独断的JAZZ批評 699.

DAIKI YASUKAGAWA
安ヵ川の分身"CASALINI"の混じりけなしのド迫力と瑞々しいその音色を堪能いただきたい
"VOYAGE"
安ヵ川 大樹(b)
2010年3月 スタジオ録音 (D-MUSICA : DMCD 09)


確か、このアルバムは"TRIOS"(JAZZ批評 650.)とほぼ同じ時期にリリースされたと記憶している。そのときは、ベースのソロ・アルバムは少々重たいかなっと思って敬遠したはずだ。で、その時はトリオ・アルバムの"TRIOS"を選択した。
このアルバムも前掲の"UTOPIA"と同様に、APPLE JUMPでの安ヵ川トリオのライヴ終了直後に購入したものだ。本当に僕は安ヵ川のベースに(ピチカートでもアルコでも)痺れてしまったわけで、ライヴのハイ・テンションそのままに(なおかつ、少しの酔いも手伝って)勢い良く購入した次第だ。
このアルバムではスタンダード・ナンバーとジャズの巨人の有名曲がずらりと並んだ。ジャズ・ファンなら一度ならずとも聴いたことのある曲ばかりだ。これが良かった。ベースのソロなので親しみのある曲の方がより感性に響くだろう。

@"NUOVO CINEMA PARADISO" ENNIO MORRICONEの書いた佳曲。渋い曲を一発目に持ってきたなあ!この曲というと、僕の中ではPAT METHENYの"BEYOND THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 686.)を思い出す。
A"SOLAR" 
アコースティックなピチカートのベース音。これだよ、これ!
B"VOYAGE" 
アルコ。安ヵ川のオリジナル。
C"I CAN'T GET STARTED" 
D"IMPROVISATION" 
タイトル通りの安ヵ川のインプロ。
E"BYE BYE BLACKBIRD" 
F"IN A SENTIMENTAL MOOD" 
アルコ。美しくて深い音色だ!
G"ALL BLUES" 
弾ける躍動感。これは凄い!
H"BODY AND SOUL" 
I"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" 
J"AMAZING GRACE" 
アルコ
K"GOD BLESS THE CHILD"
 

全部で56分と23秒。ベース1本で弾き通す、その実力は凄い。全12曲のうちアルコ奏法は3曲。残りは全てピチカート。どちらも素晴らしいタッチ、溢れる躍動感とイマジネーションで感動させてくれた。「超一流の証」と言っても過言ではない。
こういうベースのソロ・アルバムというのは誰しも購入を躊躇するだろう。ベースだけでCD1枚分持つのか?という疑問が頭をもたげるに違いない。僕もそういう一人。1時間、聴き通すことは出来ないだろうと思っていた。
もし、APPLE JUMPの生演奏を聴いていなければ・・・、もし、少しのアルコールが入っていなければ・・・、多分、買わなかっただろう。でも、買って正解。これは安ヵ川だから出来た快挙だと言っても良いと思うし、安ヵ川にしか成し得ない音楽性豊かなベース・ソロ・アルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
安ヵ川の愛器、・・・というよりは、分身"CASALINI"の混じりけなしのド迫力と瑞々しいその音色を堪能いただきたい。   (2011.06.14)


試聴サイト : http://www.d-musica.co.jp/release/09.html




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