運営の仕方の問題であるので対策が可能である。だが、標準化の意味を理解してないと技術者自体が標準を無視してしまう。管理者が、技術者の述べる意見を否定するだけの知識を持ち合わせていない場合も多い。たとえ、デザインリビュウをやったとしても、 手前味噌な物で役に立たない。標準に従う事が可能なのか、特殊仕様でやるかはその技術者自身でないと分からない場合が多いのである。技術者によっては、他の者に従うのを嫌い、自分勝手なものを作り、出来上がってしまった後で、標準に沿えるものであったと判明する事も度々ある。標準化を妨げるのは技術者自身の仕事の取り組み方に原因のある場合が多いのである。

11.楽をしてもうける、楽しく仕事をやる

昔の日本人は苦労を美徳としていた人が多かったようだ。現在もそういう考えの人もいるだろうが、「同じだけの物しか得られないのであれば、楽をしてやろう。」という考えを持てば、今まで見えてなかった事も見えてくる。

12.3匹の子豚が作った家は  最良の住まいは状況によって決まる

3匹の子ぶたの物語では、末弟の作ったレンガの家が、努力して働くことが大切だとの考えの元に良い例としている。しかし、子豚が成長し、結婚して子供ができたら、レンガの家は増築するのに、大きなお金がかかるかもしれないのである。

何が何でも頑丈に作るというのは間違いだろう。日本の在来工法は間取り変更にはもってこいである。あるハウスメーカの作るコンクリート住宅が解体時には埋め立て用の廃材の山になってしまうことも、知っておく必要がある。

目的や、今後の見通しに合っているかがポイントであり、時には、わら造りの家が最適という事もありうる。

 生産ラインに目を移してみると童話の「三匹の子豚の家」に似た話をよく耳にする。

例えば、セル生産がマスコミに取り上げられると「セル生産が目標とする生産体制だ」等とみんな揃って言い始める。が、最良な方法とは生産する製品の置かれている状況で決まり、全ての製品に当てはまるものはない。 有能な生産技術者はセル生産が向いているのかベルトコンベアラインがよいのか、自動化したほうがよいのかを判断できるはずである。

 また、「重厚長大から軽薄短小の生産設備の時代に変わった。」との主張がある。これも軽薄短小が製品の性格に合わないのに無理にそうすると後悔することになる。たとえば製品のライフタイムが長い時である。

13.ニコポンとは?

 ニコっと笑って肩をポンとたたく。上司が部下に接する方法のひとつに、部下には笑顔を見せ、なお且つ部下の肩をたたいてやって「頑張ってくれ!」と激励するのである。それで部下のやる気を引きだすのだという。動機付けのひとつの方法だろうが、そんなことで出た、やる気は持続しにくいと思う。

 皆さんはどう思われますか?

14.動機付け理論の利用

 動機付(どうきつけ)理論とはなんだろう?人はどんな場合にヤル気を出すのかを研究して理論としてまとめたものである。誰しもその理論を活用して生産性を上げたいと思うものである。

 広く知られている事では「人はパンのために働くのではあらず。」「社会的に認めて欲しい。」というのがある。また、「人は自分自身が進歩していると感じるときによく働く。」ともいわれている。

前述のニコポンも、部下の社会的に認められたいとの欲求を満たす方法のひとつと考えられなくはない。しかしながら、この種の激励はやらないよりやるほうが良いと断言できない。これから述べることが整っていれば、部下のヤル気は出てくるものである。

 給料の額を増やしてもそれ自体がヤル気の元とはならない。しかし、会社が社員の働きを認めている表れだと、捉えてもらえるならば、ヤル気が出る要因となる。したがって他の方法で社員の働きを評価できてそれが社員に伝えることが可能であればその効果の方が大きい。

 マイナスの動機付けにも心を配る必要がある。

 逆に給料の額が下がると社員は大いにヤル気を失わせるといわれている。一度慣れてしまった生活の水準を下げるのは困難が伴うし、会社から評価されていないと感じればヤル気はさらに下がってしまう。

 しかし一方で、過去に転職した人にその理由を尋ねたところ人間関係のトラブルが原因と答えた人が多かった。給料の水準は、退職した主な理由となっていないようだった。

15.ライン構築を左右する三つの要因

 では、実際にラインを構築する時のポイントについて述べたい。

まずは、投資額を決める事になる。会社の資金調達の支障はないと仮定して話を進める。

 人手で生産可能な場合は、その時の工数が設備機械を導入すればどれだけ短縮されるかが、投資するかどうかの判断の基準となる。製品の販売可能期間(ライフタイムと呼ぶ>)もまた重要な要素である。 忘れてはいけないのは、生産設備の準備に要する期間がどれくらいなのか、ラインの生産を開始できる(立ち上げ)時期は何時なのかである。

 一般に経営者は顧客の要望に沿う為に、生産立ち上げまでの期間が短いのを望む傾向が高い。その際、人手で生産可能な時には設備の導入には種々の項目を検討した上で、ラインの構築を指示するのが肝要である。時としては、いたずらに導入を急ぐのではなく、しっかりした構想を立てた後に、投資したほうが良いこともある。ライフタイムの長い製品は省力化された設備が導入されるまで人手で生産しておき、構想をきっちり立てた後に投資をした方が無駄ない設備となる。 実施に市場に製品が出た後に仕様が変わり設備の修正が必要になることも、たびたびである。経営者は人手での生産コストと省力化された設備での生産のコストを把握した上で指示する必要がある。「機会損失になるから出来るだけ早くしろ!」と指示する前に十分な検討をする必要がある。こうして決めた投資時期や投資額でラインの構想は左右される。

