在日米軍の青森空港使用を県が拒否

 昨年4月と6月、米軍機の青森空港使用を青森県が拒否していたことがわかり、地元紙の東奥日報と朝日新聞が報道しました。これまで民間空港や港湾への米軍機や艦艇の利用は「地位協定上断れない」とされてきました。しかし青森県は「軍事利用」を理由に拒否し、米軍は引き下がったのです。これに対して当然ながら外務省からは「圧力」があったようです。しかし自治体の判断で拒否ができたのです。

 青森空港は開港前の82年、地元住民の要望に対し、青森県は「軍用施設としては使わない」と回答した経緯があります。開港以来、これまで米軍の青森空港使用は100回を数えます。今回の米軍機使用の打診は、昨年6月につがる市車力に配備されることになった「Xバンドレーダー」に絡んだものでした。「レーダーを所管する在日米陸軍幹部が知事を表敬訪問」という名目で連絡用小型ジェット機UC35が使われる予定でした。

 昨年4月19日、米空軍三沢基地から打診があり、神奈川県のキャンプ座間に向かう際に青森空港を利用したいとの連絡がありました。しかし県は、青森空港が民間空港であることや県民感情を理由に「緊急時以外は使わないでほしい」との意向を米軍側に伝え、「着陸拒否」の姿勢を示しました。
 その後、外務省から「着陸できない根拠はなにか」「知事の表敬訪問なので、使用できないか」との趣旨の電話があったといいます。青森県側は「緊急事態のとき以外は米軍機は離着陸すべきではない」との考えを伝えました。翌20日も外務省から電話があり、同様のやり取りが繰り返されました。その結果、米軍からは「天候不良で今回はキャンセルする」と連絡が入りました。

 その後、5月下旬に在日米陸軍司令官らは、青森空港を使用せずに三沢市やXバンドレーダーが配備されている、つがる市を表敬訪問しています。
 さらに6月、今度は米空軍横田基地からファクスで、同基地から青森へ向かう際に利用したいとの打診がありました。このときも青森県は「米軍機の使用は、緊急時か人道上必要のある際に限り認めているので、遠慮してほしい」と回答し、結果的に米軍側が打診を取り下げました。

 地元紙が「米軍機拒否の事実」を報道した今年2月5日、定例記者会見の中で三村・青森県知事は当時の対応を説明しました。

青森県知事の記者会見内容(07年02月05日)
○記者
 昨年、米軍から青森空港の利用に関して2回打診があったというお話が出ているのですけれども、今後、もし同じような打診があった場合に、県としてどういった対応をとられるか。もしくは改めて県の基本姿勢というのをお伺いしたいのですけれども。

○知事
 基本姿勢というよりも、まあ結果でお分かりのとおりですけれども。米軍機による青森空港の使用申請に対しましては、これまでも、いわゆる故障とか緊急の時、あるいは人道上必要な時、緊急輸送をしないといけない時、例えば病気とか、そういうこと等以外の場合、使用しないようにきっちりと申し入れてありますし、今後ともこの方針に変更はないということは向こうも十分承知したんじゃないかな。

 米軍基地を抱えながらも、米軍と外務省の「圧力」に屈せず、毅然とした姿勢を貫く青森県知事の態度を他の自治体は見習うべきでしょう。
 そもそも地位協定では、米軍機や艦艇が出入りする際に着陸料や接岸料を免除されることを定めているだけで、無条件に出入りできることを定めてはいません。その判断は自治体に委ねられているとみるべきです。そうでなければ「どこでも基地」になってしまいます。基地の提供でさえ、米軍は使用を「許される」とあるのですから。