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調理実演過去ログ:ホワイトエンサイン1/350巡洋戦艦フッドを作る
その12:煙突と後部マストについて
2001/01/10

はじめに

 前回更新から8ヶ月、ようやく全体の形が見えてきました。以降は細部の艤装品の組立と取り付けを行いますが、早ければ本年の前半にはICM社の1/350が入荷する見込みらしいので、キットの部品の出来が今一歩で他から部品調達のできない装備品(例えば主砲塔、4連装機銃、射撃指揮装置、艦載艇の一部など)に関しては、ICMのキットの部品を見た上で流用するかキットを修正するか自作するか判断したいと考えています。(※注

煙突について

 キットの煙突は外側の蒸気捨管まで一体化されたもので、この部分はキットの部品を使用しています。まず、基部の雨水除けの傘状のモールドの中心と煙突本体の中心線が合っていない(どちらも右舷側にズレていた)ため、いったん基部で煙突を切り離し、中心線を合わせて再接着しました。

 この煙突には日本の軍艦に見られるような整流板は無く、内側に田の字状の足場が設けられていました。しかし、キットの内部は完全にムクになっています。正直言えば内部を作り込んでもあまり意味が無いようにも思うのですが、実艦に準じた形で作る事にしました。

 まず煙突内部を直径6mmと2mmのドリルで穴を開け、残った部分を半円の彫刻刀で削り落とします。このレジンの材質は堅すぎず、柔らかすぎずの大変上質なもので、木材の感覚でサクサク削れます。整形した後で、内側に0.3mmプラ板を巻いた上で中にポリパテを詰め、乾燥後に引き抜いてプラ板を外し「煙突内側の型」を取ります。その型に焼きなました 0.3mm真鍮線を巻いてハンダ付けし、その内側にエッチングパーツの「はしご」の部品を十字状に組み合わせたものを置いてハンダ付けし、その上に外側より2mm小さい楕円状の真鍮線を曲げたものを置いて再びハンダ付けします。最後に伸ばしランナーを2つの楕円状の真鍮線の上に接着して、足場の部品を作ってゆきました。最後に真鍮線で「手すり」を植えて仕上げています。

煙突内部の足場の作り方。
赤い点がハンダ付けの位置です。

 煙突頂部の格子も、キットは平面的なエッチングパーツを付けるだけの構成だったため、キットのパーツの外周の縁の部分を一旦切り落とし、頂部の「ふくらみ」を木型を用いて付けた上で、改めて 0.3mm真鍮線を巻いてハンダ付けして仕上げました。最後にエッチングの余りの部分を用いて足を付け、煙突上に差し込んでわずかに間隔を開けて接着します。

煙突格子。
左:元のエッチングパーツと木型、修正後の部品
右:内部足場との関係(この状態では格子の足はまだ付いていません)

 この艦の煙突にはジャッキステイはありません。煙突周辺の作業は頂部の縁にあった滑車から足場を下げて行っていたようです。そのため、煙突頂部の外周に沿って伸ばしランナーのスライスで滑車を再現しましたが、少しオーバーモールドだったようです。また煙突には張り線があるため、その金具を0.3mm真鍮線を加工して付けています。最後にキットにモールドされている蒸気捨管の頂部にピンパイスで穴を開けると共に、 0.3mm真鍮線で取り付け金具を作って煙突に差し込んで仕上げています。

後部マストについて

 本来 Main-Mastですが、ここでは便宜上「後部マスト」と呼ぶ事にします。 この後部マストは竣工時から最終時まで、基本的な構造はほとんど変わっていないようです。簡単な三脚檣でステイもありませんが、その分強度に注意が要ります。ちなみにキットはレジンの棒状パーツで、はっきり言って全く使い物になりません。よって図面を引いて金属材料をハンダ付けして組む事になりました。