 第一の要因は生産開始までの期間と投資額の決定方法である。

 第二の要因はラインを準備するスタッフの資質と所属である。

 設備のラインを誰が構想し設計するかはラインの良し悪しに直接結びつくのはいうまでもない。機械の設計者に加え、出来れば作業研究が得意な者をそろえたほうがよい。 技術者に限らず、そのような人を探すのである。こうして本当に使いやすく効率の良い設備を構想させるのがよいのだ。出来るだけ、社内で見つけるようにしたいものだ。外部の人間は隠れたノウハウには気が付き難く大切な部分を考慮していない設備になりやすい為だ。

 第三の要因は構想された設備を間違いなく導入する手段である。

 設備を構想どおり製作して、導入する時も注意が必要である。構想に基づき設計製作され、形になった設備を導入して使用開始するまでには、様々なハードルが待ち受けている。外部に依頼した時にはもちろんだが、社内で設計した時でも、設計者以外で行う「組み立て図の確認」が必要である。

 図面を見てまず良し悪しの判断を求められる。これは経験と知識が必要なので、なかなか難しく、満足の行く確認仕事ができる技術者が育つのに、五年から十年掛かることも珍しくない。 機械や電装に関する知識に加え、生産(検査を含めて)する製品の知識も必要な為に、すべてを外部に依頼することは難しい場合も多い。オールマイティの技術者はそういるものではないので、複数人数で対応することも、ひとつの方法である。 外部へ依頼した設備で困るのは、その設備を製作している現地での立会いである。筆者も、当時の工場責任者に経費節減のために、単独で立会いに行くことを度々、求められていた。そこで一人で立会いを実施し易くする為にチェックリストを活用した。仕様書の各項目に加えて、標準仕様になるものを電装・空圧・安全・表示などのそれぞれの項目に渡り定めていた。その、標準仕様書は、設備見積もり時に業者に手渡しておき、立会い時に確認するようにした。標準仕様書で網羅できない項目にたいしては設備ごとのチェックリストを作るようにした。 また、事前に出来るだけ多くの者がそのチェックリストの項目を確認しておき確認漏れを防止した。また、チェックした結果を他のスタッフが再度確認するようにもしていた。

 現地確認が簡単に出来る近場の業者に、できるだけ製作依頼するのもひとつの方法だ。特殊な設備以外は、見積額が少し高くても近場の業者を選定するように心がけた。

16.分散型工場計画

 一般にこれまで工場は各機能を集中させるように配置して効率を上げる例が多かった。しかし、地震災害の多い日本では一度に全部の工場が被害を受けることもあり得るので、企業の命取りになる場合も考えられる。地震や台風の被害を同時に受ける可能性は、できるだけ排除したい。

17.コンサルタントに頼む

 改善をするために外部のコンサルタントに頼むこともあると思う。有能なコンサルタントを見つけられればいいが、そう簡単でない。

 私は、かつて、取引先の家電メーカからのお誘いで、その頃、NHKのTVに度々登場していたコンサルタントの講演を聴いたことがある。7年ほど前のことだ。講演はそのメーカでくりひろげられていた改善活動を、紹介するものだった。講演の後でそのメーカから感想をアンケート形式で尋ねられた。 質問のひとつは、「この改善活動で弊社は生き残れると思うか?」というものだった。私は、改善活動紹介のVTRとそのコンサルタントの話から、「この方法では生き残れない。」と回答した。トヨタの看板方式の生産システムで有名な、大野さんの弟子を語るそのコンサルタントは、私が知っている知識とは違った方法でそのメーカの改善に当たっていた。私から言わせると、動機付け理論を無視しているものだった。「俺が正しいから俺の言う通りやれ!」と言わんばかりだった。大野さんの弟子を語るだけあるので、ある程度は、生産ラインの改善はできるようだ。しかし、動機付けの基本が短期型なのだ。 そのコンサルタントが自分で話していたが、以前に、紡績工場の女工さんたちを指導改善したと言っていた。その方法は、まさしく一部の人を短期間はその気にさせることが出来るが、決して長くは続かないものと思われた。

 二年位経って、そのメーカのその後の改善活動の様子を知る機会があった、「活動はマンネリ化して、職場の雰囲気は良くない。」との事だった。

 私は、そのコンサルタントの講演を聴いた直後、そのメーカは長くは続かないと確信した。

私の予想に反して、そのメーカはそれから5年ほど生き永らえて、家電メーカ最大手の傘下に下った。

 そのコンサルタントの講演を聴いてから一年半ぐらい経って、今度は私が勤務していた会社にもコンサルタントは違うが、外部に依頼することになった。 やってきたコンサルタントは、さらに質が悪い人だった。

 VP○活動と呼ばれたその改善活動は、様々な資料を使って始まった。その資料のひとつが、事もあろうに、私の、学生時代の先生が発刊した書物の文書を、少し変えてあったが、ほとんどがコピーしたものだった!

説明用の絵は、そのままコピーしたために、図番は先生の書籍と同じだった。

 先生に連絡して、複写のことを告げると、「コピーされてもかまわない。」と気にかける様子は無かった。コンサルタントの指導は、断片的で誰もが、会社のためになっているのか疑問をもっていたが、同属会社の役員の一人が推進役だったので、表立って意義を唱えるものはいなかった。

 私が、一年近く休んでいた会社に復帰した時も、活動は形ばかりの物になっていたがまだ続いていた。ようやく最近になってそのコンサルタントが来なくなったと知人からきいた。

 前述の、取引先の会社のケースでも同じだったが、この種の改善活動は「一種の踏み絵の役割を果たす。」と思う。つまり、従業員が改善活動に積極的かどうかでその者を判断するのだ。

 本当は有能なのに改善活動に批判的であった者の何人かは左遷されたり、他工場に異動されたりした。私も、有能かは別として、冷や飯を食わされた一人だと思っている。

続く(その3をおたのしみに)

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