第11章　聖菓～楽園消失

　第11章　聖菓～楽園消失

　みゃむがふと見た先のベンチであみが座っていた。
「どうした？」
「そろそろバレンタインだけど、コーデどうしようかなとか考えてたりしてたんだけど」
「あの色は持ってなかったか？」
　みゃむがモニターに出ているプリマジスタのコを指して言う。彼女はショコラティエストロベリーコーデを使ってプリマジをしている。
「うん。でも、チョコっぽいノーマルカラーがまだ揃ってないんだよね」
「クリスマスの時みたいに色はミックスでいいんじゃないか？」
「まぁ、カラフルなチョコもあるしね」
　あみは早速バレンタインミックスでプリマジをした。ただ、ステージを終えてもみゃむがゲットしたガードをコーデブックに仕舞いに来ない。代わりにノリのいい音楽が流れている。近くのモニターには音楽に合わせたダンスの映像が流れている。
「めちゃマジダンス？」
　見よう見まねであみも踊ってみる。意外と楽しい。よく見ると、隣でも踊っているプリマジスタがいる。そして、それは…
「みっちさん？」
「え？」
「あみです」
「隣でかわいこちゃんが踊ってるなと思ったら、あみさんだったの？」
「楽しいダンスですね」
「でも、ステージで一緒にやりたいですよね」
「同感です」
　気がつくと、まつりやみゃむも踊っている。みゃむが来なかったのはダンスしてたからか…
　あみはみっちさんやみゃむ達と別れると、ふらっとゲーセンに寄った。
　ふと見ると、張り紙がある。
「なになに？プリパラ、プリチャンのゲームは月末でサービス終了？」
　あみは慌てて、先日ボードで回収したクレアさんのフォロチケを使ってゲームをした。そこへさっきのショコラティエストロベリーのプリマジスタがゲーセンに入ってきた。あみは順番を代わりつつ声をかける。
「さっきプリマジしてた人ですよね」
「うん。カラオケも好きなんだけど、プリマジもやってるって感じだけどね」
「わたし、あみ。わたしもプリマジやってるんです」
「よつは☆★♪だよ。プリチャンでマイキャラがマイキャラモデルに選ばれたからプリチャンはよくやりに来るよ」
「よつはさんも選ばれたんだ。実はわたしも選ばれたんですよ」
「へぇ、そうなんだ」
「お互い、おめでとうだね」

　あみはよつは☆★♪さんと別れてゲーセンを出た。
「あ、フォロチケ交換お願いするの忘れてた…ま、ゲーム無くなるみたいだし」

　あみは少し歩いてカフェに立ち寄った。二つの屋外のオープンテーブルの片方に緑色の髪の女性がぽつんと座ってお茶している以外客はいない。あみはコーヒーを買ってもう一つのテーブルに着こうとして、その女性と目が合った。
「あ、こっちのテーブル、使っても大丈夫…ですよね」
「え、ああ、あたしは独りだからお構いなく」

　あみがコーヒーをほぼ飲み終わると、その女性のところに薄紫のお団子ヘアーの小学生が歩いてくる。
「あまりちゃん！今日も行くよね」
　同じ「あ」で始まる名前と、聞き覚えのある声にあみはハッとした。
「あれ…もしかして、らぁらちゃん？」
　あみが初めてプリパラに行った時に案内してくれた子で、神アイドルになったはず。

「えっと…あみちゃん？髪下ろしてるから判らなかった！お久しぶりのかしこま！」
　あみはプリパラに行っていた頃もプリチャン世界に行っていた頃もおだんごツインに髪をまとめていた。ゲームのマイキャラも当然その髪型だ。
「あみちゃんは、プリパラの事、覚えているんだね」
「うん。あんなに楽しい思い出だもん。でもどうして？」
　らぁらの話では、プリパラは新たなアイドルランドへのアップデートを行おうとして事故が発生し、プリズムストーンから消滅し、多くのプリパラアイドルがその記憶を失ってしまったとのこと。そして、アイドルランドを守るため、プリパラアイドルのゆいが人柱となっており、ゆいを助けるため、自力でプリパラの記憶を取り戻したプリパラアイドルたちが現地へ行き、ライブをしていいねを集めているのだった。
「ここにいるあまりちゃんもそんなアイドルの一人なんだよ」
「そうなんですね。はじめまして、あまりさん。わたしはあみ。元プリパラアイドルです」
「よろしく」
　あまりさんが会釈をすると、そこにいつの間にか扉があった。三人は扉の中に吸い込まれた。

　三人はいきなり空に放り出され、プリパラに向けてスカイダイビングをしていた。そして、あみだけが引っ張られるように二人と別方向に流され始める。
「えっ？」
「きっと、そっちにあみちゃんのトモダチがいるんだね」
「そうなのかな？とりあえず、またね」
「かしこま！」