 ANATOMY....HOODの改装要項によれば、1941年1月〜3月に行われた最後の改装の際に後部マストの頂部に 279型対空レーダーのアンテナが装備されたとあります。同書に掲載された最終時の図面や MONOGRAFIE MORSKIE HOOD付属の図面を見る限り、トップマストを取り外してその接合部に半円形状の作業台を設け、その上にレーダーアンテナをトップマストと同じ高さで設けたように描かれています。しかし、本場英国のものも含め、フッドの最終時を設定した模型でこの 279型レーダーを装備した作例はあまり見た事がありません。実艦写真でも明確に写っているものは手元には無いのですが、ここはANATOMY....HOODの改装要項と図面に従って作る事にしました。マスト頂部の構造に関しては、同じく1941年に 279型対空レーダーを装備していたクイーン・エリザベスの鮮明な写真が有ったので、それを元にまとめています。


279型対空レーダーアンテナのパーツは、
キットでは追加のディテールアップパーツの形で提供されています。
私はゴールドメダルのKGV用エッチングセットより使用しています。
(これは仮に付けただけです。最後の段階で固定します)

この見張り台への「はしご」は
同年代のクイーン・エリザベスの写真を見る限り
縄ばしごを見張り台の下からぶら下げているように見えますが、
模型では製作の都合上、エッチングパーツをマストの裏側に接着し
それと同色で塗装しています。


 そして、資料によってはマストのプラットフォームの上に大きな構造物が描かれているものがあります。これは ANATOMY....HOODでは HF/DF Officeと説明されているもので、同著によれば1939年2月〜6月の改装で装備され、1941年の最後の改装の際に撤去されたとあります。
「Warship Profile」(P172)
ここに1941年5月16日撮影(three days before she sailed to meet the Bismark.と説明されている)の写真が掲載されていますが、これを見る限り、プラットフォームの上には構造物らしきものはほとんど見当たりません。そのため、ここには大きな構造物は無かったものと判断しています。(ちなみに同じ日時の撮影と説明されている丸グラフィック・クォータリーNo.22「英国の戦艦」p117の写真は、主砲方位盤上の 284型射撃レーダーアンテナが見当たらない事やトップマストが残っている事などから、1941年1月以前に撮影されたものではないかと考えています)

 それと、プラットフォームの前方下側のマストの上に、デリック用の滑車が3つ、縦に並んで装備されています。キットはデリックワイヤー毎エッチングパーツが用意されていました(滑車の部分のみ右舷部と左舷部が「開いた」状態で折って重ね合わせてマストに接着する)が、形状が少し異なる上にデリックワイヤーは別途張りたかったため、3つの滑車部分をそれぞれ切り離して多少手を加えた上で接着しています。ちなみにこの滑車はワイヤーの展開の関係で、下側の2個についてはマストの中心線から右と左にそれぞれオフセットして付けられていたようです。

 その他のディテールに関しては、艦橋と同様に ANATOMY....HOODの掲載図面や建造中及び竣工直後の写真などを元に、その後に追加されたり撤去された装備を加味してまとめています。ただ、舵柄信号板のワイヤーの通過位置は不明点として残りました。これは日本海軍と全く同じもので、操作用の滑車がプラットフォームのサポートの下側に付いている事は図面や手持ちの写真からわかります。しかし、この位置にワイヤーを通したとすると、サポート部分に穴を開けない限り反対舷には通りません。明確な写真や図面があった訳ではありませんが、サポートの基部付近に他に滑車らしきものが見当たらない事から、その部分に穴が開いていたものと判断しています。

 塗装は手元の写真などから、甲板から3本のマストの接合部までが軍艦色、プラットフォームの下側までがフラットブラック、その上のマストは白と判断しています。軍艦色と黒の境目に白線が入っていますが、最終時直前に撮影された艦上写真などを見る限りでは、白線は後方の2本のマストだけで、前方のマストには塗られていなかったように考えます。


張り線に関しては後述しますが、
このデリックワイヤーは1998年末のあとがきで述べた
創作人形用の髪の毛の素材を5本束にして撚って作ったものです。
張り線の太さの「強弱」に関しては、
この素材の束の本数を変える事で表現するつもりです。

 以降、次の項にて。

※注
公式サイトでアナウンスされたICMの1/350フッドは、結局発売されることはありませんでした。大型キットはここから更に5年待つ事になります。

なお、2006年に発売されたトランペッターの1/350は、肝心の小物パーツの出来が今一つで、流用は断念しました。