単気筒蒸気エンジン#4  その1 概要

1351 rpm

(回転数)

303 cm・g

起動トルク

メインピストン
制御ヨーク
4mm
給気口
排気口
26mm

メイン

ピストン 
フライホイール

クランクディスクの偏芯量を4.5mmで、

ストローク14mmを実現可能

単気筒蒸気エンジン#4  「ロス機構」を取り入れた蒸気エンジンに挑戦

141 cm・g

(rpm)

 シリンダーとバルブシリンダーとのパイプの接続方法とバルブシリンダーに対する給気口、排気口の接続方法はエンジンをスッキリ構成するポイントです。 接続点から蒸気が漏れないこと、シリンダー内面にはんだが流れ込まないように作ることが求められ、特に半田づけの順序を考慮した製作工程が必要です。 構成のポイントイメージを図5に示します。

16mm

上死点

ピストン最上位置

ピストンの動きとクランクの動き

位相差は90°

メインピストンが先行

 ピストン運動を回転運動に変換する一般的な方法は図2に示す「単クランク機構」が使われています。 単クランクでは図に示すよう、ピストンの直角方向に機械損失(サイドスラスト)がかかり、パワーの少ないスターリングエンジンでは特に問題となってきます。 この損失を軽減する方法が「ロス機構」です。 「ロス機構」では図2にように、T型のクランクとその中心に制御ヨークを取り付けることで、ピストン運動を直線運動に近づけ、問題となるサイドスラストを軽減しています。 また、通常のクランクでは、14mmのストロークを確保する為にクランクの偏芯量7.5mmが必要となりますが、「ロス機構」では偏芯量を4,mm確保することで同様のストロークを得ることができます。 また、回転に同期してピストンバルブを動かす為には、偏芯カムを使用し往復運動に変換する方法が一般的ですが、ロス機構では、T型クランクの片側を使って直接バルブを駆動することが出来、構成が簡単化できます。 このように「ロス機構」を取り入れることで、回転数、トルクの改善だけでなく、エンジンそのものをコンパクト化することが期待出来ます。 

1気筒蒸気エンジン#4 仕様

参考

230 cm・g

(cm・g)

作品#1

ボイラー能力

クランクディスク
T型クランク
コンロッド
4mm
4mm

バルブシリンダ

内径4mmパイプ使用
ドリル穴の塞ぎネジ

メインシリンダ

内径12mmパイプ使用
ネジ止め

 エンジンのコンパクト化を図る為に、シリンダーは横置きとし、回転軸はシリンダーの直近におき、T型クランクでロッドを折り返すような形でフライホイールを駆動しています。 このエンジンでは、ピストンバルブを動かす偏芯カムが不要となり、T型クランクで直接、バルブピストンを接続できる為、部品点数も少なく、軽量化を図ることができます。 工作上のポイントはロス機構で、ロッド部、クランク部、制御ヨーク部など可動部が多い構成ですが、全体としてスムーズに動くことが重要となり、部品と穴の直角と平行をだす工作精度が求められます。 蒸気エンジンの全体図面を図4に、シリンダー部の構成イメージを図5に、ロス機構部の写真を図6に示します。 工作の工程については、その2 こちらを参照ください。

排気

給気

4

T型クランク

偏芯4.5mm
ストローク14mm

コンロッドは、ほぼ軸上を運動する為、ピストンの

サイドにかかる力が軽減され機械損失が減少
1気筒  複動式
シリンダー構成

 エンジンでは、ピストンの往復運動を効率よく回転運動に変換することがポイントの一つですが、熱による空気の膨張と収縮で作動するスターリングエンジンにおいては、特に、機械的損失の軽減が課題となっており、その手段として、「ロス機構」が使われています。 今回は、蒸気エンジンに「ロス機構」を取り入れることで、回転数とトルクの改善を図かり、さらにエンジンのコンパクト化を図るということに挑戦してみました。 エンジン構成は、「ロス機構」の効力を比較できるように、これまで実績のあるピストンバルブ方式の1気筒複動式で構成し、クランク部を「ロス機構」で実現することとします。 図1に、完成した単気筒蒸気エンジン#4と仕様を示します。

空気圧 (Kg/cm2

#3 2気筒エンジン

1476 rpm

1452 rpm

1228 rpm

177 cm・g

(トルク)

1気筒複動式(ピストンバルブ式)

