長崎市が国民保護計画に対する
パブリックコメント結果を公表

 長崎市は2月13日付で、国民保護計画素案にた対するパブリックコメント(募集期間は06年11月2日〜06年12月1日)の募集結果を公表しました。意見の申し出件数は25名から61件でした。意見の要旨と市の考え方は下記の表のとおり。

 長崎市は表中の9と10については一部修正を行ったこと、28については「核兵器攻撃に関する対処の記述を削除する」ことになったとしています。それ以外については、長崎市国民保護協議会にはかったものの、計画素案の具体的な修正には至らなかったとしています。

 寄せられた意見の多くは、国民保護計画が必要なそのものに否定的です。しかし市は国民保護計画は「市町村に義務づけられた」ものだから作成しなければならないとし、「計画に基づく措置が実施されることのないよう平和への努力を重ねる」ことを序論で述べて事足りるとしています。またはじめに結論ありきの姿勢がありありと見えます。多くの市民の意見を反映させるベだという意見について、(分厚い)素案は市の機関で閲覧できる状態にしてあり、素案概要は必要に応じて配布できるようになっていたと、閲覧しない・要求しない方が悪いとでも言いたいように思えます。本来は素案概要を全戸に配布して意見を聞くべきものでしょう。市民生活に重大な影響を及ぼす可能性のある問題なのですから。

