エピローグ
いよいよ、明日、ここのプリパラは閉店になる。
「とうとう、明日で最後かぁ」
「明日は絶対来るよね」
「もちろん!」
ゆうきもわたし達と同じ大学に決まり、今は自由に遊べる。
「でも、ライブできるかなぁ…」
「きっと、やり納めライブやりたい人多いよね」
「じゃ、せいぜいドリシアで1曲かな」
「それでは、各自、いちばん思い入れのあるコーデで、『GoGo!プリパライフ』でいい?」
「異議なし」
「だね」
「じゃ、また明日!」
***
ゆうきはベッドに座って、一つのミックスコーデを眺めていた。まだ、あみと二人だった頃、文化祭ライブで手に入れたワンピ。たまたまスーパーで見つけて買ったグミについていたプロモプリチケのシューズを合わせたところ、あみがすごく気に入って、
「小悪魔っぽくていいね。こうしたら…」
と、ベイビーモンスターサイリウムヘアアクセを頭に載せ、
「悪魔のパーツを隠しわすれたお茶目な小悪魔コーデだね」
といいながら、すごく笑ったことがあったっけ。実は結構気に入って、よく着たなぁ。
ゆうきはプリチケを見つめた。
昔はヘアアクセはトモチケ部分だったから、今見ると小さいなぁ…でも、詰まっている思い出は大きいよ…
ゆうきは小悪魔っぽく微笑みながら、ひとつ頷いた。
***
れみは部屋の床に座り、左右の手にいくつかのコーデを持っていた。
「制服はこの前やっちゃったし、カエルちゃんコーデはさなえたちとの思い出がないし、どうしようかな…」
そのまま次のコーデを繰り出す。
「熊のイラストのTシャツもよく着たけど、みんな最高のコーデで来るよね。かといってエデンコーデは恐れ多いか…」
考えながら、ふと、床を見た。スリーブに大切に入れたパラソルコーデだった。
「あ、これ…」
あみがお天気コーデでライブを提案したとき、ショップでセットで買ったんだっけ。逆に、一度使っちゃうと、あまり着なかったな。
「けっこう高かったのに、勿体無かったなぁ。せっかくだから、最後にこれ着ようかな」
***
みぃとさなえは二人並んで、歩道橋の上でぼんやりと流れていく車のテールライトを眺めていた。
「わずか一年だけでも、楽しかったにゃ。ありがとうにゃ」
「こちらこそ。たまたま、あみ達と出会って、人生変わったよね」
「秘密特訓、思い出すにゃ」
「そうそう。三人に追いつけるよう、二人でこっそり隣町でペアライブで練習したよね」
「お互い、ドリシアを1回ずつやって、手に入れたフルコーデで」
「みぃがバタフライコーデのカラバリで」
「さなえはガァルマゲドンのチームコーデのカラバリだったにゃ」
「明日は二人でこれ着ようか」
「トモチケじゃないけど、コーデを交換したいにゃ。お互い、相手のコーデを着て出たいにゃ」
「お互いが一緒にいるみたいで、頑張れそうだね」
ふたりはドリチケを交換した。
「プリパラが無くなっても、ずっと友達でいようね」
「もちろんにゃ」
一瞬、二人の視線が交わった。一瞬なのか長い時間なのかわからなくなる。
「ハグ…するにゃ?」
「…うん」
***
ついにこの日が来てしまった。今日でここのプリパラは閉店となる。
わたしは、ライブ納めのコーデを手に、プリパラへ向かった。
「さすがに、オープン前から来るようなコは…」
意外といた…と思ったら、10時オープンだったんだ。てっきり11時かと思っていた。
と、いきなり3DSにトモチケが届いた。
「あれ?こんな最終日に?」
周りを見回すと、トモチケの送り主のコはすぐ見つかった。
「ねぇ、キミ。最後のトモチケ交換だろうし、一緒に「マイドレスでランウェイライブ」に参加しない?」
と誘ってくれる。まぁ待ち合わせまで時間あるし、まだ着ていないコーデが一つある。
「わたしでよければ喜んで!」
「ありがとうございます・・・って、あ、時々見かける神アイドルの人!ですよね?」
「ええ、一応…」
「じゃ、ぜひセンターでどうぞ」
「あなたのライブなのに悪いよ。わたしは参加させてもらうだけで充分だよ」
「へへ、そうもいかないみたいよ」
そのコが笑う。気がつくと、マイドレスを着たコたちが集まっている。
「みあさんの新しい相方の人じゃない?」
「あ、アイドル百人斬り覇王の人だ」
「天から降臨した救世主だ!」
なんか、噂の尾鰭がどんどん大きくなっている気もするけど、いつの間にかメンバーの客寄せになっていた。
「じゃ、お言葉に甘えて。みんな、ライブ、いっくよー!」
場の勢いでライブをこなし、わたしは集合場所へ向かった。それでもまだちょっと早い。
ゆうきがいた。
「ここまで早めに来るのどうかなって思ったけど…」
「まさか、その前にライブしてくるなんて、やっぱり各が違うね」
さなえが柱の後ろから現れる。
「だから、なんで柱の裏で待つかなぁ…」
「あ、いたいた」
わたし達のところにれみがみぃと一緒に来る。でも、なぜプリパラの中から?
「食べ納めに徳用肉まん買ってきたにゃ」
「今日は単品で1個買い足したから、みんな2個ずつあるよ」
適当に街を散策し、いろいろ食べ歩いたりするうち、わたし達の歌い収めライブの番がきた。
「いよいよだね」
「みんな、コーデは準備OK?」
みんな、昨夜選んだコーデにチェンジした。
実は、わたしのコーデは選ぶまでもなかった。
「あみはやっぱりそうきたか」
「え?レアリティNのミックスコーデにゃ?」
ゆうきたちとみぃたちでリアクションの温度差が面白い。
わたしのコーデは、前のファイナルステージで着たものと同じ、初めて手に入れたコーデの組み合わせだった。
「じゃ、最後に、最高の思い出のライブにしようね!」
空が綺麗な夕焼けになる頃…
わたし達は5人並んで閉まるシャッターを眺めていた。
やりきった。もう、悔いはない。
「ありがとうございました!」
わたしは閉じたシャッターに深々と頭を下げた。気が付くと、全員が同じことをしている。
「終わったね…」
「楽しかったね」
でも、でも!
次の台詞は全員の声が重なった。
「これからも、わたし達、ずっ友だよ!」
今回のプリチケ
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