シナリオ:愛する人を取り戻せ
シナリオ概要
注意!
これは「装甲騎兵ボトムズTRPG」の多人数用シナリオである。マスターのための章であり、プレイヤーは読んではならない。
はじめに
このシナリオで遊ぶためには、マスターがひとり、プレイヤーが2〜5人必要である。
プレイヤーキャラクター(PC)たちはまず、敵の戦力を探り、勝つための策を練り、最後に実戦を行う。マスター、プレイヤーの半数以上にTRPGの経験がある場合なら4時間程度、そうでなくとも6時間程度で終了するだろう。前もってプレイヤーにPCを作らせておけば、もっと短く終わる。
あらすじ
ネッカラード・ゲドー率いる暴走族の一団は、ダラの街の郊外にある廃倉庫を根城にしている武装盗賊団である。彼らは付近に墜落した軍の輸送機から不法に奪った兵器で武装し、近隣の村々や旅行者を次々と襲っていた。
彼らが奪うものは主に「人間」であった。特に年頃の女性は闇市場では奴隷として高く売れ、ネッカラード一味の大事な資金源となっていた。ダラの街の軍警もネッカラード一味のことを苦々しく思ってはいるのだが、署長他上層部の多くがネッカラードに買収されているため、いまのところ動く気配はなかった。
カムフラ・ノモトニーは軍の任期を終えて故郷の村に戻ったその日に、愛する妻トモアーネがネッカラード一味にさらわれた事を知った。村の者たちはノモトニーに、トモアーネのことを諦めるよう言った。一味の荒くれ者どもがさらった女性をどのように扱うかをよく知っていたからだ。
だが、ノモトニーはそれゆえにトモアーネを救い出さねば、と逆に決意した。彼女がどれほど汚されようとも、自分は妻を愛している! 彼の愛には寸分の曇りも見られなかった。
ノモトニーは愛用のピストルを手に取ると、すぐさまダラの街に向かった。ネッカラード一味が街の酒場によく現れることを人伝に耳にしていたからである。
翌日、彼は「ミストラル」という酒場でネッカラード・ゲドー本人とさらわれた愛妻の姿を見付け、矢のように店の中へと飛び込んで行ったのだった。
その時、店の中にはPCたちの姿があった。PCたちは、目の前で起こる出来事に、どのような態度を示すのか? そして、ノモトニーとトモアーネの運命は……
主要NPC
●カムフラ・ノモトニー
メルキア正規軍からの帰還兵で階級は少尉。ATの騎乗経験はないものの、豊富な実戦経験を持つ叩きあげのベテランである。戦場では極めて優秀な兵士なのだが、正義感が強すぎ、私生活では行動に柔軟性を欠くという短所を持つ。
●トモアーネ・ノモトニー
ノモトニーの妻。元マーティアルの神官でグラマラスなスタイルを持つなかなかの美人である。それゆえに、ネッカラード一味にさらわれることとなってしまった。
●ネッカラード・ゲドー
貧相な体格の持ち主で禿頭。欲望のためならどのような悪事にも手を染め、およそ良心の呵責など感じない、根っからの外道である。人望など一切ないが、気前よく手下どもに分け前をばらまくことで、十数人の武装集団を統率している。
PCの作成
このシナリオで遊ぶためには、マスターがひとりとプレイヤー2〜5人が必要である。PCの半分は装甲騎兵、ブルーパー、クエント傭兵のいずれかであることが望ましい。
マスターはゲームを始める前にシナリオをよく読んで、物語の流れを掴んでおくこと。時間に余裕があるのなら、自分でキャラクターを作って、戦闘場面をひとりで遊んでみるといい。これにより戦闘のバランスがわかるし、ルールをおさらいするのにも役立つ。
PCは家で作ってきてもらってもいいし、その場で作ってもらってもいい。家で作ってきてもらう場合、あらかじめ「荒くれ者を討伐するシナリオだよ」と言っておくとよいだろう。
PCの立場
PCはなんらかの理由でダラの街を訪れた余所者である。街に来た理由はそれぞれであろうが、前もってまとまって行動していたことにした方がシナリオへの導入はしやすいと思われる。
もし、それ以外の立場をプレイヤーが求めたのであれば、マスターはよく相談して変更を許可してもよい。ただし、他のPCと比べて極端に有利な社会的立場(軍有力者の子弟など)を与えるべきではない。
舞台紹介
このシナリオは惑星メルキアにあるダラの街を舞台にしている。