 (1)外交政策に関するご意見
番号 意見の要旨 市の考え方
戦争や核兵器使用が起こらないような外交努力を行うことが重要であり、国民保護計画は必要ではない。(12件) 国民保護計画は、万が一の際に国民の生命や身体・財産を保護するための危機管理計画として、市町村に義務付けられた法定受託事務であり、長崎市として作成しなければならないものです。しかしながら、核兵器の使用や戦争はあってはならないことであり、それが起こらないようにすることが何よりも重要であり、国民保護計画に基づく措置が実施されることが決してないよう平和への努力を重ねていくことを計画の序論において明記しております。
 (2)核兵器廃絶・世界平和に関するご意見
番号 意見の要旨 市の考え方
核攻撃からはどのような計画をつくっても市民を守れない。核戦争にならないよう今の平和憲法を守り世界平和について努力すべきだ。(11件) 国民保護計画は、万が一の際に国民の生命や身体・財産を保護するための危機管理計画として、市町村に義務付けられた法定受託事務であり、長崎市として作成しなければならないものです。しかしながら、核兵器の使用や戦争はあってはならないことであり、それが起こらないようにすることが何よりも重要であり、国民保護計画に基づく措置が実施されることが決してないよう平和への努力を重ねていくことを計画の序論において明記しております。
序論については、被爆都市としての現状、責務について触れられており、評価する。(1件) 国民保護計画作成に当たって、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けた、これまでの長崎市の訴えを計画の中の序論として記述することにより、長崎市の平和に対する基本的な考えを示しております。
 (3)市民の意見の収集についてのご意見
番号 意見の要旨 市の考え方
国民保護計画については、多くの市民の意見を反映させなければならない。(1件) 国民保護計画の作成においては、国民保護協議会により各界各層の委員の皆様に就任していただきその内容について審議しており、また、市議会においても、定例議会のつど計画作成の過程について説明し、ご意見をいただいているところです。さらに、11月にはパブリックコメントを実施し市民から意見を募集したところです。このような過程により、様々な意見を拝聴しながら計画を作成しております
国民保護計画については策定を急ぐことなく、公開討論会など十分な時間をかけて検討されることを望む。(2件)
素案については十分に市民に周知されているとは思えない。パブリックコメントの募集要綱では記載事項が指示され、その指示とおりでないと意見として受け取ってもらえないのだろうか。もっと気楽な形で応募できないのだろうか。(1件) パブリックコメントの実施に当たっては、長崎市パブリックコメント制度実施要綱に基づき実施しており、広報ながさき(11月号)及び市ホームページに掲載し、周知を行いました。また、実施の際には、市役所、各支所、各行政センターに計画素案を閲覧できるようにしており、さらに、計画素案概要については、必要に応じ配布を出来るようにしました。また、市ホームページにおいては、計画素案を掲載しそれぞれご意見を募集したところです。
パブリックコメントについて広報ながさきに掲載されていたが、素案の概要ぐらいは掲載するべきだと思う。(1件)
なぜ、武力攻撃を受ける想定をしなければならないのか。国からの指示だけでは理由にならない。計画を作るか作らないかは市民の投票でも行って決めてください。(1件) 国民保護計画は、万が一の際に国民の生命や身体・財産を保護するための危機管理計画として、市町村に義務付けられた法定受託事務であり、長崎市として作成しなければならないものです。しかしながら、核兵器の使用や戦争はあってはならないことであり、それが起こらないようにすることが何よりも重要であり、国民保護計画に基づく措置が実施されることが決してないよう平和への努力を重ねていくことを序論において明記しております。
 (4)国民への協力についてのご意見
番号 意見の要旨 市の考え方
国民の協力を求めるということは保護に値しない。(1件) 国民保護法において、国民保護措置に当たっての国民の協力は、国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制に及ぶことがあってはならない旨規定されています。計画においても、法の趣旨に基づきその要請に当たって強制に及ぶことがあってはならない旨の文言を追加し記述しました。
10 国民への協力については、その要請が強制にわたってはならない旨の文言が必要である。(1件)
11 国民への協力とは私有財産の接収や市民の動員なのか。(1件) 国民の協力とは、国民保護法の規定により、避難住民の誘導、消火・負傷者の搬送、被災者の救助その他の武力攻撃災害への対処に関する措置、保健衛生の確保などの援助についての協力とされております。
 (5)人権と自由についてのご意見
番号 意見の要旨 市の考え方
12 憲法で保障されている人権と自由を保障することを具体的に明記すること。(1件) 国民保護法において、国民保護措置に当たっては基本的人権を尊重をする旨規定されています。計画においては、法の趣旨に基づき記述しております。
13 基本的人権の制約に当たっては、その手続きが公正であり、かつ適正であることを示す書面を提示し、迅速に異議の申し立てとその処理が行われるようその手続きを明示すること。また、国民の権利利益の迅速な救済については、単なる努力事項ではなく、どこへ異議の申し立てを行い、誰が裁定するのかを明らかにする必要がある。
(1件)
国民保護法において、国民保護措置に当たっては基本的人権を尊重をする旨規定されています。また、その権利利益の迅速な救済についても計画においては、法の趣旨に基づき記述しております。また、国民の保護のための措置の実施に伴う損失補償については、当該損失補償の原因となる措置を講ずる行政庁において、国民の保護のための措置に係る不服申立てについては、行政不服審査法に基づき当該不服申立てを受けた行政庁において、訴訟については、行政事件訴訟法に基づき裁判所においてそれぞれ救済手続を処理するに当たっては、できるだけ迅速に処理するよう努力することとなります。
14 「研修及び訓練」については、職員、住民に対し強制的になってはならず、基本的人権を侵すことがないことを明記すべきである。(1件) 国民保護法において、国民保護措置に当たっては基本的人権を尊重をする旨及び国民の協力は、国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たっては強制に及ぶことがあってはならない旨が規定されています。計画においては、法の趣旨に基づき記述しております。
