外務省からのクレームか
米軍基地への立入許可が取り消される

 佐世保市議2人が米軍佐世保基地赤崎貯油所の敷地への「立入り調査」を申請していた問題で、いったん出されていた許可が取り消されるという事態が起きています。

 これは赤崎貯油所敷地内に重油汚染土壌が大量に放置されている可能性があるとして、佐世保市議の橋本純子さん(米軍監視団体リムピース)と山下千秋さん(佐世保原水協理事長)が日米合同委員会の合意事項による申請を佐世保基地司令官宛におこなったものです。この合意文書によれば、基地内への立入許可手続は「地方議会の議員は、施設を管理する米国の軍人に対して直接行なう」となっており、橋本純子さんらは佐世保基地側から正式に出された申請様式に基づいて申請を行なったのです。

 立入り調査は2月10日を希望していましたが、米軍側からは合意文書にある「3日前」までにどころか、希望日を過ぎても許可、不許可の連絡はなく、山下千秋さんが問い合わせたところ2月19日になってようやく許可がおり、日程調整の上で2月24日に立ち入ることが決まりました。

 ところが翌20日の夕方になって、佐世保基地司令部渉外総務室から、「在日米軍司令部から、環境に関する基地入門申請は、外務省を通じて中央レベルで行なっていいただくように指示がまいりました。従いまして、正式な手続きをもう一度踏んでいただくことになります。」というファックスが届いたのです。

 この問題を追っている西日本新聞は2月21日付けの報道で、問い合わせをした外務省日米地位協定室が「手続き自体は正しく行われており、許可が取り消された理由が分からない」と述べていることを紹介しています。

 いずれにしても今回の立入申請が正式なものであること、そして佐世保基地が立入を認めたことは明白です。許可取り消しは外務省を通さずに行われたことに対するクレームでしょうか?しかしこの申請に外務省がかかわる余地はまったくありません。この立入が前例となって全国の米軍基地に地方議員が立ち入ることを恐れたとすれば自らが決めたルールをふみにじることになります。納得のいく説明を聞きたいものです。


1996年12月2日日米合同委員会合意事項

(仮訳)
   合衆国の施設及び区域への立入許可手続

一 目的
(a)  日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づき、合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。これらの施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、地位協定という略称で知られる別個の協定により規律される。地位協定第三条に基づき、合衆国は、日本国政府により提供された施設及び区域への出入を管理するために必要なすべての措置をとることができる。
(b)  日本国における合衆国軍隊(以下「在日合衆国軍隊」という。)は、地域社会との友好関係を維持する必要性を認識し、立入が、軍の運用を妨げることなく、部隊防護を危うくすることなく、かつ合衆国の施設及び区域の運営を妨げることなく行われる限りにおいて、立入申請に対してすべての妥当な考慮を払う。
(a)  以下においては、合衆国の施設及び区域への公的な立入の許可申請のための経路及び手続を定める。
(b)  この手続において「公的な立入」とは、合衆国の施設及び区域の案内を伴う視察、合衆国軍隊の構成員との協議、及び公務遂行を目的とする日本国の公的機関の構成員による合衆国の施設及び区域への立入を含む。
(c)  この手続は、合衆国軍隊の招待により、又は別段の相互の承認により行われる立入には適用しない。
三 手続
(a)  合衆国の施設及び区域への公的な立入を希望する日本国の国民(団体の場合は、二〇名以下に限定する。)は、申請した立入日の遅くとも十四日前に、この手続に附属する申請様式を用いて(b)から(c)までに定める経路のうち適当なものを通じて許可を申請する。その構成員が二以上の分類に該当する団体による立入の許可申請は、(b)から(c)までに定める分類であって当該団体の構成員に適用があるもののうちその番号(IからIII)の最も小さいものに係る手続に従って行う。
(b)  分類Iの立入のための申請は、合同委員会事務局を通じて行う。
 この分類には以下の者が該当する。
 (1)国会議員
 (2)日本国政府の中央機関の職員(自衛官を除く。)
(c)  分類IIの立入のための申請は、防衛施設庁を通じて在日合衆国軍隊司令部に対して行う。
 この分類には以下の者が該当する。
(1)立入を予定する施設及び区域が所在する都道府県以外にある地方議会の議員
(2)立入を予定する施設及び区域が所在する都道府県以外にある地方公共団体の職員
(d)  分類IIIの立入のため申請は、立入を予定する施設及び区域を管理する合衆国の軍人に対して直接行う。
 この分類には、(b)及び(c)に掲げる者以外の者が該当し、以下の者を含む。
 (1)自衛官
 (2)立入を予定する施設及び区域が所在する都道府県内にある地方議会の議員及び地方公共団体の職員
四 例外
(a)  申請を遅くとも十四日前に通知すること又は団体の規模を二〇名以下に限定することについての例外は、合同委員会の日本国側代表又は防衛施設庁に所属する合同委員会の構成員が合同委員会の合衆国側代表に対し、例外的取扱いの要請を行う場合に限り認める。
(b)  分類IIIの立入のための申請は、合同委員会の日本国側事務局若しくは防衛施設庁が適当と判断する場合、又は合同委員会の合衆国側事務局が合同委員会の日本国側事務局に対して例外的取扱いの要請を行う場合には、分類I又は分類IIの経路を通じて行うことができる。
(c)  国会議員、日本国政府の職員、地方議会の議員又は地方公共団体の職員が、公務遂行のため合衆国の施設及び区域への即時の出入が必要であるとの理由により、公的な立入の許可申請を短期間の事前通,知により行う場合、在日合衆国軍隊は、立入が軍の運用を妨げることなく、部隊防護を危うくすることなく、かつ合衆国の施設及び区域の運営を妨げることなく行われる限りにおいて、当該申請に対してすべての妥当な考慮を払う。
五 申請に対する回答
 在日合衆国軍隊は、四に基づき例外的取扱いがなされる場合を除き、立入日の遅くとも三日前に、すべての申請に対する回答(許可又は不許可)を通知する。
六 立入者に同行しようとする報道関係者に係る申請
 立入者に同行しようとする報道関係者に係る申請は、別途、ニュー・サンノー米軍センター内の在日合衆国軍隊報道部(電話及びFAXの番号は、いずれも〇三−三四四〇−六〇一〇。)に直接行う。
七 その他の事項
 この手続の実施に係る事項は、防衛施設庁と在日合衆国軍隊司令部との間、又は合同委員会事務局の間で協議する。以上に定める手続の変更又は修正は、承認のため合同委員会に提出する。