Title9-3.GIF (2758 バイト) Europe69年   

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ネロ帝自殺、軍人による後継者争い

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概略

ネロは属州の反乱に続き、ローマ市民、元老院にも「国家の敵」とされ、追い詰められて自殺する。四人が皇帝を名乗って争ったが、東部軍団に推戴されたウェスパシアヌスが勝ち、皇帝となる。


ネロ帝自殺、軍人による後継者争い
66年 ネロ、ティリダテスをアルメニア王と認め、ローマで戴冠式を行う
第一ユダヤ戦争勃発(〜70);ローマの守備隊、反乱軍に各地で敗走
ネロ、ギリシアに巡遊し、ギリシアの自由を宣言
ウィニキアヌス、ベネウェントゥムでネロに対して陰謀を企図
歴史家プルタルコス(ca.40〜ca.120)アテネに来る
67年 ネロ、コルブロに自殺を命じる
ネロ、コリントのイストモス運河建設に着手
将軍ウェスパシアヌス、ユダヤに派遣される
ウェスパシアヌス、ヨタパタを落とし、反乱の首魁ヨセフォスを降す;イェルサレム以外のガリラヤ・ユダヤの地を征服
68年 ネロ、イタリアに帰る
ルグドゥネンシス総督ウィンデクス、ガリアで反乱;ウェルギニウス=ルフスに敗れ、自殺
ウェスパシアヌス、5月にイェリコを落とした後、首都の政変のためイェルサレム攻囲を中止
ネロ自殺(*1)。ユリウス=クラウディウス朝終焉。以後、軍が武力を背景に皇帝を擁立するようになり、ローマ内戦に突入することとなる。
親衛隊長官ニュンフィディウス=サビヌス、ガルバ帝推戴宣言後同僚親衛隊長官ティゲリヌスを退けたが、親衛隊に殺される
ガルバ、スペイン軍団に擁立される(〜69)
69年 ライン軍団反乱;四帝乱立の内乱
ウィテリウス、ライン軍団に推され即位。同帝イタリアに向かう
ルシタニア総督オト、ガルバを殺害後、皇帝に即位
ペドリアクムの戦い;オト、ウィテリクスに敗死
ウィテリクス、ローマに着き、元老院に皇帝と承認される
バタウィイ族キウィリスの反乱、ガリアに広がる(〜70秋)
ウェスパシアヌス、東部の諸軍団に推され、アレクサンドリアで皇帝を宣す
クレモナの戦い;ウェスパシアヌス、ウィテリウスの軍を破る
ウェスパシアヌスの部将アントニウス=プリムス、ローマに入城。ウィテリウス、殺害される。
ウェスパシアヌス、元老院の承認を得て単独支配者となる(〜79);フラウィス朝創始
シリア総督ムキアヌス、ダキア人のモエシア侵入を撃退
70年 ムキアヌス、ウェスパシアヌスの軍を率い、ローマ入城
ウェスパシアヌス、ローマに入城し正式に即位(〜79年、フラウィウス朝創設)
ティトス、イェルサレムを占領・破壊(*2)し、属州ユダヤとする。(66年ユダヤ戦争、67ウェスパシアヌス、ユダヤ征服の後);第一ユダヤ戦争終わる
ケリアリス、キウィリスを降し、ガリア帝国建設の企てを粉砕
アカイアを再び属州とする
ca.平和の祭壇コロッセウムを着工(〜ca.80)
ティトス、ローマに凱旋門を建設(〜71)

*1 68年3月、ガリア・ルグドゥネンシスの属州総督・ガイウス・ユリウス・ウィンデクスによる反乱が勃発。属州総督のガルバ、オトがこれに同調した。ウィンディクスの反乱は高地ゲルマニア軍により4月には鎮圧される。ガルバは元老院から「国家の敵」決議を受け逃亡した。しかしその後、穀物の価格が高騰しているローマで、エジプトからの穀物輸送船が食料ではなく宮廷格闘士用の闘技場の砂を運搬してきたという事件が報じられ、ネロは市民の反感を買った。元首の支持率低下を機にネロと対立していた元老院は、ネロを「国家の敵」としガルバを皇帝に擁立する。ネロは逃亡しローマ郊外の解放奴隷パオラの別荘に隠れたが、騎馬兵が近づく音が聞こえるに及び、自らの喉を剣で貫き自殺した。
本人の自殺後、その墓にはローマ市民から花や供物が絶えなかったという。ネロの崩御後皇帝となったガルバはネロ派の軍や都市と敵対し粛清した。しかしガルバから離反し皇帝になったオトはネロ派の復職を認めた。ネロの銅像やドムス・アウレアの建設再開を許可し、ネロを裏切った護衛隊長ティゲリヌスを処刑し、民衆の人気を買った。オトの次の皇帝ウィテリウスはネロの慰霊祭を催して民衆を喜ばせた。
 *2  70年にウェスパシアヌス(位69-79)がユダヤ人の反乱を鎮圧した。そして最後にはイェルサレムの神殿を破壊した。その結果、この時期にキリスト教徒たちは、イェルサレムから集団で脱出することになり、それが初期のキリスト教をユダヤ教のルーツからはっきりと引き離すことになった。

資料 塩野七生 『ローマ人の物語XIV キリスト教の勝利』
石橋秀雄他 『世界史大年表』
サイモン・ジェンキンス 『ヨーロッパ全史』