 (6)平和教育についてのご意見
番号 意見の要旨 市の考え方
15 学校教育において、過去の戦争を踏まえ戦争をしない教育をしなければならない。(1件) 国民保護計画には、第2編「平素からの備えや予防」の学校における教育において、安全教育や自他の生命を尊重する精神、ボランティア精神の養成等のための教育を行うことを記述しております。
16 市職員への平和教育を徹底することを明記すること。(1件) 序論第2章第2節において、長崎市民平和憲章を尊重し実践していくことを明記しており、今後とも市職員の平和教育の充実について努力してまいります。
 (7)国民保護計画のそのものについてのご意見
番号 意見の要旨 市の考え方
17 武力攻撃を想定した保護計画はいらない。(1件) 国民保護計画は、万が一の際に国民の生命や身体・財産を保護するための危機管理計画として、市町村に義務付けられた法定受託事務であり、長崎市として作成しなければならないものです。しかしながら、核兵器の使用や戦争はあってはならないことであり、それが起こらないようにすることが何よりも重要であり、国民保護計画に基づく措置が実施されることが決してないよう平和への努力を重ねていくことを序論において明記しております。
18 日本がNBC攻撃を受ける可能性はゼロではない。現在の世界情勢からもその対策をとることは、国や自治体の責任である。(1件)
19 国民保護計画は、侵略の危機感をあおり国民の統制をしやすくするためのもので必要ない。(1件)
20 在日米軍兵士の反乱・暴動、自衛隊兵士のクーデターに対する対応策がないのは不十分だ。(1件)
21 日本へのテロの可能性の根拠を提示してください。もし根拠があるのであればそれを解消することで未然に防ぐことができる。(1件)
22 国民保護計画は戦争をするための計画であり、平和憲法の精神に反している。(1件)
23 国の指導者の責任についても明記すること。(1件) 国民保護計画は、戦争や大規模テロなどが発生した場合において、国民の生命や身体・財産を保護することについて、国や地方公共団体の役割分担を定める計画であり、指導者の責任を定めるものではありません。
24 市職員の心理的負担を増やすことになる。(1件) 国民保護計画において、国民保護措置における市職員の活動時の安全の確保に十分な配慮をすること等を定めております。
25 有事の際に避難誘導などが実際出来るはずがない。(1件) 国民保護計画において、国民保護措置における市職員の動員のみでは十分な対応が困難であるときは、警察、海上保安部、自衛隊にその措置を要請することができることを定めています。
26 戦争以外の非常災害は、現行の警察や消防の力で活用できるため、保護計画はいらない。(1件) 武力攻撃災害においては、災害の規模が大きく広域に及ぶことが想定されるとともに、その避難に関する計画など特有の内容も多いため、新たな計画として定めるものです。
27 原子力発電及び原子力施設の事故又は米軍艦船の原子炉事故についての記載がない。(1件) 原子力発電及び原子力施設の事故などによる放射線物質の大量の放出などは、災害対策基本法に定められる災害となっており、その対応については、その施設が立地する近隣の自治体の地域防災計画により定められることとなっております。
28 「核攻撃の被害に対して住民の生命・身体・財産を守り、被害を最小にとどめる方策を講じる責務を有する」という記述は、核兵器の破壊力から考えた場合、市は壊滅状態となり行政の機能も喪失していると思われるため、この記述は削除すべきだ。(7件) 核攻撃の対処に関する記述については、国の基本指針の記述について、誤解をまねくものであり、速やかに核攻撃の被害想定及び対応策について見直すよう国に対し求めたところであります。また、国が明確な回答を示すまでの間は、その対処に関する記述の削除を求めています。本市としても、国が明確な回答を示すまでの間は、核攻撃の対処に関する記述を削除することとしました。
29 市国民保護計画の見直しはどのように行なわれるのか。また、変更手続きは、「市国民保護協議会に諮問の上、知事に協議し」とあるが、知事と協議と修正すべきだ。(1件) 市国民保護計画については、今後、国における国民保護措置に係る研究成果や新たなシステムの構築、県国民保護計画の見直し、国民保護措置についての訓練と検証結果等を踏まえ、普段の見直しを行なうものと定めており、市国民保護協議会の意見を尊重するとともに広く関係者の意見を求めることと定められています。また、変更に当たっては、市国民保護協議会に諮問し、知事に協議し、市議会に報告し、公表することと定められています。
30 想定される武力攻撃事態を受けた場合、国の発令待ち、指示待ち及び県の通知、指示待ちでは、緊急を要する災害への対処は出来ないので、市長の判断で実施できるような体制が必要ではないか。(1件) 市は、武力攻撃災害が発生した場合において、特に必要があると認めるときは、自らの判断に基づき、退避の指示や警戒区域の設定を行うことができることを計画において定めています。
31 国際的な紛争は国の行為にほかならないので、武力攻撃を受ける事態が発生した場合に、国民がその対処措置によってこうむった被害に対しては、国が責任を持つことになっている。しかしながら、一般の住民の被害については、補償する制度は定められていないので、国へその対策を立てるよう求めるべきである。(1件) 国民保護法において、武力攻撃災害の復旧に係る財政上の措置については、武力攻撃事態の終了後に制定される法律において定めることとされています。
32 武力攻撃事態になった場合広範囲にわたり被害を及ぼすので、保護計画は機能しないと思われる。(1件) 武力攻撃事態によって発生する災害は、武力攻撃の規模や態様によって異なり、状況によっては、県全域に及ぶものやそれ以上のことが想定されます。このことから、国民保護体制としては、国、都道府県、市町村の役割を分担し且つ連携しながらその措置を行うこととされています。
33 計画の中身については、防災対策を活用することで十分です。(1件) 武力攻撃災害においては、災害の規模が大きく広域に及ぶことが想定されるとともに、その避難に関する計画など特有の内容も多いため、新たな計画として定めるものです。

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