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M M P I



 札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」です。このページはMMPI (ミネソタ多面的人格目録・検査) の研究書と言うよりも、解釈マニュアルを紹介します。海外での利用頻度は高いものの、日本ではロールシャッハ・テストほどはあまり使われない心理テストです。心理テストをカウンセリングに用いるスティーヴン・フィン流の治療的アセスメントではよく使われるツールなのですが、どうして日本では使われないのでしょうか。

 このMMPIはすでに改訂されており、いまはMMPI-2が世界的に使われております(若年者に利用可能な"A"も標準化された)。ところが、日本ではいまだにMMPI-1が使われる現状です。改訂版の版権・著作権を入手した学者がいるらしいのですが、20年を経てなおこの状態が続いています。どうして標準化作業が進まないのか、真相は分かりません。知能検査のWAISは日本でも改訂が首尾よく行われるのに、とても残念なことです。

 さて、いま現在MMPIの日本語版には二種類あります。ひとつは村上版、もうひとつは三京房版です。両者には様々な違いがあります。たとえば、質問項目の文章がそれぞれのポリシーにしたがって訳されており、異なります。Kによる修正の有無も異なります。通常は、妥当性尺度、臨床尺度、追加尺度(特殊尺度)、内容尺度などから構成されていますが、一方ではそのすべてが揃っているわけではありません。私は、総合的に判断して、村上版のMMPIを使用します。

 以下に示すMMPIの文献には、このテストの代表的な研究者すべてを網羅しているわけではありません。日本語で読めるものと、私がよく参考にするマニュアル本に限られます。さらに、そのほとんどがいまとなっては絶版です。世はすでに改訂版の時代なのですから。古書であれば安く出回っており、入手は簡単です。

 注意がひとつあります。外国の文献に書かれてあることを、そのまま日本人に使うのは止めた方がよいでしょう。文化的な違いがあるからです。また、尺度によって外国版と日本版は異なる特徴を備えているものもあるはずです。特に三京房版MMPIを使う人は、あらかじめ「新日本版の標準化研究」(三京房)を読んで、全体の構造を把握しておく必要があります。それからもうひとつ。心理テストのためのテストではなく、カウンセリングのためのテストであることを忘れないようにしましょう。




 村上宣寛、村上千恵子 (2009) MMPI−1/MINI/MINI−124ハンドブック ― 自動診断システムへの招待. 学芸図書

 村上版のマニュアルです。治療的アセスメントに不可欠の内容尺度も利用可能です。使用するには、パソコン用のソフトを購入する必要があります。後で説明するグリーンのシステムと類似しており、私としては、とても使いやすいMMPIシステムです。




 ジョン・ロバ−ト・グレアム (1985) MMPI臨床解釈の実際. 田中富士夫、三京房 (Graham, John R. (1987) The MMPI: A Practical Guide 2nd ed. Oxford University Press)

 グレアムのMMPIマニュアルです。私が駆け出しの頃は、日本語で読めるしっかりとしたMMPIの解説書はこれしかありませんでした。このテストへの入門書として、最適であると思います。




 アラン・F.フリ−ドマン ジェ−ムス・T.ウエッブ (1999) MMPIによる心理査定. 三京房 (Friedman, Alan F. Webb, James T. Lewak, Richard (1989) Psychological Assessment with the MMPI. Lawrence Erlbaum Assoc Inc.

 Webb/McNamara/Rodgers (1981) Configural Interpretations of the MMPI and CPI(Revised Edition). Ohio Psychology Publishing

 フリードマンらのMMPIマニュアルです。グレアムの訳書が絶版となり、この解説書が主流となったような気がします。高点コードの解釈が充実しており、共著者のウェッブの著書からかなり取り入れられたようです。二冊合わせて読むとよいでしょう。




 Roger L. Greene (1991) The MMPI-2/MMPI: An Interpretive Manual (2nd Ed). Allyn & Bacon

 Roger L. Greene (1980) An MMPI Interpretive Manual. Psychological Corp

 グリーンのMMPIマニュアル本です。私が一番好みの臨床家です。臨床尺度は、通常であれば一定の数値を超えなければ解釈に使用しませんが、彼の場合、得点を段階づけてMMPI解釈に取り入れます。原版と改訂版の違いを学びたい方は、2nd ed の方を読むとためになります。




 David Lachar (1974) MMPI: Clinical Assessment and Automated Interpretation (Wps Professional Handbook Series). Western Psychological Services

 ラシャールのMMPIマニュアル本です。とてもシンプルです。主観的な臨床解釈が行きすぎないように、必ず一度は触れておきたい本です。




 Archer, Robert P.(1987) Using the MMPI with Adolescents. Lawrence Erlbaum Assoc Inc

 Marks, Philip A.; Seeman, William; Haller, Deborah L. (1974) The Actuarial Use of the MMPI With Adolescents and Adults. Oxford University Press.

 青少年を対象とする際に役に立つMMPIマニュアルです。アーチャーの著書は標準化資料がとても充実しています(もちろん日本では使えませんが)。マークスらの著書は高点コードに焦点化されたものです。




 Jane Duckworth and Wayne Anderson (1986) MMPI Interpretation Manual for Counselors and Clinicians (Third Edition). Accelerated Development Inc

 Jane Duckworth and Wayne Anderson (1995) MMPI & MMPI-2 Interpretation Manual for Counselors and Clinicians (Forth Edition). Accelerated Development Inc

 ダックワースとアンダーソンのMMPIマニュアルです。私は上記のグリーンが好みなのですが、臨床家にとっては、彼らのマニュアルの方が懇切丁寧で分かりやすいかもしれません。妥当性尺度、臨床尺度、そして追加尺度の解釈について、とても丁寧な記述です。1995年の改訂第4版は、1と2を対比して論じたものです。来るべき移行期には、日本でも、このようなかたちのマニュアルが大いに役立つに違いありません。日本語に翻訳されることが期待される良書です。






以下、更新予定。




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