ダラの街は深い峡谷に3層の蓋を設けることで構築された階層都市の一種である。爆撃に対して強固な防御力を持つことからメルキア軍が軍事工場を設けており、惑星メルキアにある他の都市と比べると治安は安定している。
街の最下部は工場エリアとなっており、街の住民の半数はここでの作業に従事している。2層目は住宅や商店がある生活エリアで、最上部が主に軍の使用するエリアになっている。最上部には大型のヘリポートと輸送機用の滑走路があり、軍が管理している。各エリアは街の中心部を縦に貫く大型のエレベーターによって結ばれており、必要な物資の移動は主にこのエレベーターを使用して行われる。ただし、それ以外にも小型のエレベーターや階段・梯子などが無数にあるため、街の外からの人や物資の流入もかなりの量になっている。また、最下層からは直接陸路を通って街の外に出ることも出来る。大型の輸送車両が主に使用するのはこちらのルートである。
工業都市なのでATや車両の部品は気軽に購入することができるが、闇市を使用するのでない限り、街の商店で1000ギルダン以上の買い物をする場合には、軍が発行した許可証を提示する必要がある。闇市で買える品は主に食料品やタバコ・酒などの嗜好品である。
街を支配しているのはメルキア軍だが、彼らはよほどのことがない限り商工会(ギルド)の行動に介入してくることはない。商工会の方も軍の後ろ盾がある方が好ましいのか、現在の立場に不満をもらしたりはしていない。ただ、闇経済の方はあまり広がってはおらず、違法な取引でしか入手できない品物は街では手に入れることが難しくなっている。
バトリングは盛んに行われているが、基本的にはブロウ・バトルが大半を占める。リアル・バトルのような変則マッチを行う場合、メルキア軍の許可が必要なためである(建前上、公開殺人を認めてしまう訳にはいかないのだ)。もっとも、いったん許可が出た場合の集客数も莫大なため、リアル・バトルを組みたがるマッチメーカーには事欠かない。この規模の街には珍しくバトリング場は2カ所あり、ひとつは最下層の工場エリアに、もうひとつは最上階に突き出た塔のてっぺんにある。最上階に設けられたバトリング場は特別な試合以外は使用されないが、ここに招待される観客のほとんどが富裕層であるために十分な利益を上げている。
ブロック1:導入
ダラの街を訪れていたPCたちは、最下層のバトリング場近くにある「ミストラル」という酒場で遅めの昼食を取っていた。客の数はPCたち以外には数人といったところである。マスターは、ダラの街に関する情報をバーテンの口からPCに伝えても構わない。
バーテンの台詞:
「近頃はこの街の周辺も物騒でね。特にネッカラードって奴が率いる暴走族が好き勝手やってて……噂をすれば、ほら。あいつらのことさ」
ブロック2:無法者
複数のダングとジープに乗った一見して無法者とわかる出で立ちの男たちが騒々しくやってくる。男たちの人数は8人。加えて3人の若い女性が店の中に入ってくる。女性たちは皆整った容姿を持つ美女であるが3人とも首に鎖付きの首輪をはめられ、必要最低限の衣類しか身につけていない。男たちは鎖の一端を手に持ったまま、犬を引っ張るように女性たちを引き回しているのである。
男達のリーダーの台詞:
「親父ぃ! 酒だ。食いものも持ってこい!」
頭髪の無い貧相な小男が、横柄な態度で店の主人に注文する。どうやら男たちのリーダーのようだ。他の男たちも各々椅子に座るが、女性たちは椅子を与えられず床に座らせられる。3人とも、無気力な目でうつむいたまま、顔を上げようとしない。
PCたちが男たちに女性の扱いなどで文句を付けても男たちは下品に笑い飛ばすだけで相手にしようとはしない。力尽くでの解決を挑んだ場合、彼らは正面からこれを受けて立つ。リーダー自身は争いごとに参加しようとはしない。
男たちの誰かの台詞:
「なんだぁてめえ。こいつら見て一発ヤリたくなっちまったってか? こいつらの値段はな、ひとり当たり10万ギルダンだ。言っとくが、ビタ一文まからねえぜ。ギャハハハ」
ブロック3:乱入
男たちが店に入ってしばらくすると、ひとりの若い男性が軍用ピストルを手に飛び込んでくる。メルキア軍の軍服を着ていることからみると、正規軍人のようだ。彼は男たちのリーダーに銃口を突き付けると、有無を言わさずこう言い放つ。
若い男性の台詞:
「ネッカラード・ゲドー! 妻を返してもらいに来たぞ。おとなしく、その女性たちを解放しろ!」
3人の女性のうち最も豊かな胸を持っている黒髪の女性が、彼のことを「あなた!」と呼ぶ。おそらく、彼女がこの男性の妻なのだろう。PCたちと男たちが乱闘を始めていた場合、ちょうど1ラウンドが終了した時点で、このイベントは発生する。
ピストルを突き付けられたにもかかわらず、ネッカラードと呼ばれたその小男は慌てる素振りを見せない。最初、ネッカラードは男性の要求を飲むような態度を示す。その直後、あとから店に入ってきた別の男がピストルを持った男性の足に背後からタックルを決め、彼は床に転倒する。
ネッカラードの台詞:
「そうかい。てめえがトモアーネの旦那かい! 俺さまのためにこんなイイ女を用意してくれて礼を言うぜ。手前の女房にゃ、毎晩腰が抜けるまで楽しませてもらっているからなぁ。安心しな。ヘタレのあんたに成り代わって、俺たちがトモアーネのこと、たっぷりと可愛がってやるからよぉ。そのうち、腹もでかくなるだろうぜ。ギャハハハ!」
胸の大きい女性の台詞:
「やめてっ! そのひとを殺さないでっ! なんでもするっ! なんでもするからぁっ!」
にやにやと笑いながらピストルを抜いたネッカラードは男性の頭に向けて銃口を向ける。
PCたちは止めに入るだろうか? 止めに入った場合、ネッカラードは手下の男に男性を押さえつけさせ、PCたちの相手をする。そのうち、店の主人が軍の警察機構(軍警)を呼ぶので、ネッカラードたちは退散する。
もし、PCたちがこれを無視した場合、店内にいた別の客が止めに入る。バンダナを巻いたボトムズ乗り風の若い男である。
バンダナの男の台詞:
「あんたらが女を引き回すのも殺し合いをするのも勝手だが、ここは酒場だ。やりたければ余所でやれ」
静かにそう言った男の雰囲気に気圧されたネッカラードは、やはり店から退散する。バンダナの男はネッカラードたちが退散すると、代金を払って店を出て行く。彼はPCたちが呼び止めても完全に無視をする。そして、あとには、悔し涙を流す若い男が残される。
バンダナの男について店の主人に尋ねると、以下のことがわかる。
●奴は流れ者のバトリング選手だ。
●近いうちにカール・プラナという選手相手に試合をするらしい。
PCたちが乗り込んできた若い男に事情を聞くと、彼はカムフラ・ノモトニーと名乗り、包み隠さずすべてを話す。
●奴らはネッカラード一味という暴走族だ。
●連中はダラの街近郊の村々を襲撃して、物資や女性たちを略奪している。
●ダラの街の軍警は、人手不足で手が回っていない状況だ。
●自分は妻を奪われた。何としても助け出さなくてはならない。
PCはどのような反応を示すだろうか?
義憤に駆られ、ノモトニーに力を貸すというのであれば次に進むこと。
ボトムズ世界らしく、他人事には関わらないという立場を取るのであれば、マスターは店の主人を通じて以下の情報を伝えること。
●軍警はネッカラード一味の討伐に人間を割けない代わりに懸賞金をかけている。
●ネッカラードの首にかけられた額は、生死を問わず1万ギルダンだ。
PCがノモトニーに手助けする報酬を要求すれば、彼は1万ギルダンの現金を前金で支払う。さらに成功報酬として5000ギルダンの上乗せを告げる。この時点で、彼はPCたちを雇うという可能性に賭けているので、マスターはノモトニーの必死さを上手く演じること。それでもPCが乗ってこないのであれば、シナリオはここで終了する。また、ノモトニーからの前金を受け取っておいてトンズラする事もできるが、それは余り誉められた行為ではないだろう。
ブロック4:情報収集
ネッカラード一味がねぐらにしている場所は、ダラの街から100キロほど離れた所に立つ倉庫の跡地である。数十年前にバララント軍の爆撃を受けて放棄されたもので、周囲に目立つ建物はほかにないが、ダラの街で普通に情報を集めてもはっきりした所在はつかめない。1日ごとに「聞き込み」を行い、達成値20を出したPCは、ネッカラード一味から武器を買っている闇商人を見付けることができる。
闇商人から情報を聞き出すためには「交渉」を行わなくてはならない。賄賂として100ギルダン使用する毎に+1のDMを受けることができる。
