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調理実演過去ログ:ホワイトエンサイン1/350巡洋戦艦フッドを作る
その13:艦上装備品について(その1)
2001/12/02

はじめに

 前回の更新から11ヶ月近く経過しました。艦載艇の製作で予想外に手こずった事に加え、細部の表現方法の検討など表に出ない部分でも時間が掛かってしまいました。できれば小物だけでも流用したかったICM社のキットは、欧米の市場でも未だに発売の見通しすら立っていないのが現状らしく、流用は諦め兵装も含めて全部作る事にしました。

 工程は艦上の兵装を除いた主要な装備品と、艦中央部の張り線及び手すりまで終わった状態で、完成のメドもほぼ見えてきました。連装高角砲の自作や主砲塔のディテールという厄介な工程もまだ残っていますが、遅くとも来年の夏までには終了する(させたい)見通しです。

艦載艇について(その2)

 1941年5月の最終時に於いて、フッドの艦載艇は以下の構成だったと考えられています。
位置 名称 位置 名称
16フィートディンギー(ボート) 32フィートカッター
16フィートモーターランチ 35フィート
ファーストモーターボート
25フィート
ファーストモーターボート
42フィートモーターボート
27フィート捕鯨艇 45フィートモーターボート
30フィートギグ
計9種類15隻。装備位置は下の画像参照

 ただ、この構成は最終時「のみ」で、それ以前の状態では多少の変更があったようです。1939年9月の第二次大戦勃発以降の改装要項に関しては製作記の最後か付記で述べるつもりですが、艦載艇で最終時とそれ以前の最も大きな違いは、35フィートファーストモーターボート3隻のうち1隻が50フィート水雷艇型内火艇(50ft STEAM PINNACE)であった事で、よってメルセルケビルでの仏艦隊撃破の状態などを設定する場合には注意が必要です。

 英国海軍の艦載艇は、例えばKGV級でも10隻以上搭載した例があるため、フッドが特別に多く搭載していた訳ではないようですが、日本海軍の戦艦と比べると種類の多さが目に付きます。艦載艇は装備品の中でも良いアクセントになるもので丁寧に作ろうとしましたが、15隻も作るとなると息切れもので、あまり思った通りには仕上がりませんでした。

 キットはレジンの船体パーツにエッチングの構成で、モーターボートの類は上部構造までムクになっていました。このうち、他から流用が利かなかった35フィートファーストモーターボートのみレジンの部品を使用しましたが、それ以外は田宮1/350KGVの部品を流用して製作しています。ただし、モーターボートに関しては船体内部を削り込んだ上で上部構造物と内部をそれらしく自作、カッターやモーターランチも船体内部を削り込んで底にエバーグリーン社の筋目モールド付きのプラ板を貼り、その上にキットの腰掛けのエッチングパーツを貼って仕上げています。また、42フィートと45フィートのモーターボートは実艦写真の搭載状況などから天蓋無しとして仕上げています(資料上は旧日本海軍の内火ランチのようなキャンバス製の天蓋を設けたり、艇尾に取り外し可能な天蓋を設ける事ができたようです)。この内部に関しては明確な資料がなく、旧日本海軍の内火艇のそれを参考にそれらしく作る事しかできませんでした。

 カッターやモーターランチのオールはキットのエッチングパーツに有りましたが、取って付けたような感じにしかならなかったので全て外しています。架台はキットのエッチングパーツを用いましたが、ボートの上に付くものはパーツに含まれていなかったためにプラペーパーで自作しています。艦載艇を固定するロープ類は全て省略しています。

 艦載艇の塗装に関しては、その8:で一旦「カッターの内部は全て白色」として、16フィートディンギーの内部を全て白色で塗装しました。その後、色々資料を検討してみたのですが、他のカッターや天蓋のないモーターボートは旧日本海軍と同じく内部側面のみ白色・腰掛け部分をウッドブラウンとして仕上げました。ただし、この塗装に関しては確証はありません。モーターボートの天蓋は Warship Profileの中に35フィートファーストモーターボートが接舷する鮮明な写真があり、これより天井と窓枠を白・側面と甲板部をウットブラウンと判断して塗装しています。


艦載艇の装備位置。
上の表のうち、d=27フィート捕鯨艇は
後部艦橋付近の舷側面に付きます。
(最後の過程で取り付けます)

艦橋とシェルター甲板上の装備品について

 まず、艦橋前の司令塔の上に付く30フィート測距儀はキットの部品では基部の段差ごと一体モールドされたものでしたが、スリットが全く再現されていなかったため、基部を切り離してプラ板で作り直すと共に、測距儀そのものはキットの部品を使用しています。ただし、前面の形状が若干実艦と違っているように見えたためにプラ板を貼って削ると共に、モールドも若干追加しています。

