Carlos Kleiber の海賊盤 REVIEW

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海賊盤は、当人にとって迷惑なものに違いありませんが、海賊盤が出るということは、その録音にそれだけの価値を市場が認めているわけで、一種のステータスシンボルでもあるわけです。残念ながら、われらが小澤の海賊盤ってまだみたことないですね。わたしは、この方面に決して詳しい訳ではありませんので、もしクライバーの海賊盤についてのHPを見つけたら、詳細なデータベースはそちらにリンクを張って譲るとして、ここでは、私の個人的なコメントを掲載しました。

クライバーの海賊盤はLP時代から出ていたようです。1991年までに確認されている海賊盤については、「WAVE#31 カルロス・クライバー」に詳しく記載されていますのでそちらをご覧になるとよいでしょう。
ところがその後、驚くべき海賊盤シリーズがリリースされました。EXCLUSIVE というレーベル(レーベルなのかこれ?)から、主にVPOとのライブ音源をCD化したものが大量に出回りました。私の持っている海賊盤はほとんどこのシリーズのものです。私は別に海賊盤にくわしいわけではないので、単純に海賊盤の音質は悪いのがあたりまえ思っていますが、このシリーズに限っては、録音状態は水準を大きく越えています。クライバーの音楽を楽しむ上で、このレベルの音質ならなんの障害にもならないでしょう。もちろん演奏内容も一聴に値します。
発売されていたのはもう数年前の話で、いまではどこのレコード屋でも見たことがありません。いまから手に入れようと思えば、中古レコード店をこまめにあたるしかないでしょう。発売時にまだクライバーに興味がなかったひとはタイミングが遅かったですね。私も手に入れ損なったものがいくつかあって、ちゃんと押さえておけばよかったと悔しく思っているところです。


EX92T13

Carlos Kleiber conducts
Mozart Symphony N.36 "LINZ" 3/20/88
Haydn Symphony N.94 "SURPRISE"
2/28/82
Vienna Philharmonic Orchestra

一連の海賊盤のなかで私のいちばんのお気に入りです。VPOと古典作品の組み合わせは申し分のないところでしょう。一方のクライバーは、Beethoven の4,7番の演奏からして、血の気の多い、勢いに任せた演奏をする人という印象をもたれがちでしょうが、決してそんなことはないと思います。たしかに、Haydn のフィナーレは、気狂いじみた早さですし、Mozart も、朗々と鳴らしていて、コーダの鮮やかさはR.シュトラウスのよう。しかし、よく聞くと細部には実にデリケートな処理が施されています。私が特に注目したいのは、Mozart でのフレーズ間の処理です。フォルテで鳴らしている楽想の次に緩やかな楽想が続く場合、決して前の楽想をフォルテのまま、終わらせることなく、しなやかに次の楽想へ繋がるように、最後の音を少し軽めにきりあげるのです。このため、古楽演奏全盛の昨今、全体として Mozart にしては、華麗すぎる音楽になっているようでいて、騒がしくはなく、流麗さを失っていないのです。こういったクライバーの繊細さは、「ばらの騎士」中のばらの献呈の場面やブラ4の終楽章のフルートやクラリネットがソロをとるところ等でも聞くことができます。風車のごとく指揮棒を振り回しているクライバーもいいですが、私はこういった繊細さをみせるクライバーのほうが彼らしいと思うようになりました。


EX92T28

Carlos Kleiber conducts
Brahms Symphony N.4 12/16/79
Vienna Philharmonic Orchestra

Sergu Celibidache conducts
Mozart Symphony N.40
2/28/82
Stuttgart Radio Symphony Orchestra

ブラームスの4番は、ご承知の通りDGの正規録音がありますが、この海賊盤はその三ヶ月ほど前のライブということになります。音質は若干落ちます。かといって、ライブのならではの熱気があるかというと、そうでもなく、ライブにしてはクールな演奏というのが私の印象です。DG版があれば、あえて海賊盤を買い求めることはないかと。もちろん、どちらの演奏もすばらしいんですけど。
実はブラームスの四つの交響曲のうち、私はこれがいままで一番苦手だったのです。DG版もCDプレーヤーを買った十数年前、まっさきに買ったのですが、あまり聞き込んでこなかったことを白状しなければなりません。というよりも、本当はブラームスがよくわかってないのかもしれません。(室内楽はほとんど聞いていないです。あの有名な弦楽六重奏曲の甘さも苦手です。)しかし、例のNHKBSで放送された、バイエルン国立管とのライブを見て以来、少しこの曲がわかってきたような気がします。それはひとえにあの華麗なクライバーの指揮ぶりのおかげで、彼の魅力的な、ほとんどそれ自体芸術ではないかと思われる体の動きは、曲のツボをほんとうにわかりやすく伝えてくれるからなのです。その後、この海賊盤とDG版をとっかえひっかえ聞いているという状況です。パッサカリアというガチガチの古典の衣を身にまといながら、時としてロマン的情念を垣間見せる、その微妙な配合がこの曲の魅力かと思いますが、クライバーの演奏に慣れてくると、今度は他の指揮者の演奏が古典的というか、きまじめすぎるというか、堅牢な構成をもつこの曲ならそういうやり方でも決して破綻することはないのですが、なにかあのひげ面のブラームスの肖像を前にしているような堅苦しさばかりが感じられ、詳しくは知らないのですが、クララに密かに惚れていたとかいうブラームスは見えてこない。クライバーの演奏だと、やはりこの人もワーグナーと同時代人なのだなと、そして、このひげの人は、ほんとうにあの甘い六重奏曲も書いたのだとすこし納得できるのでした。

さて、たまたまおまけでついたきた故チェリビダッケ。昨年、EMIから大量に生前の録音がリリースされ、私はまだ聞いていないのですが、巷ではたいへん評判がいいようです。チェリといえば、私が聞いたのはこのモーツァルトとテレビで断片的に聞いたブルックナーくらいなのですが、フルトヴェングラーを師と仰ぎ、レコードの価値を認めない堅物、異形ともいえる風体、とは似ても似つかない即物的かつ、アーティキュレーションの精緻さという点でかなり繊細な音楽をやる人だなというのが私の印象です。師と仰ぐべきひとはトスカニーニの方ではないかと思ったりしちゃいますね。
テンポの遅さで有名な彼ですが、このモーツァルトはふつうかむしろ早めだと思います。アンサンブルの精度は高く、引き締まった演奏といえますが、ちょっとせかせかした感じと、弦の硬質なアタックと響きが少し気に障ります。、こういうスタイルの演奏ならセルのすばらしいレコードがあるし、実際、私のモーツァルトの一番のお気に入りはセルなんです。


EX92T47

Carlos Kleiber conducts
Berg Wazzeck(Excerpts) 2/28/82
Dunja Vejzovic,soprano
& Boys' Choir

Mozart Symphony N.33
12/16/79
Vienna Philharmonic Orchestra

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helden(s).gif

DCD-30-01

R.Strauss Ein Heldenleben
Vienna Philharmonic Orchestra

Wagner "Tristan und Isolde"
Prelude and Liebestod

Orchester der Bayreuther Festspiele

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EX92T21

Carlos Kleiber conducts
Beethoven Symphony N.5 9/78
Schubert Symphony N.3 9/78
Chicago Symphony Orchestra

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EX92T25

Carlos Kleiber conducts
Beethoven Symphony N.7 2/28/82
Weber Der Freischutz Overture 9/78
Vienna Philharmonic Orchestra

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