闇商人は、以下の情報を知っている。得られる情報は達成値によって異なる。低い達成値で得られる情報は、高い達成値を出した場合にも得られる。例えば達成値20を出せば、達成値15の情報も全てがわかる。
●達成値15……ネッカラード一味は、現在使用されていない倉庫をアジトにしている。倉庫の場所は○○だ。
●達成値15……連中は郊外に不時着した軍の輸送機から武器を奪って、金にしている。
●達成値15……さらってきた女たちは、自分たちが十分楽しんだうえで奴隷として闇市場に流している。人口を増やす仕事のある街があるらしい。
●達成値20……ネッカラード一味の人数は多くても20人程度だ。
●達成値20……連中は、ほかの暴走族と比べるととんでもないほど重武装だ。ATこそ持たないが、山賊と同じレベルにあるだろう。
●達成値20……連中の主力は、装甲車両とダングだ。
一味の構成員から直接聞き出す場合、まずはその身柄を確保する必要がある。ネッカラード一味の構成員はどれも大して賢くないため、自分たちがお尋ね者であることを知りながら、なお度々、ダラの街に足を運んでくる。
PC1人が街中を4時間探索するごとに1Dを振り、1の目が出た場合、ネッカラード一味の構成員と遭遇する。人数は1D6人。彼らは街の住民との間にトラブルを引き起こしては、自分たちがネッカラード一味の者だとわざわざ名乗って脅すため、そうした場に遭遇したPCは彼らが一味の構成員だとすぐにわかる。情報を聞き出す方法は複数ある。
●無理矢理に聞き出す……一番単純で短絡的な行為だが、ネッカラード一味の構成員は忠誠心が高い訳ではないので、自分たちが痛い目を見た場合、知っていることはなんでも答える。彼らは自分たちのほうが人数的に多ければPCからの挑戦を喜んで受ける。少ない場合は、凄みながら隙を見て逃げ出そうとする。PCが銃を持ち出した時、もしくは半分以上の仲間が怪我をした(HPを失った)時、彼らは逃げ出さずPCに降参する。彼らが知っている情報は以下のとおりである。
・ネッカラード一味のアジトがある場所
・いまの時点でアジトにある戦力(アストラッド戦車×1、メルキア軍装甲偵察車×1、ダング×8)
・そのほか、GMが認めたもの(さらわれた女性たちの情報など)
なお彼らを逃がした場合、もしくは降参させた構成員を開放した場合、それらはアジトに逃げ帰って自分たちがされたことをネッカラードに伝える。彼らの身柄を軍警に引き渡せば、1D6日後、1人当たり1000ギルダンの報奨金が支払われる。
●買収する……一味の連中は欲深く自分の利益の事にしか興味がない。連中は少々の酒と現金で容易く情報を口にする。1人当たり100ギルダン以上を掛けた買収を行った場合、達成値15の「交渉」判定に成功すれば、連中は聞かれた事にすべて答える。連中が知っている情報は以下のとおりである。
・ネッカラード一味のアジトがある場所
・いまの時点でアジトにある戦力(アストラッド戦車×1、メルキア軍装甲偵察車×1、ダング×8)
・そのほか、GMが認めたもの(さらわれた女性たちの情報など)
なお買収に成功した場合、彼らは買収された事実をネッカラードには伝えず、のちにPCがアジトを襲撃した際には戦わず逃げようとする。
ブロック5:強襲
ノモトニーとPCたちがネッカラード一味のアジトに到着するまでに、特別なトラブルは発生しない。急いで行けば半日もあれば到着できる距離であるが、色々と準備を行う事(必要な装備を買いそろえるなど)をマスターはプレイヤーに促すこと。ダラの街では1000ギルダン以上の買い物に軍の許可証が必要だが、軍人であったノモトニーはこの許可証を持っている。
ネッカラード一味のアジトは、古い倉庫跡地である。中央に大きな建造物が1つあり、そこから100メートル程離れた位置に監視塔が3つ建っていて、そこには常時1人の構成員が見張りの役に就いている。
アジトにいるネッカラード一味は、昼間から酒と女に溺れている。ただ、リーダーであるネッカラードと監視塔に配置された見張りだけは陽の出ているうちのみ素面である。
ネッカラードは夜10時頃になると、さらってきた女性の1人と寝室に入る。見張りの交代時間は朝夕の6時と深夜の12時である。一味は自分たちが襲撃を受ける事を予測していないので、日没以降の見張りは酔っていて警戒能力は高くない。