 艦橋の信号甲板には 12フィート測距儀塔と連装高角砲の射撃指揮装置があり、羅針艦橋後部の張り出しにポンポン砲の射撃指揮装置があります。このうち12フィート測距儀塔は構造を明確に示した資料がなく、また写真を見る限り外側には特にハッチやラッタル等は見当たりません。ANATOMY...HOODには外観が似ている魚雷発射指揮用の測距儀塔(1940年3〜5月の改装で前部の水中発射管と共に撤去された)の断面図が掲載されていますが、それによれば塔の内部にラッタルがあり、上部の測距儀に配置できるように描かれています。それと同じ構造と考えて、塔の基部にハッチを付けただけの表現に留めています。

 連装高角砲の射撃指揮装置はMK-IIIという形式のもので、KGV級とは異なる(MK-IV)ために田宮の部品は流用できません。これも正確な三面図が手元に無かったために、キットの部品の前後を逆にしてモールドを追加した程度に留めていますが、写真などを見る限りではどうも正確な形は出なかったようです(ちなみに田宮1/700フッドの該当部品A-6,B-18も形状は良くありません)。また、ポンポン砲の射撃指揮装置はKGV級と同じものが用いられていたようです。これは田宮のモールドを切り離して前に1/700の2m測距儀の部品を付け、後部にもモールドを追加してそれらしく仕上げています。ただし、艦橋の張り出しに付けたらどう考えても旋回できないものになってしまいました。

 艦橋の基部に3本の円材が縦に並べて格納されています。これは1940年の冬頃に撮影された艦上写真にもはっきり映っており、最終時にも装備されていたと考えられています。下2本は艦首の舷縁に設置できる取り外し可能な作業用クレーンデリックのブーム、そして上の短い1本はパラベーンデリックのブームだと考えています(製作記のその9:でも少し触れましたが、このブームは甲板上にはなくこの位置に有ったものと考えています)。

 その前方にライフボートが2隻設置されています。これも1940年冬頃の写真にははっきり写っているのですが、最後の出撃の3日前に撮影されたとされる不鮮明な写真には写っていないように見える事から、英国の艦船愛好家の間でも装備の有無に関しては見解が分かれているようです。Dave Weldon氏の作例では外した状態としてありますが、何か物足りないように感じたので私は田宮KGVの部品をそのまま付けました。もちろん、何の根拠もありません。
 反対に、ライフボートの下にあるパラベーンは1940年冬の写真に写っているにもかかわらず、最終時の図面では描かれていない事が多いようです。キットでは取り付けるよう指示されており、また上記の出撃3日前の写真ではわずかながらそれらしい突起が見える事から、田宮のKGVの部品に若干手を入れたものを付けています。


艦橋
防空指揮所の内部も
明確な図面や写真は手元にありませんでしたが、
Warship Profileに部分的に写っている写真が掲載されており
それから推測して作っています。

 シェルター甲板には所々に弾薬ロッカーが装備されていました。これはプラ板のブロックの前面にエッチングのハッチの部品を貼り付けた表現に留めています。図面を見てもシェルター甲板上への給弾筒などは見当たらず、敵機の急襲に対応するためには、少量ではあっても露天の甲板上に装備する以外に方法は無かったのかもしれません(ビスマルクとの最後の戦闘では、プリンツ・オイゲンの第二斉射弾が後部マスト付近に命中し、付近の弾薬ロッカーに誘爆して手がつけられない状況に陥ったと戦記にあります)。
 その他のモールドに関しては、天窓はプラ板+キットのエッチングパーツ、探照灯は田宮KGVの部品の内部をくり抜いた上に透明材とキットのエッチングパーツを貼って仕上げ、他は自作や他キットの部品の流用修正などでまとめています。ちなみに後部艦橋両脇の4連装機銃の台座と、その前のポンポン砲の台座は自作しています。

煙突と後部マストの張り線について

 スケールに関係なく、私は張り線と手すりの表現が艦船模型の最大の「ポイント」ではないかと考えています。せっかく考証が行き届き工作も塗装も丁寧に仕上げているにもかかわらず、張り線が不自然に太かったり瞬間接着剤の影響で接着部が変にあさっての方向に固まっていたりと、張り線が全てを台無しにしている作品は決して少なくないと思います。

 私は実艦写真の見え方から、艦中央部を撮影した状態で煙突の張り線はわずかに見える、後部マストの張り線ははっきり見える、クレーンワイヤーはそれより太いという表現で仕上げる事にしました。具体的には、創作人形の髪の毛に用いる黒のすが糸を、煙突は2本、後部マストは3本、クレーンワイヤーは5
本をそれぞれ束ねて作った糸を張りました。その他の張り線に関しては、最後の段階でまとめて張る事にします。

 以降、次の項にて。