2000年1月29日(土)
Cinema Rise

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
   ―Buena Vista Social Club―

ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)の特集
ライ・クーダー(Ry Cooder)の特集
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舞台がカーネギーホールにうつり、オマーラ・ポルトゥオンドが歌いだした瞬間、思わず、感激のあまり涙が流れてしまいました。
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブというドキュメンタリー映画は、わたしにとってそういう作品です。
ハバナの街並みがうつしだされ、壁に書かれたキューバ革命の師カストロやゲバラをたたえる文字やポスター。自分の写したカストロやゲバラの写真を誇らしげに見せる男性のナレーション。美しい街並みの裏側にあった、植民地時代、独裁時代の社会の苦しみをかいまみることができます。

彼らの深く刻まれたシワのひとつひとつに、硬くふしくれだった指のひとつひとつに数えきれない人生の喜び、悲しみ、苦しみがひっそりと同居しているのでしょう。
長い人生の中での数々の出来事、そのすべてを受け入れて、今現在を生きていることに感謝し、楽しい歌だけじゃなく、哀しみも苦しみもすべてひっくるめて生きているんだよ、生きていることがすばらしいと表現する、そんな音楽を聴いて感動をかくせませんでした。

1972年生まれのイブライム・フェレールの歌を聴いてだれが72歳の声だと思うでしょう?なめらかで愛情に満ちた歌声に、聴いていて思わず身体がリズムをとり踊りだそうとしているのを感じました。 奥さんと手をつなぎ歩く後ろ姿、ニューヨークの街で、妻や子供達にもみせてやりたかったとカメラのシャツターをきるイブライム・フェレール。出掛けるときには守護神であるババル・アジェにラム酒を捧げ、同じ香水をかけてきたのでしょう、そして杖に祈りをこめたのでしょう。私生児そして孤児として育った彼にとって古い神に対する信仰も心のささえだったことでしょう。カーネギーホールのステージに真っ赤なジャケット姿で現れたエンターテナーに拍手を送りたくなったのはわたしだけではなかったと思います。

ユーモアとウィットにとんだ会話を、親しみやすい笑顔ではなすナイスガイは、なんと1907年生まれという92歳のギタリスト、コンパイ・セグンド。92歳とは思えないギターテクニックもさることながら、その深みのある歌声がなんともいえない。葉巻をくゆらしながら、6人目の子どもを作っているところだよという彼はとてもセクシーです。アムステルダムでのコンサートでのライ・クーダーとのセッションでの極上の笑顔に心があつくなる思いをかんじました。

ここにもう一人、1919年生まれ80歳とは思えない力強いピアノをたたくピアニスト、ルーベン・ゴンザレス。彼の手にかかれば、ピアノは完全な打楽器のようにみえます。ソンの楽器編成に初めてピアノを入れたアンセニオ・ロドリゲスと数年にわたりプレイしたことを何よりの誇りとしているのでしょう。曲を弾きおわったあとに、胸に手をあて、すぅーと呼吸をする姿に音楽の神にたいする敬意そして誠実な人柄を感じました。以前にニューヨークに来て自由の女神を見たことがあるらしく、多分当時は船でやってきたのだろうから、自由の女神がそれは大きく自由を象徴して見えたことでしょう。

キューバ人らくし野球選手であった父のことを話す、オマーラ・ポルトォウンド。1930年生まれ69歳の彼女の歌はステージの上でなんと耀きを放つのでしょう。アムステルダムのコンサートで恋の歌を歌い感極まりとめどもない涙を流すオマーラ・ポルトォウンド。まるで少女のように見える彼女を、やさしく抱きしめ、涙をぬぐう手をさしのべるイブイラム・フェレール。これこそがこの作品全編を通して流れるやさしさなのだ、そう感じる素敵なシーンでした。

比較的年若いといっても1946年の生まれだから53歳のギタリスト、エリアデス・オチョア。キューバ革命真っ盛りの12歳のころには、身体と同じくらいの大きさのギターを片手に売春宿街にいき、お金を稼いで家族を助けたよ、と語る。

音楽にインパクトのある流れをつけるトランペッター、1933年生まれの66歳マヌエル・”エル・グアヒーロ”ミラバール、メンバーそれぞれにたいする気配りの目線がとてもやさしい。

同じく66歳のベーシスト、オルランド”カチャイート”ロペス。有名なベーシストの数々を出したベーシスト一家に育ち、自分ははバイオリンをやりたかったが祖父のいいつけでベーシストになったとウッドベースをかかえ語る。

ラテン音楽にはおなじみのティンバレスという単純な構成の打楽器を、豊かな表現の数々で奏じるアマディート・バルデス。この楽器の演奏には想像力が求められると語る。

アラビア楽器のラウーというリュート系の弦楽器を奏でるバルバリート・トーレス。アムステルダムのコンサートでみせた、ラウーを後ろ手でひくパフォーマンスプレーには思わず拍手を送りたくなりました。

ドミノゲームに興じる二人のシンガー、あだ名はゲリラ兵だよと語る1917年生まれ72歳のピオ・レイバと62歳のマヌエル”プンティージ”リセアこの二人の歌声もすばらしい。ニューヨークの街での二人の会話もたのしい。

そしてこの作品の音楽監督である縁の下の力持ちファン・デ・マルコス・ゴンザレス、全編をとおして老ミュージシャンたちへの、敬愛と愛情、心遣いがあふれています。

そしてライ・クーダー、ヨアキム・クーダー親子。
素晴らしい、愛すべき友人をライ・クーダーとヴィム・ヴェンダースの手によって紹介してもらったことを心から喜びたいと思います。
いつまでも心にのこる音楽、リズム、おしみない拍手を送りたいと思います。
とても幸せな素敵な時間をありがとう。


 *.+'.ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ&キューバのミュージシャンを熱く語っている IGA さんのサイト*.+'.
   BUENA★VISTA★SOCIAL★SITE



ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
 ―Buena Vista Social Club―
1999年 ドイツ、米国、フランス、キューバ作品

監督…ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)
制作…ライ・クーダー(Ry Cooder)
A&Rコンサルタント…ファン・デ・マルコス・ゴンザレス(Juan Marcos Gonzalez)

CAST
コンバイ・セグンド(Compay Segundo)
エリアデス・オチョア(Eliades Ochoa)
ライ・クーダー(Ry Cooder)
ヨアキム・クーダー(Joachim Cooder)
イブライム・フェレール(Ibrahim Ferrer)
オマーラ・ポルトォウンド(Omara Portuondo)
ルーベン・ゴンザレス(Ruben Gonzaiez)
オルランド”カチャイート”ロペス(Orlando Valdes)
アマディート・バルデス(Amadito Valdes0
マヌエル・”エル・グアヒーロ”ミラバール(Manuel 'El Guajiro' Mirabal)
バルバリート・トーレス(Barbarito Torres)
ピオ・レイバ(Pio Leyve)
マヌエル”プンティージ”リセア(Manuel 'Puntillita" Locea)
ファン・デ・マルコス・ゴンザレス(Juan Marcos Gonzalez)

1999年 全米ナショナル・ボード・オブ・レビュー 最優秀ドキュメンタリー賞
1999年 ヨーロッパ映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞
1999年 ニューヨーク映画批評家賞 最優秀ドキュメンタリー賞
1999年 シアトル国際映画祭 最優秀監督賞他
1999年 ロサンゼルス映画批評家協会賞 最優秀ドキュメンタリー賞
1999年 エジンバラ国際映画祭 最優秀観客賞

*写真はチラシとパンフレットより
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