独断的JAZZ批評 707.

HIROKO TAKADA
美しい音色と豊かなイマジネーション、そして、3人の見事なアンサンブルがあれば、これはもう鬼に金棒だ
"FOR A NEW DAY"
高田 ひろ子(p), 安ヵ川 大樹(b), 橋本 学(ds)
2008年3月 スタジオ録音 (D-MUSICA : DMCD 01)

このアルバムは以前から気にかかっていたのだが、なんとなく機会を失って今日まで来たのだが、きっかけを作ったのは安ヵ川のベースだった。
安ヵ川のアルバムといえば自身のトリオ・アルバム"TRIOS"(JAZZ批評 650.)やソロ・アルバム"VOYAGE"(JAZZ批評 699.)がある。また、村山浩がリーダーとなった"BALLAD OF LYRICS"(JAZZ批評 622.)も素晴らしいアルバムだった。その後、ライヴ・ハウスでたなかかつこ・トリオや佐藤浩一・トリオでも素晴らしいベース・ワークを聴かせてくれた。その安ヵ川のベースをもっと聴きたいと思って購入したのがこのアルバムだ。ドラムスに橋本学。佐藤浩一のライヴの時もこの二人だった。
このアルバムは安ヵ川自身が主宰する"D-MUSICA"レーベルからリリースされている。その第1弾がこのアルバムで、第2弾が先の村山浩のアルバムだ。

@"KAORI" イントロ。いい音色だなあ。高田のピアノの音色がいいね。続く安ヵ川のベースも負けじと美しい。なんといい音色なのだ。これぞ、アコースティック・ベースの音色でしょう。アタック感のある強いビート、ふくよかに逞しく鳴る木の箱。二人の奏でる美しい音色は最大の武器になる。しかも3人の奏でる音楽が躍動している。ウーンと唸るね。
A"青紫陽花" 
今度はベースでスタート。痺れるね。この高田のピアノは美しいだけではなくて芯がしっかりと通っている。
B"ALL THE THINGS YOU ARE" 
お馴染みのスタンダード。とても洒落たアレンジが施してある。徐々にテンションが上がって行き丁々発止のアドリブを展開する。最後のテーマ演奏が面白い。高田の素晴らしい感性を感じる。センスがいいね。
C"BLUE OR RED" 
ピアノとベースのユニゾンで奏でる高田のオリジナル。
安ヵ川の、いかにも弦を指で弾いているといったビートのあるピチカートが素晴らしい。ベースはこうでなくちゃあ。
D"LAST SNOW" 
B、E、F以外は全て高田のオリジナル。この人、いい曲を書くね。
E"THE NEARNESS OF YOU" 
スタンダードを真正面から取り組むその姿勢が好きだ。いいピアニストは奇を衒わなくても、ストレートに弾くだけで感動させることが出来る。感動した!
F"ALL OF YOU" 
以心伝心、丁々発止、阿吽の呼吸
。ウーン、イェイ!
G"FOR A NEW DAY"
 安ヵ川大樹のベースを堪能いただきたい。凄いとしか言いようがない。本当にいい音だ。これが本当のアコースティック・ベースの音色。前掲のPHIL PALOMBIには悪いが、音色といい、ビートといい、レベルがまるで違うのだ。

安ヵ川のオムニバス・アルバムだった"TRIOS"ではそれほど強い印象を残さなかったが、このアルバムはいいね。高田の音楽性がぎっしりと詰まっていて聴くものに感動を与えるもの。美しい音色と豊かなイマジネーション、そして、3人の見事なアンサンブルがあれば、これはもう鬼に金棒だ。
それにつけても安ヵ川のベース・ワークは素晴らしい。右手の強いピチカートのみならず、左手の強靭さが伸びと艶のある音色を生み出している。
期せずして、このメンバーでの第2弾"INNER VOICES"(D-MUSICA)が8月上旬には発売になるという。かくいう僕はすでに注文済みで、後は入荷を待つだけ。待ち遠しい。発売記念ツアーはあるのだろうか?是非、ライヴも聴いてみたいということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2011.07.23)

試聴サイト : http://www.d-musica.co.jp/release/01foranewday.html




.