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複製画の販売にあたって

 イラストレーターとしての仕事をしていると、原画のイメージと印刷での刷り上がりのイメージが違って感じる事があります。表現される媒体、大きさ、画像を処理する方のイメージが違うので当然です。ここ何年かの自分の原画は砂地の下地に描いている為、見る角度、光によってイメージは変わります。自らも作品見本やWeb画像を作る時に本来のイメージを何処に持って行くのかに苦労する時もあり、正直な所、妥協している所もあります。複製画は何人かの方から複製画とか売らないのですかと問われ、自分自身の基準を作る事にもなり、もともと図鑑の絵や銅版画の好きな自分には複製は複製なりの魅力もあるとも感じているので、複製の作品でも作るつもりで楽しみながら試してみようと三年程前から検討しはじめました。

 リトグラフやシルクスクリーンは質感的には魅力を感じますがコスト面で今の自分には現実的ではないですし、オフセットも大量に印刷するならともかく、マットな質感にしたい自分にはコスト面で用紙の選択肢が限られてしまいます。現代では複製としてはやはりジークレーが精度とコストのバランス、リスクの少なさも含め良いと思いしました。 始めてジークレー工房の無料体験でスキャンから作った時は A3 以内の出力なら自宅出力でも大きな違いはないように思えましたし、外にお願いする予算で最新のプリンターを購入し、画像調整や紙選びに時間をかける方が自分の気に入ったものが作れるのではないかと思いました。でも実際に何度が双方の出力を試しているうちに、とくに濃い色の細部の精度が工房出力の方が砂地の表現に優れていたので、作品としての額装済みの方は画質を優先し工房にお願いする事にしました。用紙はフレスコジークレー他、色々試した中でも、ミュージアムエッチングが好みでしたが、市販のミュージアムエッチングは紙のロットの問題か、PX-5Vとの相性が悪いのか、個人出力では画質に満足出来る結果が得られなかったので、質感と画質のバランス、額装との差別化を踏まえシートはバンブーを選択しています。

 価格設定はとくに悩みました。複製画を売らないのですかと問い合わせてくれた方は若い方が多く、その他にも外国の方や、こちらの些細なこだわりとは別に単純に絵を気に入ってくれる方もいました。そういう方達にも提供したいと思うと出来るだけ低価格にしたい、とは言えものを作る者として安売りはしたくないと言う本音と、安くするからと言って質は落としたくないという気持もあります。家庭用プリンターでの出力とは言え、安いシートを同じジークレーという方法で質も一般の方には大きく変わらないレベルのものを提供する事は、細部にこだわって外で出力した額装・工房出力の価値がなくなるリスクを孕んでいます。しかし悩んだところでもともと絵の価格というものは誰にも分かるものではありません。制作にかかるコスト、手配や額装の作業時間、原画の制作時間等々を考慮の上、あえて 38 という数字にこだわり、仮に今は売れなくとも、ゆくゆくはせめてこのくらいの価格で完売できるような作家になる事を心に決め、この提供形態と価格にしました。ものを作る者の誠意として、万が一限定枚数を完売した場合は、出力データは処分します。ご検討いただけると幸いです。

 2014.1.4 チカツタケオ

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