伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2017年10月21日 伝蔵荘での政局談義 T.G.

 昔務めていた会社同期の友人達と伝蔵荘に泊まり、伝蔵荘のすぐ下にある佐久リゾートGCでゴルフを楽しんだ。昭和39年入社の同期会なので語呂合わせの「サクの会」と命名し、かれこれ10年以上続いている恒例行事である。ゴルフから戻ると、暖炉を囲んで酒を飲みながら、食事と会話を楽しむのがいつものことである。時節柄次の選挙が話題になり、話が弾んだ。メンバーのおおむねの論調が希望の党をはじめとする野党に批判的で、安倍自民に傾いている。民主大好きの以前とは様変わりだ。

 7年前の総選挙の直前、まったく同じメンバー、同じ状況で伝蔵荘論議をしたことがある。そのときは小生を除く全員が民主党支持で、自民党支持論をぶった小生は皆から袋だたきに遭った。そのことを日誌に「大企業で40年勤め上げた平均的サラリーマンOB7人の政治意識がこうだから、民主党政権誕生はほぼ確実だ。」と書いたが、その通りになって民主党が大勝し、政権を奪取した。今回はその逆である。平均的サラリーマンのサクの会の論調は世論とおおむね合致しているので、今回は自民党の大勝がほぼ確実だろう。

 今回の炉端談義で、サクの会メンバーの考え方、問題意識が7年前とまったく違っていて興味深かった。特に安全保障に対する考え方が様変わりである。以前はほとんどが護憲派で、憲法改正や集団的自衛権に強いアレルギー反応を示したが、今は違う。大方が憲法改正は必要だと考え始めている。一昨年の伝蔵荘での安保法制論議では、大方が集団的自衛権に反対だったが、今は日本の安全保障はそれでは成り立たないと思い始めている。高まる北朝鮮脅威が目を覚まさせたのだろう。この点も安倍自民党に風が吹いている。世論と波長が似ているサクの会の憲法観がこう変わったのなら、憲法改正は存外近いのでなかろうか。

 もう一つ意外だったのは、小池と希望の党に対する違和感、嫌悪感の強さである。東京都民のAk君は以前から小池が大嫌いである。調子のいいこと言って都知事になったが、都知事らしいことは何もせず、築地豊洲に手を突っ込んで問題をこじらせただけ。それをほったらかして国政にしゃしゃり出てくるなんてとんでもない。目立ちたがり屋のインチキ女の典型だと手厳しい。聞いているおおむねがAk君のお怒りに賛同し、小池に好意的な意見が出ない。むしろこんな女が国政に出てくるのはいい迷惑、黙って都知事の仕事でもしておれと手厳しい意見が大半である。Ak君に至っては緑色を見ただけで腹が立つと八つ当たり気味。世論と相似形のサクの会がこうでは、希望の党はまず見込みがない。やり手の政治家小池は、どこで何を間違えたのか。

 小生の考えるところ、民進党合流の際、小池が条件にした憲法改正、安保法制に関する踏み絵が間違いの手始めだ。安倍憎しのマスコミは、小池を安倍一強に立ち向かうリベラルの旗手と勘違いし持て囃していたが、これで小池が安倍以上の右翼であることに気づかされた。小池がもともと核武装も肯定する極右政治家だったことをうっかり忘れていたのだ。これを境に護憲、反安保法制の朝日、毎日、NHK、TBSなど新聞テレビが、一斉に反小池に舵を切った。小池の良いところは無視し、悪いところばかり報道するようになった。安倍攻撃の加計森友と構図が同じで、フェイクニュースの印象操作で小池人気が失速したのだ。識者は彼女が「排除」と言う言葉を使ったことを理由にするが、それは間違いだ。護憲、安保法制反対のお花畑左翼を、踏み絵で分離排除してくれたことは、裏マスコミのネット世界では拍手喝采している。唯一いいことをしてくれた、これで分かり易くなったと。

 その中で、以前と違って憲法改正、安保法制には理解を示しながら、大の自民党嫌いのOb君だけは、相変わらず自民ではなく希望の党に投票するという。理由は安倍の顔が嫌いで、大義がない解散をしたからだという。それだけが理由だという。顔の好き嫌いはともかく、大義なんてどうでもいいではないかと言うと、いやそうではない、解散に大義は必要だという。安倍は大義であるべき解散の理由を、北朝鮮情勢と消費税問題とした。考えてみれば、過去の2回の解散もすべて消費税含みであった。野田政権は消費増税の三党合意の信を問うと解散し、政権を失った。その後の安倍解散も消費増税延期が選挙の争点になり、そのときは安倍自民が大勝した。今回は三度目である。

 過去の2回の安倍解散の大義は、言ってみれば財務省と安倍の喧嘩である。消費増税が至上命題の財務省が財政に暗い野田を洗脳して三党合意を作り、消費税解散をさせ、狙い通り第二次安部政権で8%に上げさせた。途端に景気が冷え込んだのを見て、安倍はさらなる10%増税は回避すべきと、財務省の意向を無視して延期に踏み切り、それを争点に選挙を戦い大勝した。つまり安倍が仕掛けた喧嘩に財務省が負けたのだ。もはや安倍を首相にしておくべきではないと、狡猾な財務省が仕組んだのが、スキャンダル攻撃による安倍追い落とし作戦である。朝日、NHKをはじめとする全マスコミに、連日連夜、執拗に森友加計のフェイクニュースを流させる。根拠や証拠のない印象操作報道をフェイクニュースというが、フェイクネタはすべて財務省提供である。途端に安倍支持率が落ち始めた。いつの世も官僚の手のひらで転がされる国民は愚かだ。

 日本一の強大官庁である財務省は、情報網を使って政治家を操るためのスキャンダルネタを集め、いつでも使えるように握っている。財務省の虎の尾を踏み、スキャンダル報道で失脚させられた政治家は数多い。その安倍ネタを朝日に提供したのだ。その証拠に、森友加計報道の震源地はいずれも朝日である。それを軽薄な文春砲が針小棒大に騒ぎ立て、テレビがワイドショーにした。財務省の力がなければ、文科省や財務局などから連日次々と怪しげな証言や裏データが出てくるはずがない。新聞テレビ雑誌にはそんな取材力はない。これが功を奏し、安倍支持率が激減し、小池人気も重なって危うく成功しそうになった。安倍を追い落とし、どうにでも料理できる小池首班の可能性が出てきた。そこへ吹いたのが北朝鮮危機の神風である。支持率が戻りかけたのを見た安倍は、捨て身で解散総選挙の大勝負に打って出る。つまり今回の解散の大義は安倍と財務省とのガチンコ勝負なのだ。肝心の手玉の小池がずっこけたので、今回も財務省の負けだろう。

 そういう話をOb君にしたら、幾分納得してくれたようだが、それでも安倍ではなく小池に投票するのだろう。いつの世も老人は頑迷固陋だ。一度決めたことはなかなか変えられない。老人は概ね安倍嫌いで、新聞テレビしか見ない60歳以上の安倍支持率は27%に過ぎないが、ネットとスマホの20代、30代は60%を越えているという。これからは若者の時代だ。もう新聞テレビの老人の時代ではない。ぜひ若者達の日本になって欲しい。

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