国民保護計画から「核攻撃」を削除
長崎市国民保護協議会が多数決で決定したが・・

 1月31日に開かれた第3回長崎市国民保護協議会は「核兵器による攻撃への対処」を削除した国民保護計画案を賛成多数で承認しました。挙手による採決では、警察や自衛隊関係者らは手を挙げなかったと報道されています。

 協議会には市長(会長)の他、40人の委員が参加(5名欠席)。事務局側から長崎市国民保護計画(素案)からの主な修正箇所について説明が行われました。序論に「国が具体的な被害想定などを明確にするまでは核攻撃に関する対処の事項を記載しない」と明記し、素案にあった「NBC(核・生物・化学兵器)」としていた部分を「生物・化学兵器」と変更、核攻撃への対処の記述も削除しています。
 被爆者団体などは「核攻撃を受けたら市民を守ることはできない。想定することは核被害を防げるとの誤解を招く」と指摘して、核攻撃に関する記述削除を要求してきました。これをうけて伊藤市長も国に対して具体的な被害想定や対応策を示すよう要求しましたが回答がなく、記述の削除を検討していたものです。

 協議会では次のような意見が出されました。

  • 核兵器攻撃の対応についても、できる限り住民への被害を最小限にすることが大事。国の方針に定められている核攻撃への対処については、修正する必要はない。
  • 核攻撃への対処に関する記述を削除したことを評価する。核被害を一番身近に感じている者がアピールしていかなければ状況は変わらない。
  • 行政として最悪の事態を想定し、市民を守ることも非常に大きな責務だ。国が核兵器攻撃による具体的な被害想定とその対応策を示した段階で保護計画を修正することを前提に、事務局本案でけっこうだ。
  • 現在の国の対応策は、色々な面から十分議論されたものとはとても思えないし、かなりナンセンスなことも含んでいる。国は、長崎・広島の被爆の経験を十分に取り込み、長崎・広島の原爆の威力の10分の1程度場合、あるいはその10倍、20倍、100倍といった被害想定を国の責任でやるべきだ。長崎市がとっている方針を支持したい。

 しかし保護計画素案の序論で述べているように「核兵器による攻撃から市民を守ることができない」のであって、本来詳細な対処法など不可能であり、それを国民保護の対象とすること自体に問題があるものです。生物・化学兵器にしてもテロ攻撃や着上陸についてもそれを未然に防ぐことこそが真の国民保護のはずです。それに力を注がずに、万が一に備えるという、「保険」のようにして市民に安心感を与えようとするのは、まさに「誤解を招く」ことにほかなりません。「核攻撃への対処」を削除したからといってこの「保護計画」に賛成するわけにはいきません。