擁壁の上に米軍将校住宅が完成
1977年に米軍から日本に返還されていた旧EMクラブ跡地に、異様なたたずまいの米軍将校用住宅8棟11戸が完成しました。新しい住宅はフィドラーズグリーン家族住宅とよばれ、いずれも鉄筋コンクリート2階建て。5棟はガレージ付きの1戸建て、3棟は2戸のタウンハウスです。警備員の詰めるガードハウスも建てられます。費用は約28億円で国土建設省の予算から支出されます。 異様なのは高さ14メートル、長さ250メートルにもおよぶコンクリート製の擁壁。その土地造成とコンクリート外壁に各7億円をかけています。旧EMクラブ跡地は急斜面となっていてそこに土盛りをして土地造成を行ったので、土砂崩落を防ぐとして擁壁を設けたといいますが、土砂を撤去して造成した方がはるかに安上がりなはず。14メートル高さの擁壁はテロ対策の役目も果たす要塞ともいえるのではないでしょうか。国土建設省の担当者は「米側の要望を受け入れた結果、あの構造になった。28億円がかかったのはやむを得ない。外壁はコンクリートの打ちっ放しではなく、自然の『岩』のような模様にするなど、景観に一定の配慮はした」(朝日新聞)と述べています。 28億円の内訳は11戸の上屋の建設費が5億5千万円、土地造成と擁壁に各7億円、道路や電気引き込み工事などに8億5千万円。1戸あたりの延べ床面積は160〜250m2で上屋の建設費は5千万円になります。平均的な将校用住宅の床面積は約145m2で、上屋の建設費は3千万円程度ですから、本体だけでも豪華な造りといえます。しかも土地付き分譲と考えると1戸あたり2億5千万円以上で基地周辺部の新築住宅の不動産相場である7千万円前後と比較すると実に4倍になります。 この新しい将校用住宅は、米軍ドラゴンハイツ地区の一部(7棟11戸)が、建設中の西九州自動車道の佐世保インターチェンジの用地にかかることからその代替として建設されたものです。造成された土地の面積は7,600m2で、土地と同じ面積ですが、米軍に再提供される旧EMクラブ跡地の全面積は1.5倍の12,000m2の広さがあります。 通常、高速道路は山あいを通るものですが建設中の道路は市街地を通ります。当初の予定は高規格道路で現在の「みなとインター」が計画の終点でした。ところが福岡まで延びるのであれば予算がつくということで高速道路に切り替えられたという経緯がありますす。おそらく米軍からの要求があったのでしょう。佐世保インターチェンジは、現在の佐世保みなとICからわずか2.9km、米軍佐世保基地のゲートのすぐ近くに建設されるもので、本来は必要のない場所。ゲートの目の前にインターがある基地など他にはありません。これによってゲートと針尾住宅地区が30分で結ばれることになります。まさに米軍のためのインターと言っていいでしょう。おまけに1.5倍の土地と老朽住宅に代わって豪華な新築が手に入るのですから、まさに濡れ手に泡です。 さらに現在、ドラゴンハイツ地区の住宅そのものも老朽化(住宅は明治末期から大正年間に建てられた)にともなう建て替え計画が日米間で合意されており、09年3月までに低層・高層あわせて88戸が建設されます。 【関連記事】 |
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