アジトに対して「忍び寄り」を行う場合、監視塔のいずれかに対して達成値20の「隠密」判定に成功しなければならない。判定に成功したならば、遭遇距離表で決定されたヘクス数だけ離れた任意のヘクスを1つ選び、そのヘクスから2ヘクス以内の好きな場所にカウンターを配置する。なお日没以降に「忍び寄り」を行う場合には、「隠密」判定に+10の修正が与えられる。またブロック4で構成員を逃がしている場合、一時的に警戒が強くなっているものとみなし、すべての「隠密」判定に−5の修正を加えることとする。
「忍び寄り」に成功した場合、ネッカラード一味の初期戦力は以下のとおりである。
・監視塔(装甲値:3 HP:25)×3+それぞれに見張り×1
・アジト本体×1(装甲値:3 耐久度:1000)
マスターは荒野マップを選択し、適当なユニットを使用してアジトと監視塔の位置を決めること。監視塔はアジトから10ヘックス離れた別々のヘックスにお互い15ヘクス以上離して1つずつ配置する。なお、アジト本体となる建物は、その敷地面積から複数のヘクスによって構成される。任意のヘクス1つを選び、そこから3ヘクス以内の全域をアジト本体の建物としてみなす。
アジトの内部には、ネッカラード一味(ネッカラード本人+構成員×12+奴隷の女性×15)がいる。監視塔もしくはアジト本体に攻撃が加えられた場合、一味の連中はアジトの中から出撃してくる。出撃してくる一味の戦力は以下のとおり。
・3D6ラウンド後:ダング×6
・6d6ラウンド後:アストラッド戦車(ネッカラードがリーダーとして搭乗。その他の搭乗員は同一の能力)+メルキア軍装甲偵察車(搭乗員は同一の能力)
「忍び寄り」判定が失敗した場合、一味の連中はアジトの中から出撃してくる。出撃してくる一味の戦力は以下のとおり。
・3D6ラウンド後:ダング×6
・6d6ラウンド後:アストラッド戦車(ネッカラードがリーダーとして搭乗。その他の搭乗員は同一の能力)+メルキア軍装甲偵察車(搭乗員は同一の能力)
車両が出撃していったあとのアジトには構成員×2が残される。これらは、奴隷の女性を監禁している部屋の前で監視の役に就いている。
アジトの建物は2階建てとなっており1階部分はATもそのまま入れる大きさの倉庫で、壁伝いに設置された階段を昇る事で2階部分に行く事ができる。中央部分は吹き抜けとなっていて、1階と2階とは行き来の問題を除けばスペースを共有していると言える。入り口部分にはシャッター(装甲値:1 耐久度:10)があり、普段はネッカラード一味の装備(アストラッド戦車×1、メルキア軍装甲偵察車×1、ダング×8)が駐機されている。
2階部分は居住区となっており、大きく分けて大広間、ネッカラードの寝室、構成員の雑魚寝部屋、奴隷の女性を監禁している部屋が存在している。部屋にはそれぞれ窓があるが、奴隷の女性が監禁されている部屋だけは、厳重に鉄格子がしてある。PCによる襲撃が行われるまで、ネッカラードは夜10時から朝10時の間、奴隷の女性1人とともに自分の寝室にいる。1D6して1の目が出た場合、その女性はトモアーネである。それ以外の時間帯は、大広間で乱痴気騒ぎを楽しんでいる。構成員たちもネッカラードが起きている時間帯は大広間で騒いでいるが、夜11時を過ぎると2D6人の構成員が1D6人の女性を引き連れて雑魚寝部屋へと移動する。構成員たちが雑魚寝部屋へと移動したのち、奴隷の女性たちは監禁部屋へと移される。監禁部屋には扉にカギがかけられており、雑魚寝部屋にあるカギを使わなければ中に入ることはできない。カギを使わず扉を開けるためには、達成値20の「セキュリティー」判定に成功しなければならない。
ブロック6:戦闘
ネッカラード一味は、PCたちを発見した場合、まず投降を促すが、PCたちが拒否するか、先に手を出すかしたなら、PCたちを殺すつもりで襲ってくる。ただし、商品となるような女性キャラクター(魅力値7以上)がいた場合、彼女だけは生け捕りにしようとする。
PCたちが逃げ出した場合、ネッカラードは可能な限りこれを追い掛けるが、アジトが直接襲われたと知れば、とって返して戻ろうとする。
