独断的JAZZ批評 650.

DAIKI YASUKAGAWA
ベースのアルコとは、こんなにも美しい音色で酔わせてくれるものだったのか
"TRIOS"
堀 秀彰(p on @A), 高田 ひろ子(p on BC), 佐藤 浩一(p on DE), 古谷 淳(p on FG), 村山 浩(p on HIJ), 安ヵ川 大樹(b), GENE JACKSON(ds on @A), 橋本 学(ds on BCDE), 柴田 亮(ds on FG), PHILIPPE SOIRAT(ds on HIJ)
TRACK @A:2010年1月, TRACK B〜G:2010年3月, TRACK H〜J:2009年12月 いずれもスタジオ録音 (D MUSICA : DMCD 08)

このアルバムはベーシスト、安ヵ川のオムニバス的アルバムである。ベースの安ヵ川を除いて、5人のピアニストと4人のドラマーで構成されている。従って、メンバーによって録音年月が異なる。
今回のメンバーの中では、堀秀彰のアルバム"IN MY WORDS"(JAZZ批評 632.)と村山浩の傑作アルバム"BALLAD OF LYRICS"(JAZZ批評 622.)を紹介している。
特に、後者のアルバムでは安ヵ川の強靭な指が容赦なく弦を弾いていたのが印象的だった。是非、聴いて欲しいアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」にも追加している。
日本にも北川潔(JAZZ批評 448.)に次ぐ優れたベーシストが現れたものだと思った。

@"COMPLEX" (堀 秀彰)(GENE JACKSON) 2010年1月録音 
A"VOYAGE" 

B"THE BIRTHDAY SONG" (高田 ひろ子)(橋本 学) 2010年3月録音 
C"WHEN I FALL IN LOVE" 

D"GIFT FROM ANGEL" (佐藤 浩一)(橋本 学) 2010年3月録音
E"SMOKE GETS IN YOUR EYES" 

F"F.E.J.E" (古谷 淳)(柴田 亮) 2010年3月録音
G"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" 

H"ALL THE THINGS YOU ARE" (村山 浩)PHILIPPE SOIRAT) 先に紹介した"BALLAD OF LYRICS"から1年半後の2009年12月に日本で録音されている。さらに熟成が進んでより芳醇な演奏が聴ける。正直に打ち明けると、僕はここからの3曲ばかりを繰り返し聴いている。先ず、アンサンブルが素晴らしい。そして、躍動感。1+1+1が4にも5にも昇華している。ピアノ・トリオはこうありたい。
I"TEARS" ここからの2曲は安ヵ川の書いたオリジナルで、アルコが堪能できるスロー・バラード。ベースのアルコとは、こんなにも美しい音色で酔わせてくれるものだったのかとあらためて認識した。ピチカートに切り替えた後は軽快な躍動感に包まれている。
J"MY DEAR" これも美しいバラード。そっと寄り添う村山のピアノが美しい。この3曲は村山のピアノがあればこそ。心に染み入る演奏をじっくりと聴いて欲しい。

安ヵ川の使用しているベースはイタリアのFAUSTO CASALINIという人が16歳(!)の時に作ったベースだということが安ヵ川のHPに書いてあった。このCASALINIという人は1938年に30歳という若さで亡くなったらしい。安ヵ川の無二の相棒、FAUSTO CASALINI 1924が奏でる素晴らしい音色のアルコとピチカートを堪能いただきたい。
最近、僕が惚れ込んでいる川村竜(JAZZ批評 646.)も安ヵ川に師事しているとブログに書いてあった。川村も将来性豊かなベーシスト。併せて、注目していきたい。
オムニバス・アルバムゆえに何人かのプレイヤーが数曲ずつで交替しているが、最後の3曲、村山浩を加えたトリオが一番心に残る。僕は、この3曲のために5つ星を献上した。たとえこの3曲のために2500円払ったとしても、僕にとっては、この価値は一生聴くに値するということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2010.09.14)

試聴サイト : http://www.d-musica.co.jp/release/08.html