ロス機構採用

#4エンジン仕様

ボア:12mm ストローク:14mm

起動トルク 測定値(cm・g) 

回転数 測定値(rpm) 

300

200

1492 rpm

0.8

0.6

0.2

500

1000

1500

回転数

 今回のエンジンはメインピストンとバルブピストンのシール性を上げる為に、1mm程ピストンの厚さを上げていますが、回転数、トルクの改善は、やはり「ロス機構」の効果と思われます。 また、コンパクト性の点では、#2エンジンと比較しても半分程度の大きさでできました。  今後の模型への搭載を考慮した次エンジンは、部品数も少なく、コンパクト性もあるため、この形式のエンジンをベースに改善していこうかと考えています。
 いつものように、コンプレッサーにレギュレータを接続し、空気圧を変えながら、回転数と起動トルクを測定した結果を図7に掲載します。 測定では空気圧に応じて回転数は上がりますが、1500回転のあたりから、あきらかに、回転音と振動は上昇している感触はあるものの、測定器の表示はほとんど変化しないという問題が発生、測定系の問題ということで、図7では、点線で推定しています。 今回のエンジン性能を#3の2気筒エンジンと比較してみると、回転数と起動トルクとも、倍近い数値を示し、想定以上の結果でおどろきです。 気になる点としては、これまでのエンジンより振動が多少大きいと感じられます。

 機械損失に敏感なスターリングエンジンが「ロス機構」を取り入れていることを知り、蒸気エンジンにも応用すれば回転数、トルクの改善が期待できるという発想から、今回のエンジン製作に取り組みました。 可動部が多いことから、動作が不安定にならないかを心配したものの、コンプレッサーによる試運転では問題なく動作し、性能に関しても、指で回転軸(直径4mm)をつまんでも止めることば出来ない程のハイパワーでビックリしました。 

製作結果
図6 ロス機構部写真
バルブピストン
制御ヨークの支点
制御ヨーク
クランクディスク
コンロッド

3mmφ

図5 エンジンヘッド部分構成イメージ
バルブピストン 

3mmφ

メインピストン
12mm
4.5mm

排気口

ドリル穴
排気蒸気が通るミゾ

ゴム

パッキング

バルブ

シリンダー

給気、排気パイプ

2.3mmドリル穴

メイン

シリンダー
排気
給気

エンジンヘッド構成

70mm
36mm
60mm
45mm 

構成

図3 ロス機構使用 ピストンバルブ式蒸気エンジン#4 遷移図

弁最下位置

給気

排気

ピストン最下位置

下死点

弁最上位置

 ロス機構では、T型クランクと制御ヨークが軸の回転に応じて、ちょっと複雑な動きをします。 図3にエンジンの遷移図とロス機構の動きを示します。 メインピストンとバルブピストン(弁)との関係はこれまでのエンジンと同様に、メインピストンがバルブより90度先行しています。 ポイントとしては、メインピストンが最上位置にあるときにクランクピンは左下45度の位置(遷移図1)、バルブが最上部にあるときは左上45度の位置(遷移図2)、メインピストン最下部にあるときはクランクピンは右45度の位置(遷移図3)、バルブが最下部にあるときは右45度の位置(遷移図4)となります。

7mm
図2 ロス機構(T型クランク)

回転中のロス機構の動き

直角方向の

動きがない

ピストンのサイドにかかる力が大

機械損失が問題となる。

フライホイール 
ストローク14mm 
単クランク機構
給気

T型クランクを使用するとバルブを駆動する偏芯カムは不要となり、直接バルブを制御。

制御ヨーク

バルブ

ピストン 

「ロス機構」とは

12mm
14mm
60mm×100mm×高さ70mm
外形寸法
ストローク
ボア
バルブ(弁)方式
ピストンバルブ方式
図1 ロス機構を使用した蒸気エンジン#4 外観図

測定方法に関して、回転数測定はこちらを、起動トルク測定はこちらを参照ください。

図7 回転数、起動トルク測定結果

100

0.4

T型クランク
図4 ロス機構を使用した蒸気エンジン#4 外観図
60mm
100mm
38mm
図2 2気筒ピストンバルブ式蒸気エンジン#3 外形図
100mm
クランク軸
34mm
113mm
フライホイール
給油器
吸気口
排気口
50mm
70mm
50mm
150mm 
85mm