　あみが着地したのはプリパラタウンの中心から少し外れたところだった。
「らぁらちゃん以上のトモダチって…」
　あみの脳裏にはかつてプリパラでチームを組んだメンバーの顔が浮かぶが見当たらない。
　と、近くにオムライスコーデを着たコが通りかかった。初対面なのに明らかに見覚えがある。さっき会ったよつは☆★♪さんのマイキャラのコだ。さっき会ったばかりだから絆が新しいってことかな？
「こんにちは」
「えっ？こんにちは」
「よつは☆★♪さんですよね？」
「はい…あっ、さっき外の世界で会ったあみさん？」
「うん」「そういえば、さっき、向こうであみさんを探してる人と会ったよ」
「そうなの？ありがとう！」
　あみはよつは☆★♪さんに聞いた方へ向かった。らぁら達かな？

「あっ、やっぱりあみも来てたにゃ！」
　あみに飛びついてハグしていたのは、色黒で、瞳の中に星がある。忘れもしない相手だ！
「みぃ！久しぶり！」
　その様子を見ているのは緑の髪を編み込んださなえ、そして…薄ピンクの長い髪…
「まい？」
「お久しぶりです、先輩！」
「みぃは初めて会ったけど、あみの後輩だって言うからすぐトモダチになったにゃ」
「こちらのみぃさん、話し方も声も違うのでびっくりでした」
　まいはプリチャン世界であみが去った後にあみたちのいたチームに入った後輩だ。そして、プリチャン世界のみぃはイケボでカッコいい系のキャラだったのだ。プリパラでの猫語尾キャラとは見た目以外別人なのだ。さなえとみぃはあみがプリパラでドリームシアターライブをした時の五人ユニットのメンバーで、あみとの絆は強い。
「他のメンバーは来てるの？」
「かなとまみ、ゆみは来てるはずなんですけど」
　かなはまいの同期の新人、まみ、ゆみはプリチャン世界でずっとあみとチームを組んでいたメンバーだ。
「もう一人、忘れてるよ、まい」
　八重歯、そしてメンバーで唯一の眼鏡っ娘。まどかだ。彼女はさなえの後輩だ。
「三人はもうすぐここに来るよ」

　そのころ、プリパラの別の場所では…
「最後にトモチケ作って良かった！」
「だね！」
　ゆうきとあいが再会していた。二人はゆうきがプリチャン世界を去る直前にトモチケ交換をしたのだ。そのおかげてプリチャン世界出身のあいもプリパラの思い出があったのだった。あいはゆうきのバイト仲間で、あみがいた頃としては最後にメンバーに加わったのだ。
「あれ？ゆうき？」
　二人に声をかけたのはあみの姉、くみだ。
「くみさん？」
「さっき、かなちゃんだっけ？プリチャンの新人のコ。あのコらしいコを見かけたからもしやと思ったら、ゆうきを見つけたってわけ」
「かなとは一度しかライブしてないのによくわかったね」
「その前をまみ、ゆみっぽい後ろ姿の二人が歩いてたから」
「とにかく、三人を追いかけませんか？」
　そして、追い付いた時には、そこには11人が集まっていた。
「あ、お姉ちゃん！」
「元気してた？あみ」
「うん。でも、プリパラでもプリチャンでイメチェンしたメイクと髪型なんだね」
「最後のトモチケが基準みたいだよ」
　姉妹の会話にみぃが、
「みぃはプリチャン世界に行けなかったから、初対面の人もいるにゃ！自己紹介タイムにしないかにゃ？」
「そうだね」
「でも、まだれみがいないよね」
「まぁ、あのコは全員知ってるし、時々遅刻するから…」
　あみが言いかけると、上空から声が聞こえた。
「はわわわわ～！」
　れみがダイブしてきて全員揃った。
「町でみれぃさんに会ったら、いきなり変な扉に吸い込まれました」
　そう言いながら、れみは周りを見て、
「あら、皆さん集まってたんですね…って、あら？」
　れみは髪に手をやった。
「最近、髪伸びてきてたんですけど、ここではショートに戻るんですね。あみもおだんごヘアにしてるみたいですしね」
「ともあれ、全員集合したね」
　メンバー達は自己紹介タイムの後、ライブを楽しんだ。
「次はペアライブ大会でもやろうか」
「いいね、いいね！」
　盛り上がるうちに、プリパラの営業を終えるアナウンスが流れた。
「楽しかったね」
「またいつか、ここで会えるのかな」
　あみが言うと、さなえが、
「らぁらちゃんに入れてもらったこのアプリを起動すればいいのかな」
　さなえのスマホには鍵の形のアイコンのアプリがあった。
　あみは自分のスマホを見たが、そんなアプリは無い。確かに、あまりさんって人と一緒に巻き込まれただけだから、アプリをもらう暇はなかった。
「とりあえず、解散みたいね」
「また、いつかね」

　あみは気が付くと自室にいた。再びスマホを見るが、やはりアプリはない。
「夢みたいだったな…」
　確かに、今は朝だ。昨日、いつ帰宅したのか覚えていない。

　あみは身支度をすると、昨日のゲーセンに走った。

　そこにはプリパラもプリチャンも無かった。サービス終了で撤去されていた。
「そっか…本当に無くなっちゃったんだね…」
　あみはゲーセンを出た。もう、みんなには会えないかもしれない。でも、よつは☆★♪さん達にはプリマジを続ければいつか再び会えるかもしれないな。
　あみはその日を楽しみにしながら、昼食の買い出しのためにスーパーに向かった。

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