被爆地の自治体で、核攻撃想定の
「国民保護」計画の策定が始まる

 7月5日、長崎市の「国民保護」計画を策定するための協議会の初会合が開かれました。協議会は市長が会長を務め、委員は行政、警察、医療、交通、電力、ガス、通信などの関係者44人からなります。

 そもそも「国民保護」計画はアメリカの無法な戦争の際には、国民強制を円滑に運ぶために住民を隔離して米軍・自衛隊の自由を確保し、日常的には「思想動員」をふくめて「戦時体制」を構築することに狙いがあります。「国民保護」とは名ばかりで、加えて国や県の「保護」計画は核攻撃を受ける事態を想定し、被爆国・県とは思えないほど荒唐無稽の「対処法」を挙げています。それは筆舌に尽くしがたい原爆被害を人為的に防ぐことができるという誤ったメッセージを「最後の被爆地」から発信することになり、核兵器廃絶の運動に大きなマイナスをあたえることになります。

 会合では県危機管理防災課から国民保護計画についての説明がありましたが、大問題となっている「核攻撃への対処」については具体的な説明はなく、委員からの質問や意見もありませんでした。
 長崎市は計画に「被爆地長崎市の責務として世界恒久平和実現に向けた努力を積み重ねる」との内容を明記する方針を明らかにしていますが、「核攻撃への対処」との矛盾は避けられません。

 被爆者5団体はこの問題に対して、「核攻撃を受けた場合『風下を避け、手袋、帽子などで被爆を抑制し、口および鼻をタオルで保護すること』など、『計画』は子どもだましよりもあさましい内容」として、市が保護計画を策定しないように申し入れていました。
 これに対して長崎市は逆に、被爆者団体に協議会への参加を要請しました。しかし、被爆者側は「核兵器廃絶を求める私たちは、閣議決定された『国民保護に関する基本指針』等に基づいて核攻撃を受けた場合を想定することになる『長崎市国民保護計画』の策定ならびにそれに基づく諸計画および行動に関与することは絶対できない」として、協議会への参加を拒否したという経緯があります。

 協議会では9月を目処に素案を作成し、市民からの意見を募って年度内の策定を狙っています。

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