【ランタン・リルン−その4】


カトマンズへ帰還

 11月1日。今日は久し振りに暖かいホテルでシャワーを浴びて、旨い食事とビールにありつけると、皆うきうきしてヘリを待つ。パッキングを済ませ、食事も早々と終えて早朝からヘリの到着を待っていた。

 カトマンズに1機しかない大型ヘリは、ナムチェバザール、アンナプルナBCなどあちこち掛け持ちのフライト予定らしいが、ここがカトマンズから最短距離なので、朝一番で来るだろうと甘く考えていた。いつまでたっても来ないので、待ちかねてヘリポートまで行ってみたりするが来ない。昼過ぎになっても来ないので、一旦ロッジに引き返し簡単な食事を取る。 コック達も荷物をパッキングしてあるので食事を作れない。テンジンが知り合いのロッジに依頼して茹でたジャガイモを手に入れてくれた。一人あたりジャガイモ2、3個。これが今日の昼食。

 やがて日が暮れてきた。キャンジンゴンパには衛星電話がある。1分間1000ルピーもかかるので、安易には使えない。しびれを切らしてテンジンが電話したら、最後のフライト先のナムチェバザールからカトマンズを経由しないで直接キャンジンゴンパに来るとの情報。こんどこそと期待して皆でヘリポートまで行って待つ。ガンチェンボが夕焼けで赤く染まり始めてもヘリの音が聞こえてこない。5時半過ぎ、ヘリポートがうっすらと夕闇に包まれて始めたら、コック長が「これだけ暗くなればもうヘリは飛べない。食事の支度だ」というそぶりでパッキングしてある炊事道具をロッジに持ち帰り始めた。やむなく我々も諦めてとぼとぼとロッジに戻る。

 前々日、日本人パーティ12名が迎えのヘリを待っていたが、とうとう来なくてロッジに引き返したのを見ていた。後からサーダーに聞いたところによると、この時の原因はヘリが故障して部品を取り寄せるのに時間がかかり来られなかったらしい。しかし次の日、大型ヘリではなく小型へりを使い、3往復でピストン輸送して全員撤収した。その後の情報で大型ヘリの部品も入手でき、故障は直せたとの事で安心して待っていたのだったが。

 11月2日。朝食を済ませ、昨日のことがあるから半信半疑で待っていたらヘリの音。皆息せき切ってヘリポートに走る。見慣れたおんぼろ大型ヘリが着陸している。ローターを廻したままのヘリに乗り込む。これは航空法違反らしいが、ここではそんなことは問題ではない。来てくれて感謝!の気持ちのみであった。 前の夜は、おんぼろヘリは二度と使わない、ろくでもない酔っぱらいパイロット、旅行業者に出すアンケートには苦情を書かねば・・・・等々、悪口を叩いていたのだが。

 乗り込んだ後、「まるでベトナム戦争の映画で救助ヘリに向かう兵士の様だった」と藤田君が言っていた。まったくその通りで、ヘリのクルーが手を回し早く乗れ!というジェスチャー。ザックを担ぎ、取り残されないよう走ってヘリに飛び乗った。まるで敗走する疲れ切ったアメリカ軍兵士のように。


 離陸したヘリはわずか20分でカトマンズ空港に着陸した。ホテルで温かいシャワーを浴びた後、日本食レストラン「ロイヤル華」での久し振りのビールは旨かった! 来年、「性懲りもなくヒマラヤ−続編」があるのかどうか? 今のところは自信が無い。しかし帰国後1、2ヶ月もするとどうなるやら。

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