測定開始
吊り上げドラムをアイドラーから離し、無負荷状態でエンジンを起動
ミニコンプレッサ
アイドラー
エンジンの回転を吊り上げドラムに伝達する為の円板、直径30mmのプ−リ状の円板にシリコンゴムの Oリングをはめこんだもの。エンジンを無負荷の状態で回転させ、吊り上げドラムに接触させてエンジンの回転力をドラムに伝達。
被測定エンジン
素材から作る蒸気エンジン、作品#1、作品#2と製作してきました。 とりあえず、動作することは確認してきましたが、作製したエンジンのパワーを知りたいということ、エンジン仕様の主要要素である、ボア、ストローク、単動/複動方式、気筒数、弁制御方式などがエンジン性能にどのような影響を及ぼすかを定量的に掴んでみたいということで、まずは起動トルクを測定してみました。 測定は、エンジンがどのくらいのおもりを吊り上げられるかという、極めて原始的でシンプル方法でトルクを測定しました。
項番
蒸気エンジン
仕 様
起動トルク
測定方法
測定値は、絶対値として妥当な値かどうかは分からないところですが、相対比較としておよその傾向は掴めると考えています。 測定結果は、項番3のピストンバルブ式エンジンは、オシレーティングエンジンの倍程度のトルクを示しています、これは、首振り式エンジンの効率の悪さも挙げられますが、複動式ということで、単動式の倍(2気筒相当)のパワーが供給されていることがその要因と思われます。 項番の1,2は、フレーム、フライホイールともまったく同じものを使用し、シリンダーとピストンのサイズだけを替えた物です。 測定結果は、なぜか、ボアの小さなエンジン(項番1)の方が、トルクが大きいという結果を示しています。 これは、工作精度の差とも考えられますが、エンジン(ボアとストローク)に対して空気圧が低いということかもしれません。 常識的に、ボアが大きいエンジンの方が、トルクが大きいと考えていましたが、空気圧との関係で最適なサイズがあるということかと思います。
起動トルク=(ドラム半径;1.5cm)×(吊上重量:g)×(アイドラ 力伝達比*)
アイドラー、吊り上げドラムの半径を考慮し、下記式でトルクを算出
NO
YES
ドラムをアイドラーから離し、回転を停止し、おもりを適当に増やす
吊り糸がドラムに1回転以上、巻きあがるか ?
ドラムをアイドラーに接触し、回転力を巻きあげドラムに伝達
トルク測定
エンジンの負荷ともなるもので、ネジ類など、適当な物をおもりとしている。 あらかじめ、おもりの重さが不明の場合は、クッキング用のはかりで計測する。
おもり
クラッチ機能
吊り上げドラム
吊り上げドラム
被測定エンジン
吊り上げドラム
エンジンの回転を吊り上げドラムに伝達するアイドラーは、アルミ素材をプーリ状にみぞを切り、シリコンゴムの「Oリング」をはめこんだものです。 吊り上げドラムは、アイドラーと接触する部分と糸を数回巻きつけられる円柱形状をアルミ素材で作りました。 なお、ドラムの回転のロスが少ないよう、軸受けにはベアリングが挿入されています。 また、軸受は下部が支点となり、指で軸受を押すとドラムがアイドラーに接触し、回転が伝わるようなクラッチ機能を実現しています(図2参照)。 なお、アイドラーの寸法を替えることで、大ききの異なるエンジンにも対しても測定が出来るよう考慮しました。 アイドラーとドラムは各の半径(円周)の比率により、回転伝達力は異なる為、最終的なトルク算出は、吊り上げた重量に、この比例係数をかける必要があります。
測定方法は、被測定エンジンが何グラムのおもりを吊り上げることができるかというシンプルな方法で行いました。 測定には、吊り上げるドラムとおもり、おもりの重さを測るはかりが必要となります。 本来、吊り上げドラムは、被測定であるエンジンの出力軸に直結されるものですが、蒸気エンジンによっては、手動で回転のきっかけを与える必要があることから、クラッチで負荷を切り離し、エンジンを回転させ、回転後におもりを吊るしたドラムに回転力を伝達する仕組みが必要となります。
起動トルク測定器具(作ったもの)
1.3
吊り糸
r
2
作品 #1
ボア;11mm ストローク16mm
図3 起動トルク測定状態
吊り糸
作用点
オシレーティングエンジン 単動式/1気筒
124 cm・g
測定結果
測定終了
巻きあげることが出来た最大のおもりの重量をはかりで計測
起動トルクとは
アイドラーの力伝達比*;(勝手な名称です)
アイドラーを介してドラムに力を伝達しており、アイドラーの円周とアイドラーとの接触部のドラム円周の比率の逆数に応じて力が伝達される。 今回は、アイドラー半径:18mm、ドラム14mmから算出、力の伝達比は1.3とした
図4 起動トルク測定手順
測定器具の設定の様子を図3に、測定の流れを図4に示します。 測定にあたっては、測定条件を一定とする為、ボイラーの替わりにエア・コンプレッサを使用し、エンジンに供給する空気圧を一定としました。 また、おもりについては、ボルト等適当な物をおもりとして使用し、後でクッキング用のはかり(1グラム単位で測定可能)で重量を計測しました。 なお、測定においては、アイドラーと吊り上げドラムの重量、回転力の伝達ロス、摩擦は無視しました。 測定にあたっては、おもりを少しづつ増加していき、どの重さで吊り上げられなくなったかその直前のおもりを測定しますが、おもりを巻きあげられた否かの判断は、1回転以上、糸を巻きあげたかを基準としましたが、なかなかその判定が難しい為、1桁目の数値は丸めたほうがいいかもしれません。
エンジン負荷となるおもりを吊り上げるトラムで、回転するアイドラーと接触することにより回転が伝達される。 直径30mmのドラムはベアリングが挿入され支持されている。
F
ピストンバルブ式エンジン 複動式/1気筒
トルク=軸から作用点までの距離×力(重量)
図1 トルクとは
1
作品 #1
オシレーティングエンジン 単動式/1気筒
ボア;9mm ストローク16mm
153 cm・g
以上説明の仕組みで起動トルクを測定してみました。 なお、ミニコンプレッサー使用時の空気圧は、目盛スケールが大きく、正確に読み取れないが、およそ0.06MPAです。
おもり計測
図2 起動トルク測定器具
おもり
クラッチ支点
回転軸
(被測定エンジン)
3
作品 #2
ボア;12mm ストローク15mm
285 cm・g