アストラッド戦車が撃破された場合、またはネッカラード自身が死亡した場合、残された連中はちりぢりになって逃走を図る。PCたちが無理に追い掛けようとしない限り、応戦しようともしない。 建物に残った連中は、相手が生身であった場合に限り、戦おうとする。ATが乗り込んできた場合、即座に抵抗を止めて逃げだそうとする。ブロック4でPCが構成員への買収に成功している場合、仲間の誰かが死亡した時点で、1D6台のダングが戦場からの離脱を図る。離脱しようとするダングの最大数は、サイコロの出目にかかわらず、PCが買収に成功している人数である。
プレイヤーが考えるべきは、強力なアストラッド戦車への対応だろう。搭乗するネッカラードや一味の連中は大したスキルも持ってないが、その火力と装甲はATにとって重大な脅威である。真っ向勝負を挑むPCは、本シナリオの想定するレベルの場合、大きなリスクを背負うだろう。具体的な対策として以下の戦術が考えられる。
●破壊工作……日没後であれば、一味のアジトに忍び込むことは比較的簡単である。「隠密」技能に優れたキャラクターでアジトの1階に侵入し、破壊工作を仕掛けることも十分に可能であろう。もしPCがそのような選択をした場合、侵入しようとするキャラクターは、ブロック5の「忍び寄り」とは別に達成値20の「隠密」判定をすること。これに成功したキャラクターは、気付かれることなくアジトの中に侵入できる。侵入したキャラクターは、破壊工作によって以下の組み合わせのいずれかを行動不能にすることができる。
・アストラッド戦車×1
・メルキア軍装甲偵察車×1+ダング×1D6
・ダング×2D6
なお上記の戦果を挙げるためには、時限爆弾など破壊工作用の装備が必要となる。破壊工作用装備の具体的内容、および破壊工作の具体的手段についてはマスターが適時判断すること。
侵入したキャラクターが破壊工作を完了するには1D6ラウンドの時間が必要となる。毎ラウンド1D6して1の目が出た場合、キャラクターは一味の構成員に発見される。発見された次のラウンドに、一味の構成員×1D6が駆け付けてきて戦闘となる。逃走するか抗戦するかをプレイヤーは判断すること。破壊工作に必要なラウンドを消費できなかった場合、破壊工作は失敗する。
●対戦車用の対策を取る……ダラの街で情報を集めていれば、ネッカラード一味が戦車を保有している事がわかるはずである。そこで、あらかじめ対戦車戦闘に有効な武器を買いそろえるのである。ノモトニーが前金を払うと言っている事をプレイヤーに思い出させること。ソリッドシューターによる背後からの攻撃は、かなり有効である(直撃ルールの存在を忘れないように)。
●アストラッド戦車を相手にしない……女性たちの身柄確保を第一とするのなら、あえて戦車を相手にしないのも立派な戦術である。つまり、ネッカラードの乗るアストラッド戦車を離れた場所におびき寄せ、別働隊でアジトを強襲するのだ。この場合、プレイヤーは女性たちを運ぶ手段と一味の追撃を回避する手段を確保しておかなければならない。一味はネッカラード自身が死ぬかアストラッド戦車が撃破されるまで追跡をあきらめない。仮に逃げおおせたとしても、キャラクターや女性たちがダラの街近郊に留まり続ける限り、女性たちを奪還しようと試みる。先に述べたとおり、ダラの街の軍警はネッカラードに買収されているため、現場の人間はともかく、組織としての積極的協力は得られないものとする。
ブロック7:終幕
ネッカラード一味から愛妻トモアーネを救出したノモトニーは、生まれた土地を離れ、静かな暮らしを営むべく、自然の残る北半球へと旅立つ。トモアーネの受けた心の傷を癒すには少々の時間が掛かるだろうが、誠実なノモトニーが側にいればそれは確実に訪れる未来に違いあるまい。
聞くところによると、ダラの街の軍警は、大規模な武器密売ルートを検挙したとの事だ。ネッカラード一味と繋がりのあった闇商人達が保身のために掌を返したのだろう。
PCたちがダラの街に帰還したその日、最下層のバトリング場で酒場にいたバンダナの男とカール・プラナという名の実力派バトリング選手との試合が行われた。バンダナの男、ケイン・マクドガルの乗る青いベルゼルガがカールのトータスを倒すという意外な結末に、観衆は大騒ぎしている。バンダナの男は有名なバトリング選手だったそうだ。
これはメルキアの片隅で起こった小さな一件に過ぎない。
だが、PCは明らかに1組の男女の未来を繋いだのだ。
今後もそんな出来事が起こるのだろうか?
それは、プレイヤーの選択次第である。